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村の外のパレード 王都での夜会 その1

村長視点です。


●登場人物

イレ  四村のマーキュリー種、撮影班リーダー。


 村の外のパレード、最終日。


 魔王国の王都でパレードが行われている。


 パレードの進むルートの左右には多くの観客が集まり、なかなかの熱気だ。


 五村やシャシャートの街でのパレードもすごいと思ったけど、王都は規模が違う。


 こんなにも人っていたのかと思う。


 種族も多種多様だ。


 知らない種族をいくつか見かける。


 あとで誰かに教えてもらおう。


 それと、ミノタウロス族やケンタウロス族などの背の高い種族は、観客の最前列に並ばずに後方から見ている。


 逆に背の低い種族は、最前列にいることが多い。


 こういったのは、誰かが指導しているのかな?


 それともマナーとして身についているのだろうか?


 このあたりも、あとでフラウあたりに教えてもらおう。


 観客の奥には……いくつかの出店が並んでいるのが見える。


 いろいろと売っているな。


 フライドポテト……いや、違うな。


 あれはグリッシーニ(棒のようなパン)かな?


 プレッツェル(棒状の)スティック(菓子パン)かもしれない。


 味が気になる。


 その隣で売っているのは……


 肉をくしに刺したものか?


 なんの肉だろう?


 どこかに書いてあるのだろうけど、遠いからわからない。


 見た目は美味そうだ。


 その隣は、小さいフルーツをコップに入れて売ってる感じか。


 どういったフルーツかは知らないが、客は男性が多い。


 意外だな。


 フルーツだと女性受けしそうだが……ひょっとして、甘くないのか?


 それが売れるのか?


 うーむ、これもあとで聞いておこう。


 ふふふ。


 祭りの雰囲気にあてられているなぁと笑いつつ、なんだかんだとパレードを楽しんでいることを自覚。


 もう少しでパレードが終わると思うと少しさびしい気持ちになる。


 そんな自分に軽く驚いていると、パレードの進行方向で大きな爆発音がした。





 村の外のパレード、最終日の夜。


 魔王国の王都の中央にある王城の一室に俺はいた。


 ほかに部屋にいるのは魔王。


 ビーゼル、ランダン、グラッツの魔王国関係者。


 ドラゴン族代表のドース。


 天使族代表のマルビット、レギンレイヴ。


 古の悪魔族代表のプラーダ。


 獣人族代表のガルフ。


 ハイエルフ代表のリア。


 撮影班代表のイレ。


 俺を含めて、十二人。


 それと数人、別室で待機している。


 ここで行われるのは、非公式の夜会。


 ああ、反省会ではない。


 なぜか数人、判決を待つ被告人のような顔をしているが、反省会ではない。


 この夜会は……わかりやすく言えば、パレードの感想戦だな。


 ここがよかった、ここが悪かったと感想を言い合う場。


 こういったのに参加せず、すぐに帰っていいとは言われていたけど、さすがに帰れない。


 いろいろあったからな。


 今日ぐらいはつき合う。


 そして、この夜会の進行役はなぜか俺。


 俺でいいのかな?


 問題ないようだ。


 では、遠慮なく。


 えー、まずはパレードお疲れさまでした。


 外ではパレードの慰労いろう会という名の後夜祭が行われており、主役の魔王が不在ではいろいろと困るそうなので手早く終わらせてほしいそうですが……それなら、夜会はあとでいいんじゃないかな?


 そうもいかない?


 先に終わらせたい?


 魔王たちがそう言うなら、かまわないが。


 では、まずは俺から。


 今回のパレード。


 最後、派手にやりすぎたんじゃないか?



 パレードでもっとも注意しなければいけないのが最後だ。


 ちゃんとパレードが終わったと、誰もがわかるような演出が必要となる。


 そうじゃないと、締まらない。


 だらだらとした空気が続く。


 村のパレードで学んだ。


 だから、村のパレードの最後は、だいたい俺が挨拶して締め、宴会を開いている。


 俺の挨拶でスタート、俺の挨拶で終わりという形を作り、飲み食いで終わったと認識させている。


 俺が考えたことじゃなく、文官娘衆たちが考えたことだけど。


 派手な爆発演出で締めるのもありだが、あれは一部から不評だ。


 主に村の鶏や牛、馬、山羊たちから。


 うるさいって。


 危ない、じゃないのは慣れたせいかな。


 ペガサスたちはまだ慣れていないから、爆発演出にはおびえるけど。



 そして、今回の村の外のパレードの最後もちゃんと用意されていた。


 ちなみに、俺はその内容を聞いていない。


 ただ、パレードの最後に白鳥と黒鳥に持たせた剣を爆発させて、それを合図になにかするからお楽しみにと言われただけだった。


 俺が主導しているパレードじゃないから、俺は素直に楽しみに待っていた。


 まさか、軍事演習をするとは思わなかった。


 しかも、一部じゃなくてほぼ王都全域を使っての。


 もちろん、戦えない人や子供のために、安全地帯はもうけてあった。


 だが、かなりの人が参加しての軍事演習だった。


 まあ、クロたちや天使族たちを含め、俺たち(大樹の村)が襲撃者側だったのは、なんだかなぁと思うが……


 派手なパレードの終わりだった。


 さすが魔王国というべきだろうか。


 怪我人は多かったらしいけど、死者はいないようだし。


 魔王国の兵士の練度れんどや、トラブルに対する王都の住人たちの能力の高さがうかがえる。


「そ、村長……そ、その、いいだろうか?」


 魔王がなにか言いたそうだ。


 かまわないぞ。


「すまない。

 最後の演出なのだが、事故があってな……」


 ああ、聞いている。


 スリが出たトラブルで、白鳥と黒鳥が持っていた剣が予定外に爆発してしまったんだろ?


 合図である爆発が前倒しに行われたのに、混乱しなかったのはすごいと思うぞ。


「あ、いや、その……それで、村長に従者のようなことをさせてしまい……」


 従者?


 従者なのか?


 軍事演習が始まったあと、俺は魔王と一緒に行動した。


 さすがに武器を持って軍事演習に参加したりはできない。


 能力的に。


 俺がやったのは、クロの子供たちを見かけるたびに魔王と一緒に追いかけ、郊外の待機場所に移動するように指示したことぐらいだ。


 追いかけると言ってもクロの子供たちも本気で逃げるわけじゃないから、すぐに追いついたしな。


 大したことをしていない。


 そして、それは従者っぽくはないと思うが……


 周囲から見れば、魔王の横にいる俺は従者っぽく見えてしまったのかな?


 魔王を中心に撮影していたイレに確認すると、従者よりも影が薄かったとの答え。


 まあ、そうだとしても気にはしない。


「そ、そうか。

 いや、それならよいのだ。

 予定外の演出に合わせてもらい、感謝する」


 いやいや、パレードの参加者としては当然のことだろ。


 うんうん。


「それと、王都とシャシャートの街のあいだに存在していた怪しい組織の摘発てきはつは成功している」


 それはよかった。


 パレードの一番の目的だったからな。


 そのあたりを失敗すると、なんのためのパレードだってなる。


 しかし、この場でそのことを言っても大丈夫なのか?


 いや、身内しかいないから大丈夫か。



 そういえばドース。


 軍事演習で王都に突入したけど、ちょっと入ってウロウロして戻っていったよな?


 あれはなんだったんだ?


「あれは、村長の乗る馬車が予定外のところで合体したであろう?

 なにかあったと判断してな。

 村長の安全確保のために突入したのだ。

 ただ、大きい道はパレードで使っていたからな。

 少々、狭い道を通ったため、一部の建物に被害を与えてしまい、困っているところをハイエルフの娘から村長の無事を聞いて、引き返したのだ。

 魔王よ、建物に被害を与えた謝罪はかねで大丈夫か?」


「金で大丈夫です」


 ドースと魔王がそんな会話をするので、俺を助けるためなんだから俺が払うぞと言ったのだけど、相手にされなかった。


 あと、そうだ。


 ドラゴン姿の混代竜族の三人を、ドラゴン姿のハクレン、グラッファルーン、グーロンデで囲んでいたのはなんだったんだ?


 カツアゲ現場のようだったぞ。


 言わないけど。


「し、指導だ」


 なにを?


かなわないのはわかっていても、ドラゴン族が相手に頭を下げて見逃してくれと懇願こんがんするのはどうかという問題でな」


 あー。


 混代竜族の三人は、軍事演習で王都を防衛する側で戦った。


 防衛側の兵士たちを守るというか、兵士たちに支援されながら活躍していたらしいが、襲撃者側のクロの子供たちと遭遇したときに頭を下げて戦闘を回避したそうだ。


 うーん、俺からはなにも言えないなぁ。


 俺だって、敵わない相手に立ち向かえと言われても躊躇ちゅうちょする。


 まあ、戦闘を回避した混代竜族三人に対する防衛側兵士たちからの評価はかなり高いらしいから、結果的にはよかったんじゃないかな。



 そうそう、それで思い出したけど……


 ハイエルフたちや獣人族たちはかなり元気に暴れまわったらしい。


 いくつかの王都の施設を占拠したと聞いている。


 頑張ったな。


 そう褒めると、リアがちょっと困った顔をしながら答える。


「あはは。

 つい、力が入ってしまい……」


 ガルフも似たような表情だ。


「そうですね。

 ちょっとやり過ぎてしまったかもしれません」



 プラーダたちは、王都の防衛側だったんだってな。


「はい。

 ですが、直接的な戦闘には参加していませんよ。

 王都の住人に武器を配っただけです」


 そうらしいな。


 武器はどこから?


「王都にある武器庫からです。

 事前に場所を聞いてましたから」


 予定通りってことか。


「はい。

 私たちのことよりも、ザブトンさんのお子さんたちを褒めてあげてください」


 ああ、わかっている。


 軍事演習が急に始まったせいで避難できなかった住人たちを、ザブトンの子供たちが救助したそうだ。


 ザブトンに叱られることを覚悟で、救助活動をしてくれたことには感謝だな。


 ザブトンには俺から叱らないように言っておこう。



 まあ、細々と反省点はあるし、この場にいない者たちに言いたいこともある。


 とくに山エルフ。


 合体変形する馬車に武装があるのは知らなかった。


 正確には、大型弩砲バリスタに変形する追加馬車の存在を知らなかった。


 まあ、その追加馬車は見事に変形合体したが、弩に矢を装填することまで考えておらず、ただの飾りになっていたけど。


 ……


 馬車に合体させる必要はなかったんじゃないかな?


 その場で展開するだけで、馬車が大型弩砲になるのだから、それで十分だと思うんだけど。


 違った。


 武装は必要ない……ことはないか。


 大樹の村は安全だけど、ほかは違うとよく言われている。


 五村ごのむらでさえ、村の外は危ないらしいからな。


 ただ、それでも大型弩砲は自衛武器としては過剰かじょうな気がする。


 そのあたりを、話し合いたい。



 そうそう。


 ティゼルとも話さないとな。


 マルビットやレギンレイヴはかまわないのか?


 ティゼルが国を建てるって話だけど?





お待たせしました。

よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
さすがに村長おおらかと言うかちょっと頭がアレに見える締めるとこは締めさせたほうがいいのではギャグテイストにも限度があると思う
俺が 村長なら罰として向こう2~3年はパレード無しを決定するけど復活後も地味に行う事とする!
もともとドンパチやる予定だったのか・・・ 魔王国こわ・・・近寄らんとこ 山エルフのロマン、嫌いじゃないわ!
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