36『アリスよさらば』
アリスはルールーの元に帰った瞬間、こう言い放ちました。
「ルールー、アリスが帰ってきたわよ!」
ルールーは応えます。
「元の生意気なアリスに戻ったな。ははは、なんてこった。素晴らしいほどに冗談じみている」
アリスの後ろに立っていた少女を見て、ルールーは思わず笑ってしまいました。アリスと同じライトブルーの瞳を持つ少女、エリーの顔を見て。
「なに笑ってるのよ」
「ああ、君がアリスに戻ってくれたことが嬉しくてね」
「私はずっとアリスよ! くだらないこと言う暇があるなら、エリーが着る服を用意してくれないかしら?」
ルールーはケタケタと笑いながら、全裸のエリーにアリスと全く同じライトブルーとホワイトで構成されたエプロンドレスを着せてやりました。
「まるで鏡を見ているみたいね。私とエリーは髪の色以外、そっくりよ。どうして今まで気づかなかったのかしら、ああ、服を着ていなかったから鏡にならなかったのね」
「鏡ってなに?」
「鏡は鏡よ、鏡さん。もう、ないけれど」
右目のないエリーと、左目のないアリスが向き合うと視線がまっすぐにぶつかります。
「二人とも、紅茶を飲まないか」
「あら、お茶会ってわけね。どうかしらエリー?」
「お茶ってなに?」
「教えてあげるわ。お菓子もあるのよ」
「お菓子ってなに?」
「ねぇ、ルールー。どうして笑うの?」
お茶を準備しながら、何度も吹き出し笑っているルールーにアリスは不満顔。
「いやあ、君たちの瞳がまるで地球のようだからね」
ルールーは思い出します。私が作り出したこの似非アリスは左目が少し、ほんの少し、しっかりと観察した者だけが辛うじてわかるレベルで濁っていたなと。私はそれを認めたくなかったのだなと。
「さて、お茶会をはじめるわよ!」
テーブルには、可愛らしい茶器と色とりどりのお菓子。エリー、人生初のお茶会でした。




