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のんびりする秋


 秋。


 村のあちらこちらで、武闘会に向けた訓練が行われる季節。


 みんな、頑張っているようだ。


 ん?


 俺は訓練をしないのかと?


 しない。


 みんな、この時期の訓練は力が入っていて、素人が参加すると危ないからな。


 怪我はしたくない。



 なので、俺は暇そうにしている者たちとのんびりする。


 メンバー紹介!


 頼もしき一人目、甘味大好き妖精女王!


 強き二人目、わしの庇護下でぬくぬく生きるアイギス!


 不屈ふくつの三人目、酒こそが我が人生、酒スライム!


 知恵の四人目、自動開閉機能付き、四千五十一番の箱!


 自由の五人目、低空の支配者、空飛ぶ絨毯フライング・カーペット


 そして、緊急参加の六人目、偶然通りかかった鬼人族メイドのナンバーツー! ラムリアス!


 以上!


 ………………


 ラムリアスよ。


 まともに会話できるのが自分と妖精女王だけって言わないように。


「甘味ー、甘味ー」


 ………………


 まともに会話できる者が自分だけって言わないように。


 ちゃんとコミュニケーション、とれるから。


 大丈夫だから。


 いつも暇そうにしているクロとユキはどうしたって?


 訓練している子供たちの様子をみているよ。


 誘えばこっちに参加してくれるだろうけど、クロとユキが珍しくリーダーシップを発揮しているからな。


 邪魔をしたりはしない。


 猫?


 姉猫たちは虎のソウゲツから離れないし、妹猫たちは魔王が来るのを待ってる。


 父猫のライギエルと母猫のジュエルは、夫婦で仲良くやってる。


 邪魔はできないだろ。


 いや、俺への気遣いは無用だ。


 誰かを無理に連れてくる必要はない。


 うん、本当に。


 のんびりするだけだから。


 大丈夫。


 本当に大丈夫だから。



 ラムリアスは心配性なのか、ただ俺を子供扱いしたいのか……


 まあ、どちらでもいいか。


 のんびりしよう。


 コンセプトは、秋風を楽しむ。


 といっても、日当たりのいい場所にテーブルと椅子を設置し、簡単な食事を楽しむだけだ。


 ああ、妖精女王と酒スライムがいるから甘味と酒を忘れてはいけない。


 ないと不貞腐ふてくされるからな。


 俺が用意しようとしたら、ラムリアスが素早く動いて俺をブロック。


 ……わかった、ラムリアスに任せよう。



 少ししてラムリアスが持ってきたのは、紅茶とクッキー。


 俺と妖精女王は当然として、アイギス、酒スライム、四千五十一番の箱、空飛ぶ絨毯の前にもちゃんと置いている。


 あれ?


 酒スライムの前にも紅茶カップが置かれている?


 酒は?


 酒スライムの紅茶カップだけ、ほかの者より中身が少ないけど……同じ紅茶だよな?


 俺の疑問に応えるように、ラムリアスは小さな壺を取り出し、酒スライムの前の紅茶に注いだ。


 なるほど、その小さな壺の中身が酒か。


 ブランデー入り紅茶みたいなものだな。


 いや、あの分量だと紅茶の酒割りかな?


 酒スライムが文句をいう気配がないので、問題ないのだろう。


 クッキーは作り置きだが、味に問題はない。


 紅茶に合う。


 さすがラムリアスのチョイス。


 四千五十一番の箱と空飛ぶ絨毯は飲み食いできないだろうけど、雰囲気を楽しんでくれ。


 はいはい。


 四千五十一番の箱は、紅茶とクッキーを中に入れてほしいのね。


 了解。


 空飛ぶ絨毯は……置いてある紅茶カップと、クッキー皿の下に無理やり入ろうとしているな。


 テーブル引きの逆バージョンかな?


 いやいや、絨毯はそれなりに厚いから、無理だろう。


 クッキー皿はともかく、紅茶をこぼすとみになるぞ。


 妖精女王、自分の分を食べたからって、空飛ぶ絨毯のクッキーを狙わないように。


 俺のをわけてやるから。


 酒スライム、ラムリアスの持つ酒の入った小さい壺から視線を外すんだ。


 思いのほか、いい酒だった?


 そうだとしてもだ……わかったわかった、あとでドワーフに頼んでやるから。


 アイギスは……大人しくちゃんと飲んでるな。


 なにも問題はない。


 問題はないのだが……


 紅茶カップ、翼で持てるのか?


 器用だな。


 いや、問題はないぞ。


 ん?


 ラムリアス、どうした?


「その……村長はのんびりできてます?」


 のんびりしているぞ。


 ああ、のんびりしているさ。




 自分に正直に。


 反省。


 のんびりできなかった。


 楽しくはあったが。


 なにが悪かったのか。


 人を集めすぎたことだろうか?




 次の日、ラムリアスのプロデュースでのんびりすることになった。


 窓が大きく日当たりのいい屋敷の一室、ソファーを窓際に設置し、そこで寝転がる。


 たしかに、のんびりだ。


 ん?


 ああ、枕か。


 このまま頭をあげればいいんだな。


 枕を差し込んでくれるのかと思ったら違った。


 ラムリアスが膝枕してくれた。


 ……


 のんびり。


 ところで、部屋の外が賑やかだが?


「村長の独占を許すなー!

 突入部隊前へー!」


「ラムリアスさまのためにここは死守!

 鬼人族メイドの底力、見せてやれ!」


 俺が気にしたら、ラムリアスが防音の魔法で部屋の外の音をカットした。


 ……


 部屋の扉が突破されるまで、のんびりするとしよう。





少し短いですが、息抜き回。

しばらく村長が出てなかったから。


次回は ジョローの商隊 おまけ編2 を予定しています。



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異世界のんびり農家、書籍十巻が四月三十日に発売予定です。

(一部書店様では、すでに発売中のところもあるそうです)

時世が時世ですので、無理な外出はせず、購入できるタイミングで購入していただければありがたいです。


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― 新着の感想 ―
[一言] のんびり回w 微妙にのんびりしてない気もするけど、日常回ではあるよな ラムリアスの一面も見れましたしw
[気になる点] >ブランデー入り紅茶みたいなものだな。 > いや、あの分量だと紅茶の酒割りかな? これ、どっちも紅茶ベースの飲み物と言っているような……?
[一言] ラムリアスはガチ勢
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