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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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ランダンの部下


 出世欲は普通。

 ほどほどに働き、それなりに評価されたい極めて普通の内政官の一人。

 それが俺だ。

 俺の名?

 気にしないでくれ。

 どうせ短い付き合いだ。

 ただ、ランダン様の部下である事だけ覚えておいてほしい。


 さて、そんな俺だが、ランダン様から特命を受けた。

 魔王様も絡む案件だ。

 上手くやれば出世も見込めるだろう。

 内容も……そう難しいようには思えない。

 当たりの仕事だ。

 喜んで引き受けた。

 ただ一点、気になるのは……

 ランダン様、人選する際にクジ引きをやってたよな。

 しかも、すまないと呟きながら……

 この仕事か?

 なぜだ?

 村を誘致する仕事だよな?

 一から村を作るなら大変だが、この仕事は村を作りたいと言っている人を手伝うだけ。

 多少は下調べとかしなきゃいけないかもしれないが、それほど大変とは思えない。



 すぐにわかった。

 村を作る場所の選定段階なのに、村への移住を希望する嘆願書が多数きた。

 本当に多数。

 なるほど。

 これが嫌がられる仕事の理由か。

 軽く目を通すと、偉い人が混じっていた。

 この人、現役の領主だよな?

 村に移住って……

 あ、移住できるなら領主は引退すると。

 なるほどなるほど。

 ランダン様に報告と相談。

 ランダン様は頭を抱えていた。

 頑張ってください。


 さて、俺はこの大量の嘆願書に目を通し……追加を置かないで欲しい。

 心が折れる。

 ……

 うん、無理だな。

 一人では不可能と判断し、ランダン様に人員の補充をお願いした。

 無理をして失敗しては、元も子もないからだ。

 手早く二名の人員が送られてきた。

 さすがはランダン様。

 だが、使える人員なんだろうか?

 俺の机の前には、元四天王の二人がいた。

 いや、いました。

 あ、ど、どうも。


 元四天王の二人は、魔王国なら子供だって知っている有名人。

 俺に取っては師匠筋のさらに上の方々だ。

 その二人がなぜ?

 いや、最近、お二人の名前を見ましたけど。

 嘆願書を出してましたよね。

 ランダン様に報告した件で、ここに?

 クレーム?

 いや、俺は見つけただけで、報告しないわけにはいかず……

 そんな事より、嘆願書を見せろ?

 こっちです。


 さすがは元四天王の二人。

 あの山のような嘆願書を次々と精査し、選別している。

 ありがたい。

 ありがたいですが……その、精査基準とかの相談がなかったのですが?

 気にするな?

 はい、気にしません。


 駄目だ。

 仕事場を乗っ取られた。

 とりあえず、ランダン様に報告と相談。

 ……

 不在?

 逃げた?

 ははは、まさか……

 し、信じてますからね!

 帰ってきてくださいよ!





 なんだかんだあって、村を誘致する場所に出向く。

 二十人ほどの護衛と、十人ほどの調査員が同行。

 二人の元四天王も一緒。

 とても仕事がやりにくい。

 だが、笑顔。

 笑顔を忘れずに。

 はい、ちょっと待ってお二方。

 勝手に大通りとか屋敷の位置とか決めないで。

 その辺りはノータッチだって言われていますから。

 それよりも、本当に場所はここなんですか?

 二人が知ってるからと任せましたけど、ここって二代か三代前の魔王様が、隠し砦を作る為に用意した場所ですよね。

 結局、作られずに放置されてますが……

 それなりに重要拠点なのでは?

 極秘作戦の時に、ここに部隊を隠していたという噂も聞いたことがありますよ。

 気にするな?

 はい、気にしません。

 えっと……

 調べなきゃいけないのは、水の手と……あっちに川がある?

 無事な井戸もいくつかある?

 お二人はここに関わっていたんですね。

 なるほど。

 ですが、試掘はしないといけないので……

 同行している調査員に井戸の試掘を頼む。

 穴を掘るのは大変そうだなと思っていたが、土魔法を使って掘っていた。

 見事なものだ。

 ……あ、もう魔力切れ?

 交代して……

 五人目で予定の深さにまで到達した。

 水は出ているそうだ。

 後は飲めるかどうかだが……

 井戸から汲んだ水にミットフィッシュと呼ばれる小さな魚を放り込む。

 ミットフィッシュが三日間、生きていれば飲める水。

 逆に三日以内に死ねば、飲めない水。

 時間は少し掛かるがシンプルなので、水を調べるのに多用されている方法だ。

 さて、井戸の試掘は四箇所の予定だから……

 もう一箇所、いける?

 無理?

 わかった。

 野営の準備をしよう。

 護衛の方々、野営に適した場所を探してもらえますか?



 十日ほど現場で野営しながら、色々と調査した。

 シャシャートの街をはじめ、近くの村に馬車を走らせ、どれだけ時間が掛かるかもチェック。

 なんでもこれが一番大事らしい。

 念入りにやっておく。

 その間、魔物に数回、襲われた。

 全て撃退したけど怖かった。

 俺は戦闘向きじゃない。

 怪我した護衛の人は大丈夫か?

 さすがは精鋭だな。

 見事な攻撃だった。

 あと、元四天王の二人、凄かった。

 内政担当じゃなかったの?

 あ、はい、気にしません。


 しかし、これほど強力な魔物が出るとは……

 ここに村を作って大丈夫なのか?

 村を作る場所は大丈夫でも、通りは危なくないか?

 大丈夫?

 気にしなくて良い?

 あの、お二人はどこまでこの件を知っているんですか?

 いえ、気にしませんけどね。




 クローム伯が合流した。

 クローム伯はランダン様と同じ、現在の四天王の一人。

 転移魔法が使えるのだが、その転移魔法を俺や調査隊の為に使ってくれるとのこと。

 本来はありえない特別待遇だ。


 そしてここまでの出来事で俺は十分に察している。

 この仕事の重要性。

 そして、危険性。

 気を引き締めなければいけないようだ。



 俺の気の引き締めが足りなかったのか?

 ルールーシーだ。

 吸血姫ルールーシー。

 本物だ。

 すごい。

 感動だ。

 あ、村を作る人の奥さん?

 結婚してたの?

 というかルールーシーの旦那様?

 でもって、横にいるのは皆殺し天使の一人?

 護衛?

 皆殺し天使が護衛する方ですか、そうですか。

 えっと、そうなると残りのお嬢様は……

 クローム伯の娘さん?

 あ、聞いたことが……え?

 貴女も奥さんの一人?

 えーっと……

 この村長と呼ばれる方は一体何者?

 ……

 深く考えない。

 考えちゃ駄目だと本能が叫んでる。

 聞かれたことだけを素直に隠さず答える。

 ええい、こんな時になぜ元四天王の二人はいない?

 貴方たちの方が説明できるでしょう。

 急に姿を隠して……

 いや、責任者は俺だ。

 俺が説明する。

 この辺りにいる魔物の種類?

 ええ、凶暴なのがたくさんいますよ。

 ビビるでしょ?

 大丈夫?

 そうですか。

 ……

 平然と返されてしまった。

 うん、そういった方じゃないとここに村は作れないよな。

 皆殺し天使の一人が、ふらっと出かけて大型の魔物を数体、倒しているし。

 その魔物、護衛二十人が死ぬほど苦労して追い払ったんですけど。

 怪我人、いっぱい出たし。

 色々、違うなー。



 え?

 村長さんは、あのビッグルーフ・シャシャートの店長でもある?

 あはは。

 すみません。

 お腹一杯なんです。


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