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冬に向けて


 武闘会が終われば、村は冬に向けての準備を行う。


 といっても、みんな慣れたもの。


 武闘会前にすでに準備を始めている者もいるぐらいで、全てが順調に進んでいる。


「村長、村長」


 そう、全てが順調に進んでいる。


「村長、現実逃避はよくない」


 文官娘衆は俺に厳しい。




 冬の準備は遅れていた。


 原因は武闘会が半分、もう半分が……まあ、色々。


 武闘会のほうは、単純に後片付けに人手がとられて純粋に作業効率が落ちてしまったこと。


 うん、舞台が壊れたのは仕方が無いとして、観客席やプールに大穴を空けたのはよろしくない。


 俺が修理すればすぐに終わるのだが、反省の意味を込めて頑張ってもらう。


 しかし、それで冬の準備が遅れるとは……


 冬の準備をさせてからにすべきだったのだろうか。


 まあ、修理はもうすぐ終わりそうだし、頑張って遅れを取り戻してほしい。




 でもってもう半分の半分ぐらいは……始祖さんが原因。


 まず、始祖さんがルー、ティア、リア、ハクレンを連れて出かけてしまった。


 なんでも春と夏の間ぐらい……始祖さんにシャシャートの街に運んでもらっていた時期に、約束したらしい。


 始祖さんの手伝いをするのだそうだ。


 危ないことではないらしいが、少し心配だ。


 浮気の心配?


 微塵も疑ってはいない。


 逆に俺が疑われている。


 安心してほしい。


 絶対に、そう絶対に浮気なんかしないから!


 だから居ない間のお相手とか用意しなくて良いんだぞ。


 違う?


 そうじゃない?


 そっか。


 ははは。




 ルー、ティア、リア、ハクレンは、村内でもそれなりの発言力がある者たちであり、冬の準備には大きく貢献してくれていた。


 特にルーとティアは俺の秘書的なことをしてくれているので、いなくなるととても困る。


 だから困った。


 人数が増えても問題なくやれていたのは、ルーやティア、それにリアたちの協力があってこそだと改めて認識。


 それに加え、ルー、ティア、リア、ハクレンは俺の子供を産んでいる。


 リアとの間の子であるリリウスは、ハイエルフたちが。


 ハクレンとの間の子であるヒイチロウはライメイレンが喜んで面倒を見てくれているから問題無いとしてだ。


 ルーとの間の子であるアルフレート、ティアとの間の子であるティゼルの世話は、鬼人族にお願いすることになる。


 誰が遅れたというワケではないが、全体的に作業に遅れが生じた。


 ルー、ティア、リア、ハクレンには早く帰ってきてほしい。


 始祖さんの予定では、本格的な冬になる前には戻ってこられるそうだ。




 冬の準備の遅れは仕方が無い。


 その分、手の空いている人が頑張れば良いのだが……


 一番頑張らないといけない俺の手が空かない。


 主に対人関係……いや、妊娠したフラウやラスティ、セナ関係で。



 ラスティが妊娠したことで発生した問題。


 それは、ラスティが出産するまで人間の姿に固定されるため、ドラゴンになれないのだ。


 そのうえでハクレンが不在。


 村の輸送力は大きく減じてしまった。


 そこで名乗りを上げてくれたのが、ドライムとグラッファルーン。


 ラスティの代わりに頑張りますよとのことだが……


 ドライムやグラッファルーンに指示できる者が少ない。


 遠慮することはないと思うんだけどな。


 指示できそうなルーやティア、ハクレンは不在。


 仕方なく、俺がほぼ付き添い状態になっている。


 そんな俺の代役ができそうなのが実は居たりする。


 ブルガとスティファノだ。


 元々、ドライムの所にいたのでドライムたちに慣れている。


 ドライムやグラッファルーンに指示できるだろう。


 と思うのだが……


 彼女たちの今の仕事は、ラスティのお世話。


 無事な出産に向けて、いつも以上に頑張っている。


 なにせ今年の武闘会に出なかったぐらいなのだ。


 なかなか、お願いし難い。


「いや、お願いされても無理です。

 ドライム様やグラッファルーン様に指示なんてできません」


 そうなのか。


 しょんぼり。




 フラウの妊娠が発覚したことでビーゼルも残っていると言ってもいいのだが、彼は転移魔法で魔王の城から通いだ。


 フラウの為にどうすべきかで色々と俺が相談を受けた。


 どうもフラウのためにというかフラウ専属のメイドを置きたいらしい。


 俺もフラウも、鬼人族メイドがいるから大丈夫だと言っているのだが、不安なようだ。


 ラスティのために悪魔族のベテラン助産婦がまた来てくれるのだが……


 そりゃ、ラスティとフラウが同時に産気づいたらラスティを優先するかもしれないが、出産はフラウのほうが先だろ?


 何が起きるかわからない?


 そうだけど……


 ビーゼルと色々と話し合った結果。


 ビーゼルの家を取り仕切っている、ベテラン女中に来てもらうことになった。


 ビーゼルが子供の頃から世話になっている人で、彼女がいるなら安心できるそうだ。


 当然、フラウも知っている者なので問題なしかと思ったが、フラウから心配の声が上がった。


「ホリーがこちらに来ると、王都の屋敷が心配なのですが……」



 ベテラン女中の名はホリー。


 ビーゼルの家……魔王国王都にあるクローム伯爵邸を一手に取り仕切っている者らしい。


「屋敷より、お嬢様の出産のほうが大事です。

 よろしくお願いします」


 ホリーは老女だったが、背中は曲がっていない。


 キリっとした態度で、思わず「ばあや」と呼んでしまいそうになる。


 実際、ビーゼルからそう呼ばれていた。


 ホリーは村に慣れるのに二日ぐらい掛かっていたが、慣れた後はさすがベテラン女中という働きだ。


 立場はフラウの専属メイドだが、鬼人族メイドと協力して屋敷の家事も分担してもらっている。


 アルフレートやティゼルも懐いている。


 うん、ウルザを捕まえて叱れるのは貴重な存在だ。


 ハクレンが不在の今、頼もしい。


 ずっと居てくれないかな。




 セナに関しては、ガットの妻であるナーシィが一手に引き受けている。


 獣人族の女の子たちも、自分の番が来たらと色々と学んでいるらしい。


 番が来ることが……することをしていれば、あるよな。


 うん、準備は大事だ。


 セナはハウリン村の村長の娘でもあるので、ハウリン村との連絡も密になる。


 連絡していると……


 俺と顔合わせの場を作ってほしいということが遠回しに伝えられた。


 言われてみれば、俺はハウリン村に行ったこともなければ村長と会ったこともない。


 娘の嫁ぎ相手に会わないことも珍しいことではないそうだが、できれば顔が見たいとのことだ。


 じゃあ、俺が行くかと思ったが、村人から止められた。


 立場的には向こうの村長がこっちに来るべきと。


 そんなものか?


 そんなものらしい。


 しかし、これから冬になるのに森の中を歩いて来いとは言い難い。


 そのうえ、ハクレンは不在、ラスティは無理。


 ドライムに頼むかと思ったが……ガットとガルフに止められた。


 門番竜での送迎はよろしくないらしい。


 仕方なく、どこかで顔を合わせると約束だけで終わった。


「村長、すみません。

 父がわがままを……」


「いや、構わないさ。

 気持ちはわかる」


 セナが気にすることでは……あるな。


 父親だもんな。


 ハウリン村との連絡は普段より密にするので、余裕がある時に手紙でも書いてやってほしい。





 後一人。


 始祖さんが連れてきた聖女も村に残っている。


 残っているが、ほぼ部屋に引き篭もり状態。


 定住する予定ではなく、始祖さんが用事を終わらせるまで預かっているだけなので、それでも構わないのだが……


 気は使う。


 ほーら、良い天気だぞー。


 温泉に興味はないか?


 馬に乗ってみたりは?


 森は……ちょっと止めたほうが良いな。


 俺の提案は却下されているが、なぜか一村の住人には従っている。


 正確には、一村に住んでいる数人に従っている感じかな。


 どうしてだろう?


 ウルザにも従うよな。


 あ、ウルザ。


 従うからって、無理に猫と仲良くさせようとしないように。


 お前だって、嫌なことを無理やりさせられるのは嫌だろ?


 ……勉強はちゃんとしなさい。


 ハクレンが居ないからって油断してると、戻ってきた時に怒られるぞ。


 一緒に仕事するのは構わない。


 頑張れ。


 野外作業なら服をもう一枚、着ろよ。


 吐く息はまだ白くないが、油断できない。


 あっと言う間に寒くなるからな。




 はぁ。


 冬の準備、頑張ろう。





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― 新着の感想 ―
[一言] >「いや、お願いされても無理です。 >ドライム様やグラッファルーン様に指示なんてできません」 ここ、村長からの依頼書(指示書)作って、ブルガとスティファノがそれを現場で伝える体をとればいいん…
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