一家団欒
宝石猫は、ちょっと変わっていても猫だ。
俺の部屋のコタツの中によくいる。
暑くなってコタツの上で涼む。
まだ仰向けになれるほどではないが、それなりに馴染んだと思う。
俺の膝の上で寝ることもある。
なかなか可愛らしいじゃないか。
しかし、新参者には贅沢なポジションらしく、膝の上の宝石猫をクロが優しく銜えて別の場所に。
その後、クロが俺の膝の上に顎を乗せてくる。
よしよし。
お前との付き合いも長いよなー。
わかっている。
ユキも撫でてやるから、クロを押し退けようとしないように。
はいはい。
ルーも撫でてやるから、並ばないように。
おっ、アルフレートも来たか。
ははは。
アルフレートは今日は何をしていたんだ?
ダガとガルフに剣を教えてもらってたのか。
そうか。
お前ならあっと言う間に俺……父さんよりも強くなるだろう。
頑張るように。
あと、ダガさん、ガルフさんだ。
お前が呼び捨てにするのは良くないぞ。
ウルザもそう言ってた?
わかった、怒っておく。
あ、いや、怒るのはなし。
怒るとお前が告げ口したようになるもんな。
今度、現場を押さえて注意するとしよう。
ん?
ティアとティゼルも来たか。
混ざって良いぞ。
今更、気にするな。
アンもトラインを連れてくるように。
前々から言っているが、トラインも俺の息子。
アルフレートの弟だ。
本人が望むならともかく、無理矢理に従者にはしないからな。
この辺りはリアたちにも言っているのだが、なかなか成果が出ない。
子供たちに差はつけたくないのだけどな。
こっちの世界の習慣や、種族の風習などがあるのかもしれない。
郷に入っては郷に従うべきだが、俺なりの子供に対する扱いは理解してもらいたい。
また今度、話し合うとしよう。
人数がいるから、トランプでもするか?
冬だしな。
そうなると、他のメンバーも呼ぶか。
ヒイチロウは……お昼寝中。
邪魔してすみません。
ウルザは?
グラルと一緒に外を走り回っている?
森には行かないよな。
ああ、ハクレンが付いてくれているのか。
……
一緒に森に行く姿しか想像できない。
まあ、そうなっても大丈夫だろう。
クロの子供達も一緒にいるみたいだし。
リアたちは……後で良いってそういうもんじゃないんだよなぁ。
ええい、問答無用。
連れてきなさい。
よしよし。
ん?
アルフレートとティゼルはカルタの方がいいのか?
トラインやリリウスたちもそっちが良いか。
構わないが、ルーとティアは手加減しないぞ?
アンも。
わかった。
カルタにしよう。
となると……大人と子供で分けるのはちょっと違うな。
では、コンビ戦だ。
母と子でコンビを組んでもらおう。
ルーとアルフレート、ティアとティゼルのようにだ。
俺は……よし、猫。
ほれ、隅の方にいないで混ざれ。
俺とコンビ……あ、宝石猫とコンビを組むのね。
うん、そんなにすまなさそうな顔をしないでくれ。
いいんだ。
気持ちはわかる。
お互い、頑張ろう。
じゃあ……クロはユキとだしな。
部屋の上にあるスパイダーウォークにいる保温石を持ったザブトンの子供に頼むか。
一斉に手を上げないでほしい。
結局、俺は読み手になった。
勝者を言うのは無粋だな。
家族で仲良く楽しんだ。
冬場は狩りを控えるので、新鮮な肉類はありがたい。
ありがたいが……
「ハクレン、ウルザやグラルを連れて森に行くのはどうかと思うぞ?」
「森じゃなくてダンジョンよ」
「余計悪い!」
「ええっ」
「ええっじゃないだろ。
それで、南のダンジョンか?
北のダンジョンか?
見覚えのない魔獣だが……
謝りに行くぞ」
「あ、それは大丈夫。
東のダンジョンだから」
「東?」
「ええ。
インフェルノウルフが見つけたみたいよ」
「聞いてないぞ」
「私達が一番初めに聞いたからね」
「お前なぁ」
「場所の確認と、その周辺の魔物退治だけよ」
「中には入っていないのか?」
「……ちょっとだけ。
本当にちょっとだけだから」
「それで、この獲物の数か?」
「あはは……危なそうだったら引き返そうと思っていたら、つい」
……ドラゴンであるハクレンが危なそうと感じることってあるのか?
「はぁ。
ウルザとグラルが無事だったからいいけど、今後は駄目だぞ」
「はーい」
ウルザとグラルは疲れて寝ている。
怒るのは起きてからだな。
「じゃあ、次。
ドライム」
「ね、姉様に脅されて仕方なく……反省している」
ドラゴンがハクレン、ドライム、グラルか……まあ、安全だろうけど。
「ダガ、ガルフ」
「面白そうだったので……つい」
「同じく」
二人はなんだかんだと傷だらけだ。
通り掛かったフローラが治癒魔法を使ってくれたから大丈夫だが、骨折もあったらしい。
無茶はしないでほしい。
あと、一緒にいたのがクロの子供たち。
東のダンジョンを発見、報告のために数日掛けて村に走り、到着した瞬間にハクレンにキャッチされたらしい。
その後、ハクレンに乗って東のダンジョンに戻り、最後まで同行。
よし、お前たちは悪くない。
撫でてやろう。
「えー、一緒にダンジョンに入ったのよ。
贔屓じゃない」
「違う。
被害者だ」
でもって、俺が撫でてやっている中、撫でられに来ないクロの子供が数頭。
わかっている。
お前たちはウルザとグラルを見張っていて、止める立場だったのに一緒に行ってダンジョンを楽しんでしまったんだよな。
撫でられに来ないのは素直でよろしい。
しかし、今日は罰で撫でるのは無しだ。
……
そんなにションボリしないでほしい。
尻尾を下げて……ああ……いや、ここは厳しく。
今度、東のダンジョンを探索する時は、堂々と行けば良いからな。
よし、反省したら飯だ。
今は深夜。
屋敷での晩御飯はとっくに終わっている。
お前たちが確保した新鮮な肉……は数日後の方が美味いな。
ありあわせで悪いが、何か作ってやろう。
ん?
酒スライムか。
どうした?
まだ料理は作ってないぞ。
ああ、聖女が夜食を欲しがっているのか?
最近、一緒にいるもんな。
わかった、用意しよう。
酒もだな。
わかっていると思うが、聖女に飲ませるなよ。
一滴もやらん?
全部自分で飲む?
どこにあるかわからない胸を張られてもなぁ。
聖女には果実ジュースで。