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ヤメののんびり島生活 その三


 あーしの名はヤメ。


 大雨は二日続き、三日目の昼に晴れた。


 太陽が眩しい。



 親鳥たちが羽ばたいて島の各地に向かった。


 嬉しそうに飛んでいる。


 鶏たちは駆けだした。


 雨で小屋に閉じ込められた鬱憤(うっぷん)をはらすように。


 それはいいけど、閉じ込めていた鳥小屋、鶏小屋がひどいことになっている。


 掃除しないと雛(ひな)やヒヨコたちがかわいそうだからね。



 まずは鳥小屋。


 雛は動かせないというか、雛や巣を勝手に触ると怒られるので小屋の床だけ掃除。


 親鳥たちが戻ってくるまえに、ぱぱーと終わらせる。


 ついでに、抜けた羽根も集めておく。


 換金できるからね。



 鶏小屋は……


 ヒヨコたち、とりあえず小屋から出ようか。


 その柵の内側にいるように。


 何羽かの鶏が見張ってくれるのは、助かる。


 いまのうちに、小屋の掃除。


 卵も集める。


 もちろん、鶏たちが育てない卵。


 鶏たち、育てる卵と育てない卵をしっかりわけているのよねー。


 育てる卵は大事にするというか、小屋の奥のほうで産むし、産んだら雌鶏が離れない。


 育てない卵は、そこらへんで産んで放置されている。


 鶏って、こんなに頭、よかったかな?


 まあ、卵を集めやすくて助かるけど。



 畑の様子を見にいく。


 途中の水路は無事だった。


 畑は……穂が倒れているのもあるけど、修復可能な感じ。


 よかった。


 畑に飛散しているゴミを回収し、修復できる部分は修復。


 添木(そえぎ)が必要そうなのには添木。


 ちゃんと道具を持ってきている。


 あーしに抜かりはない。



 畑を見終えたら、あーしは水路伝いに川に。


 川は……水位が上がり、流れも速くなっている。


 うーん、雨上がり。


 でもまあ、島(ここ)の川はすぐに水位や流れが戻るんだけどね。


 とりあえず、水路の取水口周辺に貯まっているゴミを回収。


 水路を堰(せ)き止めるほどじゃないけど、目立つ程度にはゴミが引っかかってるからね。


 取れる範囲で。


 無理せず。


 ゴミを回収しようとして、川に落ちたなんて笑われてしまう。



 回収したゴミが多くなったので、処分のために海辺へ。


 海辺に行けば……見慣れた顔の海の種族たちが、海岸のゴミを集めていた。


 元気に挨拶。


 ゴミはあそこに集めているのね。


 うん、燃やすのはわかってる。


 必要なら乾いた薪を持ってくるけど?


 火の魔法が得意な者が頑張る?


 それならいいけど、無理させちゃ駄目よ。


 海の種族は、総じて火の魔法が苦手なんだから。


 わかっていると思うけど、風向きにも注意。


 火事になっても困るしね。



 海岸のお風呂も、海の種族たちが掃除していた。


 それはいいけど、お風呂が……えーっと、なんだっけ?


 あ、生け簀(す)だ、生け簀。


 生け簀になってない?


 魚が何匹も泳いでいるんだけど?


 今日の夕食?


 違う?


 いつのまにか入ってた?


 波に巻き込まれて、お風呂に残されたのかな?


 うっかりさんな魚だな。


 ……


 食べないなら、逃がしてあげよう。


 いいのいいの。


 いまは食料に困ってないからね。


 それに、魚が食べたいなら海の種族(あなた)たちにお願いしたほうが、美味しいのを捕まえてきてくれるでしょ?



 海岸のお風呂を見たあとは、港のほうに足を延ばした。


 こっちは山エルフたちが見回りや掃除をしていた。


 あれ?


 山エルフたちは、山に作った村長の屋敷のほうを見にいったんじゃなかったっけ?


「あっちは山のなかだからか、被害らしい被害はありませんでした」


「周辺に崩落(ほうらく)もなしです」


 それはなにより。


 それで、戻って港のほうを見てたのね。


「こっちも被害はありません。

 海岸にゴミが溜まったぐらいです。

 コンテナは……」


 コンテナとは、村長が用意した一部屋ぐらいの大きさの頑丈な収納箱。


 大きさが統一されているので、船などに積みやすく、大量に輸送しやすいのが特徴。


 そのコンテナのおかげで、島の物資は順調に増えている。


「コンテナは一つを除いて無事です」


 一つ、駄目だったの?


「住居用のコンテナが駄目でした」


 住居用のコンテナとは、コンテナを改造してそのまま人が住めるようにしたコンテナのことだ。


 あーしは関わってないけど、コンテナのバリエーションの一つとして試験中だったのは知っている。


「窓の鍵が甘かったようで、風で窓が開いてなかに雨が……」


 あー。


「あと、空気の取り込み口に水がかなり溜まってました。

 排水用の仕組みもあったのですが、ゴミで塞がって排水が十分じゃなかったようです」


 試験中に判明してよかったね。


 住居用コンテナは、船に積んで臨時客室にする計画もあったから。


 島の雨より、船での荒波のほうがすごいはず。


「レポートにまとめ、大樹の村に送ります」


 うん、そういう情報は早めに共有したほうがいい。


 頑張って。


 でも、無理はしないように。


 夕食までに、戻って来てよ。




 夕食。


 今日は掃除で忙しかったから、簡単に焼肉。


 宿の庭にある竈(かまど)の上に網を置き、近くのテーブルに切った肉や野菜、海産物の乗った皿を並べるだけ。


 でも、タレにはこだわった。


 無駄にこだわってしまった。


 五村の酒肉ニーズの影響があるのかもしれない。


 あそこの焼肉は美味しかったけど、その秘密は肉だけでなくタレだと思うから。


 今日のタレのできばえは……うん、美味しい。


 でも、あーしは自分に甘いから、山エルフたちや、海の種族たちの評価を待つ。


 駄目なら駄目と言ってよー。


 お世辞とか言っちゃうと、同じのがまた出るからね。


 もう少し甘くとか、もう少し濃いほうがいいという具体的な意見も嬉しい。


 次に作るときの参考にできるからね。


 ん?


 ご飯がほしい?


 ちゃんと炊いてるから。


 欲しい人は手をあげて。


 はいはい、大丈夫大丈夫。


 たくさん炊いてるから、足りないってことはないはず。


 でも、あーし一人じゃ運べないから誰か手伝ってー。


 全員で来ちゃ駄目。


 火を見る人、残して。


 あ、忘れてた。


 山エルフ、一人。


 音楽を演奏する魔道具があるから、それを動かして。


 前に村長が来たときに持ってきてくれたやつ。


 山エルフが調整してたでしょ。


 流す音楽は任せるから。


 五村の酒肉ニーズでは、店内に音楽が流れていた。


 クロトユキも。


 洋菓子店フェアリーフェアリでも。


 つまり、食事のときの音楽はあり。


 ちょっと賑やかな夕食になった。





ヤメ  「余ったらオニギリにして夜食にしようと思っていたのに……余らなかった」


山エルフ「ミュージックスタート!」

海の種族「いえー!」

鳥   「時間を考えていただきたい(誘ってほしかった)」

鶏   「寝ている子もいるんですよ(明日の餌はミミズを期待します)」

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― 新着の感想 ―
ヤメさん、めちゃ優しいな。こう言う上司が欲しい(涙
ヤメさんの求心力
スローライフ楽しんどるな
2026/10/28 04:16 のんびりあーしさんガンバ
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