統一王の旅の思い出とお土産
俺は統一王。
五村でティゼル嬢の父親に会うという目的を果たした俺は、帰国の準備をしている。
五村を発つのはまだ少し先だが、いつでも動けるようにしておくのが大事だからな。
ゴズラン王国の第三王女とその部下たちから、親族に無事を知らせる手紙もしっかりと預かった。
手紙のなかは確認しない。
そんな無粋なことを、王はしないのだ。
ティゼル嬢の父親やヨウコ殿、それとクローム伯から、ティゼル嬢やエカテリーゼ先生、イースリー嬢に宛てた手紙も預かった。
もちろん、手紙のなかは確認しない。
いろいろなところを敵に回しそうだから。
王は黙って預かり、黙って渡すだけ。
メッセンジャーと馬鹿にされても平気。
事実だしな。
ははは。
さて。
五村を発つまでに、やるべきことをする。
まずはラーメン。
五村にあるラーメン店を、できるだけ回る。
これは楽しんでやっているわけじゃないぞ。
ラーメンを知るためにだ。
そして、自身の目指すラーメンを見つけるため。
あと、知らない技術とか具材とか勉強したい。
可能ならどこかの店に弟子入りしたいが、さすがに俺は王。
許されない。
魔王国は貴族であっても商売ができるみたいだから、王でも弟子入りは可能かもしれないが……
クローム伯とプギャル伯から、止められた。
ぐぬぬ。
とりあえず、ラーメンを食べる。
そして、合間に野球。
野球への理解が深まり、腹も減る。
素晴らしい。
そうこうして日々を過ごしていると、いつのまにか旅立ちの日。
帰りたくない。
まだ食べてないラーメンがあるんだ。
予定に入れていたのに、臨時休業とやらで駄目になったから。
なんとかあと一日……いや、二日待ってほしい。
が、駄目。
旅立ち。
俺の部下は容赦がない。
まあ、船の都合とかあるから、しかたがないのだけど。
さすがに船の貸し切りとか無理だし。
まずは転移門を使ってシャシャートの街に行き、乗船予定の船の状況を確認。
明日の出航予定だけど、そういった予定は天候や積み荷の都合ですぐに崩れる。
「我らの荷はすでに積み込まれています。
明日の出航で問題ないので、昼までには乗ってほしいと」
わかった。
では、予定通りシャシャートの街で一泊。
シャシャートの街にもラーメンを出す店があった。
さすがラーメン。
そして翌日。
出航。
思ったより魔王国に長く滞在してしまった。
さあ、国に帰ろう。
と思ったのだが、船の行き先は六竜神国の港。
補給とか荷の積み降ろしなどで、ここで三日ほど停泊予定。
六竜神国の王都にザハーザハー殿がいるらしいので、行って挨拶する。
実は俺が国に持ち帰るお土産の大半を、ザハーザハー殿が指揮するワイバーンの群れが輸送してくれることになっている。
もちろん、俺が頼んだことではなく、ティゼル嬢の父親の手配。
でも、運ぶのは俺のお土産という名目なので、しっかりと礼を言っておく。
そのザハーザハー殿に、乗って帰らないかと誘われたけど丁重に遠慮した。
乗ったほうが早く帰れるのだろうけど、ドラゴンに乗るのは怖い。
部下たちも遠回しに断っている。
一人ぐらい、試しに乗せてみたいけど……そんなことを言った途端に、部下たちが結束して俺が乗ることになるので言わない。
王は安全に生きる。
もう一つ、ドラゴンに乗るのを断ったのは、船旅の道中に用事がある。
ラーメンの国だ。
食べたいだけじゃないぞ。
ラーメンの国に食材を届けることになっている。
実際に責任を持って運ぶのはクローム伯から依頼を受けた商会だけど、魔王国の商会だから人間の国におおっぴらに物資を持ち込めない。
表向き、魔王国は人間の国の敵だからな。
これまでも、少量の輸送に留まっていた。
そこで俺。
俺からのお土産……魔王国からの分捕り品という名目になるけど、これなら大量に運べるので、協力してほしいと頼まれた。
ラーメンの国の王には、ラーメンを教えてもらったので断ったりはしない。
しかし、食材の輸送に使われているコンテナと呼ばれる大型の箱は、なかなか便利だ。
五村のゴーレム工場で作られたものだな。
箱の大きさが同じなので積みやすい。
さらに、一部のコンテナには内部の物を冷やしたり、凍らせたりする機能がある。
それらの機能で食材を腐らせず、運べる。
コンテナを見て回っていると、家畜が入っているコンテナを見つけた。
輸送中の餌や水も、自動供給されるのか。
家畜の排泄物も自動で処理されると。
いいな。
でも、糞尿の処理には限界があるから、長旅するなら定期的な清掃が必要と。
それぐらいは許容範囲だな。
我が国にも欲しい。
そう思っていたけど、ワイバーンたちが運ぶ予定のコンテナの大半には、なにかしらの機能があった。
……
コンテナって、返さないと駄目かな?
駄目だろうな。
ティゼル嬢と話し合おう。
ラーメンの国に到着。
ラーメンの国の王に歓迎してもらった。
そして、運んできたお土産に感激していた。
とくにティゼル嬢の父親が手配した、五村の豚や鶏、それと植物の苗が嬉しいようだ。
あー、家畜ですけど、最初は増やす方向で、苗は失敗してもかまわないから環境と生育の記録を取るようにと言ってましたよ。
ラーメンの国の王と話をして、思い出したが……
五村に宿泊中、夜中に遭遇したラーメン屋台の店主がティゼル嬢の父親とは思わなかった。
似てるから兄弟かなとは思ったけど、まさか同一人物とは。
そして、そのティゼル嬢の父親がラーメンの国の王の大師匠。
ラーメンの国の王から大師匠は五村の村長と聞いていたけど、頭のなかで繋がっていなかった。
わかったときは思わず、大声で驚いてしまった。
ああ、ラーメンの国の王からの伝言はティゼル嬢の父親に伝えた。
頼まれていたからな。
その答えが、このお土産だろう。
ラーメン女王には会えなかったけど、ティゼル嬢の父親に伝言を頼んでおいた。
でも、個人的には求婚は自分の口で伝えたほうがいいと思うけどな。
え?
求婚じゃない?
この国でラーメンの普及を手伝ってほしいだけ?
いや、あれは完全に求婚ですって。
ティゼル嬢の父親も、そう受け取ってましたし。
まあ、ラーメン女王は魔王国の貴族令嬢らしいので、結婚はむずかしいでしょうけど……
そ、そこまで怒らなくても。
求婚じゃないんでしょ?
ラーメンの国の王と、五村で作られたお湯を入れるだけでラーメンになる物を食べた。
ラーメンとはあきらかに違う。
でも、これはこれでおいしい。
あ、三十個ほどしか持ってないから。
半分はさすがに持っていきすぎ。
なんだかんだ、ラーメンの国で一ヵ月ほど滞在し、帰国するために船に乗ったのだったなぁ。
俺は目の上に乗せていたタオルを取り、座っていた椅子から立ち上がる。
俺に先行して届けられたお土産は、各地に配られた。
そこに含まれていたティゼル嬢たちへの贈り物に、家畜や植物の苗がある。
俺の国にも豚や鶏はいるが、味がぜんぜん違うんだよなぁ。
強さも。
交配させて、数をどんどん増やしたい。
植物の苗は……エカテリーゼ先生が管理し、季節を見て育ててくれる予定。
そういえば、コンテナ一つ分、本を持ち帰ったのだが……あれは、どこに行ったのだろう?
五村の図書館でお薦めされた物語を中心に、五村で買い求めた本だ。
最初、ティゼル嬢やエカテリーゼ先生、イースリー嬢から、変な物を持ち込んでと冷たい目で見られたが、それ以降の扱いは聞いていない。
まさか、燃やしてないよな?
高かったんだぞ。
大丈夫?
あれらは各地の書物庫に、分散して収納していると。
それはよかった。
へー、これまであまり人のいなかった書物庫に、女子が多く訪れるようになったんだ。
物語に興味を持ったのかな?
なんにせよ、読書をするのはいいことだ。
だけど、読める者は限られている。
五村では文字を学ぶところが多かった。
俺の国でも、文字を学ぶところを作らないとな。
ん?
続き?
物語に続き物があったのか。
それはすまなかった。
ティゼル嬢に相談して、定期的に新作の本を送ってもらえるようにしよう。
さて。
よく休めた。
俺は書類の山をみる。
うん、頑張ろう。
ラーメン女王「ユーリさまとのお見合いのとき、近くにいたんですけどね」
女文官A 「奪い合いになっているのは伝えなくていいのかな?」
女文官B 「禁止になったら困るでしょ」
女文官C 「安定して入手できるように、動きましょう」
女文官D 「続きが気になりますからね」
お待たせしました。
腰はまだ駄目です。
コルセットが友達です。




