表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/61

蠢くクソ雑な策謀

「衛尉殿に伺いますが収監された連中との面会した者はありましたか。貴方の前で名を上げるのは心苦しいのですが荀爽を筆頭とした裏切者供です。遷都の最中ともなれば救おうとした者は居ませんでしか」


 盧繁は百巻が集う朝議の場で問うた。大きな騒めきが起きて衛尉の張温へ衆目の視線が注がれる。皇帝の目線さえ受けて不動のまま。


「ああ、居たとも」


 悠々と答え盧繁もまた当然の事に様に。


「羅列して頂けますか」

「何故かな?」

「また裏切者が出たのです。証拠も有りますが情報は多い方が良い。また疑わしき者の潔白を調べる為に協力者か如何かを調べねばならないですから」

「ああ。成る程それは大事だな。分かった。用意させておこう。因みに誰だね」


 思わず盧繁の顔が決壊した。


「オメーだコノッ! ボケェッッッ!! 宮中に入り込んで空惚けやがってこのタコ!!!」


 盧繁の怒号に合わせて虎賁や羽林が出てきて皇帝の周りを囲み出入り口を塞ぐ。更に数人のボロ雑巾もかくやというべき人間が何人か引き摺られてきた。王允を釣ろうと泳がしては居たが皇帝に直談判とか対応せざる負えないじゃん。


「な?! 何故バレた!!」

「いやめちゃくちゃバレるわ!! 逆に何を吃驚してんのオマエ?!! 何で白昼堂々と不法侵入かましてんだアホォ!!!」


 何せ張温は白昼堂々と皇帝の前に現れたのである。当然だが許可とか確認とか一切無しでだ。そして人払いをさせて皇帝に董卓誅殺を申し出た。

 盧繁が呼ばれて向かった時には既に堂々と帰っていた後だったが劉協も完全に「何アレ?」って感じで混乱していた程である。


「バカな!! 陛下には御理解頂けたはず!! まさか盧繁、君も陛下を誑かす奸臣か!!」

「いや騎都尉が陛下の居所に不法侵入する奴を許せる訳ねぇだろ!!! と言うか陛下も何か急に侵入してきて相国誅殺とか言われて意味わかんねぇって言ってたわ!!!」

「な……」


 盧繁は凡そ察した。たぶん張温は嵌められたか切り捨てられたんだろうと。でなければアホすぎる。

 盧繁の印象としては張温は臆病な所があると聞くが基本的に勇ましさを大事にする爺さんで策略家の類とは思えない。おそらくは王允が董卓と盧植が居ない現状で動ける程度を探ったのだと確信しつつも証拠までは見つけられない歯痒さを覚えた。

 張温は荀爽と縁がある。また張温と王允は会談をしていた。それで王允を殺せる訳がないのだ。


 盧繁はカンニングして答えだけ知っている訳で途中式も無く評価は貰えない。それと同じで犯人が分かっていても証拠が無ければ難癖でしか無いのだ。面倒くさいからボコボコにして締め上げたいのが本音である。


 盧繁が面倒になってきたあたりで張温は立ち上がり。


「盧繁。考え直せ。……ハァ。

 董卓に恩徳は無いのだ。英雄は天下への忠を示さねばならん。でなければ奸雄となる。

 君は未だ若い。今ならば未だやり直せるぞ。父君の名を汚すな」

「賊に内応して勝手に陛下の居室に入り込んだ人にンな事言われても……」

「……」

「いやその辺の常識はあるんかい。ハイもう連れてって」


 盧繁の言葉に二人の虎賁兵がガッと左右の肩を掴み上げ引き摺っていった。


「相国殿の帰還を待つか……」


 盧繁は溜息を一つ上座へ振り返り跪いて。


「陛下。彼の所業は言語道断の礼儀知らずですがキナ臭い物を感じます。鼠の出所を探るべく相国の帰還を待つべきかと。また私の騎都尉の任を解く罰を願います」

「盧繁、朕は前者に於いては納得出来る。だが後者に於いては承服しかねる物だ。だが罰が無くては示しがつかないのも事実。騎都尉から羽林とし我が身を守れ」

「陛下の慈悲に万感の感謝を。陛下、万歳、万歳、万々歳」


 劉協も盧繁も鼠取りが不可能になったと内心で溜息を漏らした。事実この後は特に何も起こらず董卓達が帰還し張温の処刑が執行される事となる。


 〓董卓〓


「あ“ー疲れた。だが長安は涼州に近い分、気分が良いぜ」


 部下達の褒美も出せたし後は先生に任せとけば十分だしな。


「主様」


 あ? なんだ侍女か。あと五年もありゃあとんでもねぇ美人になるだろうな。


「どうした。あー、侍女の。名前なんだっけ」

「皆には貂蝉と。任施、字を次非と申します」


 若ぇ割に確りした娘っ子だな。


「そうか、ああ。たしか貂蝉冠を被ってる侍従の任昴とこの。養女にすんのも頷ける。で、なんかあったか」

「はい。越騎校尉の伍徳瑜様が面会を求めて居られると」

「今かよ。まぁ丁度良い。通せ。あと案内した後は酒を」

「承りました」


 礼一つ取っても完璧だなあの娘っ子。


 お、来たか。


「おう伍孚。何用だ。まぁコッチも色々と聞きたい事があるんで丁度良い」


 おお、こっちも丁度良いな。


「酒でも飲みながら話そうや」


 娘っ子の持って来た鼎に酒を汲んで差し出してやれば伍孚の奴は頭下げってから受け取り一礼して飲み干す。


「ハッハ!! 良い飲みっぷりじゃあねぇか。どれ」


 良い酒だ。


「相国様、忙しい中お邪魔してしまった様で誠に申し訳ございません。しかし、この騒ぎは一体……?」

「ああ、気にしてくれるな。ちょっと大事な客が来るんだ。その準備がな」

「成る程。では改めて。此度の要件は私の進退に御座います」

「ああ、成る程な」


 越騎校尉は宮中宿直の宿衛だしなぁ。今回の事で気に病んでんのか。まぁそれも仕方ねぇわな。

 あ、伍孚のヤツめ逃げる様に酒を飲み干しやがって。随分と思う所があるな。ありゃあ。


「お察しの通り私は官を辞そうと考えております」

「まぁ今回の事はアレだ。やった奴がやった奴だぜ。仕方がねぇよ」

「しかし陛下の御身を思えばあってはならぬ事で御座います。未だ冠も着けぬ北中郎将が責任を取られたと言うのに」


 ああ、そりゃあ……。全く間抜けな廷臣供に爪の垢を煎じて。……いや、そのまま飲ませてぇよ。


「分かった。伍孚、いや徳瑜殿。だが気持ちの整理がついたらまた働いてくれや」

「感謝致す。お忙しそうだ。失礼致す」

「外まで見送るぜ」

「忝い」


 ああ……? 今。


「ハァ……」

「どうなされた?」

「いやぁ……勿体ねぇと思ってな」


 全く勿体ねぇったらねぇ。


「御見送り感謝いたします相国」

「ああ、気にすんな」


 隠し場所は袖の中か。まぁ頭下げてんなら下から突き上げるしかねぇわな。もっと隠す努力をしやがれ間抜けが。


「よっ、と」

「な?!! ゴヴッ……!!」


 何だ。こんな爺の拳一発で倒れるたぁな。まぁ何発か入れとくか。


「ガフ……ッ!! グ、ゴア“?! アギッ!」


 おーおー衛兵の仕事が早ぇ早ぇ。だが。


「相国様!! 御無事ですか!!」

「おう。傷一つありゃしねぇ。ちょっと周り警戒して待ってな」

「は、はは!!」


 ま、腕はヘシ折っておかなきゃな。


「よっと」

「ギアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

「一応、もう一本もだな」

「ガアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

「ピーピー喚くなよ。暗殺なんざしやがった奴がよ」


 うるせぇったらねぇよ。ったく。


「謀反するつもりかテメェ」

「ハァ……ッ!! グ、お前は私の君主では御座いません。また私はお前の家臣では無いのです! いったい何処に謀反が存在すると言うのですか!

 お前が国家を混乱させ主君を簒奪した罪悪は絶大。今こそ私が死ぬ時です!!! 故に奸賊を誅殺しに来て差し上げた!!!

 お前を市場で車裂きにして天下に謝罪出来なかったのが残念です!!!!!」


 俺ァ朝廷にって意味で言ったんだが、何だコイツは。いや皮肉りてぇのは分かるが。


「あんな美味い酒をこんなバカに飲ませちまうたぁ全く……」

「養父上……これは一体」


 あ? 呂布か。


「ただの使い捨ての暗殺だ。それより準備は出来たのか」

「ええ。これより洛陽へ向かいます」

「そうか。気を付けていけ。ああ、お前らの物資に酒を入れといてやる。一人一杯は呑めるだろ」

「感謝いたします。しかし、何故?」

「母上が白ちゃんと婿殿に会いてぇとな。軽く酒宴をするから分けてやる」

「なるほど……兵も喜びます。では、失礼を」

「おう……おん?」

「……? 如何なされた」

「いや、アレ。後ろ」

「ん? ……ああ」


 一騎が走ってくる。数名の男を簀巻きにして引き摺りながら。砂塵がすげぇ。


「董殿!! 御無事ですか!!」

「おう子昌殿。どうしたよ」

「董殿の屋敷周辺に武装した兵が居ると民が教えてくれまして。向かったところ三十人ばかり……」

「えぇ……」

「全員ブン殴って突き刺さってないのだけ持って来ました。他に潜んでる奴がいたら釣れるかと思って」

「え、えぇ……」


 突き刺さるって何。そんでそんな人間を芋引っこ抜くみてぇに……。いや尾を結ばれた魚か?


 ま、まぁ良いか。


「ご苦労さん。さて御仲間を吐いてもらうか」


 宴は延期だなぁ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ