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ゴドレイク伯爵のお茶会


 僕の名はミケル。


 アルフレートくんの案内役さ。


 ……


 もう少しポーズを考えたほうがいいだろうか?


 悩む。




 アルフレートくん、カトウさん、僕の三人は、ゴドレイク伯爵の屋敷に到着した。


 いつぐらいに到着しますと事前に連絡しているので、執事が出迎えて案内してくれた。


 この執事、すごい。


 カトウさんのバイクを見ても、眉一つ動かさなかった。


 そのバイクの後部に立って乗っているアルフレートくんを見ても。


 優秀な執事だ。


 さすがに屋敷のなかにバイクで入ろうとしたのは止めたけど……


 まあ、王の前でもバイクに乗ったままだったから、降りないよね。


 ん?


 場所変更?


 庭で?


 ああ、屋敷に入らずにこっちからね。


 了解。


 この執事はやはり優秀だ。


 ちなみに僕は馬車で移動している。


 バイクに乗らないかと誘われたけど、乗る場所がなかったから。


 アルフレートくんみたいに立って乗るのは、ちょっと自信がない。


 サイドカー?


 よくわからないけど、安全に乗れるならお願いしたかな。


 まあ、それは次で。


 あ、さすがに僕は馬車のまま屋敷に入ろうとはしなかったよ。


 門前で降りた。



 ゴドレイク伯爵とどれぐらい話すかわからないので、僕が乗ってきた馬車には先に帰ってもらった。


 まあ、友好的に話が終われば、馬車ぐらい用意してくれるだろうし、友好的に終わらなかったら馬車は足手まといだ。


 帰りはどうとでもなる。


 なので現在の僕は徒歩。


 カトウさんとアルフレートくんの乗るバイクは……ノロノロと僕と同じ速度で執事さんの後ろを進んでくれている。


 執事を追い越して行きそうなのに、そういうところはしっかりしているんだよなぁ。


 僕もそういうことができるように頑張ろう。



 そうこうしていると、花が咲き誇る場所に案内された。


 急な変更だったのに、最初からここでお茶会をする予定でしたみたいにテーブルや椅子が用意されている。


 伯爵ほどとなれば、サブプランを用意しているものなのだろうか。


 それとも、最初からここでお茶会をする気だった?


 一応、周辺を警戒する。


 これは僕がなにかするわけではなく、なにかあったときにアルフレートくんやカトウさんの邪魔をしないため。


 結構、大事。



 テーブルには椅子が四つ。


 一つはゴドレイク伯爵の席として、残る三つがアルフレートくんとカトウさんと僕の席だろう。


 カトウさんは護衛だから、座らずに後方待機するようで、少し離れた場所にバイクを止めた。


 僕も遠慮したいところだけど、そうもいかないのでアルフレートくんと一緒に椅子に座る。


 そして、お茶を運ぶ執事とともに、ゴドレイク伯爵がやってきた。


 僕は何度か見たことがある。


 背は高く、体格もいい。


 レイワイト王国の内政で活躍しているけど、鎧を着込んで前線にいるのが似合いそうな感じだ。


 そんなゴドレイク伯爵は礼装だった。


 それも他国の王族を相手にするときぐらい気合が入っている。


 アルフレートくんと僕は立ち上がり、頭を下げる。


「アルフレート=マチオです。

 こちら、同行者のミケル。

 後ろに控えるのは護衛のカトウです」


 挨拶はアルフレートくんに任せた。


 僕はただの同行者だからね。


「急な招待をしてしまい、申し訳ない。

 私はサヴァルカ=ゴドレイク」


 ゴドレイク伯爵は頭を下げて、僕たちに席を勧めた。



 ゴドレイク伯爵とのお茶会は、まずはアルフレートくんが手土産を渡すことから始まった。


「たいしたものではないが、受け取ってもらえるだろうか?」


 本来、招待されたのだから手土産は必要ない。


 だけど、アルフレートくんが礼儀だからと用意した。


 出すタイミングがいまなのは、相手の出方を見てからにしようと考えたからだろう。


 僕はなにも言ってない。



 ゴドレイク伯爵はアルフレートくんからの手土産を受け取り、執事に渡した。


 そして雑談。


 内容は資料館での王子の話。


 簡単にまとめると。


 王子たちがまともになったので嬉しい。


 トイレ事業に力を入れるのにも賛成。


 汚いよりは、綺麗なほうがいいからね。


 でも、フォカ嬢たち貴族令嬢を連れ出しているのはちょっと。


 変な虫がついたらどうするんだ。


 みたいな感じ。


 そういった話が一通り終わったあたりで、やっと本題。


 ゴドレイク伯爵が合図をすると、控えていたメイドが折りたたまれた生地を持ってきた。


 生地は広げると一着分ぐらいのサイズかな。


 それをアルフレートくんの前に置いた。


「手に取って見てほしい」


 ゴドレイク伯爵がそう言ったので、アルフレートくんが生地を確認する。


「……普通の生地のように思えるが、なにか問題でも?」


「その生地、君は買うかね?」


「どういった意味ですか?

 必要があれば買いますが」


「……シルバーシルク伯爵のところで買い占めたと聞いたが?」


「ああ、交易品としてですか。

 私の売り先はかなり遠方でして、この生地では利が出ません。

 私に売り込むより、近場で交易する者にお話されたほうがいいかと」


「利が出ない理由は?」


「輸送費で売値が嵩(かさ)みます」


「高値では、誰も買わんか。

 この生地は」


「正直に言えば」


「シルバーシルクの生地は、凝った作りだからな」


「はい。

 あちらは高級感もありますし、高値になっても売れました」


 だよね。


 僕もシルバーシルクの生地は見たけど、あれは豪華だった。


 貴族令嬢たちが喜んで求めるだろう。


 対して、目の前にある生地は上等だけど、平凡。


 交易品には向いていない。


 そんなこと、ゴドレイク伯爵も理解しているはずだけど?


 なぜ、それをアルフレートくんに聞くのだろう?


「ここだけの話にしてほしいのだが……」


 ゴドレイク伯爵が空を仰いで、呟いた。


「アルフレート殿がシルバーシルクの生地を買い占めた話が、生地を取り扱う各地の商人に広まっている」


 まあ、隠していないからね。


 広まって当然。


「生地を取り扱う各地の商人は、自分たちのところの生地も買ってもらえるのではないかと期待した」


 は?


 なぜそうなる?


 シルバーシルクの生地は特徴があった。


 交易品に向いていた。


 だから、アルフレートくんは買い占めた。


 そのアルフレートくんが、普通の生地を買うとどうして考える?


 思わず、聞いてしまった。


「これまでは自分たちの生地が売れ、シルバーシルクの生地は売れていなかったからだ」


 あー……


 シルバーシルクの生地が売れなかったのは、大手の商会の妨害があったからだけど、それを知らなければそう考えてしまうか。


「勝手に期待して、勝手に増産したくせに、アルフレート殿が見向きもしないと私のところに文句が来た」


 商人が伯爵に?


「さすがに直接、言ってきたりはせん。

 ただ、商人に関係する領主たちが私に言ってきた。

 なんとかしてくれと」


 領主たちですか。


「生地を取り扱う商人は、各地の領主とも関係が深い。

 生地の生産には相互に協力しているからな。

 今回の増産にも各地の領主は金を出したのだろう」


 それで。


「最悪、武力行使で買わせるとかいう馬鹿もいる」


 ……


「もちろん、私のところで止めている。

 だが、このままでは商人に煽(あお)られて動く者もでる」


 アルフレートくんを直接狙う馬鹿はいないと思いたいけど……


「シルバーシルク伯爵のところも守らねばならん」


 そっちは……妬(ねた)みですか?


「シルバーシルクだけ儲けたからな」


 面倒な。


 そして、微妙に無視もできない。


 なにせ、シルバーシルク伯爵の娘であるパンナコア嬢は、王子の事業の手伝いをしている。


 アルフレートくんの顔見知りだ。


 そして、狙われる理由がシルバーシルクの生地の買い占めとなると……アルフレートくんは動く。


 動いてしまう。


 それを止めるため、この招待だったのかな?


「では、これを」


 そう言ってゴドレイク伯爵が、アルフレートくんに差し出したのは……


 リスト?


 十人ぐらいの領主の名が書かれている。


「動きそうな順に書いてある。

 横の数字は動員兵数だ。

 できれば、こことここは国防が関わるから、手加減してもらえると助かる」


 ……止める気はないようだ。


「煽る商人のリストはこっちだ。

 上の三つは潰れると困るから、私のほうでなんとかする。

 残りは好きにしていい」


 アルフレートくんは、承知したと二つのリストを受け取った。



 これでお茶会は終わりかなと思ったけど、まだ続いた。


「ご挨拶させてください」


 やってきたのはゴドレイク伯爵の妻、ゴドレイク伯爵夫人だ。


 普段は領地に篭って、あまり顔を出さないことで有名だ。


 領地から出て、こちらにいるとは知らなかった。


 いるならいるで、アルフレートくんと顔を繋いでおこうということかな?


「あなたがアルフレートさまですね。

 娘のフォカからいろいろと聞いております。

 なんでも、優れた美容品を取り扱っているそうで……」


 あ、違う。


 これが本命だ。


 だからお茶会だったんだ。


 僕はゴドレイク伯爵を見た。


 背が高く、体格のいいゴドレイク伯爵は、体を丸めて小さくなっていた。


「すまん。

 逆らえ……断れなかったんだ」


 僕に謝られても困る。


 あとでアルフレートくんに言ってほしい。





優れた美容品=ビーゼルの奥さんのところの美容品。アルフレートが女性向けのお土産として配っている。


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― 新着の感想 ―
さすが貴族 本命までが長い
手土産懐かしいな 獣人とのファーストコンタクトが 手土産無しで閉じ込められたとか
仰々しい前置きはあまり無かったけど、実情で困っている本題みたいな前置きがせめてもの抗いだったのかも?
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