十五話 オーガ狩り
【魔法説明補足】
魔法は才能値によって修められる級が決まっている。
六属性使えるのならば初級まで、五属性使えるなら下級まで、四属性使えるなら中級まで、三属性使えるのならば上級まで、二属性使えるのならば超級まで、一属性しか使えないのなら神話級まで、といった感じである。とはいっても最大値の話なので、たとえ適性が一属性しかないからといって神話級まで上り詰められるわけではない。
ちなみにカナタは超級魔法を一つだけつかえる。
【闇夜招来】だ。
【ジャベリン】などは下級に位置する魔法。
また魔法は一度使うとクールタイムが必要になる。
よっぽど低位な魔法以外は下級であってもそんなにばかすか撃てるものではない。
ということで俺たちは門のところまで来た。
門のそばに立っていた門番は僕たちを一瞥すると
「おう、冒険者か。頑張ってこいよ」
といってあくびをした。この仕事ひまなんだろうなぁ…
そうして俺は初めて街の外に出た。
まぁ森の中で盗賊たちに捕まったんだけどな…
あー…あいつらどうしてるかな…
頼むから一発殴らせてほしいものだ。
「今日は俺的にお前らのお手並みを拝見したいからな。一体で我慢するぜ」
とイヴが言うと街の外に出るなり取り出したバスタードソードをぶんぶんと振り回す。
微妙に子供っぽいというか…危なっかしいところがあるんだよな…
「カナタ、今日は闇魔法も使っていいぞ。まぁでも慣れるために一体は確実に手で殺せよ」
「わかりました。というか何体倒せばいいんですか?」
と俺がきくと
「別に何体でもいいのさ。はぐれを一体やったって、集落丸ごとやったっていい。まぁ殲滅が一番好ましいんだけどな!」
とその質問にはイヴが答えた。
報酬はどうなるのか聞いたら一体の討伐証明部位ごとに三千リラ、あと素材を売った分が収入になるとのこと。クエストボードには一体あたりの金額が示されているので覚えておけと言われた。
といっても強力な魔物ほど単独行動を好むのでハイランカーにはあまり関係のない話のようだ。
*********
そうこうしているうちに東の森とやらに着いた。
時刻はちょうど十時とか、そのぐらいなんだろう。あれ?こっちって時間の概念ってどうなってるんだ?
それを女性陣に聞こうとしたんだが…
ピリピリとした雰囲気に気圧されて聞けなかった。
特にイヴについては明らかに殺気を放っていて近寄るのもはばかられる。
後で聞くとゴブリンとかの雑魚を近づけさせないようにしていたんだとか。Sランカーって便利だな…
「お!こっから結構近くに集落っぽい感じのがあるな。気配がたくさん固まってやがる。ん?なんか妙な気配が混じってるんで気をつけろよ。」
とイヴが報告してくれた。
【オーガ】という魔物は異世界モノのテンプレ通りのやつらしい。
【オーク】【オーガ】【ゴブリン】【トロル】なんてのは森の鼻つまみ者の代表例で、討伐依頼も山のようにくるんだとか。Dランクぐらいまでの冒険者にとってはちょうどいいカモらしい。
だがここで注意しなければならないのは今が《大侵攻》間近ということだ。
魔物は《大侵攻》近くになると数を増やし始め、魔物たちを束ねる王のところへ集結する。
そこで問題になるのが魔物達の上位種の増加である。
本来Eランクであるはずのオーガだが上位種の【ハイオーガ】になるとランクDぐらいの強さになるんだそうだ。さらになんらかのスキルをその魔物が得ていた場合、危険度はCランクにまで跳ね上がる。
また魔物にスキルを与える神は《邪神》と呼ばれており、この世界に住む種族全てにうとまれているらしい。正体不明らしいが。
まぁそのぐらいがアイゼスに教えてもらった魔物関連情報だ。
「まぁいい。上位種なら俺の気も少しは済むかもしれないしな!上等だってんだぜ」
「…なんでもいいが私たちがズブの素人ってことだけは忘れてくれるなよ」
(この人たち大丈夫かな…)
そう思いつつも俺達三人は森の中へはいって行った。
森の中で俺の武器は振えない。なので一応魔法の準備をしていた。
まぁイヴのおかげで道中には全く使わなかったんだが…
そのまま十五分ほど歩くとイヴが
「近い」
といって殺気をひっこめた。
微妙に緊張した空気が俺とアイゼスに流れ始める。
もちろん熟練者のイヴは平然としている。
また十五分ほど歩くと木々の隙間から集落らしきものが見えた。
これがオーガの拠点なのだろう。
イヴも集落をその目で認めると、くいくいと指を動かし、こっちだ、と言った。
どうやら策敵をするらしい。
そのまま集落の周りをぐるりと回ると、俺らは顔を寄せ合った。
「中には大体十一体のオーガだ。そのうちの一体はやっぱり上位種みてーだな。これは俺が対処するぜ。あとはお前らが五体ずつだ。まぁ俺も片付いたら加勢するんで頑張って戦えよ。質問は?」
「ない」
「ないですけど…」
「それじゃあ戦闘開始だ」
とイヴが言うと先陣をきって集落に突っ込んでいった。
アイゼスも颯爽とそれに続く。俺も慌てて中に突っ込んでいった…
********
「【ジャベリン】!」
と、習いたての魔法を集落内で突っ立っていた2mほどのの人型に向かって詠唱する。
そのままそいつは串刺しになったが…
「がああああ!」
といいつつ棍棒を振りまわしながら串刺しになった奴の背後に潜んでいたやつが躍り出てきた。
まぁ相手の攻撃範囲に入るまでもなく…
「【ホーミング】」
と、握りこぶしぐらいの大きさの球を出現させ、相手の頭部に飛ばす。
そしてそのまま相手の頭を吹き飛ばすと消滅した。
この【ホーミング】は自分が狙った場所に黒い玉を飛ばし、その球を爆発させるというものである。
これも習いたての魔法だが、正直【ジャベリン】の方が使い勝手がいいと思う。
タイムラグがどうしても出来てしまうしな…
とアモン先生への感想(宿題にされてた)を考えつつ、ブラッドウィスパーを取り出した。そして眼帯もアイテムボックス内にしまう。
そこでちょうど家?というか縦長住居?的なものの陰から新たに一体のオーガが現れた。
今までのやつらと違うのは
「ずいぶんいい武器持ってるなぁおい…」
そう。クレイモアとでもいうのだろうか。
そのオーガの手には大剣が握られていた。
まぁちょうどいいと思い、まず踏み込む。別に初撃でも倒せたが、それでは味気ないだろう。
「ぐあああああ!」
と耳触りな声をあげつつ剣を振ってきた相手に対し、冷静に大剣を鎌の背で受け止める。
そのまま剣を押し返すと
「ふっ!」
と素早く相手を薙いだ。
と同時に間合いを取る。
オーガの醜い顔には激しい疑問のようなものが浮かんでいたが…
不意に上半身だけが地面に倒れ伏した。
続いて下半身も前のめりに倒れる。
鮮やかな切断面は一転赤い噴水となり、地面に吸いこまれていった。
普通の人ならば卒倒しそうな光景だが、【サイコパス】がある俺にとってはモノ以外の何物でもない。
「…眼帯外さなくてよかったな」
と呟きつつデスサイズをアイテムボックスにしまった。
「あとの二匹は魔法で始末するかな…」
と言いながら集落の中心部へ足を進めた…
*********
アイゼス・シーリアは真っ先に集落の奥へ向かった。
さっさと五匹を片づけて、奴隷の戦いぶりを見たいものだが…
ちなみに集落の中心であろう焚火後ではイヴと鎧を着込んだ上位種が早速切り結んでいた。
まぁイヴの顔から察するに明らかに遊んでいたようが…
と、早速一体を見つける。
走る勢いを緩めず、通り抜けざまに一閃。
そのオーガは手に持っていた棍棒を振るまでもなく、喉から血を噴き出しながら倒れた。
アイゼスはその様子を一瞥すると、出てきたもう三匹に視線を向けた。
うっとうしいので…
「【闇の炎よ。焼け、焼け、焼きつくせ。後に残るはお前と同じ色の炭のみ。ダークファイア】」
と呪文を詠唱する。
するとオーガ達の足元から黒い炎が出現する。
「があああああああ!」
と断末魔の声を上げると、それは人型の炭になった。
この魔法は再度使用できるまでに時間がかかるという欠点があるが、出し惜しみする必要もないだろう。
その断末魔を聞きつけ、二体のオーガが出てきた。しかし…
「【ジャべリン】」
という声が聞こえると同時に…
「がっ!?」
とオーガ達が串刺しになった。オーガ達を葬った三本の漆黒の槍は…
「さすがに反則じゃあないだろうか…」
そう、カナタのもので間違いない。
実戦で使うところは初めて見たがとても簡単な魔法とは思えない。
なによりこれを連続で使えるというのだから、さぞかし便利なことだろう。
なんて思っていると、後ろからオーガの気配がした。
と同時にカナタも姿を見せる。
鎧は汚れていないようだが、一体も仕留めていないことはないだろう。
予備の剣もあるしここは…
と思い持っていた剣を振り向きざまに投擲した。
剣はモノの見事にオーガの眉間につきささり、そのままオーガは倒れた。
********
中心部ではイヴがなにやら一線を画すようなオーガと戦っていたが、あまりにも楽しそうだったため放置してさらに奥へと進んだ。
まぁそれほど大きい集落でもないのだが…
すると二体のオーガがいたので、処理。
そのまま家の物陰を抜けるとアイゼスがいたので声をかけようとしたのだが…
いきなり身を翻し、剣を投擲したので少しびっくりしてしまって声が出なかった。
しかもしっかり眉間に命中とは…
(俺も大概だがご主人様もだいぶチートだろ…)
なんて思う俺だった。
そのままアイゼスと合流し、それぞれの成果を伝えあう。
どうやら残りはイヴが戦っている上位種だけらしい。
ということで中心部へ向かってみると…
「【雷撃属性付加】!!」
と、イヴがツメに入ったところのようだった。
イヴが呪文を唱えると、青白い電撃がイヴのバスタードソードへとからみつく。
「終わりだクソ野郎!」
とイヴがバスタードソードを振りおろす!
するとドゴォっ!とでもいうようなすごい音がして、上位種は雷に包まれた。
あまりの眩しさに目を覆う。
目を開けた時にいたのは不敵に笑っているイヴと鎧を来た炭だけだった。
かくして俺たちの初クエストは終わりを迎えたのである。
うち四体は証明部位の角以外全て炭になったとだけ言っておく…
ようやくクエストです。
ここまで長かった…
たくさんのお気にいり、評価ありがとうございます!




