親子の会話
僕はアーロン。
マーロン=ゴロウンの息子。
現在はゴロウン商会とは無関係の商会を立ち上げ、勉強中。
ああ、忘れていた。
僕の年齢は二十と二つ。
独身。
でも、奥さんの募集はしていない。
勝手に結婚するなと父から言われているから。
それに文句はない。
父は僕の相手を選んでくれているのだろうから。
……
選んでくれているよね?
僕、何人かに求婚されたけど断ったよ。
相手が誰でも文句は言わないから、ちゃんと選んでいてよ。
僕はシャシャートの街に到着した。
うーん、やはりいい。
五村もいいけど、シャシャートの街は格別だ。
なにせ僕の育った街。
生まれた場所は違うんだけどね。
物心がついたときには、この街にいた。
それからずっとこのシャシャートの街で……
あ、いや、それなりにいろいろな場所に連れていかれたかな。
でも、実家はシャシャートの街。
祖父と父から、勉強のためと追い出されたけど。
しかし、僕は戻ってきた。
とりあえず、マルーラでカレーを頼む。
うん、やはり美味しい。
お代わりの二杯目のカレーを食べていると、僕のいるテーブルに顔の上半分を覆うマスクをつけた男が座った。
父だ。
そのマスクは?
「犬だ」
いや、そうじゃなくて。
「口もマスクで覆うと、飲食できないだろう」
そうでもなくて。
「お前はゴロウン商会とは無関係の商会のトップ。
私と接触していることを不必要に知らしめる必要はない」
シャシャートの街なら、僕と父の関係は有名なんだから、べつに隠さなくてもいいんじゃないかな?
それに、無関係の商会だからこそゴロウン商会の者と会っても変じゃないと思う。
「いや、しかしだな」
そのマスク。
余計に注目を集めていると思うよ。
「……」
父はマスクを脱いだ。
うん、父だ。
久しぶり。
「久しぶりだな。
食べているところを悪いが、報告を聞きたい」
食べ終わったら、そっちに行くつもりだったんだけど?
「事務所はいま荒れててな。
落ち着いて話せない」
だからって、マルーラで話して大丈夫?
「大丈夫だ」
父がそう言いながら、手の平サイズの魔道具を見せてくれた。
音封じの魔道具だ。
それをテーブルの中央に置けば、このテーブル内なら会話は通じるけど、隣のテーブルの席で聞くことはできない。
密談用の魔道具。
それなら安心。
なにから聞きたいの?
「東の様子は?」
以前とは大違い。
思ったより発展してた。
だいたいの場所で銀貨も使えたよ。
「商会の動きは?」
ゴロウン商会も頑張っているけど、ダルフォン商会が強いね。
どこに行ってもぶつかる。
「まあ、あそこは魔王国の商会連合みたいなものだからな」
その連合内での連携が強いところは、商売の大小に関わらず融通が利くから、僕じゃ手が出せなかったよ。
「ふむ」
でも、そういったところでも五村の品は強かったかな。
醤油、味噌、マヨネーズ。
あと、カレーなどのスパイスとか。
ゴロウン商会が乗り込めば切り崩せるんじゃないかな。
「そうだろうが、手を広げるにはどうしてもな」
貴族の後ろ盾は十分あるでしょ?
ブリトア侯爵家を筆頭に、クローム伯爵家、プギャル伯爵家、グリッチ伯爵家、ドロワ伯爵家……
僕が小さいときは、まるっきり相手にされなかったのにね。
「会頭が大樹の村と関わってからな。
なんにせよ、それらを使って手を広げることはない。
そういう方針だ」
大樹の村と五村を重視?
「それと、海運に力を入れることだ」
ウルザさんが拠点にしている街は?
「あそこには商会から内政の手伝いを何十人か送り込んだが、先がどうなるかまだわからん」
ヨウコさまみたいな指導者がいないと厳しいかな。
「どうしてもな」
ウルザさん、アサさん、アースさんは内政のトップって感じじゃない。
あの強そうなラナさんも、たぶん内政はやらない。
こっちで用意するのは?
「あそこの住人の内訳、知っているのか?」
荒くれものが大半でしょ。
「そうだ。
つまり、そういった者をまとめる武力を持ち、数万人規模の街の内政に通じる必要がある」
やっぱりヨウコさまじゃないと無理か。
「あとは……シャシャートの街の代官であるイフルスさまとかな」
どっちも動かせないね。
あ、ミヨさんは?
「ミヨ殿なら大丈夫だろうが……ミヨ殿を動かすぐらいなら、大樹の村は新しい人材を出してくるだろう」
羨ましいなぁ。
ヨウコさまやミヨさんほどの人材が次々出せるんだから。
「まったくだ。
だが、ゴロウン商会は大樹の村のやることに口を出さない。
求められない限りはな」
大樹の村を相手に、調子に乗らないってやつだね。
「そうだ。
それを忘れるな」
わかってるよ。
ああ、そうそう。
コンテナ。
あれ、便利だけど巨大な滑車装置がないと、積み降ろしがむずかしいね。
「東の港で見たのか?」
うん。
あちこちでね。
ミノタウロス族が集団で運んでたよ。
そういった力持ちの集団がいないところは、船の上でコンテナを開けて中身を運び出してた。
「すべての港に巨大な滑車装置を設置してもらいたいが……予算の問題もあるからな」
いま、巨大な滑車装置があるのは?
「シャシャートの街以外だと、六竜神国の港とヤメ島の港だな」
ヤメ島?
「通称だ。
正式名は大樹の島」
なんで?
大樹の島でよくない?
「大樹の島を、大樹の村と勘違いする者が出てきそうだからだ」
あー、たしかに出てきそう。
「だから、ゴロウン商会ではその島の管理人であるヤメさまの名で呼んでいる」
なるほど。
その島、儲けに繋がりそうなの?
「どうだろうな。
会頭の話では、ほぼ無人島だそうだから」
五村は、ちょっと前まで強い魔獣や魔物の徘徊する森だったよ。
「だな。
会頭はヤメ島に商会関係者を派遣する準備をしている」
さすがだね。
次、その島に寄ってから東に行こうかな。
場所はどのあたり?
「悪魔の島だ」
…………
え?
「ヤメ島は、もともと悪魔の島と呼ばれる場所だ」
船乗りや海の種族が恐れるあの?
「そうだ。
ただ、以前は誰もが感じられた不気味な気配が、十数年前から霧散しているらしい」
えーっと、大樹の村の関係者がなにかしたのかな?
「わからない。
しかし、ヤメさまは大樹の村の庇護下にあると、いろいろなルートから連絡があった」
いろいろなルート?
「いろいろなルートは、いろいろだ。
聞くな。
死ぬぞ。
心が」
あ、うん。
聞かない。
「島に寄るのはかまわないが、ヤメさまに迷惑をかけないようにな」
わ、わかってる。
そう僕が返事したところで、僕たちのいるテーブルに一人の男性が着席した。
頭の上半分を覆うマスクをした男。
祖父だった。
えっと……
「狼を模している」
そうじゃなくて。
祖父と父は親子なんだなぁとあらためて思った。
村長 「ヤメさんのこと、ゴロウン商会に伝えておこうか」
一同 「承知」
ミヨ 「ルート1」(ほか、シャシャートの街関係者多数から)
魔王 「ルート2」(ほか、魔王国貴族多数から)
グッチ 「ルート3」(ほか、古の悪魔族多数から)
ヨウコ 「ルート4」(ほか、五村関係者多数から)
ウルザ 「ルート5」(ほか、神代竜族多数から)
海の種族「ルート6」(いっぱい)
商会 「余計なことはしません」




