帰宅部活動開始!
お待たせしました!温めに温めてきた大きめのフラグ1つ目をやっと回収です!心配しなくてもお話はしばらく続くので安心してください。
6月。GWから早一か月が経ち梅雨の時期がやって来た。紫陽花や百合の花が咲き、雨の日が多い。湿度も高まりジメジメと陰鬱な空気が流れている。そんな中さらに陰鬱とした場所に俺は向かっていた。鍵を回し、扉を開ける。途端に、部屋のかび臭い空気が流れ出てくる。あまり手入れされていないのか、埃が舞いそこら中に積もっていて気が重くなる。ひとまず机と椅子の埃を払う。落ち着いて腰を下ろせる場所を確保しないとやってられない。窓を開け放ち新鮮な空気を取り入れたくても入ってくるのは大量の雨。仮にも学校の備品である蔵書が濡れてしまうと出禁になりかねないのでやめておいた。
「ここを一人で手入れしなきゃならんのか・・・。あいつらに手伝わせるべきかねえ。」ここにはいないあいつらのことを思い浮かべながら、掃除用具入れから箒と塵取りを取り出す。休み時間も大して残っていないのでこのままでは放課後も掃除をしなければならないだろう。休み時間にも掃除をする程潔癖ではないが一日でも早く快適な場所として利用するためにも避けては通れない道であった。そもそも何故こんな場所を借りようと思ったのか。確かにここにある蔵書には面白そうな物も混じっていたというのもあるが、それが真の目的ではない。真の目的は学校であいつらと話をする場を設けることだ。九道と黒橋に関しては同じクラスだから問題は無いが、白鳥姉妹と話をするために一々クラスに行くのも面倒だし、新学期早々色々やらかしたこっちの身からすれば人目に付く場所で話をしたくなかった。この一か月間大きな事件もなく、魂喰らいの退治はできている。しかし、あのGW事件以来4人で魂喰らいを相手にする日が多い。訂正、毎日だ。正直な話俺一人でも勝てる相手に4人もいらない。見つけるまでの時間や退治する時間の短縮にはなっているが当番制にした方が効率的だと思うようになっている。とまあこんなことを思いながら日々過ごしている訳だが、梅雨の時期に入ってから色々と面倒になった。まず火が使えない。雨のせいで火を起こす魔法を使用してもすぐに火が消えてしまうので俺の最も得意としている火の魔法が一切使えくなってしまった。何とかそれらしい攻撃魔法を覚えようと日々魔導書を解読しているが、使えそうなものはほぼない。使えるに区分するのは、周辺の家屋に被害が無く、かつ乱発しても問題が無いものとしている。雷撃は対象が完全にランダムな上に雷を呼ぶための魔力消費が多すぎる。何回か使ったが使用した一帯の家屋がすべて停電してしまった。その中でもビル街に落ちた時の罪悪感は凄まじい。仕事中のおっさんまじですまんかった・・・。いやいや、過去を振り返っても良いことは何もない現状しなければいけないことに集中せねば。顔を上げると目の前には埃が舞っている。うわー・・・前見ても埃の山しか待ってないわ。あれ?今のシャレとして結構うまかったんじゃ・・・。
「うああああああああ!掃除したくねえええええええ!こんなの一人で終わらせられる訳無いだろおおおおお!?」箒を本棚に投げつけると大量の埃と共に数十冊の本が落ちてきた。オイオイオイ自分で仕事増やしてどうすんだよ。ジメジメしているせいか何かイライラするわ。落ちた本を一冊一冊拾って元に戻していると一冊の本に目が留まる。これは伝説の食膳毒美の「食べ歩き」じゃないか!もう100年以上前のグルメ小説といわれている幻の小説が何故ここに?・・・くっ、読みたいすべてを投げ出して本を読みたい。いいやでも今は掃除中だ。物事には優先順位がある。ここを居心地の良い場所にしてから読めばいいんだ。けど、本の虫としての本能が中身を確認する必要があると叫んでいる・・・。俺は決してさぼってない。さぼっているんじゃない。今は休憩時間なんだ。今は本を読んでいい時間なんだ。誰もいない図書室で自分を言い聞かせる俺は傍から見たらとても滑稽だろう。だがもう我慢できない。俺は幻の小説の1ページを開いた。
数日後。梅雨の時期には珍しく晴れた。先日までの淀んだ空気を吹き飛ばさんと日光が降り注いでいる。ほら窓を開ければ心地よい風が・・・。
「いやあ!なんなの!?この風は!湿度高すぎて気持ち悪いわ!」鈴女が急いで図書室の窓を閉める。
「こら、サボってないで掃除しろ。ここにいる以上は快楽なんて無いと思っておけよ。」鈴女の頭を軽くチョップする。
「そりゃこんな埃っぽい部屋に3時間も居たら気が狂いそうになるわよ!せっかくのお天気な日曜日なのに何でこんなよくわかんない所で掃除しなきゃいけないの?」鈴女はイライラ混じりに机を雑巾で拭いている。
「まあまあ、たまにはこうやって皆で掃除もいいんじゃない?5人で集まる機会ってあんまり無かったしさ。」黒橋がはたきで棚の埃を落としている。
「そうえばここ最近誰かしらいないことが多かったような・・・というか5人で集まるのは初めてじゃないか?」九道は箒で床のゴミを掃いているが箒が小さいのか思いのほか苦労している。
「そう言われたらそうですね。まあ大体いないのは九道君か御道君ですけどね。」麗虎は本を整理している。
「これからはここに集まるようになるだろうし、そのために今日掃除してるんだからな。」御道は窓を拭いている。
「でもよくこんな場所確保出来たね。何かあてがあったの?」
「ん?ああ、永田先生に借りた。」
「え?陽太があんたに貸してくれたの?あの貧弱読書虫が・・・一体何言って脅したの?」
「脅してねえよ。まあちょーっと先生が喜ぶことをしただけだ。」
「先生が喜ぶこと・・・ハッ!まさか御道君・・・!?」麗虎が顔を赤くし御道から距離を取る。
「なんか良からぬこと考えてるみたいだけど、やましいことはしていないぞ。つーか、俺で何想像してるんだよ。」
「うう・・・ごめんなさい。永田先生がどうかはわかりませんけど、御道君は違いますよね!」
「そこは先生も否定してやれよ・・・」黒橋と九道は腹を抱えて笑いをこらえていた。
さらに数時間後・・・。以前の図書室の面影は無く、今では清潔感漂う落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
「あ゛あ゛~づがれだ~。」鈴女が溶けたアイスのように机に突っ伏している。
「姉さん、はしたないですよ。殿方の前なんですから謹んでください。」
「いいじゃな~い。私は男に見られても減らないわよ。それともあれかしら。はしたない姉さんを見られてはいけない理由があるのかしら~?」
「別にそういうのは・・・とにかく!起きてください!」麗虎が鈴女を揺り起こしている。
「御道の奴おせーな。どっかで寄り道してんのかね。」九道が古ぼけた壁掛け時計を確認すると時刻はもう3時を指していた。
「もう1時間は立つのにね。3時には帰ってくるって言ってたし華菓子屋はそう遠くないはずだよ。」
「迷ってるって訳じゃ無さそうだしな。にしても熱いな。」6月と言えど夏に向かって気温が上がっているのは確かで、照り付ける日差しはまさしく夏のそれと言っても過言では無かった。無論、本置きとしてしか使われていないこの部屋では、クーラーなどという物はなく扇風機すら無い。九道は下敷きで仰いでいるものの、来る風は全て湿気を含んでおり仰いでいる時の顔はうんざりしていた。
「だから!姉さんのそういうだらしない所が私は嫌なんです!」
「いいじゃない!どこで何してようと私の勝手でしょ!?妹である麗虎ちゃんに止める理由は無いはずよ!」
「いいえ、ありますー!私はだらしなくてはしたない姉さんをサポートするために生まれて来たんですー!」
「そこまで言うならもう姉さんは一緒に寝てあげないもん!だらしなくてはしたない姉さんと一緒に寝たら麗虎ちゃんにも移っちゃうからね!」鈴女はそっぽ向いてしまった。
「いままで一緒に寝てたんかい。」九道の冷静なツッコミ。
「あ・・・あうう・・・そ、それだけは・・・私寂しくて死んじゃう・・・。」麗虎は半泣きでオロオロしている。
「思った以上に効果抜群だね。」黒橋が横やりを入れる。
「じゃあこういう時は何て言うんだっけ?姉さんに言うことあるんじゃなあい?」鈴女の顔が勝ち誇っている。
「ごめんなさい・・・。」麗虎は聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で呟いた。
「何ぃ~?聞こえないわよ~?姉さん声大きいから聞こえないわ!」徐々に性悪なおっさんのように醜悪な顔つきになってきた。
「ごめんなさい!お姉ちゃん!これからも一緒に寝てください!」麗虎は顔が真っ赤になるほど大声で叫ぶ。
「もー!麗虎ちゃん大好き!これからも一緒に寝てあげるね!」鈴女は力いっぱい麗虎を抱き締める。
「どっちがはしたないんだか・・・暑苦しいからここでやんな。」九道が手で追い返す素振りをしている。
「にしても本当に暑いね・・・。早くプールに入りたいよ。」黒橋がプールのある方を見る。
「今年のプール開きは来週だったか。泳ぐのは嫌いじゃ無いが、プール後の授業が如何せん辛くてな・・・。」
「すごくわかるよ・・・。あの授業を寝ずに受けられるなら、それはもう仏だね。」
「む、なら俺はなるべく寝ないようにしなければならんな。仮にも悟りを目指すものとしてストイックに生きなければならんしな。」
「ふーん。プール後ってそんなに大変なの?」
「そりゃもう。って白鳥はプールに入ったことが無いのか?」
「そうよ、家庭の事情でね。私の背中には呪刻印という物が施されていて、それを隠すためにプールや公衆の面前ではあまり人肌を晒してはいけないの!」自信満々に語っているが、今着ているのは夏服である。しかも汗で微妙に透けていて注視すればうっすらと見えなくもない。
「ほーそんな大層な理由があったんだな。白鳥妹にもあるのか?」
「残念ながら私には・・・。家庭の事情ということで私も便乗しているので、私もプールに入ったことはありません。」
「んー。もしかしたらあるけど見えないとかじゃないのか?一回背中見せてくれよ。」
「そういえば私もじっくり見たこと無いわね。麗虎ちゃんいいかしら?」
「姉さんが言うなら・・・見て減るものでは無いですしね。」
「さっきまではしたないだ何だって言い合ってたじゃ無いか・・・」黒橋が愚痴をこぼす。
麗虎が服を捲り上げる。華奢な肉体に綺麗な白めの肌が特徴的な美しい背中だ。所々に汗の水滴が付いており艶めかしく光っている。しかし、いくら探しても呪刻印らしものは見つからない。
「無えな。」「無いわね。」「無いね。」
「あのーそろそろ服を下してもいいですか?さすがに恥ずかしい・・・」すると急にガラッと図書室のドアが開かれた。そこには鈴女たちと同じ制服を着ている少女が立っていた。
「貴様ら・・・!不純性行為で処罰する!」
やべえやべえ、遅くなっちまったよ。アイスにするかケーキにするかで40分も悩むなんて俺らしくもない。早く戻らねえとあいつら何するかわかったもんじゃないしな。急いで校舎の階段を駆け上がる。袋に入ったアイスが溶けないようにするためでもあったが、御道自身も何か嫌な予感を感じていた。それは長らく人と行動しておらず、他人を待たせるという感覚がわかっていことからもだった。
何とか階段を登り切り、息を整える。図書室の中から誰かが話をしている声が聞こえる。もしかしたら俺が帰ってくるのが遅かったから誰かが暴れているのかもしれない。息を呑んでドアを開ける。するとそこには正座をしてうなだれているいつもの4人と、4人に向かって説教をする一人の少女がいた。
「だからぁ!何故日曜日のこのような場所でわざわざ淫らな行為をする必要があったのですか!しかも全員ご丁寧に制服まで着てそういうプレイなんですか!?誰か答えなさい!」
「僕は無実です。」、と黒橋。
「嘘おっしゃい!ここにいる時点で全員共犯です!然るべき処罰を受けてもらいますからね!」
「あの~、ひとまずアイス食いながらでいいから話だけでも聞かせてくれませんか?俺の知る限りだとそういうこと毛頭にない連中なので。」俺は一つのアイスを少女に差し出す。
「わかりました。あなたに免じて話だけでも聞きましょう。」少女は椅子に座ってアイスを食べ始めた。4人は神でも崇めるかのように平伏していた。
「おまえらも早くしないとアイス溶けちまうぞ。」
「話は大体わかりましたが・・・何故あなたたちはここにいるのですか?今日は休みですよ?」
「ここの部屋を片付けてたんだ。ここを活動拠点にするためにな。」
「活動・・・もしかして部活動ですか?私の知る限りではここにいる者で部活動に所属している者はいないはずですが。」
「お前何者だよ・・・もしかして部活動に入っていない奴が部屋を勝手に使うのってまずいのか?」
「まずいも何も、こちらとしては不良の溜まり場として粛清対象です。あなたたちがそうじゃなくても特例を出せばそれに続くものも出てくるでしょう。」
「そうか・・・じゃあこれから部を作るってのはどうだ?部員は5人いるし、部費は出してもらわなくていいからさ。」
「それならいいですが・・・でも何部を作るんですか?読書研究会はもうありますし、文化系が盛んなうちの高校では大小様々ですが、大体の部はありますよ。」
「いいや、まだ作ってない部が1つあるぜ。」
「それは?」少女の目に期待の火が宿る。
「それは・・・帰宅部だ!」俺は机をバンと叩き豪語する。少女の思考が止まる。
「そ、それはつまり・・・帰宅部以外の生徒を家に帰さないと。帰宅部に属す者だけが家に帰れて、属さない生徒は寮に入れということですか?」少女は眼鏡の位置をを直しながら自分なりで精一杯の解釈で答えを返す。
「違う違う。俺が言いたいのは・・・ほら、あれだ。最近何かと物騒だろ?殺人事件やら行方不明だかで。ちゃんと家に帰れていない人が少なからずいる。これはあってはならないことだ。家を出るからには必ず無事で家に帰ってこなきゃいけない。殺人鬼に怯えて安心して夜道を歩けない。そういう人たちを一人でも減らしたい。ちゃんと『行ってきます』を言って家を出た人たちが安心して帰ってきて家族に『ただいま』を言えるようにしたい。そのための手助けを俺たちがやるんだ。」少女は俺の熱弁を真面目に聞いてくれている。自分でも正直何言ってるかわからん。
「ふむ・・・そうですか。そこまで言い切るということは、確信を持てる力があるのですね。それに、この阿原町で起きている殺人事件の被害を減らせるなら・・・一人でも多く人を救うことができるなら、学校のルールで拘束する訳にはいきません。許可しましょう。」少女はうんうんと頷きながら話す。
「いいのか?」
「ですが、幾つか条件を提示します。1つ目、過度に部員を増やしすぎないこと。部員を増やしたいときは私を一度通してください。2つ目、普通の帰宅部と差別化するために帰宅部ではなくもう少し違う名前にしてください。3つ目、部として成立する以上は少しは予算を提示します。その額を見て文句を言わないこと。4つ目、ちゃんとここの部屋の鍵は管理すること。最後に、無茶はしないこと。」
「わかった、必ず守る。」
「では、この紙に部長の名前と部員の名前と部の名前を書いてください。」一枚の用紙を差し出された。
「部長阿は俺で良しと。お前らー、名前は自分で書くか?」4人はまだ正座している。
「ごめん。まだ正座をやめていいと言われてないからここから動けないんだ。皆の分も書いてよ。」
「はいはいっと。これでいいか?」
「どれどれ、部員の数も良し。部の名前は・・・帰宅活動支援部か。いいんじゃない?」
「じゃあこれで部が成立したな。色々世話になると思うがよろしくな!」俺は右手を差し伸べる。
「多賀谷よ。生徒会の文化部長をしているわ。ちなみにあなたたちの一つ上の3年生よ。」多賀谷は俺の右手を握る。
「この際年なんて関係ないだろ?多賀谷さん。」
「それもそうね、じゃあ私は書類を提出したり予算を考えたりしないといけないからこの辺で。じゃあね~。」多賀谷は慌ただしく図書室を後にした。
「一件落着ってところだな。さあ、今日は掃除も終わったし、帰るか。」正座4人衆の方を見るとまだ正座
して俯いている。
「おいおい。もう正座しなくていいんだぜ?それとも正座が好きになっちまったのか?」
「足が・・・痺れて・・・動けないの・・・。」よく見ると全員正座の体制から微動だにしていない。
「御道・・・助けてくれ・・・。」
「御道君・・・取り敢えず横に倒してくれないかな・・・。」
「あの・・・私・・・おトイレに行きたいのですが・・・。」俺ははこの世の悪をすべて凝縮したかのような笑みを浮かべると「じゃあここからは各自解散だな!」と言いそのまま図書室を後にした。出ていく途中に「「「「薄情者ッー!」」」」始まりバリエーション豊かな罵詈雑言を叫ぶ声が聞こえたが俺の心に届くことは無かった。帰宅部が出来た日。この日から第二図書室を集合場所にするようになったが、皆数日間はまともに口を聞いてくれなかった。
10話を読んで頂きありがとうございました!気が付けば小説も二ケタに・・・。週に原稿用紙10枚分のお話を書くと決めて書き始めましたが、もう100枚超えたことになりますね。もっと文章力を鍛えて皆さんに読みやすい小説をお届けせねば・・・。次回はわき道にそれて小話的なものを挟むと思います。またしてもじっくりお待ちください。それでは、また次回お会いしましょう!




