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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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とある鬼人族の一日 早朝



 朝、日が昇る前に目が覚める。

 いつもの習慣だ。

 どの時間に寝ても、起きるタイミングが一緒なのは良い事なのだろうか?

 寝坊で怒られる事は無いので、良い事だと思おう。

 顔を洗い、衣服を整えた後、今日の当番表と連絡板を確認する。

 この村に来てから導入された当番表と連絡板は、物覚えの悪い私はとても助かっている。

 当番は八つ。

 家、清掃、料理、村、村長、アルフレート様、ティゼル様、休み。

『家』
 村長の家で、掃除と料理以外の事を担当する当番。
 なんでも当番とも呼ばれる。
 もっともハードな当番で、来客があった時が一番忙しい。
 さらに、夜の見張りを行う者を二名、出す当番でもある。

『清掃』
 村長の家の清掃当番。
 徹底して清掃だけをする当番。
 洗濯も含まれるので、夏場はともかく、冬場は水仕事になって人気がない。

『料理』
 村長の家の料理当番。
 料理が上手い人を専属にしましょうと意見が出ているが、現在の所は見送られている。
 私が当番の時にハズレだとか言われないようにしたい。

『村』
 村長の家以外の場所に行き、料理や掃除の指導を行う当番。
 ハイエルフやリザードマン達には教えやすいのですが、ドワーフ達には教え難い。
 覚える気がないと言える。
 酒を造ってる場所の清掃は出来ているのだから、やれば出来るのにしない。
 許されるならドワーフ達を一回、殴りたい。

『村長』
 村長のお世話当番。
 もっとも楽で、もっとも厳しい当番。
 村長は油断すると何でも自分でやってしまうので、求められるのは先回りする技術。
 村長に不要と言われないように頑張らなければならない。

『アルフレート様』
 アルフレート様のお世話当番。
 大変な上に責任もある重要な当番。
 しかし、アルフレート様に名前を覚えて貰える機会なので、かなり人気が高い。

『ティゼル様』
 ディゼル様のお世話当番。
 こちらも大変な上に責任もある重要な当番。
 当番になった者は真っ先に自身の体調をチェック、不安がある時は申告して代わって貰うように指導されている。

『休み』
 普通にお休み。
 村長が提案して作られた当番ですが、私達は動いていないと落ち着かないので拷問に近い当番。
 お休み当番の者は、こっそり誰かの手伝いをするようになっているのが現状。


 当番表に名前が無いのは二名。

 私達の代表でありメイド長であるアン様と、獣人族の世話係を専任しているラムリアス。

 専任の仕事が貰えているラムリアスがちょっと羨ましい。


 今日の当番は、私は村長だ。

 気が抜けない。

 なにせ、村長当番は私一人だ。

 本来なら二人でやるのだが、アルフレート様、ティゼル様の当番に人数が取られてしまった。

 仕方の無い理由だ。

 私がアン様の立場でもそうする。

 もちろん、だからと言って村長の当番を軽視しているわけではない。

 私に二人分、働けという事だ。

 ふふふ。

 見事にその期待に応えてみせよう。

 そう意気込むが……一人での村長当番の欠点がある。

 それはトイレ。

 村長から目を離せないので、トイレに行けない。

 いや、厳密には村長がトイレに行ったタイミングでしか行けない。

 最悪の事態を考え、オムツをする事も真剣に検討する。

 ……

 プライドが勝り、オムツはしない。

 代わりに、竹の容器を何本か用意した。

 どう使うかは考えないように。


 当番を理解した後、連絡板を見る。

 何か急ぎの伝達事項があれば、ここに書かれる。

 今日は何も無いようだ。


 そのまま仕事に行きたいが、慌ててはいけない。

 まずは玄関ホールに集合する。

 朝礼だ。

 メイド長のアン様が登場する前に、私達はピシッと並ぶ。

 来てからピシッと並んでも駄目なのだ。

 それに、並ぶのはそれほど長い時間ではない。

 アン様はすぐにやって来て、軽く挨拶をしてくれる。

「おはようございます」

 それに対し、私達は頭を下げて挨拶をする。

 声は出さない。

 まだ寝ている人が居るかもしれないからだ。

 女とは言え、鬼人族である私達が揃って元気良く挨拶すれば、それなりに大きな声になってしまう。

 以前は完全防音の魔法が各部屋に掛けられていたのだが、夜中も楽器を鳴らした件で村長が危機感を覚え、緩い防音に現在はなっている。

 なので、ある程度の大きさの声は通ってしまうのだ。

 だからここでは声は出さない。

 黙ってアン様の報告を聞く。

 それがルール。

「昨晩、酒スライムが食料倉庫に侵入したようです。
 料理当番。
 小分けにした調理用のお酒に引っ掛かりましたが、改めて被害を確認してください」

「家当番の者、何度も言っていますが徹夜は禁止です。
 しっかりと夜番の者を決め、事前に寝るようにしてください。
 出来なければ、こちらで夜当番を決めます」

 どうやら、夜番の者が寝てしまい、酒スライムの侵入を許してしまったようだ。

 気持ちは判るが、夜番は起きているだけで仕事が無い。

 ある種の見張りだ。

 それも仕事なのだが、どうしても昼に色々とやってしまい寝るタイミングを逃してしまうのだろう。

 アン様の言う通り、そのうちに夜当番が設立するかもしれない。

「アルフレート様は問題ありません。
 ティゼル様は昨晩、少し熱を出されました。
 本日のティゼル様当番の方は、注意して下さい」

 アン様の言葉に、今日のティゼル様当番の者の顔に緊張が走る。

 注意しなければいけない仕事に怯えたのではなく、注意しなければいけない仕事を与えられた事に喜んだのだ。

 羨ましい。

 アン様の報告が終わり、今度はアン様も何も言わずに頭を下げる。

 それに応えるように私達も頭を下げ、朝礼は終わった。



 私は村長当番の定位置に立つ。

 それは村長の部屋の扉の横。

 正面だと、扉を開けた時にぶつかってしまう。

 失敗は一度で十分。

 同じように、清掃当番の者が五名、私の後ろに控えるように立つ。

 注意すれば、部屋の中で村長が動いている気配を感じられる。

 近付いて来た。

 扉が開かれ、村長の顔をしっかりと見た後、頭を下げる。

「おはようございます」

 村長に一番に挨拶できるのは、村長当番の特権だ。

「おはよう」

 村長は私に挨拶をし、後ろに居る清掃当番にも挨拶してくれる。

 良い主様だ。


 村長はそのまま部屋を出て、家の中を見回る。

 家長として当然の行為で、私は少し離れて後を追いかける。

 同時に、掃除当番の者が村長の部屋に入り、清掃作業が開始される。

 主様に掃除をしている姿は見せない。

 常に綺麗であるのが当然というのがメイドのプライドだ。

 なので、部屋の清掃は、村長の朝食終了までに終わらせる事が求められている。

 朝食後、村長が部屋に戻る事があるからだ。

 頑張れと心の中で応援しながら、私は村長の姿を見失わないように注意する。

 今日も気の抜けない一日が始まった。


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