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この有様で日常回

 年が明け故軫と呂布は孫堅に敗北した。それも都尉葉雄を討ち取られる形でだ。百官の前で董卓は露骨に溜息を漏らして。


「面倒くせぇ……。洛陽はくれてやれ。気にくわねぇが予定通りだ」


 董卓が言った。誰もが口を開けない。別に開ける者もいたがそう言った手合は反対する理由がなかった。


「孫堅は今、何処に居やがる」


 董卓の目が呂布を射抜いた。


「お前に聞いてんだよ呂布」

「大谷、に御座います……義父上」


 呂布は咄嗟に身を逸らした。文官どころか武官にも何が起きたか分からない者がいる。しかし広間にはビィィィと弦の切れた様なのを大きくした様な音が響く。


 首筋から薄く血を流す呂布が即座に跪いて首を垂れる。皇帝と弘農王の視界には広間の壁に突き刺さった手戟が見えていた。董卓が呂布の首を掠るように投擲した物が深く突き刺さっているのが。


「今回は其れで許してやる。何せ大事な養子だからな。だがもし次ふざけた真似をすりゃあ」


 董卓はそこで口を閉じジッと呂布を見る。呂布の顔にツゥと一筋の汗。まだ寒さも残るというのにだ。


「申し訳ございません養父上」

「ああ、良い子だ。悪い事をしたら謝る。大事なこった」


 評定が静まるが何ら気にせずに老将がたちあがった。


「ちとエエかのう相国」

「おう如何した朱将軍」

「儂ぁ孫堅のヤツと黄巾の乱を共に戦った。じゃけぇ儂に止めさせてくれんか。河南の民に示しが付かん」

「ああ、良いがアンタ俺の下で働けるか」


 朱儁が少し驚いた顔をする。


「大都護にしてた胡軫は高々足を引っ張られたくらいでやられるタマじゃあねぇ。コイツは認めたヤツ以外にゃ矢鱈と傲岸だが戦の腕は相応以上だ。そうなると孫堅はやるヤツで今回の負け戦は俺が出る必要があらぁ」


 朱儁が獣の様に。いや、南方の猛虎をも喰らう饕餮の様に笑う。美食を前にした様にだ。


「ハッハ!! 気に入ったぞ相国。エエのう。エエ勢じゃわ。儂を好きに使うてみせい」

「こき使うが死ぬなよジジイ」


 盧繁がコキコキと首を鳴らし大きく息を吐いて立ち上がる。なんか反りの合わない二人が窮地に手を組むとかいう光景にテンション上がったから。あと普通に万が一に備えて潤滑油になれる様に。


「董殿、朱将軍。なら俺も行かせていただきますよ。撤退戦に騎馬の機動力は必要でしょう」

「ダメ」

「え?」

「そんな意外そうな顔してもダメだぞ子昌殿」


 董卓はそう言うと掌をある方向へ向ける。その先には盧植がいた。完全に「オマエ何やってんの?」的な顔の。


「だからダメ」

「……あい」


 〓盧繁〓


「て訳で陛下、俺が護衛します」

「それは心強い」

「奥方は妻達が相手するんで」


 いやー陛下の馬車デケェな。ほんで馬車の数が多い。月驥も驚いてるわ。


「そう言えば盧繁に聞きたいのだが白波軍の指揮は良いのか?」

「ええ。その辺は全然何とかなってます。でも命令とは言え良かったんですかね? 虎賁や羽林が賊を抑えるのに数が少ないからって俺の私兵が護衛なんて」

「まぁこればかりは仕方ない。それくらいの分別はある。それに盧繁の私兵ならば乱暴はしないだろう?」

「その辺は徹底してますが品性が、ね」

「まぁ二、三人殴って止めたから、うん」

「……ホントすいません」


 遷都の為に長安まで続く皇帝を守るための行列だってのに比喩とは言え晃来晃去(ブーラブラ)じゃねぇよあの馬鹿供。


「全く戦じゃ役に立つんですが全体的に見ると品性は匈奴の方が幾分かマシですよ」

「……えぇ」

「大賢殿とかは寧ろ頼れるくらいでは有るんですがね。大半は半ば賊として生きるしか無かった連中なもんで。それも五年十年と続けば仕方ないとこもあります」

「盧繁は盧繁で成熟しすぎではないか?」

「よく言われます。そりゃ幽州なんて飢えか賊か寒さで死ぬんで達観もしますよ。まぁ割と直ぐに蘆江に連れてかれましたけど」

「北の果てから南の果てだな。

 丁度良い。良ければ色々教えてくれないか? 

 私は洛陽から出た事がない」

「良いですよ。幽州の白銀の大地、揚州の深緑の大地。それぞれの大地で身を隠し人を食らおうと狙う狼と虎。そして時に敵として、時に隣人としてある異民族。割と話せる事は多いと思います」

「おお!」


 それから色々と話して長安についた。そう言う土地なもんで当たりめーだけど洛陽より何処か無骨な都だ。取り敢えず嫁さんを屋敷に連れてった兵士の住む場所なんかを確認しねーと。

 兵士の家と馬小屋。異民族は基本は外なんで明日で良い。て訳で。


「さて頌姫殿、参宿殿、文姫殿。屋敷は大丈夫でしたか」


 聞けば三人は不満はない様で文姫殿は微笑みながら首を振り、参宿殿は「大きかったです」と笑う。


「従兄弟叔父上達も問題無いと」

「懿達さんと仁達さんが言うなら安心だ」


 太傅様の子供だけあって目が肥えてるしな。


 ……さて。


「で、玲姫殿は?」


 三人が額を抑えたり苦笑いを浮かべたり安堵したり。うん、まぁ何となく分かった。


「玲姫殿は子昌様がここまで送ってくださった時に自室から出てきておりません。たぶん私達になさって下さった様に手を取られたのでしょう?」

「ええ、はい。その通りです頌姫殿。移動が長かったのでお疲れかと……」

「矢張り。玲姫殿の侍女達が桶を運んでいましたので。その……」


 また鼻血か。これ夫婦なれる? 無理じゃない? 


 政治的なアレだと頌姫殿はともかく参宿殿は侍女含めてやましい事がないって董殿に対する味方の証明だ。文姫殿は父上の朝廷内の董殿派の文官閥形の結束に必要。

 だけど玲姫殿は十中八九が侍女を使った内偵なんだよな。二、三人逆に張ってるが本人に悪意がない分アレだわ。

 それに失血死するよりは普通に関われる相手と結婚した方が良くね? 今なら婚約だし。


「子昌殿……」

「如何しました文姫殿」

「たぶん婚約の解消を申し出ると玲姫殿は自害しますよ」

「え、えぇ……?」


 ……うん。自分で言うのもアレだけど。否定できねぇな。てか文姫殿なんで考えてる事わかったん?


「じゃあ御三人共に苦労をかけますが色々お願いします」


 呂家の監視って意味でも距離を測るって意味でも三人に頼むしかねぇ。董殿も居ないし俺は陛下の警護をしなきゃいけねぇからなぁ。


 ……待って、何で冠も被ってねぇのに家にいる時間の方がすくねんだよ俺。てか考えてみたら婚約であって結婚してねぇんだけど!!

 そもそも何で何処もかしこも俺の屋敷に娘さん送ってんだ……。いや分かるけど何、一旦家に帰してから花車に乗ってくんのコレ。


 まぁどころじゃねぇか。今はアホが泳ぐかどうか確認してるところだし父上も董殿も敢えて陛下から離れてる。宮廷に行かなきゃな。


「陛下の元へ行かねばなりませんので」


 さて、誰か尻尾を出すかね。

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