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村の外のパレード 王都での夜会 その2

ティゼル視点です。


 私の名はティゼル。


 大樹の村で生まれた天使族の娘。


 現在、魔王国の王城の一室。


 お父さまたちが夜会をしているその隣の部屋にいる。



 いろいろ疑われているけど、最初に言っておくわ。


 私は、トラブルの発端となったスリに関しては、まったくの無関係。


 あれは本当に事故よ。


 だからスリを庇(かば)ったりはしない。


 調べたいなら徹底して調べてほしい。


 でもって、文句を言いたい。


 私の目の前にいるルィンシァお祖母さまに。


「文句?

 国を建てることになったことですか?」


 あれは私の敗北の証(あかし)。


 受け入れる。


 文句を言ったりはしない。


 私の計画は失敗した。


 スリは仕込みじゃないけど、剣を爆発させたあとに戦闘になるようには仕込んだ。


 戦闘にならない可能性もあったけど、お父さまが関わるからかなりの確率で大事(おおごと)になると思っていた。


 私の計画では、パレードに乗じてお父さまを持ち上げ、その存在を示してもらうはずだった。


 でも、駄目だった。


 それは仕方がない。


 お父さまが予想外の行動をしたからだけど、それを予想できなかった私の力不足だった。


「では、なにに対する文句なのです?」


 とぼけている?


「本当にわかりません。

 ティゼルはなにに怒っているのですか?」


 むぅ。


 それじゃあ言うけど、天使族はどうして王都側で戦ってくれなかったの?


 私、事前に伝えたよね?


「戦いになったら、王都側を守る形で戦って魔王国内での天使族の印象をよくする。

 そのことでガーレット王国への対応を穏やかな方向に持っていく。

 たしかに聞きました。

 長(マルビット)も聞いていましたね」


 それなら、どうして!


 天使族がやられたから?


 爆発に巻き込まれた天使族は、演技でしょ?


 怪我はないって聞いているわ。


 爆発するってわかっていたのだから警戒はしていただろうし、警戒しているのにやられるような人をパレードに連れて来たりはしない。


 演技は、私の計画に乗る動きのはずよ。


 パレード(襲撃者)側に攻撃されたと言うための。


 それなのになぜ?


 返事をしなかったとか言わないでよ。


 たしかに、言質(げんち)を取られないように全員が微笑んでいたけど、あのときの態度は了承したと受け取ったわ。


「もちろん言いません。

 話を聞いたときは、了承しました。

 でも、事態が変わりましたから」


 事態?


 なにがどう変わったっていうの?


 まさか、スリのせいで開始が早まったから?


 いや、演技する余裕があったからそっちは関係ないはず。


 ……ガーレット王国でなにか動きがあったの?


「違います」


 じゃあ、どうして?


「天使族に敵が多いのは認めます。

 だから、私たちはティゼルの話に乗りました。

 今後を考えると、魔王国内での印象はよくしておきたいですからね」


 そうよね。


「でも、言われたのです。

 この場だけの印象をよくしてどうするのかと。

 将来を考えるなら敵として戦い、互いの蟠(わだかま)りを減らすべきではないか?」


 ……


「天使族の中にも、魔王国に対して思うところがある者もいます。

 それらを放置するのかとも」


 ……


「それに、ガーレット王国に関しては、魔王国がどう対応しても厳しい状況になります。

 魔王国が優しくしたらした分だけ、ほかの人間の国が厳しくなりますから。

 ならば、ここはガーレット王国のことは考えず、現在の天使族のことを考えるべきだと」


 だから、パレード側で戦ったと?


「そうです」


 誰に言われたの!


「当てたら教えてあげます」


 ……


 私は考える。


 誰?


 王都で戦闘になることを知らない人は違う。


 だからお父さまはありえない。


 お母さまは……


 どちらにつくとか考えるのを面倒がって、両方を敵に回しての第三勢力になる。


 そういうところがある。


 ルーお母さまも同じ。


 私が伝えた場にいなかったスアルロウさんかラズマリアさん?


 まさか、キアービットさん!


「天使族ではありませんよ」


 ……


 え?


 じゃあ、誰?


 フローラさん?


 違う。


 フローラさんは、天使族の動向に興味を持たない。


 大樹の村に影響がないなら、なにもしないはず。


 同様にリアお母さまも、セナお母さまも違う。


 アンお母さまは興味を持つだろうけど、そういったことを口にしない。


 ハクレンお母さまやラスティお母さま?


 あの二人に限らず、ドラゴン族が天使族に関してなにか言うことはないだろう。


 となると……大樹の村にいる者は違う?


 そうよね。


 魔王国内での天使族のことなんて、村にいるなら関係ない。


 となると、村の外に行くことがある人?


 ヨウコさんやミヨさん?


 違う。


 あの二人なら、どちら側で戦えなんて言わない。


 戦いが激化しないように止めるように言う。


 ガルフさん、ダガさんも違う。


 二人は武人だ。


 お父さまにならともかく、天使族の先を考えて助言したりはしない。


 ……


 本当に誰?


 まさか、ウル姉(ねぇ)?


 いや、ウル姉もお母さまと同じタイプ。


 第三勢力になる。


 アル兄(にぃ)は……


 状況を有利にしようとするけど、状況が悪くても楽しむタイプ。


 私のやっていることを黙認していたから、違うと思う。


 メットーラさん?


 彼女も違う。


 ドラゴンだ。


 仕事として私の行動を制限することはあっても、天使族がどうなろうと気にしないだろう。


 アースはウル姉が中心だ。


 天使族のことを考えたりはしない。


 アサは……


 天使族に忠告するなら、私に言うだろう。


 遠慮なく。


 となると、残るのはゴー兄、シー兄、ブロ兄の三人だけど……


 三人もアサと同じで、天使族に忠告するなら私に言うはず。


 三人の妻たちによる影響があるのかもしれないけど……


 彼女たちは夫を守るために動くことはあっても、わざわざ天使族のために忠告はしないだろう。


 シー兄の妻に天使族が増えている可能性は?


 ……


 大丈夫なはず。


 うん、大丈夫。


 最新の情報ではいないはずよ。


 あれ?


 そうすると……誰もいない?


 あ、いた!


 始祖のお爺(じい)さま!


 ……


 ありえるのかな?


 天使族のことを考えてはくれるかもしれないけど、わざわざ忠告したりしないと思う。


 ガーレット王国の動向を気にしての意見なら魔王のおじさんに言うだろうし、正式な国交ルートを用意するだろう。


 起きるか起きないかわからない戦闘に対して、なにか言ったりはしないと思う。


 それに、最初は王都側で戦ってほしいって私の指示はわからないだろうし……


「答えは出ましたか?」


 ……


 わかんない。


「素直でよろしい。

 答え、聞きたいですか?」


 うん。


「ふふふ。

 ティゼルもまだまだ勉強が必要ですね。

 貴女が一番最初に可能性を排除した人です」


 最初?


 え?


「貴女の父、村長から聞きました」


 ……


 え?


 戦闘になるのを知ってたの?


「どこかから漏(も)れたのでしょう。

 手を広げすぎです」


 むう。


「それに、親というのは思った以上に子のことを考えているものです。

 貴女がなにかやっているという話だけで、調べたのかもしれません。

 私が言いたいこと、わかりますか?」


 なにかやっているとバレた時点で駄目?


「それもありますが、親を心配させてはいけないということです」


 むー。


「貴女はまだまだ子供。

 失敗を重ねて学んでいきなさい」


 はーい。


「ああ、そうそう。

 貴女の指示は、大事なことを見落としています。

 なので村長の助言がなくても、私たちは襲撃者側で戦いましたよ」


 え?


 は?


 見落とし?


「なにを見落としたか、わかりますか?」


 そういうのはいいから、答えを教えて!


「ふふ。

 インフェルノウルフたちです。

 インフェルノウルフたちは、私たちが攻撃されたから攻撃を開始したのです。

 なのに、私たちが王都側に立ってインフェルノウルフたちと戦う。

 その場はなんとかなっても、大樹の村で困ります」


 それは大丈夫でしょ。


 クロたちは賢いから、天使族がどうして王都側に立ったかを理解できるはずよ?


「理解はしてくれるでしょう。

 ですが、助けようとして動いたのに攻撃された事実は変わりません。

 クロ殿やクロイチ殿などの上位個体は許してくれるかもしれませんが、許さない個体が出ないとも限りません。

 それは大樹の村で生きる天使族にとっては、致命的です」


 でも……


「身内に甘いのは天使族の特徴ですが、身内だからと甘えるのは違いますよ」


 むう。


「ふふ。

 今年からキアービットが王都に滞在するようになります。

 時間を見つけて、教えを乞(こ)いなさい。

 あれでも、天翼巫女が務(つと)められる程度には優秀ですから」


 知ってるわよ。


 キアービットさんが優秀なのは。






祖母(ルィンシァ)  と 孫(ティゼル)の会話でした。


村長「いろいろあるの知ってた」

魔王「嘘やん」

ティゼル「嘘でしょ」



ルィンシァ「キアービットは優秀です」

キアービット「そういうのは本人の前で言って! めったに褒められないんだから!」



ルィンシァ「キアービットは優秀です」

村長「キアービットが優秀? え? 優秀? 村に来たときはあれだったぞ」

キアービット「忘れなさい」

グランマリア「(爆笑中)」



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― 新着の感想 ―
第三勢力になろうとする面子w面白そうという理由は共通しても細かい理由は違ってそうで面白い。ルーは中二チック、ティアは脳筋、ウルザは英雄とか覇王風かな
報連相不足やな。インフェルノウルフにも、ディゼルにも。
正直このままなら、ティゼルはウルザに倒される側。あまりにも身勝手。
2026/07/13 02:37 のんびり返して
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