成長
子猫が、いつの間にかちっちゃい猫になっていた。
可愛かった顔が凛々しくなっている。
うう、少し残念だが成長を喜ぼう。
ミエル、ラエル、ウエル、ガエル。
白、白、黒、ブチの猫達の額に、宝石っぽいのが出来始めていた。
母猫の血が強いようだ。
成長に合わせて大きくなっていくらしい。
そう言えば、宝石猫のジュエルを連れ帰ってきたのはルー達だった。
いまさらだが、どこで出会ったんだ?
違法取引をしている現場に踏み込んで、没収してきたと。
……
危険な真似はしないで欲しいなぁ。
それで、宝石猫が取引されていたんだよな?
それを没収して大丈夫なのか?
大丈夫、合法?
それなら問題なし。
子猫達は一匹で行動する事も多くなったが、まだまだ子供なのだろう。
寝る時は母猫のジュエルの傍に集まって寝ている。
その横で、ちょっと寂しそうな猫。
お、ラエルが猫の傍に。
あれはお父さんっ子のようだ。
そう言えば、子猫の性別は全てメスだった。
……
頑張れ、お父さん。
始祖さんによって村に預けられている聖女。
実はまだ村にいる。
聖女の受け入れ先を用意すると言っていた始祖さんはどうしたんだろう?
転移門の相談には乗ってもらったから、時々はこっちに顔を出しているけど……
まだ時間がかかる?
予定通りに進んでいない。
大変そうだ。
まあ、聖女はすでにお客さんではなく、村の一員として働いてもらっているので、このまま村に住んでも構わない。
酒スライム以外にも、獣人族や鬼人族と交流しはじめているしな。
だが、聖女自身が出て行くというなら、止めようがない。
俺に出来るのは、そう言い難くなるように毎日の食事をちょっと良くするぐらい。
聖女がいなくなると、酒スライムが寂しがるからな。
大樹のダンジョンでは、ラミア族と巨人族が生活を始めた。
数はラミア族が五人で、巨人族が七人。
時々、各ダンジョンのいるメンバーと交代する予定らしい。
村からの支援は不要との事だが、さすがにそうもいかない。
地上でも生活できるように居住エリアにラミア族用の家、巨人族用の家を用意した。
まあ、なんだかんだと村に来ているので、前々から用意しようという話はあったのだ。
ラミア族に関しては、ワイン造りの時期に住み込みで手伝ってもらっているしな。
家の件を話した時、ラミア族と巨人族に大泣きされながら感謝されたのはビックリした。
そんなに喜ばれる事だろうか?
ともかく、感謝は建設の大半をやってくれたエルフ達にね。
俺は材料を集めただけだし。
ラミア族と巨人族の他に、ダンジョンで生活を始めたのがザブトンの子供達。
今年もザブトンの子供達が旅立ったのだけど、その数がいつもより少なかった。
理由は簡単。
ダンジョンで生活するからだそうだ。
思わず、ダンジョンを拡張すれば全員、旅立たなくてすむかなとか思ってしまった。
ダンジョンで生活するザブトンの子供達は、ダンジョン特化なのか、これまで見た事がない形状に進化していたりする。
薄い棒のようなニードルスパイダー、ダンジョンの壁や床に潜伏するギリースパイダー、特定の場所を縄張りにするゲートスパイダー。
他、多数。
ルーやティアが実物を前に説明してくれたけど、その際に少しビビっていたように思えるのは気のせいだろうか?
いまさらだよな。
あいつなんて、この間まで俺の部屋の上にいたヤツだぞ。
そう、珍しくトマト好きな。
進化しても嗜好は変わっていないようなので、今度、持ってきてやろう。
ああ、他の奴らにもな。
ジャガイモで良いか?
ははは。
その代わり、ダンジョンは任せたぞ。
ラミア族や巨人族と仲良くな。
ワイバーンにもらった宝石の原石。
原石から宝石部分を切り出し、磨かなければただの石だ。
しかし、そういった作業をした事がある者がいない。
宝石関連。
ファンタジー物だと、ドワーフの出番なのだろうが……うちのドワーフは酒特化だからな。
普通のドワーフは……
ああ、新しく作るかもしれない村の移住予定にいたな。
まあ、彼らが宝石の原石を扱えるかどうかは知らないが……
「連中はそういった事が得意だから、任せても大丈夫だぞ」
ドノバンが保証してくれたので、彼らに任せる事に。
……
とりあえず、新しい村を作るかどうかを決めてからにするか。
下手に接触して、新しい村作りが既定路線になっても困る。
今度、新しい村を作る候補の場所に案内してもらう予定だ。
そこを見てからにしよう。
宝石の原石は、しばらく石のままでいてもらおう。
アルフレートは、人間である俺と吸血鬼であるルーの子だ。
これまで、特に問題がないというか吸血鬼的な特徴は出ていない。
俺としては、人間寄りで生まれたと思っている。
しかし……
考えてみれば、吸血鬼の特徴ってなんだ?
見た目はほぼ人間だよな。
……
牙?
ルーは伸ばしたり、縮めたりできる。
それぐらいか?
俺はアルフレートの歯を確認する。
乳歯が綺麗に揃っているなぁ。
牙っぽいのはない。
問題なし。
他に特徴ってなんだ?
俺の知ってる吸血鬼なら、日光に弱いとか流れる水が怖いとかあるけど……
ルーには適用されないしな。
……
普通って事で良いかな?
俺の結論に、ルーが少し拗ねる。
別にいいじゃないか。
お前の子には違いないんだから。
「でも……」
ルーが気にする理由は一つ。
俺と天使族のティアの子、ティゼルの背中に小さな翼が生えたからだ。
まだ出来ないけど、慣れると出したり消したりできるようになるらしい。
ティアがかなり喜び、ティゼルに翼に関しての講義を行っている。
あー、ティア。
ティゼルにはまだちょっと早いんじゃないかな。
ともかくだ。
ルーが気にすると、アルフレートが落ち込むから適度なところで切り替えるように注意。
まだ出てないだけかもしれないし、気にするな。
さっきも言ったが、人間寄りでも俺とお前の子だ。
「う、うん」
後日。
「アルフレート様は夜目が利くみたいです」
アンの報告に、ルーが遠慮しながら少し喜んだ。