表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
210/978

太陽城の技術力


 太陽城の城内で育てられていたダンジョンイモは、一部を外の畑に植え替えた。


 いきなり全部を植え替え、全滅させたら申し訳ないからな。


 あと、室内で育てているダンジョンイモを外で育てても大丈夫なものかとの不安もある。


 ダンジョンイモのために、地下洞のようなものを作ったほうが良いのだろうか?


 太陽城の地面は、薄い場所でも三百メートルはあるらしい。


 ちょっと掘った程度で底を抜くことはないだろう。


 ただ、中央には城の地下が拡がっているので、深く掘るのは勘弁してほしいと言われている。


 まあ、地下洞が駄目なら屋根を作れば良いだけだろうけど……


 当面は植え替えたダンジョンイモの観察待ち。






 さて、空を飛ぶ太陽城。


 保温石から精製した燃料を使った魔法動力。


 ルーやティアたちの話では、魔法技術の凄かった時代の残滓だそうだ。


 その残滓でも、今の魔法技術よりも圧倒的に上。


 分析したり複製できれば、色々と役に立つのではないだろうか?


「馬に乗れるからと、馬を育てることを期待されても困ります」


 質問に対するベルの返答。


 つまり、操縦者と技術者は別、もしくは操縦者と生産者は別ということだろうか。


 車の運転手だって、全員が全員、車の整備ができるワケじゃないしな。


 ましてやエンジンを部品から作るのは無茶か。


 それでも、知っている部分をルーが聞き取り、紙に残している。


 ただ、あまり役に立たない。


 どういうことかというと、ベルの知識の大半が技術の完成の上に成り立っているからだ。


 無理やりに例えると……スマホやパソコンの概念が無いのにOSやアプリケーションの話をされるような感じだろう。


 でもって、ベルにスマホやパソコンの概念を説明できる知識がない。


 できるのはOSやアプリケーションの操作方法と……


 ルーの見立てでは、今現在の魔法学のトップを集め、百五十年ぐらい研究に没頭させればなんとか……らしい。


 ちなみに、そのトップに入るルーとフローラは遠慮しますと言っている。


 ルーは、ゴールが決まっている研究をする気にはならないそうだ。


 知識欲の塊ならともかく、そうでないなら面白味は感じ難い。


 お金になるのも先の話だしと。


 フローラは、発酵食品の研究に忙しいからと。


 そう言えば、納豆は思ったよりも発酵が早くて驚いた。


 俺の感覚だと十日ぐらいかなと思っていたのだけど、一日ぐらいで菌が豆を覆い尽くしていた。


 なので最初は発酵が進みすぎて失敗。


 二回目は数時間おきにチェックし、丸一日ぐらいで発酵は十分。


 その後、発酵を抑えるために低温で熟成させることに気付くまで、数回の失敗を重ねた。


 まだ量産はしていないが、試作段階での評判は上々。


 ただ、独特の匂いに駄目な人は駄目といった感じになっている。


 俺もあまり得意ではない。


 ダンジョンイモと同じく、美味しく食べる方法を探そう。



 話を戻して。


 太陽城の魔法技術を、口頭で学ぶのは無理っぽい。


 となれば資料はとなるが、太陽城の苦難の歴史の前に屈している。


 つまり、資料も無い。


 あるのは……書斎をはじめとした城内各所に残っている様々な文献。


 これは太陽城ができた当初の物もあれば、太陽城に訪れた者が置いていった物もある。


 なので多岐に渡って雑多な内容。


 魔法技術関連もあるにはあるが、ベルの知識と同じく役に立たない。


 残念。


 ただ、資料としては貴重らしいので他の本と一緒に譲ってもらった。


 俺の屋敷のホールに本棚を設置。


 住民の一部が楽しく読んでいるが……内容は理解できているのだろうか?


 笑っているので、物語系の話があったりするのかもしれない。


 今度、俺も読んでみよう。






 現在、保温石を大量に補充した太陽城は、死の森の外周を一年掛けて周回するコースが設定されている。


 進行方向は反時計回り。


 このコースになったのは、まずはゴウの意見。


 太陽城は移動力は重視されていないが、同じ場所に居続けるよりは移動したいとのこと。


 ゴウの役割が運航関連にあるので、移動しないと役目が無いのだそうだ。


 クズデンたちの世話をする役目じゃ駄目なのかと思ったが、アイデンティティーの問題らしい。


 なるほど。


 なので移動することになった。


 しかし、大樹の村所属となったので、死の森の外に出られると問題になるかもしれないという不安が出た。


 ルーたちは気にするなと言っていたが、即時に連絡できる場所じゃないのは問題かなと思う。


 なので太陽城は死の森の上空だけを移動することになった。


 それならばと、死の森の外周部を周回するコースが提案され、可決。


 大樹の村から見て、冬に北、春に西、夏に南、秋に東の上空に太陽城が位置することになる。


 ……


 大規模なカレンダーかな?


 慣れると、太陽城の位置で時の進みを確認できるかもしれない。




 移動する太陽城だが、そこに行くには飛べる種族に運んでもらうしかないので多少面倒。


 なので移動方法が検討された。


 その前に確認。


 転送装置みたいなのは無いのかな?


 無いそうです。


 太陽城ができた頃は、転移魔法は禁止魔法。


 使用者は即逮捕、習得も違法だったらしい。


 どうしてだと思うが、普通に防犯のためだった。


 確かに悪いことがやりたい放題だしな。


 使用者に自制が求められる魔法だ。


 ……ビーゼル、始祖さん。


 うん、大丈夫だろう。


 現在では転移魔法は犯罪ではないが、家はおろか村や街の中に直接移動しないのがマナーとなっている。


 なるほど。



 さて、移動方法だが俺の知識では、気球、飛行船。


 さすがに飛行機の知識は無い。


 他の者の意見では、飛行魔法、転移魔法の習得。


 気の長い話だった。


 とりあえず、俺の意見に山エルフたちが食い付いたので作ってみることにしたいが……


 気球にしろ、飛行船にしろ大きくて丈夫な布が必要だ。


 魔法で強化できるらしいが、ザブトンが起きるのを待ったほうが良いだろう。


 飛行船の船体部分だけでもと、山エルフたちが意気込むが、止める。


 技術は一歩一歩。


 太陽城のことで学んだ。


 なのでまずは気球。


 それも人が乗るサイズではなく、小型のものを実験に。


 ガッカリしない。


 カゴ部分はともかく、安定して気球の内部に熱を送る装置は大変だぞ。


「そうですね。

 頑張ります」


 良い返事に満足。


 まあ、当面は、飛行できるものに運んでもらおう。




 色々と考えると、太陽城から与えられた技術に大した物が無いように思える。


 だが、安心してほしい。


 凄い技術があった。


 装置が太陽城に固定されているので他では生産できないし、生産量も少ないのが弱点だが、これは凄い技術だと俺は思う。


 缶詰。


 そう、太陽城は缶詰を作ることができた。


 悪魔族、夢魔族はダンジョンイモを生産した後、缶詰にして保存していたのだ。


 もちろん、缶を作るには鉄が必要となる。


 しかし、薄い鉄の缶が作れるのは凄い。


 密封できるのも凄い。


 開け方は……缶切りが必要か。


 簡単に開くタイプでないのが残念だ。


 しかし、缶詰。


 食品の長期保存が可能となる。


 生産量が少ないのが本当に残念だ。


 日産、十個とは。


 しかし、十日で百個。


 百日で千個。


 年間で考えれば、三千個。


 うん、いいんじゃないかな。


 マイケルさんが喜ぶと思う。


 ゴウやベルの仲間が目を覚ませば増える可能性があるとのことで、期待したい。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] そういや納豆は結構前で、最近芥子が云々言ってるからこの時点ではまだわかってないのか。
[一言] 村を中心に死の森の外周部を周回するなら公転でそれからわかるのは季節のような…(広義で時の範疇かもしれんが)自転はなし?
[一言] さすが発酵の美少女フローラ。もう納豆をものにし始めたか……(もしかして名前の由来腸内フローラから…?)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ