武闘会 騎士の部 一回戦 その一
メインイベント。
武闘会、騎士の部。
まずは出場者紹介。
ルー(吸血鬼)
ティア(天使族)
グランマリア(天使族)
クーデル(天使族)
コローネ(天使族)
リア(ハイエルフ)
アン(鬼人族)
ダガ(リザードマン)
ブルガ(悪魔族)
スティファノ(悪魔族)
ウノ(インフェルノウルフ)
マクラ(ザブトンの子)
ジュネア(ラミア)
スーネア(ラミア)
舞台の上に勢ぞろいする。
ジュネアとスーネアは、南のダンジョンの主と戦士長。
クロとザブトンの子供たちに連れられ、この村に来た者たちだ。
あの時居たもう一人は留守番らしい。
騎士の部は、トーナメント方式。
相手を戦闘不能にする、もしくはギブアップ宣言をさせれば勝利だ。
これまでのハチマキルールやリングアウトが無くなり、かなりガチな戦いになる。
舞台外に出たらアウトのルールが無くなったのは、飛べる選手が有利過ぎるからだ。
逆に、舞台から遠くに行き過ぎると、審判の判断で勝敗が告げられる。
武器は自由、ダメージを軽減する処理は行われない。
参加者は寸止め、手加減ができると判断された結果だ。
俺は反対したが、武器に細工する方が逆に危ないからと説得された。
そうなのだろうか?
一試合は最大十分。
十分で決着が付かない時は、俺の判定で勝敗を決める手はずとなっている。
出番が無いことを祈りたい。
そして、できれば参加者に怪我がないことを祈る。
審判はラスティからハクレンに戻った。
司会進行は、引き続きフラウ。
舞台の上で勢ぞろいした参加者は、クジを引いてトーナメントの開始場所を決める。
十四名なので、二人が不戦勝となる。
さあ、どうなるか。
01 スティファノ(悪魔族)
02 ティア(天使族)
03 グランマリア(天使族)
04 ルー(吸血鬼)
05 アン(鬼人族)
06 ジュネア(ラミア)
07 クーデル(天使族)
08 リア(ハイエルフ)
09 ブルガ(悪魔族)
10 スーネア(ラミア)
11 ウノ(インフェルノウルフ)
12 ダガ(リザードマン)
13 マクラ(ザブトンの子)
14 コローネ(天使族)
01のスティファノと14のコローネの二人は不戦勝。
さて、騎士の部、第一試合はティアとグランマリアの対決。
いきなりの天使族対決。
グランマリアがかなり絶望な顔をしているが、頑張ってもらおう。
瞬殺だった。
ティアがグランマリアを圧倒して終わった。
第二試合はルーとアンの戦い。
アンはこの村に来る前は、ルーとフローラを主としてメイドをしていたので、色々と複雑だろう。
やり難いかな?
「千載一遇のチャンスですね」
聞かなかったことにしよう。
試合は泥試合という名が相応しい戦いだった。
アンが超近接戦を求め、ルーがそこから逃れようとする戦い。
互いに無手なので、鈍い打撃音が舞台の上に響くが、双方共に倒れない。
ダメージ的にはアンの方がキツそうだが……
「もう少し、部屋の片付けをしてくださいっ!」
アンの反撃は衰えない。
「使ったら、元の場所にっ!」
……
色々と溜めているのかもしれない。
少し優しくしよう。
そして、自分の生活を見つめ直そう。
うん、それが良い。
試合は時間一杯使われ、最後は判定に。
と思ったら、時間一杯とハクレンが止めたタイミングで、アンがダウンして気絶したのでルーの勝利となった。
「ルールーシー。
ちょっと来なさい。
君の生活に関して、お話をしようじゃないか」
勝者のルーは、始祖さんと少し長いお話をすることになった。
頑張れ。
第三試合は、ラミアのジュネアとクーデル。
飛べるクーデルが有利だろうか?
個人的にはクーデルを応援したいが……どうなるかな?
試合開始直後、予想通りにクーデルは上空に。
ラミアであるジュネアは受身になるしかないと思っていたら、なんと長い尻尾をバネのようにして垂直ジャンプ!
ラミアが飛んでくることを予想していなかったクーデルには奇襲になり、巻きつかれてしまう。
そしてそのまま落下。
勝負が決まったかと思ったが、クーデルも負けていない。
ジュネアの巻きつき攻撃を腕力で解き、そのまま尻尾を持っての振り回し。
パワーキャラっぽい戦い方で、少しビビる。
試合はその後、ジュネアが反撃を行ったがクーデルは受け切り、クーデルの勝利となった。
身内贔屓かもしれないが、良かった。
第四試合。
リアと悪魔族のブルガの戦い。
リアは迷わずに騎士の部に出たが……自信があるのだろうか?
考えてみれば、リアの強さはよく知らない。
森で狩りをするのだから、弓で戦うのだろうか?
遠距離戦かな?
できれば、怪我をしないでほしい。
ブルガは、ラスティの世話係なので、なんだかんだと会話する機会がある。
機会はあるが……戦闘に関しては知らないなぁ。
ラスティやハクレンの話では、弱かったらドラゴンの世話係などできないという話だが……
服装はいつも通りの執事服。
ここに来てすぐはメイド服を着たり、村娘のような格好をしたりしていたのだが、個性がと叫んで執事服に落ち着いた。
個性に拘るわりには、スティファノも同じ執事服なのはなぜだろう?
ともかく試合が始まった。
リアは予想通り、距離を取って弓での攻撃。
一本を射ったと思った次の瞬間には、次の矢がセットされている早業に驚かされる。
対するブルガは……分身?
しかも全てが別の行動をしている。
魔法攻撃、投げナイフ、短剣、そして打撃。
互いの攻撃が被らないように少しずつポイントをずらしているのがわかる。
それは圧倒的な攻撃だったが、リアはその全ての攻撃を矢で打ち落とした。
魔法を、ナイフを、短剣を、そして打撃を放つ拳に矢が当たる。
攻撃を全て打ち落としたうえで、さらにまだ矢に余裕があり、ブルガの身体を的確に狙っていた。
矢がブルガの身体に当たるたびに、身体が消えていく。
そして、矢の一本がブルガの胸に突き刺さり、その身体は消えなかった。
本体に当たったのかと理解すると同時にそのビジュアルに俺は焦った。
さすがにそれはマズいだろっ!
俺は審判のハクレンを見たが、特に何も動かない。
嘘だろ。
俺が試合中止だと叫びかけたところで、矢の刺さったブルガの身体が消えた。
「あはは。
引っ掛かってくれないか」
いつの間にか、舞台の端にブルガが立っていた。
無傷だ。
「あれで油断してくれたら、楽だったんだけどね」
喋るブルガに、リアは遠慮なく矢を放つ。
しかし、ブルガはその矢をなんなく避ける。
避けた矢は、舞台の外に飛び出すと急に失速して地面に落ちる。
飛び道具避けの魔法の効果だ。
弓を使うリアのために、ハクレンが試合前に観客席に向けてかけてくれた。
「ハクレン様のお陰で、矢を受けなくて良いから助かります」
ブルガは余裕を持って、ハクレンに頭を下げる。
頭を下げながらも矢は避ける。
リアも避けやすいであろう直線的な矢だけを放っているわけではない。
どういった仕掛けか右や左に曲がる矢を混ぜて放ったりしている。
それを全て避け、ブルガは笑う。
まさしく悪魔の笑いだ。
ブルガの身体がフッと消えた瞬間、弓を構えるリアの背後に現れた。
同時にリアは弓と矢を捨て、腰の短刀を抜いて斬り付けた。
ブルガは上半身を反らしてその短刀の一撃を避け、反撃とばかりにリアの周囲に八体の分身を出す。
八体のブルガは構えるだけで、攻撃しない。
リアも動かない。
そして、リアがギブアップ宣言をした。
「さすがにこの数は捌ききれません。
もう少し減らしてください」
「あはは。
七体なら諦めた?」
「まさか。
七体なら、まだチャンスはあったかと」
「だよね。
だから八体。
手強かったよ」
「そう言ってもらえると嬉しいですが……完敗です」
試合はブルガの勝利で終わった。
「ブルガって強いんだな」
横に居る鬼人族メイドにそう言うと、ご存じなかったのですかと返された。
知らなかったが、ブルガはそれなりに強いことで有名らしい。
俺、知らないことが多いなぁ。