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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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ロバート先生


 俺の名はロバート。

 魔族の研究者だ。


 魔王国では、学ぼうと思うと大きく二つの方法がある。

 家庭教師を雇う。

 学園などの公的機関に入学する。

 この二つ。


 家庭教師は、基本的には一対一か一対少人数なので、個々をしっかりと管理できるのが大きい。

 落ち零れ難いのだ。

 ただ、優秀な家庭教師を探すのが手間だし、それなりにお金が掛かる。

 裕福な家で広く採用されている。


 学園などの公的機関への入学は、安価でとても効率がいい。

 学びたいならこっちが俺のお薦めだ。

 ただ、集団での勉強となるので、どうしても学べる事に限界があるし、落ち零れも出てしまう。

 また、貴族だけが通う学園、お金持ちだけが通う学園などがあり、学園による差が出てしまうのが欠点だ。



 俺の家は普通なので、家庭教師は無理。

 学園で学んだ。

 そこで成績が優秀だと褒められたので、研究者の道を目指した。

 我ながら単純だと思う。

 しかし、研究者になるにはスポンサーが必要であることを知った。

 俺の研究の為にお金を出してくれる人がいないと、研究できないのだ。

 なるほど。

 成果がでるかどうかもわからない段階でお金を出してくれる人を探さないといけないのか。

 ……

 世間は厳しい。



 俺は学園を卒業後、実家の手伝いをしながら独学で研究を続けるに事になった。

 実家を継いだ弟には迷惑を掛ける。

 だが、俺はどうしてもこの研究を成功させたいのだ。

 試行錯誤した中で、見つけた俺の研究テーマ。

 農地における土魔法の利用。

 これが攻撃魔法とかなら、スポンサーもついたのだろう。

 もう少し派手なテーマにすべきだったと、何度後悔したか。

 しかし、俺は諦めない。

 食料難が叫ばれる昨今、この研究は絶対に必要なんだ。

 スポンサーがつかなかったのは、過去、何度も研究された内容で、誰も成果を出せていないジャンルだからだ。

 難易度が高いのはわかっている。

 だが、この世から飢えをなくしたいのだ。



 ダンジョンイモの登場で、俺の研究熱が冷めた。

 豊作、万歳。

 でもな……

 いや、世界の不幸を願ってはいけない。





 俺は家を出て、シャシャートの街に来ていた。

 この街に出来たばかりのイフルス学園に招聘しょうへいされたからだ。

 街の代官の名を冠し、学園とついているが、特に国に認められた機関ではなく正確には私塾。

 待遇は悪くないが、良くもない。

 正直、勤めるなら普通の学園がよかった。

 しかし、そういったところからはこちらから頭を下げても相手にされないだろう。

 なにせ俺は研究成果が出ていない研究者だ。

 そんな俺を、誰が必要とするのか。

 イフルス学園からの招聘は、俺と同じ学園で学んだ男がその学園に関わっている幸運が切っ掛けだ。

 気は乗らないが、弟の妻の目が痛いので招聘に応えた。

 学園を卒業してもう十年。

 世話になりっぱなしだったからな。

 給料は減るが、希望すれば宿泊先を用意してくれるのはありがたい。



 イフルス学園で、俺は講師をはじめた。

 わかりやすい説明と高評価だ。

 ただ、素直に喜べない。

 俺のライバル講師が、凄い人ばかりだからだ。

 俺以外、ほぼ研究成果を山のように出している人たち。


 アットマ=ビエラス。

 吸血鬼でありながら、光魔法の第一人者。

 かのルールーシーの弟子とも言われており、魔法学、薬草学においては有数の研究者。


 ガブルスロー=ザインバルツ。

 アットマの弟子だが、薬学においては師匠を超えたと言われる人物。

 ただ、本人は薬学よりも魔法学の方を中心に活動。

 魔法の効率化に関する研究発表会には、魔法使いが競って集まると評判。


 マリアーナ=ゴロ。

 炎魔法の第一人者。

 爆発馬鹿と揶揄されることもあるが、実力は確か。

 彼女の研究は、魔王国軍の魔法による戦闘力を倍にしたと言われている。


 俺が魔法学を教えているから、そっち方面の者ばかり紹介しているが、他分野でも多数、第一人者が揃っている。

 俺が高評価なのは、他の講師たちのレベルが高過ぎて、初心者にはわかり難いからだろう。

 一度、見学したが、わかり難いというか、わかれという方が無理な内容だった。

 もう少し生徒に歩み寄ってもと思うが、人に教えるというのは才能なのだろう。

 その点、俺は恵まれていたのかもしれない。

 だからって学園長、俺に講師陣のまとめ役をやれというのは無茶な話ではないかな?

 無理無理。

 給料の問題じゃないから。

 あのメンバー相手に、まとめ役をやる自信がない。

 正直、学園というか私塾をやるならもう少し講師陣はなんとからならなかったのか?

 優秀かどうかなら、確実に優秀だけど。

 彼らの頭脳はもっと有意義に使うべきだろう。

 国の研究機関でもここまでのメンバーは集まらないと思う。

 なぜ、彼らがここで講師をやっているのか。

 彼らは金で動くタイプじゃない。

 しかも、自分のホームで悠々と研究できる立場だ。

 いったい、どんな報酬で彼らを集めたのか……

 ここの食事は美味しいけど、まさかこれが理由じゃないよな。


 講師の食事は、通りを挟んだ向かいにあるビッグルーフ・シャシャートというお店で食べることになっている。

 別に他の場所で食べても構わないが、その場合は自費。

 月の初めに、一月分の食券が渡される。

 メニューは完全にお店側にお任せだが、なかなか種類があって飽きない。

 イフルス学園の講師の食券は特別で、専用窓口で食事が渡される。

 長い列に並ばなくてもすむのはありがたい。

 今日はカレーか。

 ふふふ。

 カレーは嫌なことを忘れさせてくれる美味しさがある。

 向こうのテーブルで、カレーの食べ方に関してアットマ氏とガブルスロー氏が口論しているけど、気にしない。

 気にしてはいけない。

 あれに巻き込まれると、翌朝まで議論に付き合わされる。

 以前、不用意にピザのトッピングの議論に参加して、酷い目にあった。

 俺は今でもピザのトッピングはチーズとトマトが最強だと思っている。

 だが、あの議論を終わらせる為に、ピザに卵を落とす事に賛同してしまった。

 いや、それも美味いけど。

 信念を曲げた事に対する後悔は、深い。

 ……

 やめよう。

 今はカレーに集中。

 食事の後は、午後の授業に向けて準備しなければ。

 学園長、食事にまで同行しても俺は引き受けませんよ。



 学園長の説得により、俺は講師のまとめ役に就任した。

 役職名は筆頭講師。

 悲しい事に、世の中は力が全てだ。

 悔しいが、どうしようもない。

 学園長の目論見は、あのメンバーに俺が教育に関して指導する事だろう。

 しかし、俺はあのメンバーを相手にする自信がない。

 仕方が無いので、俺は考えた。

 問題の根源は、講師のレベルと生徒のレベルの差。

 へだたりがありすぎる。

 そこで、俺は各地の学園に、生徒募集の手紙を送った。

 イフルス学園の講師陣のリストを同封して。

 対象は各地の学園の生徒ではない。

 各地の学園の講師だ。

 イフルス学園の講師陣のリストを見て、学ぶこころざしがある者はやって来るだろう。

 現在のイフルス学園の講師陣は、そのやってきた講師を相手に授業をしてもらう。

 そして、やってきた講師に、今いる生徒の講師役をやってもらう。

 経験者だ。

 問題ないだろう。

 俺より優秀な人が多く来たら困るけど……まあ、それほど数は集まらないだろう。

 二~三人、来てくれたら助かる。

 そう思っていた。


 説明が遅れたが、現在のイフルス学園の講師陣は俺と学園長を含めて、二十人。

 生徒の数は全部で百五十人ぐらい。

 そこに、俺が送ったリストを手にやってきた、現役の講師や噂を聞いた研究者が三百人ぐらい集まった。

 ……

 各地の学園から抗議の手紙が送られてきた。

 場合によっては、使者がわざわざやって来て怒鳴った。

 俺が悪いのか?

 やってきた講師の中には、俺が卒業した学園の学園長もいた。

 辞めてきた?

 自分のやったことの大きさに、少し後悔した。

 でも、反省はしない。

 イフルス学園は、やっと学園らしくなった。

 と思う。




 後日。

 学園にルールーシーがやってきた。

 ビックリした。

 まさか、あんな有名人が気軽にやってくるとは……

 イフルス学園設立の功労者?

 名誉学園長みたいなもの?

 そうだったのか。

 そして納得。

 あのアットマ氏やガブルスロー氏がここにいる理由。

 ルールーシー……おっと、呼び捨てはよろしくない。

 ルールーシー名誉学園長がいるからか。

 えっと、名誉学園長は講義なんかしてくれたり……

 薬草学を教えてくれる!

 専門外だけど、講義を受けたいです!

 うおおっ、貴重な薬草が山盛り!

 家で採れたってまたまた。

 育てるのは不可能って言われる薬草ばかりじゃないですか。

 講義を受ける人数を制限する?

 ……

 俺は筆頭講師として、優先権を主張する。

 ええい、うるさいぞ。

 使えるものは使うのだ。

 文句があるなら俺の筆頭講師を解任してからにしてもらおうか!


 俺の名はロバート。

 研究者の道は外れたけど、講師として頑張っている。



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