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マーロンの息子のアーロン



 僕はアーロン。


 父マーロンの息子。


 僕の祖父はなんと、あのゴロウン商会の会頭でもあるマイケル=ゴロウン。


 つまり僕は、マイケル会頭の孫。


 ちゃんと認知されているから、アーロン=ゴロウンと名乗るべきなんだけどいまは名乗れない。


 だって、いまの僕はゴロウン商会と無関係な商会のトップだから。


 追い出されたんじゃない。


 ゴロウン商会の名を使わず、商売の勉強をしている最中だから。


 僕としてはゴロウン商会に入って商売を学びたかったんだけど、祖父と父が口を揃えて断ってきた。


 会頭の孫だと知られているから、ゴロウン商会ではなにも学べない。


 ちやほやされるだけだ。


 とりあえず、自分で商会を立ち上げるところからやってみようか。


 くっ。


 仲のいい祖父と父だ。


 しかもこの二人、下手に言い返したら倍になって若いころの苦労自慢をしてくる。


 もう何度も聞かされた。


 わかっている。


 僕は従うしかないのだと。



 と言っても、ただ放り出されたわけじゃない。


 支度金として銀貨を五百枚ほどもらったし、商売を指南してくれるベテランもつけてくれた。


 護衛もだ。


 ゴロウン商会と無関係な商会を立ち上げることは、簡単だった。


 実際は、ゴロウン商会と無関係を装う商会だからな。


 事情を察してくれる人が、いろいろと助けてくれた。


 もちろん、これでは勉強にならない。


 祖父と父から、次の指令が来た。


 ゴロウン商会の影響が薄い場所に行き、商売をするようにと。


 つまり、ゴロウン商会の本拠地のあるシャシャートの街や、五村から離れろと。


 西に行けば王都がある。


 しかし、あそこは魔王国で最大手のダルフォン商会がある。


 東に行くしかない。


 東は……言葉を濁さずに言えば、辺境。


 魔王国内だけど、文化が違ったりする。


 場合によってはお金が使えない。


 そんなところに行って、商売。


 いや、商売できるようにしろってことなんだろうけど。


 祖父も父も、若造に無茶を言うなぁ。




 そんなこんなで、文句を言いながらも旅立ったのは五年ぐらい前になるかな。


 これまでの苦労を語ると、めちゃくちゃ長くなるから少しだけ。


 思ったより辺境じゃなかった。


 場所を選べば、ちゃんと商売ができた。


 そして現在。


 僕はシャシャートの街に報告に向かうため、旅をしている。


 荷馬車が三台。


 護衛が十人。


 引き連れて。


 いまの場所は……


 もう五日ほど旅をすれば、大樹の村のウルザさんが拠点にしている廃城に到着するかな。


 ウルザさんが拠点にしている廃城には去年、一度、行っている。


 大きな街になりそうなので、初期(いま)のうちに関わろうとしたら、祖父ががっつり押さえていて入る隙がなかった。


 酷い。


 でもまあ、売買ができないわけじゃないし、旅の中継点にはできるので活用はするけど。



 などと考えていたら、トラブル発生。


 個々に武器を持ち、僕たちの進路を塞ぐ集団。


 山賊だ。


 あー、まだこのあたりだと山賊がいるんだ。


 ちょっと感動。


 山賊の数は……見えるところに二十人ぐらい。


 雰囲気的に、あと十人ぐらいは隠れているかな。


「ここを通りたいなら通行料を払ってもらおうかな」


 などと言っている山賊の頭(かしら)らしき人物の腕を取り、肘を極(き)める。


 祖父直伝のアームロックだ。


 山賊の頭の悲鳴があがる。


 うーん、駄目だな。


 僕は祖父ほどの力量はない。


「馬鹿がっ!

 囲まれているときにやるこっちゃねぇだろうがっ!」


 山賊の頭の横にいた男が、僕に襲い掛かってくる。


 たしかに、多数に囲まれているときに動きを止める極め技を行なうのは失策。


 でもそれは並みの人の場合。


 僕は山賊の頭の肘関節を砕き解放、襲い掛かってきた男の腕を取り、肘を極め、壊す。


 襲い掛かってきた男が悲鳴をあげた。


 うーん。


 もっとスムーズにやらないとなぁ。


「な、なんだこいつ。

 執拗に肘を極めているぞ。

 ゴロウン商会かっ!」


 あれ?


 それでバレるの?


 一応、否定しておこう。


「なに、狙いがわかっているんだ。

 いくらでも防ぎようがある」


「あと、一人ずつ行くな。

 全員でかかれ」


 そうだね。


 だから、僕と一緒にいた護衛たちがそうさせないように動く。


 護衛たちの仕事は僕を守ることじゃない。


 複数人が同時に僕を襲わないようにするのが仕事だ。


 つまり、ちょっと邪魔するだけ。


 それで十分。


 タイミングがずれた相手を僕が一人ずつ肘を壊していく。


 ああ、さすがに肘を取られないように警戒している。


 だけど甘い。


 僕がアームロックだけだと?


 僕にはもう一つ、技がある。


 祖父のアームロックに対抗した父が愛用している三角締め《トライアングルチョーク》が。


 でも、こっちは首を締めるから、悲鳴をあげさせることができないんだよなぁ。


 これは僕が悲鳴を聞きたいのではなく、相手集団に仲間の悲鳴を聞かせることで戦意を落とす方法。


 静かに倒れていく仲間だと、恐怖を感じにくい。


「いや、十分に怖いよっ!」


「あいつに近づくな!

 馬車だけ狙え!」


 いや、そろそろ諦めたほうがいいんじゃないかな?


 逃がさないけどね。



 山賊を全員、逃さず倒した。


 降伏した者も、気にせず締めた。


 山賊の言葉など、欠片も信用できないから。


 そうして捕まえた山賊は三十一人。


 こちらに被害らしい被害はない。


 あー、三角締めのときに地面に転がったから、僕の服が汚れたのが被害と言えば被害かな。


「お見事です。

 坊ちゃん」


 商会を立ち上げる時に僕につけられたベテランが、そう褒めてくれる。


 そろそろ坊ちゃんはやめてほしいが……


 まあ、実力的には坊ちゃんと呼ばれても仕方がない。


 祖父ならアームロックだけで、父なら三角締めでだけですべて倒しただろうしな。


 うーん、僕は商売人としてはまだまだだ。


 自分の得意技(フェイバリット)を持ちたい。


「相手に馬乗りになってからの打撃は?」


 あれは得意技とかじゃなく、ただの戦型(スタイル)だから。


 なんにせよ、魔王国で商人をやるには武力。


 武力が必要。


 交渉のときとか、絶対にいるから。


 あと、こういった自衛に役立つ。


 うん。


 倒した山賊は縛り上げ、ロープに繋いで歩かせる。


 腕や首へのダメージに集中したので、歩くのに問題はないはず。


 彼らは……ウルザさんのところまで連れて行くのは迷惑かな。


 途中の村で引き渡せばいいか。



 三十人を超える山賊は途中の小さな村で引き取ってもらえず、結局はウルザさんが拠点にしている廃城…………いや、街まで山賊を連れてきてしまった。


 まあ、仕方がない。


 でも、ここならちゃんと裁いてくれるだろう。


 担当官に山賊を渡す。


 街にウルザさんはいなかったけど、アサさんやアースさんに会えた。


 ウルザさん、大樹の村に戻っているんだ。


 へー。


 ああ、そろそろ拡大を止めないと内政が破綻しちゃうのね。


 すでに破綻の兆しがある?


 大樹の村の村長から、こっそり資金提供を受けてなんとかしていると。


 まあ、街が大きくなっているからね。


 しかし、これだと食料の自給も追いついていない感じかな?


 街の周囲には畑が広がっているけど、そこらの土地を耕したからってすぐに畑になったりはしない。


 何年も土地を改良して、やっと畑になる。


 大樹の村の関係者は総じて優秀なんだけど、畑関係の見積りだけは甘いんだよなぁ。


 耕したからって、すぐに畑にはならない。


 覚えておいてほしい。


 あ、食料の買い付けならやるよ。


 大丈夫?


 すでに祖父がやってるのね。


 ぬう。




 ウルザさんの拠点の街で、まったり滞在。


 シャシャートの街に報告しに行かないといけないけど、サボっているわけじゃない。


 飛行船が来るのを待っているだけ。


 運よく、予約が取れたから。


 飛行船の出発は三日後。


 それまでは、この街を調査。


 なにが不足していて、なにが余っているか。


 商店などを見てまわったり、商人たちから話を聞いたり。


 アサさんやアースさんに聞けば教えてもらえるだろうけど、自分で調べる。


 楽をすると、僕につけられているベテランが、祖父や父に報告するから。


 うん、彼は僕の指南役であり、監視役でもある。


 ちなみに、彼に僕のアームロックや三角締めは通じない。


 まだまだですねと笑いながら、技を返してくる。


 さすがゴロウン商会のベテラン。


 強い。


 僕ももっと鍛えないと。


 そう思っていると、危険な気配を感じた。


 えーっと、あの強そうな女性は誰かな?


 僕は近くにいた住人に聞いた。


 ラナさん?


 ああ、やっぱり大樹の村の関係者ね。


 うん、敵にまわしちゃ駄目な感じがしたから。


 でもって、僕が連れてきた山賊を従えているけど……


 牢屋で無駄飯を食わすより、働かせるのね。


 ラナさんの監視下なら、誰も逃げないか。


 ……


 あ、逃げた。


 そっか。


 力の差が理解できないか。


 街のはずれで、大きな爆発があった。


 怪我人はでたけど、死者はいなかったそうだ。





アーロン 「偽名で●(ア行二文字目)ーロンとか●(ア行三文字目)ーロンを名乗ることがあります」


アーロン 「ゴロウン商会で働きたい」

マーロン 「息子相手だと、どうしても手加減するからな」

マイケル 「それでは勉強にならない。外に出なさい」

アーロン 「厳しい」


マーロン 「とりあえず、準備金に銀貨千枚(一億)でいいかな?」

マイケル 「馬鹿者。それでは足りん。倍にしなければ」

マーロン妻「甘やかしてはなりません。銀貨十枚(百万)で十分です」

アーロン 「……」


マイケル 「よし、孫よ。行くのだ!(ベテラン手配、護衛手配)」

マーロン 「これ、忘れ物(銀貨五百枚)。すまん、これしか用意できなかった」

アーロン 「父さん……」

マーロン 「ふっ、成果を出すまで帰ってくるんじゃないぞ!」

マイケル 「待て、報告は必要だ」

マーロン 「では、三年に一回ぐらいは顔を出せ!」

マイケル 「んー、なにかあったら困る。年に一回でいいんじゃないか?」

マーロン 「たしかに! 年に一回は顔を見せろ! 半年に一回でもいい!」

アーロン 「……行ってきます」



アース  「ラナさま、街での魔法の使用は……」

ラナさん 「ちゃんと被害が出ない場所で使ったぞ」

アサ   「えーっと……」

住人A  「ラナさんを押さえるために、ウルザさまを呼び戻したほうがいいんじゃないかな?」

住人B  「馬鹿、爆発が二倍になるだけだ」


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― 新着の感想 ―
これゴロウン商会が頭ゴロウンなだけであって、他の商会も商会ごとに決め技があるとか言わないよね……?
2026/11/04 08:55 ハイゾコーハ卿
1100回おめでたい アーロンくんは年齢的には20代前半くらいかな? ウルザ拠点まで来たという事とは、その先の有人島避暑地まであと少し。行くか分からないけど、行く場合は商人として何か才覚示せるのかどう…
汚くて臭そうな賊を相手に関節技や絞め技はちと辛い
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