魔神
昔、世界の魔力を管理する仕事をしていた神がいた。
名はない。
ただ、魔神と呼ばれていた。
魔力の管理は面倒で難しいが、それゆえに魔神はその仕事に誇りを持っていた。
だが、ある日、魔神はその仕事を失敗してしまった。
「なぜだ!
魔力が漏れている。
このままでは、世界に広がるぞ」
その失敗により、世界に亜人と呼ばれる種が生まれてしまった。
大きな失態である。
魔神はその事を恥じ、彼にその仕事を与えた創造神に謝罪を行った。
創造神は魔神を怒らなかった。
「神だって失敗はする。
新たに生まれたものがいるなら、見捨てずに見守ってやりなさい」
魔神に新たな仕事が与えられた。
亜人の神だ。
魔神は頑張った。
魔力の管理はこれまで以上に厳密に行い、そして亜人と呼ばれる種を見守った。
それで全てが終わる筈だった。
ある日、魔神が魔力の管理を失敗した理由が判明した。
魔力を溜めている大事な倉庫で、アホの男神とアホの女神が乳繰り合ったからだった。
なぜわかったか?
その二人が同じ事をやったからだ。
また魔力が世界に漏れた。
さすがに魔神は切れた。
アホの男神とアホの女神をその場で撲殺。
消滅させた。
神は死なない。
神の起源である存在の元に戻るだけだ。
だが、アホの男神は世界の人を管理しており、アホの女神は世界の農作物を管理していた。
新たな神が派遣されるであろうが、それまで世界は混乱するだろう。
さらに漏れた魔力は新たに魔物や魔獣を生み出した。
このままでは世界が崩壊する。
魔神はとっさに手元にある魔力を持って、世界に降りた。
そして、世界の崩壊を防いだ。
なのにだ。
魔神は神の世界に戻る事を禁じられた。
そして降りた世界の地中深くに封じられた。
なぜだ!
魔神は怒ったが、理由はわかっている。
魔力で世界に干渉し、世界を狂わせたからだ。
それは一つの世界だけでなく、いくつもの世界に影響を及ぼした。
いくつかの大事な法則が狂ってしまい、修復が不可能な状態にもなった。
冷静に考えれば、封じるだけで済ませてくれたのだから穏便な処置なのかもしれない。
あの優しい創造神の事だ。
千年もすれば封を解き、神の世界に戻る事を許してくれたかもしれない。
だが、当時の魔神は理不尽な処置に対し激しく怒り、呪詛を吐き、神と世界を呪ってしまった。
……
愚かな事だったのか?
ふと、横で寝ている宝石猫を見る。
その腹には私の子が……
私の子……
私は許されたのだろうか。
それとも、この姿のまま、ここで朽ちろという事だろうか。
どちらでもいいか。
今の私に昔の力はない。
だが、妻と子は守ってみせよう。
ああ、ついでにだが……
この村の住人もな。
「ウルザ、猫を持って走らない」
「えー、でも」
「でもじゃないの。
ほら、返しなさい。
持ち方!
優しく持ちなさい!」
鬼人族の娘よ。
毎回すまない。
あと、いつもご飯をありがとう。
魚が好きです。
できれば、少量のお酒を一緒に頂けると嬉しいのですが……
あ、いえ、なんでもありません。
……
まだ生まれぬ子よ。
父さんは頑張っているぞ。
●おまけ
おっと、そこな子よ。
アルフレートだったな。
コタツの右端は私の場所だ。
一番、良い場所を見つけたのは褒めてやるが、譲りたまえ。
うむ。
素直だな。
お前は大物になるぞ。
加護をやろう。
ついでに背中を撫でさせてやる。
優しく撫でるのだぞ。
もうちょい上、そうそこ、そこ……うげっ、ウルザっ!
くっ、なぜ私を見ると低空の高速タックルをしてくるのだ!
いや、確かに色々な因縁があるけど……
謝るから、そろそろ許してっ!
ちょい短め。
なので、次の更新は12時ぐらいにやります。