挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

244/324

正義の組織


 ようやく。

 ようやくだ。

 私が世界の危機を知ったのは四十年前。

 私が十歳の時だ。

 天啓だった。

 神の声が、世界を救えと俺に言った。

 妄想ではない。

 あれは確かに神の声だ。

 私の祈りが届いたのだ。


 そして私は動いた。

 世界を救う為に。

 悪を討つ軍勢を揃える為に。

 具体的には勉強。

 学がなければ、立場を得られないからな。

 立場がなければ、どんな立派な事を言っても聞いてもらえないのが世の中だ。

 例えば行政官と一般庶民。

 同じ事を言っていても信用されるのは行政官だ。

 立場がある人が言っているのだから、本当だろうという信用が必要なのだ。


 さらに大事なのはコネクション。

 偉い人との繋がりは大事だ。

 私の生まれが一応、貴族というのも良かった。

 男爵家の三男ではあるが、僅かながらでも偉い人と接触する機会があった。

 庶民ではどうやっても無理だったろう。

 私は二十で行政に携わり、三十で一つの都市を任されるまでになった。

 五十の今では宰相だ。


 もちろん、仕事一筋だったわけではない。

 私生活も頑張った。

 二十五で結婚して、子供は五人。

 長男は有力貴族の娘を娶って孫も生まれている。

 次男は少し放蕩癖があるが、要所要所で役に立ってくれている。

 三男は騎士として、各地を転戦。

 英雄候補とか言われているが、私からすればまだまだだ。

 長女は少しガサツで、貰い手がいないのではないかと不安になったがなんとかなった。

 世の中、物好きな者はいるものだ。

 あ、いや、彼には感謝している。

 本当にだ。

 妻も心配していたからな。

 本当に良かった。


 次女は内向的で、本ばかり読んでいる。

 魔法に興味があるようだが、才能はないらしい。

 残念な事だ。

 だが、幸いな事に我が家は裕福だ。

 納得できるまで勉強すればいい。

 個人的には諦めて欲しいが、他者から言われて諦められるものではないだろうな。



 さて、他者からは栄華を極めていると影で囁かれる私だが……

 本来の目的を忘れてはいない。

 世界を救う。

 その為に、悪を討つ軍勢を揃える。

 私は頑張った。

 その成果が目の前にある。



 真っ暗な会議室に、蝋燭の灯り。

 会議室の円卓の席には私を含め、十三人の男女が座っている。

「議長、マスクを忘れてますよ」

「あ、すまんすまん」

 悪に正体がバレるとマズイので身分を隠す為にマスクを着用するのが義務になっている。

 通気性や会話のしやすさを考え、頭全体をスッポリ覆う三角のマスクが採用されている。

 全員が同じマスクではややこしいので、額にナンバーが振られている。

 私はNo.1だ。

 最近、これは少しおかしくないかなと感じている。

 変だな。

 採用した時はノリノリだったのだが……あの時の気持ちが消えている。

 だが、取り止めるように言うほどではない。

 愛着もあるしな。


 会議はNo.2の副議長を中心に進められる。

 副議長の正体は国のコーリン教の幹部の一人。

 正義感が強く、悪を許さないその姿勢には感銘を受ける。

「悪を保護する街など滅ぼしてしまえば良いのです」

 ただ少し、悪に対して苛烈過ぎる気がしないでもない。


「魔導軍団の方ですが、準備は整っています。
 ご命令があれば、即座に二千が動かせます」

 魔導軍を管理するのはNo.4。

 魔導軍団とは、強力な魔法使いを中心とした戦闘集団だ。

 本来は護衛程度の予定だったのだが、なぜかこの規模になってしまった。

 本気を出せば、五千人ぐらいの規模になるらしい。


「現在、確認できている勇者は八人。
 しかし、そのうち五人は活動を低下。
 原因は不明です」

 諜報活動を中心とするNo.8が報告する。

「活動を低下とは?
 戦いにでなくなったのか?」

「はい。
 ただ、それだけでなく外に出なくなったといった感じでしょうか。
 なぜか商売を始めた者もいるようで……正直、困惑しています」

「勇者の行動を理解しようとしても無駄だろう。
 あのワケのわからなさが強みなのだから」

「うむ。
 まあ、勇者は勇者で動いてもらおう。
 私達の本命は……聖女だ」



 聖女。

 神の言葉が聞ける者であり、場所によっては信仰の対象となったりする。

 神の言葉が聞けるのであれば、我らが同胞である。

 そう思い接触しにいったのだが……

 コーリン教の本部に先を越された。

 迎えられなかったのは残念だ。

「聖女が保護されているであろう建物は特定済みです。
 護衛は少数。
 いけます」

 いけますって、なんだろう?

 強行はよろしくないと思うのだが?

「俺の軍が行こう。
 ふふふ」

 魔導軍団は組織の軍だが、この場にいる者には私的に軍を持っている者もいる。

 自信満々に手を上げたNo.11も……あれ?

 No.11は我が国の王子だよな。

 王子は軍を持ってない。

 ってことは、まさか近衛軍を動かすおつもりで?

 予算とかの絡みで、軍務大臣や財務大臣が頭を抱えますよ。

 ただでさえ近衛軍は見栄えを重視してお金が掛かるんですから。

 あれ?

 聖女が保護されている建物って他国だよな。

 そこに我が国の近衛軍が行くって……問題じゃないか?

 大丈夫?

 王子……ではなくNo.11、その自信の根拠は?

「我らが正義だからです」

 ……

 おかしい。

 少し前までの私なら、それで納得していたのだが……今の私は納得できないでいる。

 私はどうかしてしまったのだろうか……


「敵襲!」

 会議室の周囲を警備していた者が声を上げた。

 私以外の者が武器を持つ。

 こんな時になんだが、みんな。

 持っている武器がちょっと……凶悪というか見た目が悪く無いか?

 正義を体現したような武器だから大丈夫?

 そうですか。





 私が四十年掛けて作った組織は潰された。

 五~六人ぐらいの襲撃者によってだ。

 相手は何者かわからない。

 ただ、魔導軍団の誇る強力な魔法使いの攻撃を防ぎ、ドラゴンのブレス並の攻撃をしてきた。

 なのに死者はいない。

 襲撃者は私達を攻撃する時に言った。

 目を覚ませと。

 不思議なものだ。

 組織は潰されたが、妙にスッキリしている自分がいる。

 私は何か間違っていたのだろうか?

 四十年前に聞いた神の声は間違いだったのだろうか?

 神よ。

 今一度、声を聞かせてください。


「状況って変化するから……ごめん」


 後日、聖女から伝えられた神の言葉である。



+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ