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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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武闘会 騎士の部 一回戦 その二 そして模範試合



 武闘会、騎士の部。

 次の試合は、ラミアのスーネアとウノ。

 ウノが登場すると、観客席の外周部にクロ達が姿を見せた。

 ウノのパートナーであるクロサンの姿もある。

 俺の気のせいかもしれないが、ウノの気合が満ち溢れているように見える。

 対してスーネアは、弱気だ。

「大丈夫。
 あの時とは違う、一対一。
 一対一なら負けない」

 過去のトラウマと戦っているようだ。

 スーネアが手に持つのは短めの槍。

 槍の先は三又になっており、海神が持つ武器みたいだ。

 さてどうなるか。

 審判のハクレンが始めの合図を出すと、ウノの角が光り輝き、全身の毛がブワッと広がり、一回り体格が大きくなったように見えた。

 おおっ。

 見た事のない姿。

 強そう。

 俺は驚いたが、スーネアは驚かなかった。

 見慣れていたのかな?

 スーネアは尻尾をバネの様にまとめて、力を溜めた。

 ジュネアが見せた尻尾を使ったジャンプの態勢だ。

「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 そして、スーネアは気声を上げながら短い槍を構えてウノに向かってジャンプ。

 ウノはそれを大きく横に飛んで避けた。

 と思ったらスーネアの軌道が変化し、避けたウノを追撃した。

 空中でどうやってと思ったら、スーネアの尻尾の先が地面から離れていなかった。

 ジャンプした振りで、実は身体を伸ばしていただけか?

 ウノは逃げ切れないと迎撃の為に牙を見せた。

 そして、交差したと思ったら……いつの間にかウノがスーネアの首を噛んでおり、審判がストップを掛けた。

「そこまで!
 勝者、ウノ!」

 その声に、観戦していたクロ達が遠吠えを始めた。

 舞台上のウノは、少し誇らしげだった。

「ううっ、勝てなかった……」

「スーネア。
 貴女は頑張ったわ」

「ジュネア様」

「また明日から、私と一緒に修行をしなおしましょう」

「はい」

 首を噛まれたスーネアにダメージは無さそうだ。

 甘噛みだったのだろうか?

 なんにせよ、怪我がなくて良かった。


 一回戦、最後の試合はダガとマクラ。

 体格的にはダガが圧倒。

 マクラは畳半分ぐらいの大きさだ。

 だが、マクラには八本の足がある。

 そして糸攻撃。

 ダガは剣と盾を持ったオーソドックスなソードマンスタイルに、尻尾攻撃がある。

 正直な所、ダガがマクラを潰さないか心配だ。

 試合が始まった。

 展開はダガの剣や尻尾による攻撃を、マクラが軽快に避けるといった形。

 マクラは攻撃せず、回避に専念しているように見えた。

 このままでは、いつかダガの攻撃がヒットして勝負が付く。

 素人の俺はそう思ったが、観客は違ったらしい。

「急ぎなさいっ!」

「あと少しですよ!」

「やばいぞっ!」

 まるでダガが劣勢であるかのような声援。

 どういう事だと頭を傾けた時、舞台の上でキラリと何かが光った。

 え?

 あっ……糸。

 マクラは糸を無数に出しており、一部はすでにダガの身体に絡み付いていた。

 俺がそれを確認したのが合図だったのか、ダガの身体に目に見えて糸が絡みつき、動きを阻害していく。

 ダガの動きが目に見えて鈍くなった所で、マクラが飛び上がり、ダガの頭の上に乗った。

「そこまで!
 勝者、マクラ!」

 勝負が決した。

 マクラ、強い。

 マクラが片手を挙げ、こちらに手を振ってきたので俺も返した。


 司会進行のフラウが、敗者のダガに質問する。

「障害物が無いのだから、剣や尻尾に拘らずに格闘に持ち込むべきだったのでは?」

「格闘か……」

 ダガはマクラを呼ぶ。

「俺の速度では、掴む事は難しいだろうし……」

 ダガが近くに来たマクラの横に座ると、マクラは二本の腕を使って座った姿勢のダガをそのまま持ち上げた。

「パワーでも勝てない。
 俺が勝つには、あれしかなかったと思う」

「あはは。
 失礼しました」


 一回戦が終了した。

 二回戦の対戦はトーナメント表では次のようになる。

 01 スティファノ(悪魔族)
 02 ティア(天使族)

 04 ルー(吸血鬼)
 07 クーデル(天使族)

 09 ブルガ(悪魔族)
 11 ウノ(インフェルノウルフ)

 13 マクラ(ザブトンの子)
 14 コローネ(天使族)


 しかし、ここで少しの休憩が入る。

 一回戦不戦勝だった者と、戦った者の差を少しでも埋める為だ。

 その休憩時間に行われるのが模範試合。

 ハクレンとラスティの人間形態での戦いだ。


 二人が舞台の上に立った。

 二人はいつものスカート姿ではなく、動く為のズボン姿。

 ラスティはズボンのお尻部分を改造して尻尾を出している。

 鎧などは装着せず、武器も持っていない。

 髪を後ろでまとめており、まるでこれからランニングでも始めるかのような格好だ。

「頑張ろうねー」

「負けません」

 気合が入っているのか、入っていないのか……

 あー……でも、村に来た時の事を考えると、やり過ぎないか心配でもある。

 ラスティは切れるからなぁ。

 ハクレンも切れるが、どこかで冷静な部分があるからそれほど心配していない。

 あ、でも、悪ふざけで暴れる可能性がある。

 不安だ。


 模範試合でも、審判は必要だ。

 これまでの審判役だったハクレンとラスティの試合なので、代わりの審判が必要になる。

 事前に誰かにお願いしようと思ったが、誰も自信が無いと辞退されてしまった。

 なので俺がやる予定だったのだが、観戦にドライムが来たのでお願いした。

 するとなぜかドースが審判に収まっていた。

「公平なジャッジを約束しよう」

 そう言われると、断れない。

 いや、願ってもない。

 よろしくお願いします。


 模範試合が始まった。

 始まって思ったのが、昔読んだ漫画だった。

 舞台の上の二人の動きが速くて、捉え切れない。

 いや、身体の位置は判るが、手足が時々消え、現れたと思ったら相手に当たっている。

 遠くで見ているのに動きがわからないって……どれだけ早いんだ?

 舞台の上に突風が巻き起こる。

 その様子にドースが魔法を使い、舞台の周辺に膜を作った。

 観客席に居る者達を守る為だろう。

 ありがとう。

 ドースが審判で良かった。

 そして、二人に模範試合とか提案した自分に反省する。

 出来るだけ、被害が少ないようにお願いします。


 模範試合は五分ほど続いた。

 最初は舞台上を移動していたが、今は舞台中央で足を止めての打ち合い。

 見やすくて助かる。

 状況はハクレンが優勢。

 ただ、ラスティも負けずに反撃し、何度か良い打撃を与えている。

 ラスティの攻撃が当たるのは主にショートアッパー。

 ハクレンは下からの攻撃が苦手なのか?

 まさか、自分の胸が邪魔で見えないとか?

 ……ありうる。

 考えていると、またラスティのショートアッパーがハクレンの顎を捉えた。

 かなり深く入ったらしく、ハクレンの顔が大きく上を向く。

 ラスティのチャンスだ。

 ラスティもそう思ったのだろう。

 力を込めて次の一撃をハクレンのボディに打ち込んだ。

 ハクレンの身体がくの字に折れたと思ったら、ラスティの打撃がハクレンの顔面を襲う。

 今更ながらだが、グローブを着用させるべきだったかと思う。

 ラッシュ。

 ラスティの連打が、ハクレンにヒットする。

 連打だが、一撃一撃は重い音を立てている。

 このままラスティの逆転か?

 違った。

 殴られながらも、ハクレンは一歩前に足を踏み出した。

「え?」

 そしてラスティの顔面に向けてのオーバースイングのストレート。

 ハクレンの拳がラスティの顔面にヒットし、そのまま地面に叩きつけた。

 大きな音、そして舞台に入った大きなビビ。

 動かないラスティ。

「そこまで!
 模範試合、終了!」

 無事なのか?

 死んでないか?

 俺の不安は、即座に解消された。

 ラスティがピクリと動いたと思うと、そのまま普通に立ち上がった。

「うう、勝てなかった……」

「まだ譲らないわよー」

 二人して和気藹々。

 あれだけ殴り合ったのにダメージを感じさせない。

 殴られた顔とか他の場所に……アザすらない。

 これがドラゴンか。

 驚く俺に、審判役のドースの言葉が届いた。

「二人共、人間の姿での加減が上手くなったな」

「でしょー」

「あはは。
 ありがとう。
 お爺様」

 ……

 あれで加減か。

 ドラゴンの姿で戦ったら……考えないようにしながら、俺は戦った二人を労った。


 さあ、次は二回戦だ。



 ああ、その前に壊れた舞台の修理だな。

 わかってる。

 急ぐ。


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