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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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我は空腹なり


 我は空腹なり。

 キリッとした顔で言っても、腹は膨れぬ。

 困ったものよ。

 それもこれも、食事の用意をしてくれる者達がいつの間にやらいなくなっていたから。

 まったく、我を一人置いてどこかに行くとは何事か。

 いや、まあ、あの者達にも何かあったのかもしれんな。

 責めるのは事情を聞いてからにしよう。

 まずは、この煩く鳴る腹をなんとかせねば。


 手持ちは……水の入った水筒のみ。

 食べ物はない。

 となれば、探すしかない。

 幸いにして、周囲は森。

 ……

 あれ?

 なぜ森なのだ?

 しかも、見覚えがない?

 ……

 まあ、深く考えても仕方がない。

 森は森だ。

 何かあるだろう。

 ……

 ううむ。

 どれを食べて良いかわからぬ。

 匂いは大丈夫そうだが、それで酷い目にあった事もある。

 こういった時こそ、毒味の出番であろうに……おらぬ。

 ここは勇気を出すべきか?

 いやいや、よく見れば色が少し怪しい。

 もう少し見知った物を探そう。

 きっとあるはずだ。



 ない。

 あれから三日。

 持っていた水筒の水も尽きた。

 さすがに眩暈めまいがする。

 限界だ。

 こうなれば、次に見つけた物を何も考えずに食べてみるとしよう。

 危ないのはわかっている。

 それを踏まえた上で、食べたい。

 いや、素直にそこらに生えている草を食べればいいのだろうけど、誰が何をしたかわからぬ物を口にするのは……生理的に無理。

 理想は木の実。

 ああ、考えただけで腹が減る。

 ……

 なんぞ、良い香りがする。

 食べ物ではない。

 花の香りだ。

 色々な花が混じった香り。

 花か……

 花って、食べられたっけ?

 将来的には実になるのだから、花のうちに食べても問題はないのではないだろうか?

 気付けば、我は駆け出していた。

 香りのする方に。



 一面の花畑。

 美しい。

 しかし、罠であったか。

 そこかしこに飛び交う衛兵。

 要所に隠れる隠密が三。

 そして我を威圧する武者が一。

 ううむ。

 我は花に誘われた哀れな蝶という事か。

 空腹でなさえなければ、この程度はなんとでもなるというのに……

 ん?

 衛兵が撤退?

 かわりに隠密の数が増えて……武者も増えるのね。

 ……

 その数、ズルくない?

 隠密が二十以上、武者が十以上。

 まだまだ増える。

 もう数えるのは諦めた。

 戦うのも。

 ならばどうするか。

 ふっ。

 口だ。

「我は空腹なり、そこの花を食べたい。
 譲られよ」

 ……

 なぜだ。

 思いっきり哀れみの目を向けられた。

 ヒソヒソと相談するな。

 違う。

 我は花を食う種族ではない!

 ただ、空腹ゆえに、花で腹を誤魔化そうと……

 ん?

 まて。

 奥に見えるのはアッポの木?

 しかも、この時期に実をつけている?

 面妖な。

 しかし、この際、その辺りはどうでもいい。

 そのアッポの実をどうか一つ、いや、二つ、できれば三つ。

 譲ってもらえぬだろうか。

 ……

 その相談は、哀れみではないな?

 我に渡すかどうか相談しているのだな?

 違うっぽい。

 ええい、代表者を出せ、代表者を。

 そう言ったからだろうか。

 エグいのが出てきおった。

 人の姿をしているが竜だ。

 その横に……なんだ、この人間は?

 一度完成した後、壊してまた作り上げたような……英気の塊?

 英雄の卵?

 いや、大人の英雄を無理矢理に卵に押し込んだような……

 さすがの我も、空腹状態でこれに逆らうのは得策では……うおっ、いきなり捕まえられた!

 待て、無礼者!

 我をそのように扱うでない!




 あの変な人間と竜に捕らえられた我は、彼らの巣に連れて行かれた。

 森の中にこのような場所があるとは……

 不思議な場所だ。

 いや、あの花畑がそうか。

 考えていると、我は鬼人族に引き渡された。

 いや、鬼人族が取り上げたというべきだろう。

 変な人間と竜が叱られておる。

 我に無礼な事をしたからであろう。

 この鬼人族、道理のわかるものらしい。

 うむうむ。

 苦しゅうない。

 あ、待って。

 その持ち方はちょっと苦しい。

 できれば優しく抱えるように……

 あと、もう抵抗はしないから何か食べ物を……

 あれ?

 準備している?

 期待しても良いのだろうか?

 おお、アッポの実。

 あの武者達が伝えてくれたのだろうか?

 しかも、摩り下ろしてくれて……

 確認するが、食べても?

 すまぬ。

 美味い。

 おおおっ……染みる。

 がっつくのは恥ずかしいが、つい急いでしまう。

 ん?

 他にも色々と……

 それを食べても?

 すまぬ。

 おおお……力が蘇る。

 ふふふ。

 腹さえ満たされれば、我に敵う者なし。

 あの変な人間は厳しいが……一緒にいた竜ならほふることもできる。

 え?

 お代わり?

 いいの?

 いただきます。

 ここは良い場所のようだ。

 そのきっかけと考えれば、無礼なあの二人を許してやろうという気にもなる。

 うむ。

 許してやるのだ。

 決して、親竜っぽいのがウロウロしていたからビビッたのではない。



 この場所には、我より強そうなのが数人いる。

 ううむ。

 まいった。

 しかも、武者と一対一なら遅れはとらぬが、武者の数は山盛り。

 隠密も、花畑にいたのは子供だったようだ。

 大人相手では少々厳しい。

 だが、我は見抜いた。

 この場の一番上は誰であるかを。

 無駄に一週間、食っちゃ寝をしていたわけではない。

 我は観察していたのだ。

 交渉する相手は誰かと。

 そして、その相手は……

 あの子猫だ!



 違った。

 人間の男が一番、偉かった。

 見抜けなかった。

 この我の目をもってしても……

 いや、よいのだ。

 人間の男は我に好意的なようだ。

 ふふ。

 我の魅力にメロメロ……あ、子猫の方が良いですか?

 そうですか。



 色々あったが、こうして我はこの場……大樹の村にお世話になることになった。

 よろしくお願いする。

 我の名はヒトエ。

 九尾狐と呼ばれる種族。

 うむ。

 まだ尻尾が一本だから信じられぬかもしれぬが、大人になれば九尾になる。

 人の姿にもなれるが、まだまだわらべゆえ獣の姿でゆるして欲しい。

 性別?

 見ればわかるであろう。

 わからぬか。

 ちょっとショック……

 我は女である。





 武者=クロの子供達=インフェルノウルフ
 隠密=ザブトンの子供達=デーモンスパイダーの子供(進化前)
 衛兵=グノーシスビーの兵隊蜂

 ちなみに、武者に一対一なら勝てるとか言ってますが勝てません。
 ヒトエが大きくなれば、勝てる可能性も出てきます。
 気絶しないのは、九尾狐の固有耐性です。
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