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盧植のおそらくは居ただろう子供に転生?した系三国志の話  作者: 凡凡帆凡
三国志のここら辺ってギチギチ過ぎるでしょ編
21/44

御薬の時間

「おう周瑜、陛下が死んだってよ」

「あぁ喪に服さなきゃねぇ」

「そうだな。まぁ臣下は喪に服すどころか蹇碩を牢にブチ込んだけどな。驃騎将軍も捕まったらしいぜ?」

「うわぁ。盧繁、それ本当?」

「ああ、ほんとほんと。本気で逃げる準備しとけよ。もう荒れるの確定だから」

「だろうね。董氏と何氏の戦いが終わったけど次は宦官だろうから」

「ったく田んぼでも耕せよ何奴も此奴も」


 優美と勇美が語っていた。洛陽の女人という女人が満足気な吐息……。時折すげぇ鼻息荒いの居るけど。を漏らしていた。


 だが話す内容は随分と悲観的で寒々しい。


「あ、そうだ周瑜。前言ってた欠損してる部分さ。アレ家にあったから写本しといたぜ。ホレこいつ」

「お! ありがと。悪いね」

「いやお互い様だろ。孫子兵法とかソッチのが地元だし。ありゃ良いわ」

「孫子兵法が好きだなぁ」

「アレが一番応用が効くしな。あ、ソレ今読んでおいてくれよ。写間違えがあると面倒だ」

「……そうだね。うん」


 周瑜は竹簡を広げて見る。スーと右から左へ美しい瞳が流れた。そして直ぐに閉じる。


「流石は盧先生の子だ。字ぃ綺麗」

「だろ?」


 戯けて言う十五の少年と青年の狭間にある二人は情報の共有を其々の父親から任されていた。

 盧家は袁家に請われ中央に入り周家も同じく袁家によって中央入りした先輩でもあったのだ。盧植は袁隗と周栄は袁安と縁があって、周栄は周瑜の高祖父で、袁安は袁隗の曽祖父である。要は袁家の門生故吏という形で家同士の繋がりがあったのだ。

 その上で元より盧繁と周瑜が同年で気が合っている仲だという前提があり、盧植の知恵や見識および想定を頼りたい袁隗としては極めて都合が良かったのである。


「じゃあ周瑜。ちっと体動かすから付き合え。最近文書ばっか見てて頭いかれそうだ」

「良いね。一回くらいは一本取りたいし。文書を見飽きたのはコッチもだ」

「ダルぃよなぁ」

「うんダルぃ」


 まぁそれを理解して重要な事だとは分かっていても面倒クセー事は面倒クセー事だった。これは良い意味で使うが若者の青臭く瑞々しい心持ちとしてはコソコソと謀略を練るのは何か微妙である。約一名ちょっと頭を使うのを放棄してるだけのも居るが体を動かさないとやっていられない。


「行くぞ周瑜!!」


 ズンと踏み込む成長痛で寝れない時もある盧繁の足。それは踏み込み一つで地を蜘蛛の巣状に砕いて見せた。周瑜は笑い気の棒を放り捨てて言う。


「降参!!!」


 とてもとても懸命だった。一人スッ転んでる奴が居るがボケたのは転んでる奴だ。地砕く踏み込みの一撃など普通に死ぬ。


「何でだよ!!?」

「何でじゃ無いわ!!!」


 そらこーなる。


 〓蹇碩〓


 喧しい者なだな。全く。まぁ此奴は珍しく声が低いから幾分マシだが。


「蹇碩、蹇碩、蹇碩!! やってくれたな貴様ァッ!! だが!! お前は!! 負けたのだ!!」

「そう喚かなくてモ聞こえるワよオバカさん」


 おーおー良く浮かぶ青筋よ。髭の無い顔に浮かべば何とも我らが無くした股の物の様では無いか。まぁ私の物は此処まで貧相では無かったが。


「……人の話を遮るな蹇碩。己の立場を理解しているのか? ん?」

「宿木が頼る大樹を己で切り倒したのヨ? それともそんな事も分からナい?」

「ハッ!! 馬鹿は何方だ。我が子に何太后の妹を嫁がせた。時勢という物が分からんか」


 外戚の戦力を恐れるのは分かるが熟く老いたな張譲。董子高が戦力を得た事で陛下を殺すとは耄碌にも程がある。

 昔の此奴ならば何氏と董氏で争わせるくらいは出来たろうに。何より太后の妹を得た程度で何進の戦力を得た事にはならんぞ。


「それで如何にかなると思ってるノね」

「如何とでもなろう。外戚と言う立場に権力は増し戦力も得た。事実、私を裏切った董重の命さえ意のままよ」


 此奴は自分が如何思われているかも如何思われるかも分かっておらんな。挙句の果ては董子高様さえ手に掛けるなど正気ではない。それこそ外戚として最も協力してきた相手だろうに。何進に集中しすぎた軍権を私と董子高で分割する気だと説明した筈だがな。


「……いや、まさかアナタ嫉妬しタの?」

「………………」

「ウッソだろ貴様」


 正気か?! いや陛下や外戚の好意は我ら宦官にとり死活問題だが。まさか董子高様が驃騎将軍になる事を後押しした私に恩を感じた事が発端とは!!


「えぇ……」

「何だ貴様ァその顔は」


 何を怪訝な顔を。何進にとり程の良い贄となった自覚も無いか。死んで喜ばれる者など不満を逸らすに都合が良すぎるだろうに。まさか曹季興様の真似もままならんとは。落魄れ切ったな張譲。


「張譲、権力の座に居座り過ぎたワね。来年か早ければ今年中にお前は死ぬことになるワよアナタ」

「ッハ!! お前は今死ぬがな」

「そうネ……フン!!!!!」


 何と脆い鎖か。


「は?」


 此奴は……。俗物とはいえ朝廷の魑魅魍魎と海千山千を越えた男だったのだがな。


「これは毒だな」


 縊り殺されると思ったが私の処理をこうも急ぐなら矢張り張譲の命脈は尽きたな。


「陛下!! 申し開きも御座いません!!忠を尽くせぬ此の愚かな蹇碩を許されるな!!」


 不味いな……。鴆毒は無味無臭と聞いたが調合を間違えたか?


「グ……」


 口が、喉が、吐きそう、だ。から、だが。ああ、陛下。御守り出来ずもうシワ——。

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