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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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冬が終わりそう


 夜、俺がベッドで横になっていると、子猫がやってきた。

 ミエルだ。

 ミエルは俺の首元からベッドの中に入り、右脇に移動。

 そこで寝始めた。

 おおっ、珍しいじゃないか。

 寒いからか?

 違うな。

 ミエルたち子猫はいつでもどこでも寝るが、夜だけは母猫であるジュエルの傍で寝ていた。

 それが俺のところに来るということは……

 たぶん、出産が近くなったのでジュエルが子猫たちを近寄らせないのだろう。

 寝場所に困って、俺のところに来たと考えるべきだな。

 よしよし。

 俺が脇でミエルの体温を感じていると、ラエル、ウエル、ガエルがやってきた。

 ミエルと同じように首元から入り……右脇にミエルを発見。

 ではと、左脇にラエルが。

 ウエルとガエルは俺の股の間に移動した。

 ……

 来てくれるのは嬉しいが、これだと俺が身動きできない。

 困った。

 だが、幸せな悩みだ。

 そう思っていると、ハイエルフがやってきた。

 ハイエルフは俺のベッドの中で寝ている子猫たちを発見すると、一匹ずつ部屋の外に放り出した。

 えっと……あ、はい、そうですね。

 すまない子猫たち。

 何も言えない俺を許してくれ。

 そして、暖かい部屋で寝るんだぞ。



 翌朝。

 子猫たちはフェニックスの雛であるアイギスの小屋で寝ていた。

 小屋の主であるアイギスよりいい場所で。




 寒い。

 だが、天気はいい。

 俺は牧場エリアに向かった。

 牧場エリアに露天風呂を作る為にだ。

 冬にやる作業じゃないと思うが、牧場エリアにいる馬や牛が珍しく求めるのだから仕方がない。

 最初、温泉地まで行くのが面倒になったのかと思ったが、違った。

 なんでも温泉地に行けない山羊たちの嫉妬が酷いらしい。

 さすがに鬱陶しくなったので、なんとかしてやって欲しいとの求めだ。

 なるほど。


 山羊たちが温泉地に行けないのは、転移門のあるダンジョンを怖がるから。

 原因は、ダンジョンに住むアラクネのアラコや地竜だった。

 アラコと地竜はめったにダンジョンから出てこないから、見慣れていないのだろう。

 なんとかするなら、山羊たちとアラコを交流させればいいのだが、今は冬だ。

 アラコや地竜は寒さに弱くはないと言っているが、見ている俺が寒いのでアラコや地竜をダンジョンから出すのは却下。

 山羊たちは、いまだに温泉地に行けていない。

 それで温泉地に行ける馬や牛に嫉妬ね。

 山羊たちは取れないブドウはすっぱいと言うタイプかと思っていたが、そうじゃなかったようだ。

 かわいいところもあるじゃないか。

 だが、馬や牛に迷惑をかけるのはよくないぞ。

 おっと、俺に迷惑をかけていいってわけじゃないからな。

 噛まないで欲しい。

 お前たちの為に露天風呂を作っているんだから。


 山羊たちの為とはいえ、手は抜かない。

 牧場エリアの北側に場所を決め、雪ごと【万能農具】で掘っていく。

 広さは二十メートル四方ぐらいに。

 溺れたりするのは困るが、動物のサイズは色々だから一番小さいのに合わせると露天風呂ではなく水溜りになってしまう。

 どうせなら山羊だけでなく、牛や馬、羊も使ってほしい。

 動物が使うので、段差は極力なし。

 ふちはスロープで構成する。

 深いところで二メートルぐらいになるように。

 風呂底は当然として、スロープの途中に動物たちが立ちやすいように適度な高さで平らな場所を作った。

 これで動物ごとに入る場所をわけられるだろう。

 風呂が完成したら、そこに雪を放り込み積み上げる。

 後は魔法で融かし、温めてもらうだけなのだが……

 いつもならルーに頼むのだが、妊娠中なので寒い外には出したくない。

 誰に頼もうかと思っていたら、グランマリアが飛んでいた。

「頼めるか?」

「お任せを」

 グランマリアは炎の球を生み出し、それを池に積み上げた雪にぶつけた。

 ……

 変化がない。

 グランマリアの炎の球は、雪の中に埋もれている。

 これは……

「失敗か?」

 俺が聞いたタイミングで、派手な音がして放り込んだ雪が蒸発した。

 後で知ったが、雪を魔法で水にするにはそれなりのテクニックが必要らしい。

 素人がやると爆発すると、グランマリアに教えてもらった。

 つまり、失敗と。

「すみません」

 謝るグランマリアは可愛かった。

 雪を融かし温める魔法は、爆発によって集まってくれたクロの子供たちにお願いした。

 すまないな。

 雪を溶かす係と、水を沸かす係に分担作業。

 数がいたので、あっという間に露天風呂が出来た。

 なかなか温かそうだ。

 一番風呂は頑張ってくれたクロの子供たちで。

 ははは。

 お前たちが沸かしたんだから、遠慮するな。

 んっ。

 クロの子供たち、遠慮している暇はなくなった。

 一番風呂を狙って山羊たちが走ってきている。

 早く入るんだ。


 そして、グランマリア。

 落ち込まない。

「いえ、でも、その……そうですよね。
 雪を溶かしてから沸かせばいいわけで、一気に雪からお湯にしようとした私が馬鹿というかなんというか……」

 つ、次はきっと上手くいくさ。

 俺の指示が曖昧だったしな。


 露天風呂はそれなりに人気だった。

 ぬるくなったら、クロの子供たちが魔法で加熱しているので冷める心配はなさそうだが。

 寒い外気との差で、風呂から出れなくなるのは困るので、露天風呂の近くに火を焚いてやる。

 この露天風呂は今年の冬だけ。

 春になれば、アラコや地竜をダンジョンから出して山羊たちに慣れさせれば問題なくなるだろう。

 そのつもりだから、排水とか考えていない。

 あ、排水したい時はグランマリアに……

 頼めないな。

 うん。

 何か考えておこう。




 そろそろ冬も終わりかなと感じ始めた頃。

 ザブトンの子供たちが、俺の身長をこっそりと測っていた。

 ……

 なぜ、測るのか?

 俺だけでなく、アルフレートやティゼルも測っているな。

 でもって、ハイエルフやリザードマン、ドワーフ、獣人族、山エルフ、文官娘衆が少し前から布を求めはじめている。

 試着っぽいこともしているな。

 そこから考えられるのは……

 去年やった行進。

 ……

 まさか、またやるのか?

 恥ずかしいんだが。

 いや、やるなとは言わないから、俺は見学席で……

 そういうわけにもいかないと。

 うーん。

 まあ、あれは一日だけだしな。

 わかった。

 付き合おう。

 ああ、二言はない……待て。

 なんだそれは?

 山エルフが、やぐらを作っていた。

 高さは三メートルぐらい。

 櫓としては低いが、最大の特徴は櫓の下に大きな車輪が六つほど付いていること。

「櫓の上に席を設けますので、村長にはそこで挨拶をしていただければ……」

「なるほど。
 確認するが……俺が席に座った状態で櫓を移動させたりは?」

「当然、考えております」

「よし、話し合おう」

 冬の終わりが近い。



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