71.何かが起きるのが遠足です
マリsideはじまりました^_^
お付き合いくださいませ!
◇◇◇side真里◇◇◇
とうとう始まった遠足。ついに、始まってしまった。
ワクワク学園に来てから、はじめてとなる校舎外での活動。いや、正確には校舎から出たことはある。だが、短時間だった。
長期の間、校舎外に出るというイベントは今回が初めて。その記念すべきイベントであるのがこの遠足だ。
はじまるまではドキドキしていて、なんなら昨日も眠れなかった。だが、はじまってみたら思っていた以上になんて事もなく過ぎていくというのがお約束だ。
何かがあったらどうしよう。うまく動けるかな。どうだろう。
ミスしたらどうしようか。いやいや、ミスらないはずがない。ミスるに決まっている。みんなに迷惑をかけてしまうに違いない。
どうしようどうしようどうしようどうしようーー……
始まるまでは不安は多かった。これでもかと言うくらいに溢れ出てきていた。こういうのは溢れ出たら止まらない。止まるはずもない。
そう、一回不安で支配されれば、甘いものとしょっぱいものを交互に食べている時のように、止まらなくなってしまうものだ。マイナス思考は止まることを知らない。
胃がキリキリと音を立てるんじゃないかってくらいに不安になり、何なら、遠足前には一人でいたくなくて、桜花の部屋に乗り込んでいき、チビに迷惑だというようなリアクションを取られてしまった。
チビの反応を気にする余裕もなく、図太くも居座った。ツバサや魁斗達まで集まっていたのだから気にする必要もないとマリは思う事にして居座った。
だが。
始まってみたら怖がっていたほどではないと、ホッとする。何事もなくここまで来れた、まではいかないが。泣きたくなるような失態はせずにすんでいる。マリとしては上々といえるはず。
気を抜いてはいけない。そう思いつつも、マリは思ったよりも大丈夫なもんなのねとホッと胸を撫で下ろしていた。
夜開始というふざけた始まりでもどうってことなく、朝を迎えられた。暗い間、怖くてたまらなかったが、どうにかなった。
全てがうまくいったわけではないが、どうにかなってしまった。肩の力も抜けてくる頃である。
ただ。
問題とかってふと気を抜いた瞬間に起きるもの。それがお約束だったりするわけで。そういうときこそ注意が必要なのである。
「ギャアッ!!」
マリは案の定、悲鳴を上げる事となるのであった。
うんうん、お約束だよね。ヒロイン的なのが問題に遭遇して、守ってあげなきゃと思わせるように可愛くきゃあとか悲鳴をあげて、ヒーローに助けてもらうわけだ。
重要なのは可愛く悲鳴をあげるということ。周りに守りたいと思わせなきゃいけない。それがヒロインの腕が試されるところである。
みんなで周りを警戒しながら歩いていた中で、マリが悲鳴を上げた。お約束展開のように。ただそれは可愛らしい悲鳴ではなく、カエルが潰されたかのような呻き声のようなものだった。
マリにはヒロイン力が足りないらしい。圧倒的に足りないらしい。これでは赤点だ。
せめて、可愛い声、それがダメならかわいいリアクションが欲しいとこだが。そんなことを気にする余裕などマリにはない。
悲惨に顔を歪め、色気とは無縁な声を出している。
気を抜いたらダメって分かってるのに!!気ぃ抜いちゃった私の馬鹿!!だから私は!!なぁんて、思いつつ、マリは色気のない声を上げていた。
涙目になりつつ、マリが周りを見渡せば、マリの視界には蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛ーーー…蜘蛛ばかりが映るのだった。
蜘蛛の巣もその宿主もそこら中にいた。いたわけだ。これで万が一にもマリが蜘蛛好きならば、ウッキウキのルンルンになるわけだが、そこは残念、マリは普通の女の子だった。
蜘蛛を見て気持ち悪いとしか感じられない。楽しんだりできるならば声は上げたりしないわけだ。
あたりが蜘蛛の巣だらけで気持ち悪い。その一つに引っかかってしまったという事実に気づき、気が滅入ってしまう。
朝起きて、家から出た瞬間、ざぁざぁと降り注ぐ雨を目にしてしまった時の気分の落ちようだ。雨の中、たいして行きたくもないような場所へと行かねばならないのかと絶望する朝。現在のマリはそんなような気分に陥っていた。
蜘蛛が意思を持っており、こちらを意識しているかのようにギョロっとこちらの方を見る様には背筋がゾワゾワしてきてしまう。
あ、このゾクゾクは興奮的ゾクゾクじゃなくて、冷や汗が出てくる恐怖的なゾクゾクである。変態的気質もマリにはないのである。
「んん?マリ〜?女の子なんだから、もう少し色気のある声だして?踏み潰されたカエルみたいな声はうらわかき女の子の声にはあんまりだねぇ。」
頭にかかってしまった蜘蛛の巣に泣きそうになりつつ、ジタバタしてたら、桜花があきれたような声を出した。
なぜ声を上げたかも理解したうえで苦笑を浮かべつつ、マリに視線を向けていた。
「と、と…咄嗟の時にっ!可愛らしい声なんてっ!出すやつなんていないわよ!!出すやつは絶対、可愛いって自覚があって狙ってやっている腹黒なやつに決まってるわよぉ〜!無理よ、無理!!」
咄嗟にマリは言い返す。
可愛い悲鳴をあげる奴は余裕があって腹黒説。
そんな説を論じつつ、マリは引っかかってしまった蜘蛛の巣を取ろうと右往左往しつつ、後ろによろめいた。
なんとも情けない姿で説を提唱しているわけである。それが正しいか否かなんて提唱している本人が一番どうでも良いと思っていたりする。
「ゔぅ〜…蜘蛛よ、蜘蛛!!蜘蛛の巣がぁあ〜!」
情けない姿を晒しているわけだが、泣き出したいことに蜘蛛の巣が上手く取れない。絡まりついてくる。
なかなか上手く取れないよね、蜘蛛の巣って。うんうん、仕方ない。取りにくいもの。取りやすかったら獲物だって簡単に逃げちゃうよね。逃げれないのはそれだけの理由があるもんだ。
パニックに陥ってちゃぁ、取れるはずもない。どんまいとしかいえない状況なわけだね。
「賑やかだねぇ。っと、危ないよ?」
マリを見て笑っていた桜花はふと、マリの腕を引き、自分の元に引き寄せた。
車が来ている車道に出てしまいそうになった女の子をイケメンが華麗に引き留める。ドラマとかでヒロインがイケメンにドキッとときめいてしまう、あんな場面かのように桜花は自然にマリを引き寄せた。
マリをかばうように背に誘導しつつ、桜花は頭についた蜘蛛の巣を払った。
何気にやってくれる姿は優しさが滲み出ており、桜花が男であったならば、惚れちゃいそうになるところだ。
しかし、そんな悠長な事を言ってられる状況ではなかった。
ありがとうと口を開きかけたのだが、それより先に桜花の肩に乗っていたチビがさっきまでマリがいた場所に向かって威嚇音を出したのだ。
牙を剥き出し、警戒心を露わにしている。殺気立ち、今にも敵となる者全てを殲滅すべく動き出そうとしていた。
そんな雰囲気に臆したのか、桜花達に近づこうと動いた蜘蛛がピタッと動きを止めた。蜘蛛は動きを止めたが、パニックなマリは蜘蛛と違って動き、口を開く。
「え?!な、なに?何々?!」
何があったか分からない。しかし、何かが起きているのは確か。ゆえにマリはひっくり返った声を出し、桜花とチビを交互に見る。
なに?!何なの?!
パニックに陥っているってことが一眼見ればわかるくらいにマリの顔には表情がありありと浮かんでいた。とても分かりやすい限りだ。
そんなマリの感情は周りに伝染し、緊張感を強める。
みんなが身を固くする中、緊張感のかけらもない奴もいるにはいた。
「ほらほら、落ち着いて。何かがあったら、とりあえず落ち着いて状況確認。慌てて闇雲に動いたら罠にかかっちゃうよー。」
そう。桜花は緊張感も警戒心もなかった。
言っていることは正しいが、どうにも緊張感が感じられない。
威嚇するチビはただならぬ雰囲気。何か危険があるに違いない。明らかに何かがいるはず。
チビが威嚇するだけの何かがいるはずなのにもかかわらず、桜花は落ち着いたものだった。
いきなり威嚇しはじめるもんだから、マリを含め、他のメンバーみんながキョロキョロ辺りを見渡して警戒していると言うのに、桜花は武器すら出していない。
桜花以外は緊張した面立ちでチビが唸る方向を見ているが、桜花以外、何に唸っているかが全然分からなかった。
チビが唸る方向にあるのは木々。今まで進んできた森の風景と何ら変わりのない光景しかないようにしか見えない。
なんの違いがあると言うのか。
気になる事といえば、所々に蜘蛛の巣があるくらい。先ほど、マリは蜘蛛の巣にかかってしまったが、叫びつつよろめき、桜花に止められた先にも足元に蜘蛛の巣があった。
ちょっと大きめの蜘蛛がいてちょっと気持ちが悪い。ギョロっとした赤い目がこちらを見ているようで気持ちが悪い。
蜘蛛に嫌な気分になりつつ、マリは慎重に辺りを見渡した。
やっぱり蜘蛛くらいしかいないように感じる。何か異変があるようには感じられない。気になるといえば、蜘蛛か。蜘蛛がチビの威嚇で動きを止め、こちらの動きを伺うかのように見てーーー桜花目掛けて飛んできた。
「ーーーこれは魔物かぃ?」
皆がどうすればいいか分からず様子を伺っていた中で、はじめに動いたのは魁斗だった。
1匹の蜘蛛が桜花目掛けてやってきたのに対し、それを番傘を使って薙ぎ払いながら、魁斗は桜花に聞いた。
桜花はやはり武器も構えず、蜘蛛達に視線を向けている。
魁斗によって、飛ばされた蜘蛛は空中で糸を吐き、宙に浮かぶことで魁斗からの攻撃による衝撃をいなしていた。
が。
すぐにチビによって絶命させられる。チビはその勢いのまま、桜花のそばにいた蜘蛛達まで蹴散らしていく。
ゔーっと唸り声を上げ、他の蜘蛛にも威嚇する。
「そうだねぇ、魔物だねぇ。チビったら大袈裟なんだから。こっちから罠にかからなきゃ、よほど大丈夫なのに。雑魚にまで注意を向けるんだから。たとえあのまま襲われたとしてもさして怪我もしないんだけどね。」
その子らはちょいと私を襲おうとしただけじゃん。
ハハハハハッと笑いつつ、桜花はやっぱり、のんびりと言った。危機感のかけらもない。あれは雑魚って。大したことない魔物ってことなのだろうか?
マリはマジマジと蜘蛛を見つめーー…
読んでいただき、ありがとうございます^_^
蜘蛛が嫌いな同級生がいました
その子の自転車に蜘蛛が蜘蛛の巣を張るもんだから悲鳴をあげまして、中々帰れず。
私が除去しました。
そうしましたら。
蜘蛛に触れた手で近寄るなと言われました。
誰のためにやったとーー釈然としないぜ。
助けるために動き出したのに人間からの裏切り…汚れをしたのに……人間など信用できないーーゆえに裏切るぜ、ひゃっほーい。ってやつが生まれる、と。なんとなる理解しちゃいますね笑。
私はその場は近づかず、その後、普通に関わる形でしたので恨みをーーとかはありませんけど。不快感はありますが、相手がなぜそう動いたかはわかりますからね。仕方ないと割り切ります。
こうして根には持ってネタには使っても基本、次の日には忘れて近づいていく、単細胞ぶりを発揮します。
釈然としないぜという気持ちに変化はありませんけどね。




