32『Love You』
エリーはクロネコの手を握り、空を見上げていました。
「ねぇ、エリー。なにが来るの?」
「なんだろうね。でも、良くないものだよ」
雨雲が一瞬で蒸発するほどの熱を帯びて高速落下してくるハーヴィがスローモーションのように見えることこそが、驚異の証明。止めなければ、自分もクロネコも世界も消えてなくなるとエリーは決意めいた表情で睨みつけていました。
「エリー、どうするの」
「俺が、飛ぶしかない」
「どうやって」
クロネコは、エリーの横顔を見つめています。
「俺を、投げて」
「え……そんなことしたらエリーだけが死んでしまうわ!」
「二人死ぬよりは、ずっといい」
「そんなことない!」
「急いで!」
ハーヴィはできるだけ高い位置で破壊しなければならない。着弾しなくとも、地上に近い位置で炸裂すれば、無事では済まない可能性があります。
「できない!」
「やるんだクロネコ!」
「んっ……」
エリーはクロネコに、口づけをしました。以前、自分に口移しで内臓を食わせてくれたことへの感謝として。もう、時間がないのです。言葉を交わす時間など、もう、ないのです。
「エリー! いけぇええええええ!」
クロネコは泣きながらエリーの髪を掴み、思いっきり投げました。エリーは空中で猫のようにくるくると二回転すると体勢を整え、目前に迫っていたハーヴィに向かって、拳を叩きつけます。
先に、光があった
後に、衝撃波と熱があった
最後に、爆音があった
全身を焼かれたクロネコが再生し、立ち上がるのには三週間を要しました。エリーの姿はどこにもありません。




