クイズ大会の夜
夜は、予定通り宴会。
ただし、明日が本番ということで抑え目に。
来賓で帰る者はいなかった。
急な予定変更、申し訳ない。
魔王国からの来賓、ホウを改めて見ると……
真面目で寡黙な女性といった感じだろうか。
年齢は……わからん。
見た目は二十代。
背中の真っ赤な翼に比べ、服装は地味目。
四天王の一人で、財務担当とビーゼルに紹介された。
考えてみれば、その四天王が全員揃っているけど大丈夫なのかな?
ホウは現在、ドワーフたちがメインのテーブルに座り、黙々と飲んでいる。
会話はない。
いや、会話はあるのかな?
言葉にせず、目で語っているだけで。
なかなかのペースでお酒を飲んでいるけど、大丈夫だろうか?
お酒だけじゃ駄目だぞと、食事を差し入れておく。
グラッツはロナーナのいる二村住民がメインのテーブルに。
仲の良いことだ。
ビーゼルは共に三村住民がメインのテーブルに。
三村住民のケンタウロスたちは、ビーゼルの紹介だったからな。
時々、来てはいるから経過は知っているだろうけど、住民たちとジックリ話はしていない。
良い機会というヤツなのかな?
そういえば、前に頼んだ三村住民の知り合いを探す件はどうなったんだろう?
祭りの後で話を聞こう。
と思っていたら、ビーゼルが俺の所に来てその話が出た。
なんでも、二十人ぐらい見つけたが、ここへの移住希望は半々。
移住希望の者も、これまでの生活があるので即座には来られない。
少数ずつになるが、構わないかと。
全然問題なし。
一応、三村住民たちの最終許可で移住ということで。
ユーリはフラウや文官娘衆たちと……食事2、お喋り8。
内容は……愚痴が多いなぁ。
聞かなかったことにしてスルー。
食事の割合を増やすように、甘味を差し入れ。
夜に甘味は嫌われるかな?
大丈夫、気にしない方々でした。
フラウ、文官娘衆は明日もあるから徹夜は止めた方が良いぞ。
ランダンは……マイケルさんとチェスをしながら酒を飲んでるな。
会話は多岐に渡っている。
というか酔っ払いの会話だな。
話の繋がりがよくわからない。
間にあるチェスの盤面も酷い。
互いの王様、不在なんだけど?
……
氷水をプレゼント。
本番は明日だぞー。
フーシュは一村住民がメインのテーブルに。
フーシュはなかなか会話の輪に加われなかったが、一村住民のリーダーであるジャックが話題を振って場を持たせている。
話題の内容は、いかに生き残るか。
戦闘のコツを教えてください?
フーシュにそんなの聞いて大丈夫か?
彼女は神官だろ?
まあ、知識は豊富か。
フーシュも嬉々として語っているしな。
ドライム、ドース、ライメイレンにラスティを加えてテーブルを囲んでいる。
ハクレンは夜更かし禁止なので、夜は遠慮したのかな?
話題のメインは、ハクレンの子供が男か女か。
名前はどうするか?
後は……ドースの巣に来た暗黒竜ギラルの娘。
ドラゴンにしては珍しく大人しいので、大丈夫かと心配する内容と、そろそろお相手を探す時期で良い相手はいないかどうか。
……
あのテーブルには近づかないでおこう。
始祖さんは……死霊騎士、猫、酒スライムという変なメンバーのいる場所でまったりしている。
うん、ほんとうにまったりだ。
邪魔しないでおこう。
ガルフは獣人族たちの輪に加わって、普通の飲み食い。
ガットの剣を見て、品評みたいなこともしているが……
酒を飲みながら刃物を扱うのは危ないから止めるように。
ラミア族と巨人族は、違う場所ではあるがダンジョンに住む者同士として交流をしている。
仲が良さそうでなにより。
そういえば、ブラッディバイパーに関して、ラミア族はどう思っているのだろうか?
あ、全然気にしてないと。
狼が同じ四本足で歩くという理由で、牛や豚を同類とは思わないのと同じ。
なるほど。
さて、昼を振り返ると……不手際はあったがそれなりの運営だった。
特に食事関連。
鬼人族メイドの食事処はいつも通り盛況として、今回は二村、三村に何か食事一品を出すようにお願いした。
もちろん、食材は大樹の村持ち。
各村も出店的なものでも参加してほしかったのと、ミノタウロス族やケンタウロス族の家庭料理が知りたいなと思って。
二村のミノタウロスたちが出したのは、野菜オンリー炒めのようなもの。
炒める時に使う油のせいで、少しクセのある味付けだったが悪くはない。
マイケルさんにわざわざ注文した油だから、このクセ部分が大事なのだろう。
ボリュームが多いのが問題かな。
ロナーナの作った野菜オンリー炒めは、グラッツが独占していた。
ケンタウロスたちは、豪快な牛の丸焼き。
村の牛ではなく、これもマイケルさんに注文した牛。
絞めてからの日数指定をしていたから、その辺りが大事なのかな?
ちゃんと中にも火が通るように開き、串に刺して回転。
本来の味付けは塩のみらしいが、美味しい方が良いという理由で醤油や味噌を使っていた。
美味しかった。
六頭の牛肉を用意していたけど、夜には全部消えていた。
たぶん、一番食べたのはクロたちだろう。
綺麗に列を作って尻尾を振りながら焼き上がりを待たれ、ケンタウロスたちが少し困っていた。
一村には出店のお願いはしていない。
まだ村での生活に慣れてない部分もあるだろうし、お祭りにも初参加だからだ。
今回は雰囲気を掴むことに集中してもらい、来年には出店をお願いしたいと伝えている。
一村住民たちは納得してくれたが、何もしないのは心苦しいと余興をやってくれた。
余興は演劇。
有名な話らしいが、俺は知らない内容だった。
ただ、分かりやすい起承転結なので何度観ても大丈夫な作り。
話を知っている者たちは、どこでどう盛り上がるかわかっている感じだった。
水戸●門とか暴れん坊●軍みたいな感じかな?
練習はしていたようで演技はそれなり。
ただ、演出というか衣装はいつもの格好、背景やBGMがないのでシチュエーションを想像し難いと思っていたら……
山エルフとリザードマンたちがそこらの物を並べて背景代わりに。
ザブトンたちが衣装を即行で作って着せ、ハイエルフ、獣人族たちの演奏が加わって最後の方はちゃんとした演劇になっていた。
始祖さん、幻影魔法はやり過ぎじゃないかな?
最後、舞台に虹が出て綺麗だったけど。
まあ、良い演劇だった。
内容が人間の英雄がドラゴンに挑む話だったので、ドースたちの顔は微妙だったけど。
「これってワシの父の話かな?」
「とすると、前座でやられたのが貴方ってことになりますけど?」
「では違うな。
ワシ、人間に負けたことないから」
しかし、この演劇から始まった余興大会とクイズ大会で時間を使ってしまい、本来の山崩しができなかったことは問題だな。
クイズ大会の見積もりが完全にミスだったな。
一時間もあれば終わると思っていたのに……
問題の難易度調整が課題だな。
夜も更けてきた。
お祭りは明日もある。
子供たちはそろそろ寝るように。
大人もできるだけ徹夜は控えるように。
アームレスリング大会やチェス大会もいいけど、本番は明日だから。
力尽きないように。
模擬戦は止めておこう。
クロたちには悪いが、一部は警備として頑張ってもらう。
俺?
俺はしっかり寝るよ。
なんだかんだで忙しいし、背中のウルザもベッドに運ばないといけないしな。
日中、元気に動き回っていたウルザは夕食を食べた後にパタンと電池が切れるように寝てしまった。
子供だからわからなくもないが、俺の背中に飛びついてから寝なくても良いと思うが?
まあ、信頼の表れと思うことにしよう。
だからルー、ティア、羨ましそうな目で見ないように。
ウルザをベッドに運んだ後なら……あー、やっぱなし。
なしだからな。