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 海斗は、急いで博物館の裏口へと走っていく。

12時半にオフィスに着いた後、今日もサンタクロースの服を着て1時には館内に立った。

「昨日はお疲れ!」

小林と岡崎に声をかけた。

「雪宮君。お疲れ!昨日は楽しかったな。」

「そうだね。」

「俺も、新生代の研究したくなってきたなぁ。」

小林がサンタ帽子を被りながら昨日の事を思い出していた。

「ははっ、小林は佐渡さんと意気投合してたね。」

研究かぁ。そういえば学校の先生から、冬休みの間に理系か文系か決めろと言われてたっけ。

もうそろそろ大まかな進む道を考えておかないといけないようだ。

海斗は鷹野と似たような仕事をしたいなぁと漠然と考え始めていた。

帰りにでも相談してみようかな等と思い、ふと止まる。

“鷹野さん”

「あぁぁぁーーー。」

昨日の失態を思い出し、耳を塞いでしゃがみこんだ。

記憶を無かったものにしたい!

ほんっとに、世の中にリセット機能はないだろうか。

恥ずかしくて死にそうだ。

「急にどうしたの?雪宮君。」

二人のバイト仲間は、不思議そうに海斗を見つめた。


館内はクリスマスに相応しく、綿で雪景色が表現されていた。

オーナメントがさらにクリスマス気分を盛り上げる。

いつもは、恐竜の資料映像を流すプロジェクターは、各国の色々なおとぎ話が流れ、小さな子供たちを釘付けにしている。

3時からは、サンタ役の鷹野が語り「賢者の贈り物」の紙芝居が催された。

館内に遊びに来ていた子供たちは、目をキラキラさせてお話を聞いている。

鷹野はとても芝居が上手で、男の子のガイドとして付き添っていた海斗も一緒に紙芝居を楽しんだ。


「さて、この飾りつけを、仕舞わないといけないな。」

閉館後、クリスマスツリーや、館内のクリスマス用の装飾をみんなで片づけていく。

「あっという間のクリスマスだったわね。」

海斗と三国が名残惜しそうに、オーナメントを回収しながら言った。

「うん。この飾りつけ、けっこう綺麗だったよな。外すのが残念だよ。」

「このサンタ服も気に入ってたのに!」

「来年、またバイトして着たらいいじゃん。」

「来年は受験生だもん。それどころじゃないわ。」

そう言いながら三国はがっかりとしている。

「そうだよなぁ。次の冬休みは受験生なんだよな。」

「雪宮は、どこ行くの?」

「まだ決めてない。」

「ははっ、余裕じゃん。頭いいんだ。」

「そうでもないよ。」

「私は、看護師になるのが夢なの。」

「へぇ、素敵な夢だね。」

二人は雑談を交わしながら、全てのオーナメントを回収した。

片づけを終え、最後に皆がフロアに集まって鷹野が締めた。

「皆さん、お疲れ様でした。今日は長い時間、本当にありがとうございました。

無事に、クリスマス行事を終えることが出来ました。皆さんの協力に感謝しています。

今日は、これで終わります。どうか皆さんもよいクリスマスを!」

お疲れ様や、また明日等と口々にいいながら皆、帰り始めた。

「鷹野さん。」

海斗は、鷹野を呼び止めた。

「どうした?雪宮君。」

営業中はサンタクロース姿だったからそれほど意識せずに鷹野の紙芝居がみれたのだが、普通の姿での彼の正面に立つと急に恥ずかしくなってきた。

“すっげぇ泣いたし、しかも色々恥ずかしい事聞かれたんだっけ・・・”

真っ赤になった海斗の顔を覗き込んで、もう一度鷹野は訊ねた。

「どうした?」

くすぐるような優しい声に、海斗の心臓はドキドキしてし、思わず俯いてしまう。

「昨日は・・・ありがとうございました・・・。」

“昨日の事は覚えてますか?”なんて、聞けないよ!

「あぁ。どういたしまして。」

鷹野は下を向いている海斗の顔をさらに覗き込んできた。

「真っ赤な顔をして、どうしたのかな?」

「!!」

「熱でもあるの?」

“あっ。触れられる!”

伸びてきた手をさらりと避けて、

「大丈夫です!さよなら!」

海斗は、急いでオフィスへ戻ると着替えて博物館を出た。

何故、逃げるように出てしまったのか・・・。

触れられると、どうなるんだろう・・・。

博物館からバス停の道を歩きながら、ドキドキが止まらない。


昨日のあれは“慰め”だった。

ピクシーのよしよしと一緒。


「触れられたら・・・」


でも、今はそうじゃない。

あきらかに鷹野を意識している自分がいる。


あぁ、きっとあの溺れるような感覚が来る。

それが、俺を飲み込んでしまうのが怖い。


ー温もりや激しさがひいて、無くなってしまうのが、怖いー


「・・・怖い。」


「触れられるのが、怖いのかい?」

背後で声がした。

いつの間に、立ち止まって考えていたようだ。

海斗は目を閉じ、首を横に振った。

「試して・・・みようか。」

そう言って鷹野は背後から海斗をそっと抱き締めた。


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