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21.ラープテンに着くと

いつの間にかPVが2000を超えていて、ビックリしました。

ありがとうございます。

宿ラープテンの中に入ると、入口脇に待機していたコンシェルジュっぽいおじさん(俺はお兄さん)に声を掛けられる。



「ようこそ、ラープテンへ。 本日はどのような御用向きで?」


「あー、宿泊を・・・そうだな、5日間。 2人部屋を2つ頼みたいんだが、部屋は空いてるだろうか?」


「宿泊となりますと・・・失礼ですが、どなたかの紹介状はお持ちでしょうか?」


「ああ」



その言葉に頷いて、デクスターから冒険者ギルドで手渡された紹介状をコンシェルジュに渡す。

そして頭だけで振り向き、後ろに視線を送る。

俺の視線に反応したデクスターが前に出てきてくれた。



「ハロックさん」


「ああ、これはデクスター様。 約一ヶ月ぶりでございます」


「ご無沙汰している。 最後に泊めて頂いてから、もうそれくらいになるか・・・。

 俺が彼の紹介状を書いた紹介者になるのだが、どうだろうか」


「なるほど。 デクスター様のご紹介でしたか」


「デクスターだけで足りなかったら、私の名前も使って頂戴」


「これはこれは、ミミル様まで。 お久し振りにございます。


「ええ、久しぶり。 それで、デクスターも訊いていたけれど、どうかしら?」


「ええ、ええ。 問題ございません。 それでは改めまして、自己紹介を。

私は、この宿のコンシェルジュの取り纏めをしております、ハロックと申します。 以後、お見知りおきを」



そう名乗ったハロック氏は右手を胸に当て、綺麗なお辞儀をしてくれた。



「俺は冒険者のコウ・アサギリ。 肩に乗ってる女の子はウラン。 俺の右側にいる男の子がコバ。 左側の男の子がトマルと言う。 よろしく頼む、ハロックさん。 あとは、後ろの2人は知ってるから紹介は要らないな」



俺がそれぞれの名前をハロックさんに告げると子ども達もれそれぞ頭を下げていた。 うん。 上出来だ。


「ええ。 アサギリ様、ウラン様、コバ様とトマル様ですね。

しかし、2人部屋を2つと仰っておられましたが・・・」



と、泊まること自体は問題ないと受け容れてくれたコンシェルジュだが、ラープテンに入ってきた俺達一行の人数と、俺が宿泊を依頼したい人数が違うので、それを問いたいらしい。



「あ、泊まるのは子ども達なんだ。 で、男女で部屋を分けて1部屋ずつ頼みたい」


「子ども達だけ、でございますか」


「ああ」


「しかし、失礼ながら、この子達に宿泊料は───」


「それは俺が払うから、この子達の安全を確保したいんだ」


「・・・何か事情がお有りの様で」


「ちょっとな。 だが、誓って後ろ暗いことは無い。 むしろ、そう言ったことから遠ざけたいから、この子達を此処に泊めて欲しいんだ。 最長で5日間以内に問題はなんとかしてみせる」


「なるほど・・・。 紹介者になられますデクスター様、ミミル様も事情はご存知で?」


「ああ。 勿論俺もミミルも話を聞いた上でのことだ」


「ええ」


「そうですか。 でしたら、お引受け致しましょう。 それと宿泊されるお部屋の方ですが・・・安全性を、と言うことであればスウィートルームのご利用は如何でしょうか? あの部屋でしたら、造りが3LDKになっておりますし、浴室やトイレも備付けてございます。 その為、トイレや入浴の際に部屋の外へ出る必要もなく、ルームサービスに応る者も限られた人員となっておりますので・・・どうでしょうか?」


「ふむ・・・」



なるほど。

子ども等には少し窮屈な生活をさせてしまうが、外との接触は今はなるべく避けたいしなぁ。

警戒し過ぎな気もするけど、安全性が高いとは言っても、この宿には商人も出入りしている。

例の“悪いひと”に出会す可能性も0では無いし、本人ではなくとも、繋がりのある商人がいる可能性も捨て切れない。

それでも誰でも来るような安宿よりはだいぶマシだとは思うが。

何にせよ、リスクは避けられるだけ避ける方向で行こうか。

幸い“豪斧のイワン”とやらの懸賞金も入ったし、ケチる必要も無い。

金で安全が買えるなら儲けもんだ。



「よし、じゃあそのスウィートルームを5日間頼むよ」


「畏まりました。 では先に料金の方ですが───」


「ほい。 これで5日分足りる? 足りないならもっと出すよ」



言いながら腰の革袋から金貨を10枚出して渡す。



「おー!金貨なんてオレ初めて見たぞ!」


「わ、ぼくも見たことなかったよ」


「お兄さん、本当にお金持ちなのね・・・」


「いえいえ、ここまでの金額は必要ございません! この半分で結構でございます」



なるほど。 1泊金貨1枚か。

そりゃスウィートだわ。

コンシェルジュに金貨5枚を返されそうになるが・・・


「いや、そのまま預けとく。 ルームサービスとかその他必要な費用に充ててくれ。 あとは・・・そうだな。 ルームサービスを担当する者にその中から適当にチップを出してくれても構わない」



無論下心があっての話である。

金もケチらず払って、チップもはずめば、ある程度の優遇はしてくれるだろうと思ってのことだ。

この辺はあくまで地球の感覚のまんまだから、どこまでアテになるか分からんけども。

地球ではチップはずめば、愛想もよくなるし、細かな配慮もしてくれたから、それに期待したいところだ。



「畏まりました。 では、その様に。」


「ああ、よろしく」


「では、今からお部屋の方へご案内させて頂いてもよろしいでしょうか?」


「いいか?」



そう言いながら、周りを見ると、皆からは同意が返ってきた。



「うん、大丈夫みたいだから、お願いする」


「畏まりました。 では、どうぞこちらへ。 私の後に皆様で付いていらして下さい」



その言葉と共に歩き始めたハロックさんの後に続いて、俺達もぞろぞろと歩き出す。

俺とキッズはまたしても四神合体だが、ラープテンの中は通路も広く取っているので幸いそのままで移動出来た。

そしてそのまま最上階になる3階まで上がる。

無論、この世界にはエレベーター等無いので階段でだ。

ぶっちゃけ地球に居た頃は30代になってから3階まで階段で上がるのはかなり面倒に感じていたのだが、この世界でこのステータスになってからは階段も何も基本身体を動かすことにダルさや面倒さを感じない。

この辺は異世界様々である。

ちょっと身体が若返った気がして地味に嬉しい。

・・・いや、そもそも俺はまだお兄さんだから若いんだけど。

うん、若いんだけど。


そんなことをウダウダと考えていたら、いつの間にか部屋の前まで着いていた様だ。

ガチャリ、という音に意識を戻すと、丁度ハロックさんが部屋の扉を開く音だった。

・・・あれ? 受付?フロント?に寄ってないけど、何で鍵あるの?

と、思ったが、俺がトリップしている間にハロックさんが擦れ違った従業員に指示を出し、持って来させていたらしい。

・・・なるほど。


そんなこんなで大きな花(なんの花かは知らない)のレリーフが彫られた、ひと2人が同時に入れる位のサイズの扉が開かれる。



「どうぞ、お入りください」


「ありがとう」



扉を開いて後、扉を開いた状態でキープしていてくれるハロックさんに礼を言って中へと入る。

他の皆も俺と共に中に入る。

室内は入って直ぐの場所が広めの玄関になっており、そこで靴を脱ぐ。 

中は床一面絨毯張りになっており、そのまま入るようだ。

玄関を抜けると広いホールの様な場所になる。

部屋の中心には高そうな大きなソファーがコの字型に設置してあり、大理石っぽいテーブルもセットで配置されている。

ちなみにソファーは、大人が余裕で寝れる位には幅がある。

テーブルの上には果物セットと茶器が置いてあるんだが、ここだけは異世界も変わんないんだなぁ、と思った。


また、ホールの隅には立派なキッチンもあったので、「スウィートなのに何で?」と思ったので訊いてみたところ、「料理人を呼んで、ここで作らせるお客様もおられますので」との返答が返ってきた。

金持ちのやることは分からん。

部屋の配置としては、ホールを中心として右手にサロン的なヤツとその先にベランダ。

反対の左側には寝室が1つと、その隣にトイレ、風呂とそれぞれに繋がる扉が並んでいる。

そして、ホールの正面奥に残り2つの寝室が並んでいる形だ。


全員が部屋の中に入ると、四神合体は解除された。

子ども等は皆俺から離れ、室内をキョロキョロと見回している。

・・・ちょっと寂しい。



「アサギリ様」


「ん? ああ、はいはい」



最近名字で呼ばれることが殆ど無かったから、一瞬呆けてしまった。



「こちらが、当スウィートルームの魔法鍵になります」



そう言って渡されたのは、持手に赤い宝石の嵌め込まれた2本の金色の鍵だった。



「外側からは、そちらの魔法鍵を鍵穴に挿し込んだ場合のみ扉の鍵の開閉可能となっております」


「なるほど。 魔力を流したりする必要は?」


「ございません。 持手に嵌っておりますのが魔石となっておりますので、そこに蓄えられた魔力を使用しての開閉となります」


「ふむふむ。 使ってる内に魔石の魔力が無くなったりは?」


「大まかにではございますが、魔石の交換をせずとも、そのままで年単位で使える代物でございますので、心配は無いかと。 魔石の魔力が切れた場合は色を失い黒くなります。 残りの魔力が少なくなった場合でも色を失いはじめ、黒ずんでまいりますので・・・」


「なるほど。 それでいくと、この魔石はまだまだ大丈夫そうだな」


「はい。 ですので、そういった心配は無いかと」


「了解。 じゃあ、鍵は預からせて貰うよ」


「はい。 次にルームサービスについてですが、ホール隅のキッチン脇にございます金属管が見えますでしょうか」


「えーっと・・・ああ、はい。 水道横のあの赤い金属管かな?」


「はい、そちらでございます。 その管の中に御用向きを書いた紙を丸めて落として頂くと、それを確認次第に都度対応させて頂く形となっております」


「へぇー」



お手紙ダストシュートか。

ちょっと面白いな。

ちなみにそれに使うメモ用紙が金属管の横に日めくりカレンダーの様になってぶら下がっている。

そこから千切って使うらしい。

ペンはテーブルの上にある羽根ペンとインク壺を使う様だ。

その後、風呂やトイレ、キッチンの使い方等の説明を皆で聞いた。



「説明は以上となりますが、何か不明な点やご質問等はございますでしょうか?」


「んー、俺からは無いけど、皆はどうだ?」


「オレもない!」


「ぼくもないです」


「わたしもないわ」


「俺もだ」


「私も特には無いわね」


「て、ことみたいだから、大丈夫」


「ありがとうございます。 では、これで私は失礼させて頂きますので、何かあればお呼び下さいませ。 それでは」


「ああ、ありがとう」



ハロックさんを見送り退室を確認した後、俺は先ずキッズに声を掛けた。



「よし、お前ら! 奥にある2つの部屋をどっちが男部屋でどっちを女部屋するか3人で相談して決めて来てくれ。 勿論、中に入って良いからな。 ああ、終わったら外に出ない限り好きにしてていいぞー」


「わかった! コバ、ウラン、行こうぜ!」


「うん!」


「ええ。 あ、お兄さんたちはどうするの?」


「んー、俺達はちょっと、冒険者同士で話したいことがあってな。 あっちの・・・左側の部屋にいるから、話が終わるまで待っててくれるか?」


「うん、分かったわ」


「よし、いい子だ。 じゃあ、ウランも行ってきな」


「ええ。 また後で」


「ウラン!早く来いよー!」


「いま行くわ!」



奥の部屋へと突撃していくキッズを見送ると今度は待ってくれていたデクスターとミミルに、向き直る。



「すまん、待たせたな」


「いや、全く問題ないさ。 俺もスウィートルームには初めて来たし、退屈もしていない」


「そうね。 私も問題無いわ。 子ども達を見ているのも楽しかったし」


「そう言って貰えると助かる。 じゃあ、俺達はあっちの部屋に行こう」



そう2人を促して、俺はトイレの横の部屋へと3人で入った。

お読みいただいて、ありがとうございました。

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