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統一王の旅の思い出と雑務


 俺は統一王。


 ティゼル嬢の父親に会うという大仕事を終えた。


 解放感。


 あとは帰るだけ。


 とはならない。


 会談での方針をもとに、商取引の話とかを詰めないといけない。


 まあ、これらは俺じゃなくて俺の同行者がやる。


 同行者はそのために来ているからな。


 頑張ってほしい。


 俺は、個人的な招待をさばく。


 いろいろと招待されているんだ。



 まず、五村の村長代行のヨウコ殿。


 ティゼル嬢の父親との会談で、一緒に会ったじゃないですか。


 そう言いたいけど招待があった。


 あの場で話せなかったことを話したいそうだ。


 なんだろう?


 俺が独断でなにかを決めることはないぞと遠慮したが、ゴズラン王国の第三王女に関してだと匂わされた。


 これは断れん。


 そう思って招待を受け、案内に来た使者に同行。


 行き先は、大きい飲食店の個室。


 この店はめん料理が自慢で、ラーメンも出しているらしい。


 素晴らしい。


 わかってらっしゃる。


 そして、これは叱責とかそういう内容ではないな。


 それだったら、ラーメン店……いや、飲食店に呼ばない。


 気楽。


 個室には、ヨウコ殿と秘書が二人。


 それと、見知らぬ少女……あれ?


 どこかで見覚えがある。


 あ、ケーキを売ってた子だ!


 え?


 なぜこの場にいるかを考えると……


 ひょっとして彼女がゴズラン王国の第三王女?


 その少女の周囲に護衛っぽい人がいるから、間違いないか?


 自己紹介で第三王女と言ってる。


 間違いなかった。


 あー、えっと。


 まずは謝ろう。


 第三王女の年齢を知らずに婚姻を申し込み、戦争のきっかけを作ったことに。


 俺は文官が欲しかっただけなんだ。


「つまり、妻がほしかったわけではないと?」


 ヨウコ殿の確認に、素直に頷く。


 第三王女は内政に関わって優秀だって話を聞いたから、それなりの年齢なんだろうなぁって思い込んで。


 婚姻を求めて、駄目なら内政を手伝ってくれる人をって考えだった。


 でも、婚姻に怒って攻めてきたから、攻め返すしかなかった。


 申し訳ない。


 もう第三王女に手を出す気もないし、ゴズラン王国の王家の人間も生き残っている。


 国に戻りたいなら戻る手筈を……


 思いっきり拒絶された。


 第三王女は、五村でケーキ職人を目指すそうだ。


 ……なるほど。


 俺がラーメンに未来を見たように、第三王女はケーキに未来を見たか。


 素直に応援しよう。


 ただ、親兄弟には無事なことを知らせてほしい。


 第三王女を守るために戦争をしたわけなんだし。


 手紙でかまわない。


 俺が届けよう。


 第三王女に同行した者たちの手紙も預かる。


 俺が五村を出発するまでに用意してほしい。


 手紙の受け渡し方法を詰めて、話し合いは終わった。


 それじゃあ、食事だな。


 この店でお薦めのラーメンを。


 盛りは……大盛りは味のバランスが崩れる場合があるから、まずは普通で。


 この店のベストをいただきたい。


 ヨウコ殿はキツネうどん、第三王女とその護衛は細長いパスタ料理を選んでいた。


 こういった場では同じ料理を食べるものではないでしょうかとヨウコ殿の秘書の一人が言っていたが、俺は気にしないぞ。


 好きなものを食べるべきだ。


 うん。




 次に、天使族の補佐長であるルィンシァ殿からの招待。


 ルィンシァ殿をわかりやすく言えば、ティゼル嬢の祖母。


 断りたい。


 でも、断れない。


 断ったら、国のほうに押しかけてくるかもしれないから。


 さすがにそれはね。


 うん。


 国のみんなを巻き込みたい気持ちはあるけど、それをやったらシャレにならない。


 だから俺は頑張った。


 頑張ったんだぞー。



 ルィンシァ殿と会ったのは、クロトユキと呼ばれる飲食店。


 個室ではなかったが、奥の広い場所に設置されたテーブルに案内された。


 飲み物がすぐに出てきた。


 事前に頼んでいたのだろう。


 とりあえず、これを飲み終えるまでは帰れない。


 一気に飲めるか?


 熱そうではあるが……


 あ、おかわりのお茶が入ったポットもあるのね。


 ……


 危うく、口と喉を無駄に火傷するところだった。


 えーっと、本日はお招きいただき、ありがとうございます。


 はい、ティゼル嬢のことですよね。


 すべて、ティゼル嬢のお父さまにご報告しましたが、なにか不足がありましたか?


 ティゼル嬢は、元気にやっておりますよ。


 …………………………………………


 ルィンシァ殿は無言だ。


 これは……なんだ?


 なにを試されてる?


 ど、ど、どうしょう。


 周囲に助けを求めても……


 あ、駄目だ。


 周囲にいるの、すべて天使族だ。


 いつのまに?


 気づかなかった。


 この店の店長がエルフだから、油断した。


 その店長は……遠い。


 しかも接客中。


 助けてくれそうにない。


 くっ。


 た、耐えればいいのか?


 耐えたらなんとかなるのか?


 お茶は……まだ熱い。


 すべてを飲み干すのには、厳しいだろう。


 ……ま、待て。


 俺はなぜ逃げることを考えている。


 俺は王。


 そう、王だ。


 王は逃げん。


 逃げてはいけないのだ!


 たとえ、どんな困難であっても逃げずに立ち向かう!


 立ち向かう姿を国の民に見せねばならんのだ!


 俺はルィンシァ殿の目を見る!


 …………こわっ。


 せ、戦略的撤退は仕方がないと思う。


 そう、その場合は逃げではない。


 体勢を立て直すのと同じ。


 体勢を立て直したことを、逃げたとは言わない。


 うん、言わない。


 第一、この場には俺の国の民はいない。


 同行者、いないし。


 相手が天使族って言った瞬間、逃げたから。


 だから俺も逃げてもいいのだ!


 問題は相手が逃がしてくれるかだけど。


 隙があるようには見えない。


 いつ戦闘になっても対応できるぐらい、こっちを見てる。


 ど、どうする。


 お茶の入ったカップを相手に投げつけ、その隙に……


 無理だな。


 その前に殺される。


 お、落ち着け。


 相手は天使族。


 武力で勝てると思ってはいけない。


 勝つなら頭脳。


 …………


 頭脳戦で天使族に勝てるわけないだろうがっ!



 ふう。


 落ち着いた。


 諦めたともいう。


 短い人生であった。


 墓にはなんて書いてもらおうかな。


 などと現実逃避をしていたら、助けが来た。


 ティゼル嬢の父親だ。


 彼は俺とルィンシァ殿のテーブルにつき、ルィンシァ殿の通訳をしてくれた。


 ……


 通訳?


 喋ってた?


 違う?


 翼の動きで?


 あ、あの、普通の人は天使族の翼の動きで会話なんかできませんが?


 い、いや、文句はあとだ。


 とりあえず、受け入れる。


 そして、会話が成り立つなら問題はない。


 俺はティゼル嬢の父親の通訳を頼りに、知っている限りのことを伝えた。


 嘘は言わない。


 誇張もしない。


 素直に。



 俺は生き延びた。


 よかった。


 そして、俺はティゼル嬢の父親……村長から、今回の事情を聞いた。


 なぜルィンシァ殿は喋らなかったのか。


 簡単に言えば、祖母が孫の動向をあれこれ詮索するのは嫌われるから。


 だが、気になる。


 聞きたいことが山のようにある。


 でも聞くとティゼル嬢に嫌われる可能性がある。


 その葛藤が、あの沈黙だったそうだ。


 うーん、迷惑。


 まあ、迷惑料として、国へのお土産をいっぱいもらえることになったから、結果的にはよかったと言える。


 ……


 言えるのか?


 死を覚悟した対価として、安くないか?


 え?


 輸送の手配もしてもらえる?


 ありがとうございます。


 そして、ティゼル嬢の父親を呼んでくれたのは、クロトユキ(あの店)の店長。


 俺が困ってそうだったからと。


 ありがとうございます!




 ルィンシァ殿の次は、魔王の娘のユーリ殿から招待があった。


 ユーリ殿とはこれまで関わりがないので、どういった要件なのかと考えたがわからなかった。


 本人からの申し込みなので……見合いではないだろう。


 見合いなら、仲介役が申し込んでくるはず。


 あ、これは俺の常識か。


 魔王国では違うかもしれない。


 図書館の本とかでも、積極的な女性が多かったしな。


 でも、互いの立場を考えれば、見合いはありえないだろう。


 うーん、ではどういった要件だ?


 ま、まあ、会えばわかるだろう。


 会う前にユーリ殿の人柄を、プギャル伯に確認しておいた。


 クローム伯は捕まえられなかったから。


 プギャル伯からは、最近はまともとの回答を得た。


 ……


 最近?


 じゃあ、前はまともじゃなかったのかな?


 いきなり戦争をふっかける破天荒な姫とか?


 ま、まさかな。


 そして、そんな人物が俺にどんな話があるんだ?



 結論から言おう。


 見合いだった。


 そして成立はしなかった。


 魔王が乱入して、場を壊したから。


 ありがとう魔王。


 でもって、なぜ見合いになった?


 ユーリ殿は見合いであることを知らない感じだったぞ。


 誰の意思だ?


 なぜかいたクローム伯が手を挙げた。


 あんたか!


 違う?


 正確には、クローム伯の母親の意思?


 クローム伯の母親は、魔王国内にユーリ殿の相手となる者がおらず、国外から探すしかないなぁと考えていた。


 そんなところに俺が来たから、とりあえず様子を見てみようとセッティングしたと。


 ユーリ殿には別件で俺に会ってほしいと頼んで。


 なるほどなるほど。


 あー、えーっと、魔王国の文化は知らないのでたいしたことは言えないけど、そういうのはいきなりのお見合いではなく、小さなパーティで顔を合わせるとかしてからのほうが無難では?


 最初、初対面同士だったから、おもいっきり公務の話だったぞ。


 乱入した魔王が、見合い反対と叫ばなければ気づかないぐらいに。


 そして、俺はクローム伯の母親と会った覚えがないのだが、そんな男をよく会わせようとなったな。


 会ってる?


 クローム伯の屋敷では、そういった女性と会っていないが?


 まさか、メイドの格好をしていたのか?


 違う?


 店員の格好をしていた?


 は?


 店員の格好をして、五村で店を経営している?


 ……


 ま、まさか、俺がマントを注文した店?


 あのマダムが?


 た、たしかに、やたらと俺の家族構成とか理想の嫁のイメージとか聞かれたけど。


 え?


 ええええええっ!


 魔王国って、貴族が直接、店を経営しているの?


 い、いや先代の夫人だとしても。


 文化の違いに、やっぱり驚かされる。





ビーゼル    「母上、余計なことはしないほうが」

ビー母     「なにを言ってるの。ユーリちゃん、このままじゃ嫁ぎ先がないわよ」

ビーゼル    「ですが、相手が人間の国の王では……」

ビー母     「人格は問題ありません。品も鍛えれば大丈夫でしょう。血はどうでもいいです」

ビーゼル    「種族は気にしたほうが……寿命が違いますし」

ビー母     「寿命を伸ばす方法はいくらでもあります。とりあえず会わせなさい」

ビーゼル    「が、頑張ります」


魔王      「反対反対反対反対」

ビー母     「孫、見たくはないのですか?」

アネ(魔王の妻)「孫……いいかも……」

魔王      「ま、まだ考えたくない!」


ユーリ     「すみませんが、まだ結婚を考えていません」

ビー母     「わかりました。ですが、フラウは子を産んでますよ」

ユーリ     「私はフラウではありませんから。ほほほ」

ビー母     「ふふふ」


ビーゼル    「母上にしては強引だったのでは?」

ビー母     「そうですね。ですが、意識はしてもらわねば」

ビーゼル    「今回は破談でもよかったのですか?」

ビー母     「意識させることが目的ですから」

ビーゼル    「……あの王には、迷惑料を支払わねばなりません」

ビー母     「それぐらい払えるでしょう? 頼みましたよ」

ビーゼル    「…………」


ビー母     「魔王がいつまで魔王でいるかわかりません。

         次の魔王が、地位を固めるためにユーリちゃんを求めたとき、断れるようにせねば。

         だからと、望まぬ結婚を私が勧めては本末転倒。

         ユーリちゃんが意識し、自分から相手を探すのがベストなのですが……」

ユーリ     「港工事するわよー(人型重機の操縦、楽しー)」

ビー母     「……駄目だこりゃ」

ヤメ      「焦らない焦らない」



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― 新着の感想 ―
複雑だね。
ビー婆とビー母が同一人物だと思い込んでしまった!
ん・・・『ユーリに見合う男性』って言ったら、やはりまずは村長だよねー。 でも、ややこしくなるのはブラウが息子を産んでくっつく場合かなぁ。 てか、ヨルよか『村長に気がある』感じなベルは、村長としてるの…
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