派閥
世の中、人が集まれば派閥が出来る。
それは大樹の村でも同じ。
「目玉焼きは両面焼くの。
それが至高」
「片面の方が良くない?
見た目が綺麗だし、黄身は半熟の方が美味しいでしょ」
「私は卵焼きの方が好きかな」
「村長が作ってくれたダシ巻きは?」
「あれは別枠でしょ」
平和だ。
口論で収まっているうちは。
ちなみに、俺は……ゆで卵派。
塩を振って食べるのが好きだ。
昔から好きだったわけではなく、この村で生活を始めてから。
最初は、卵も塩もなかった。
今は卵も塩もある。
日々の当たり前に感謝しつつ、俺は暴力に発展しそうな争いを止めた。
「三日間、卵禁止」
村は祭りの準備に忙しくなっている。
今回も文官娘衆に任せているので、俺の気は楽だ。
ただ、遊んでいるわけではない。
祭りに出す料理の研究に参加している。
そんな俺の目の前にはボウルに入れられた大量の卵。
禁止にしても鶏は卵を産んでくれるので、当然の結果。
無駄には出来ない。
とりあえず……煮卵を作ろう。
まず、卵をゆで卵にする。
冷ましてから、酒と醤油、酢、砂糖に水と香草を少々で作ったダシに漬け込む。
以上。
三日後が楽しみだ。
しかし、全ての卵を煮卵にするのはどうなのか?
今日の分は良いとして、明日、明後日の分も煮卵にするのか?
……
鬼人族メイドたちに相談。
「パンに使うのはどうでしょう?」
「ケーキにも使えますね」
「プリンはどうですか?」
なるほど。
では、明日、明後日の分はパンやケーキ、プリンに使おう。
うん、それがいい。
翌日。
卵の使い道で派閥が出来ていた。
「パンです。
菓子パンに使いましょう」
「ケーキが最強です」
「プリンでいいじゃないですか」
……
二日目、三日目の分の卵も煮卵になった。
ごほん。
俺だって、祭りの前に料理ばかりやっていたわけではない。
ヨウコから大事な相談を持ちかけられていた。
「五村からの招待客に関してなのだが……」
俺としては盛大に招きたいと考えたが、それは止めておいた方が良いと周囲から言われたので止めた。
まさか全員から言われるとは思わなかった。
まあ、村人の数に対して多過ぎる人を呼ぶのは問題か。
ただでさえ、一村、二村、三村、四村から人が来るのだ。
対応できない人数を招くのは間違いと俺も自覚している。
しかし、ひょっとして五村全員を招待すると思われたのだろうか?
さすがの俺もそこまで非常識じゃないぞ。
ピリカとピリカの弟子や、教会の神官、ヨウコ屋敷で働いている者など関わりがある者を中心に、あとは先代四天王の二人や五村の村議員を考えていただけなんだけどな。
……
それでも五百人ぐらいになるか。
うん、駄目だな。
ヨウコと話し合った結果、五村からは招かないことになった。
中途半端に招くと、格差が生まれるとヨウコが心配したからだ。
なんでも五村で派閥が出来上がりつつあるらしい。
それって、大丈夫なのか?
「数がいるからな。
ある程度、派閥が出来てくれないと統治しにくい。
我が推奨した面もある」
現在、五村には二万人近い数の者が生活している。
そんな村を統治しようとすれば、中間でまとめる者が必要か。
その中間のまとめ役が派閥リーダー。
仕事や住んでいる場所で派閥ができつつあると。
「信仰でも派閥ができつつある」
「信仰?」
セレスがまとめていると思ったが?
「村長絶対派、村長見守り派、村長積極派、大樹の村派、ハイエルフ派、ドノバン派……目立つのはそんなところか」
「なんだ、それ?」
「絶対派は……村長をドラゴンのように恐れ崇める考え方の派閥。
見守り派は、村長をそっと見守ろうとする派閥。
積極派は、逆に村長の役に立とうと積極的に前に出る派閥だな」
……
「大樹の村派は、頂上派とも呼ばれている。
村長を含めて大樹の村関係者を崇めようって派閥。
ハイエルフ派は、樹王、弓王を中心としたエルフたちが中心。
ドノバン派は、ドワーフたちが中心だな」
「害はないのか?」
「害はない。
密かに集会を開いている程度だ。
問題なかろう」
いや、問題がある気がするけど……
統治に邪魔なら潰すから心配するなと笑うヨウコが少し怖い。
五村からは誰も招かないが、大樹の村を知っている者には祭りのことを伝え、自主的な参加をお願いした。
結果、先代四天王の二人だけが参加することになった。




