40.街に集団で出ると
ラープテンで皆と合流した俺達は、挨拶もそこそこにそれぞれに行動をし始めた。
そして準備を終えると、先ずはぞろぞろと集団で冒険者ギルドを目指す。
都合8人での大移動である。
残念ながら、そう、非常に残念ながら、ミリィだけが仕事の都合でここで離脱する。
その為に皆で見送りに来たのだ。
・・・なんだか小学生の時の集団下校を思い出す。
いや、朝で出発時だし、出勤先の離脱なんだけど、1人バラける感じがさ。
「では、わたしはここで。 みなさん、楽しんできてくださいね」
ギルド前でにっこり笑顔でそう言ってくれたミリィと手を振り分かれると、7人になった俺達は街中へと足を向けた。
先頭を歩く俺が
「主、その方向には行かない方がいいと思うわ」
と、無意識に風俗外へと足が向かってしまったことをミミルに注意されたのはご愛嬌。
街中では露店を巡り、職人街を覗き、衛兵の詰所裏にある訓練所の見学にも行った。
訓練所では型稽古や組打ち、乗馬なんかもやっていて、トマルとコバが喜んでいた。
その後屋台通りで昼食を取り、ティアのオススメのマッドテイル(でかいトカゲ)の丸焼きを食べ、雑貨や日用品などの幅広いものを扱っている商人街にも立ち寄った。
ここにはトマルたちキッズが商品の買取を頼んだ店もあるらしく、微妙な表情をしていた為、その店を物理的に潰すことにした。
のだが、デクスターとミミルに止められて自重した。
俺は我慢の出来る大人なのである。
まぁ、スストゥムの話を聞いてから判断しようと思う。
そんな一幕もあり、空気が微妙になってしまった為、子ども等には何か1つずつ好きなものを買い与えることにした。
物で釣ってご機嫌を取ろう作戦である。
我ながら薄汚れた安直な大人思考だぜ。
地球にいた頃、歳の離れた弟と妹相手にやっていたことを思い出す。
大人になった奴等はそれぞれ新聞社の社員とキャバ嬢になっていたが、元気だろうか?
まぁ、あいつ等なら心配ないか。
それはさて置き、キッズがそれぞれ選んだのは、トマルは木剣、コバは木槍、ウランは皮と鉄のガントレットだった。
・・・ウランが一番強そうだ。
トマルとコバも鉄製の剣と槍を欲しがったのだが、危ないので却下したんだけど。
ちなみにコバの木槍は大人からすれば短槍なサイズなので、子どもでも扱える長さである。
物で釣るのは効果覿面で、子ども等はそれぞれ早速身に着けたり、持ったりしてご満悦の様子だ。
そんな感じで午後まで過ごすと、デクスターから提案があった。
「この先に俺の家があるのだが、寄ってもよいだろうか?」
とのことだったので、昨夜にも聞いていたし、勿論OKを出す。
俺達は7人所帯で一路デクスターの家へと向かうのだった。
「ここだ」
「おお、一軒家じゃん」
「ふむ。 頑丈そうなしったりした家ですな!」
「デクスターは無駄遣いはしないタイプだし、相方がしっかりしているのよ」
「ほほぅ」
「鎧のお兄さんは尻に敷かれてるの?」
「いや、それは・・・」
「そうとも言えるわね」
「おい!?」
「あー!オレん家の父ちゃんと一緒だな!」
「あ、ぼくの家もだよ」
「そ、そうか・・・」
「よかったな、デクスター。 仲間は多いみたいだぞ」
「・・・」
異世界は尻に敷かれてなんぼなのか?
がっくりしているデクスターを見て、そんな感想を抱いていまう。
デクスターの家は所謂貴族街に近い、大きめの庶民宅が並ぶ場所にあった。
ミリィの部屋とは微妙に遠い。
家自体は豪華では無いが、しっかりとしと造りの石造りの家だ。
屋根から伸びる煙突がチャームポイントだ。
・・・家にチャームポイントってある?
いや、まぁいいか。
そんなことを考えている内にデクスターも持ち直したようだ。
「と、取り敢えず中に入ってくれ・・・帰ったぞー!」
玄関の戸を押し開きながら、そう中へと声を掛けながら入るデクスターに続いて家へと入る俺達。
「おう。 お邪魔しまーす」
「失礼する!」
「お邪魔するわ」
「「「お邪魔しまーす!」」」
良い子な俺達は挨拶を忘れない。
挨拶、大事。
これは地球も異世界も変わらない・・・はず。
デクスター宅の室内の床は板張りになっており、土足で中まで入っちゃう系の生活スタイルの様だ。
玄関マットで靴底を擦ってから中に入るデクスターの真似をして俺たちも続いて入る。
短い廊下を抜けると、直ぐにリビングらしき所に出た。
リビングには4人掛けのテーブルセットと3人掛けのソファー、暖炉そこにくべるのであろう積まれた薪と戸棚なんかがある。
リビングの奥はカウンター付きのキッチンになっている様で、その方向から物音がしている。
「すまんが、この辺で適当に座って待っていてくれ。 マデリナ、客人を連れてきた」
そう言いながらキッチンの方へ消えていくデクスター。
それを見送る俺たち。
「ふむ・・・」
ソファーと椅子を合わせて7人が座れるようだが・・・。
俺、ミミル、ティア、トマル、コバ、ウランで6人。
ここにデクスターとその嫁さん?恋人?が加わったら足りなくね?
「取り敢えず、トマルとコバ、ウランはソファーに座っててな」
「わかった!」
「はい」
「わたしたちがこっちでいいの?」
「ああ。 ふかふかを譲ってやろうとも」
「あは、ありがとうお兄さん」
「おう」
「で、ミミルとティアはそっちのテーブル席な」
「承知です!」
「わかったわ。 主は?」
「俺? 俺は・・・アレだな」
そう言って薪を指す俺。
「薪?」
「ああ」
そう答えながら積まれた薪に近付き、10本ほど拝借する。
そしてテーブル席まで戻ると、床に薪を置き、魔法を掛ける。
「《変成・製造》」
一瞬で顕れた薄緑の魔方陣に囲われた薪は瞬く間に木製の椅子へと姿を変える。
肘掛けは弧を描くタイプで、背もたれは楕円の内側が籤で荒めに編まれたタイプのモノを採用。
椅子が無ければ作ればいいじゃないのよ。
ってことで作った椅子に腰掛ける俺。
子ども等はソファーに座ってこちらとは逆の暖炉方面を向いて、さっき買ったそれぞれの武器?を弄っているから問題ない。
「うむ」
1脚だけ良い椅子になってしまったが問題ない。
自然にしてればばれない・・・わけは無い。
が、デクスターへの贈り物ってことにしておこう。
溜め息をつくミミルと、目を輝かせるティアに挟まれて、俺はデクスターの帰りを待つのだった。
お読みいただいて、ありがとうございました。




