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魔法使いは帰宅部!まほきた!  作者: おこげっと
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黒橋の心境

今回は少し黒橋寄りに書きましたー。黒橋はこれからどうなってしまうのか見ものですねー(投げやり)

 学校。GWという長期休みがが明け、心を入れ替え勉強・・・といかないのが世の常である。まだまだ遊び足りないといった顔をした者や、逆に遊びすぎて目の下に隈を作っている者もいる。それぞれ休暇中にあった事を大きな声で語る生徒からは、大小問わず気怠い雰囲気が醸し出されている。そんな中、次の授業に向けて予習をする生徒が一人。背は高く体格はがっちりしている。顔は強面で髪型はまさしく坊主であり深みのある深い声を発することから付いた別名は「極道」だった。そんな悪名高い少年に僕は声を掛ける。

「おはよう九道君!休み明けから勉強だなんて真面目だね。」

「おうよ。次のテストは好きな範囲だし、皆気が緩んでるだろうからかなり狙い目だからな。」見た目らしからぬ事を言う九道。

「それもそうか。ところであの変な怪物はどうなったの?」

「ああ、あいつなら俺たちが倒したぞ。ちょっと色々ありすぎてまだ頭の中ごちゃごちゃしてるけど。その件もあって白鳥は休み。御道も今日は来ないんじゃないか?」すっげえ顔色悪かったし、と九道が付け足す。

「あれ?御道君の名前知ってるの?」慌てて聞き返す。

「お前と初めて会った日に御道とも出会ってな。話た限りだと悪い奴じゃなさそうだな。」

「そ・・・そっかじゃあ御道君とはもう友達になってたか。」自分だけの秘密にしようと思い、休み明けに紹介しようと思っていたのに、先を越されていたこと、そして僕だけ仲間外れにされていること、肝心の御道君が今日は休みということを聞かされ僕はとても複雑な気持ちになってしまった。

「おーい黒橋。いつまで突っ立てるんだ?HR始まるぞ?」慌てて周りを確認すると先生がすでに教卓の前に立っており、僕がいつ気が付くかをニヤニヤと見守っていた。僕は一礼してすぐに自分の席に戻った。案の上今日は御道君が来ないまま学校は終わってしまった。


 御道家。額に冷却シートを張った家継がマッサージチェアに座りながらテレビの画面を眺めていた。本来今日は学校が始まる日なのだが高熱が出て学校を休んでいる。高熱だけでなく体の節々は痛み、絶えず頭痛が走り続けている。他の姉妹が心配する中、高次が家継の傍に来た。

「気分はどうだ?随分派手にやったみたいだが。」

「体中が痛い。今までこんなことになったことは無かったけど、魔力切れの影響か?」

「本来は魔法使いは杖を持っていてその杖が魔法の行使を補助し、魔力切れを防ぐような仕組みにはなっているんだが、お前の場合杖を持たない。杖を持たないということは卓越した魔術師の証であり、自身の限界をを把握しているということだが、一歩調整を間違えば自らを危険に晒してしまう。お前はまず杖を持つことから始めた方がいいかもな。」高次の説教をただ聞いていることしかできなかった。普段はふざけた態度を取る父が魔法のことになると真剣になるのが憎らしかった。

「・・・説教しに来ただけか?こっちはただでさえ動けなくてイライラしてんのに。火にを油は注がない方がいいぜ。」反抗期のような口調で言い返す家継。しかし高次はまるで気にしている風もなく。話を続ける。

「お前混合獣と戦ったんだろ?その詳細と今回使った魔法を記入して報告書を提出しなければならない。魂喰らいは危険度が低いから一々提出しなくてもいいが今回のは訳が違う。おまけに進化もしたんだろう?どういう進化の仕方をしたのかとかを教えてくれ。」高次は報告書らしき紙を取り出した。

「相手は混合獣。外見は緑で筋肉が異常なまでに発達していた。刀で切りつけたが表皮が硬く発達していたから外傷を与えられなかった。さらに高度な再生能力を持ち未来視を持っていたことから、3種類の生物が複合し、混合獣になったと思われる。しかし、刺突に弱かったのと視界に入ったものしか未来視が出来ない。硬いのは表皮だけで内部までは硬化していなかった。加えて人間特有の驕りを利用して撃破した。使用した魔法は雷撃(サンダー)2発。父さんから教えてもらった人形操作魔法。あとは大爆発(エクスプロージョン)だ。」説明口調で淡々と話す。

「ほいほい。まあ4発も魔法使えば今のお前じゃ持たんわな。ちなみに人形操作魔法は愚者の舞って名前だ。あとは、俺の物置から魔砲(マジックキャノン)が一本抜かれていたのはお前の仕業か?」

「いいだろ?どうせ使わないんだし。かわいい息子のために使わせてもいいじゃねえか。」

「いや、使うことに関しては問題ないんだが、問題は使用者だ。使ったのはお前じゃないんだろ?」

「・・・学校の友達に貸した。そいつも魔力切れで休んでると思う。」

「お前が魔力切れになっても俺が介抱してやれるが、その友達ってのは一般人じゃないのか?お前は一日で治るかもしれんが普通魔力切れは3日は動けないぞ。」

「悪いことしたかもな・・・。ちゃんとあやまっておかねえと。」

「知識が無い者に魔法具は使わせるな。まあ撃てただけでも普通じゃないってはわかる。」

「家が忍者の家系なんだと。変な奴らだけど面白くていい奴ばかりだ。」

「お前が生涯を孤独のままで過ごすんじゃないかと不安だったが大丈夫そうだな。今日はゆっくりお休み。」高次は立って自室の方へ戻っていった。

「こういう時だけ父親っぽいんだよなー父さん。早く俺も元通りにならないと。」テレビを消して目を閉じた。つい先ほどまで報道されていた事件について考える。殺人事件の類は無かったが行方不明者の安否が確認されていないことや、妖精のような飛行物体が阿原町の様々な場所で見られるようになったことなどが報道されていた。色々な可能性を考えながら一つの疑問が頭に浮かぶ。

今日の夜の仕事って誰がやるんだ?


 阿原中央公園。放課後になり学校から解放された少年少女が有り余ったエネルギーを友人との遊びに費やす様子を僕はベンチに座って眺めていた。今日は九道君が言っていたように、御道君も来なければ麗虎ちゃんも来なかった。鈴女ちゃんは来ていたけど麗虎ちゃんが学校に来てないこともあってほぼ精気が無かった。事情を聞いても「ゴミ道に聞いて」としか言われなかった。何だよゴミ道って・・・。御道君に避けられてる訳では無く、僕の身を案じての判断だということは百も承知だが。除け者にされているこちらの身からすれば今どういう状況なのか位は教えて欲しかった。

「普通って駄目なのかな~。」将来の夢も公務員志望で成績も悪くない。むしろ上位に入るように心がけている。特に目立った特徴もなくそのせいか不良の類に絡まれたことも無い。父は公務員、母は専業主婦、中学生の妹に、3歳児の妹が一人いるだけの一般家庭の鑑みたいなものである。変わったものに憧れるというよりは、何故そんなに変わっているかを問いたい。同じ時間、同じように学校に通っているのに何故自分よりも特徴的なのか答えが知りたい。それでも返ってくる答えは「生まれ育った環境」というもののみ。生まれ育った環境だけで自分の人生は平凡になってしまうのか。健康に生んでくれ、何不自由なく育ててくれた親には感謝しているが、同時に一握りの恨みもあった。そんなことを考えながら辺りを見渡す。楽しそうに走り回る子供を横目に雑木林の方へ入っていくお爺さんと秘書風の女性を見かけた。最初は無視しようとしていたが、如何にも怪しいし、奇妙なものを本能的に避けているのではと勘づき後をつけることにした。奥に入っていくと急に立ち止まり秘書風の女性が懐から黒いビニール袋を取り出す。それをお爺さんに渡すとお爺さんは袋を広げ何かを広い袋に入れていく。何だただのゴミ拾いか・・・。時間もあるし手伝うか。

「あの~ゴミ拾いですか?僕も手伝いますよ!」声を掛けるとすごい勢いで二人が振り向く。お爺さんの手には小さな人形の様な物が手に握られていた。警戒心を解くように笑顔で近づいたつもりだが、逆に警戒させてしまったようだ。仕方ないのでこちらから切り出す。

「不法投棄ですか?最近多くて嫌になりまよね。しかもそんなにかわいい人形の不法投棄だなんて勿体ない。捨てた人の気が知れませんよ。」お爺さんと秘書風の女性がひそひそと話している。

「君、これが見えるのかね?」

「見えるも何も、おじさんはしっかり握っているじゃないですか。」

「そうか。これが見えるのか。実はなあこの辺にいくつか落ちているんじゃが一緒に拾うのを手伝ってくれんかのう?」秘書風の女性が何か言おうとしていたがお爺さんが手で制した。

「わかりました!」暫くして人形の回収を切り上げることにした。空を見るともう日が沈みかけて辺りは夕闇に覆われていた。回収した人形は5つ。どれもかわいらしい女の子の人形で市販の物とは比べ物にならない程巧妙に作られていた。もしかしたら職人さんが作ったものかおしれない。

「いやー少年よ手伝ってくれてありがとう!今日はもう遅いから帰りなさい。保護者も心配していることじゃろうに。」

「そうですね。では僕はこの辺で・・・」家に帰ろと踵を返そうとしたと時にお爺さんに呼び止められる。

「そういえば君の名前を聞いておらんかったな。教えてはくれんか?」

「黒橋護と言います。大きな特徴のないただの高校生ですよ。」先ほどまで考えていた事を思い出し、自分で自分の心にダメージを与えている。

「そうか護君か。君にはお礼をしなければならん。少しこちらに来なさい。」お爺さんが手引きをするので近寄る。

「目を閉じて・・・何も考えなくてよい。いいと言うまで目を開けてはならんぞ。」頭の中に何かが流れ込んでくる。暗闇の中で目の前を浮遊する物体がある。盾。漫画やゲームで見たことがある。あの盾が僕の目の前にある。触れてみると金属的な感触が手に伝わってくる。実際に持ってみると重い。ずっしりとした重み。こんなのを持って数時間も戦うなんて無理だ。けど何かを背負うとはこういうことなのかと想像する。すると今度は盾がバラバラと崩れ落ちた。重荷からは解放されたが今度は手持ち無沙汰になってしまった。どうしよう何かを持つべきなのか。手を振り何かを掴もうとすると、自分が振った手の場所に光の軌跡が残る。面白くなって何度も重ねていると、一枚の壁のようになった。するとお爺さんの「もういいぞ」の声が聞こえた。目を開けると今までとは違う自分になった気がした。

「あの・・・これは?」

「君の人生がもっと充実できるようにとおまじないを掛けたのじゃ。何か守りたいものが出来たらそれが君の人生の転機じゃぞ。」

「ありがとうございます!では、また何処かで会いましょうね。」黒橋は嬉しそうに走り去っていった。

「いいのですか?御道様。一般人に「魔術」を教えるなど。ご自分のご子息にはお教えしていないのにも関わらずに。これでは御道家の秘密が他家に漏れてしまいますが。」表情を変えずに問いかける。

「出過ぎたことを聞くなあ天木君。わしはおまじないを掛けただけじゃし。使うかどうかは本人次第じゃろう。しかも彼は偉大な存在なんじゃぞ?少しくらいカマを掛けて置かんと後々不利益に繋がるというもんじゃ。」

「偉大な存在と仰りましたが、私にはそのような何かを感じませんでした。」

「まあ君にはわからんだろうな。驚異的な才能にも勝るものがこの世にはあるんじゃよ。」

詠斎の瞳にはこれまでに無い程大きな期待が込められていた。

続く。

9話を読んで頂きありがとうございました!次回は少し方向性を変えて・・・というよりはタイトルを回収しなければならいのでは?と思い始めたので、次回はタイトル回収回になると思います。気長にお待ちください!ではまた次回お会いしましょう!

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