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統一王の旅の思い出と会談


 俺は統一王。


 五村の村長からの使いが来た。


 五村の村長。


 つまり、ティゼル嬢の父親だ。


 よ、よし、覚悟はできている。


 挨拶の練習もした。


 俺は王。


 やってやれないことはない。


 なに、百万の軍勢を前にするわけじゃない。


 気楽に。


 気楽にいけ。


 クローム伯もプギャル伯も、ティゼル嬢の父親は温厚だと言っていた。


 周囲が過激なだけで。


 ……


 か、考えるな。


 周囲は考えるな!


 前向きに。


 前向きに行くぞ!




 五村の村議会場と呼ばれる建物にある一室。


 そこで、俺は五村の村長であるティゼル嬢の父親と会った。


 会談なので俺とティゼル嬢の父親の一対一かと思っていたのだが、部屋には多くの人がいた。


 まず、俺。


 俺だな。


 そして、ティゼルの父親。


 ……


 普通。


 ほんとうに普通の人に見える。


 クローム伯やプギャル伯からの注意がなければ、軽く見ていたかもしれない。


 危なかった。


 ちょっと考えれば、普通の人が天使族を妻にしたりはしない。


 あと、気のせいだとは思うのだが、夜中に屋台でラーメンを提供していた店主にすごく似ている。


 兄弟かな?


 あとで紹介してもらえないか、頼んでみよう。



 ティゼル嬢の父親の横に座るのが、五村の村長代行であるヨウコ殿。


 ティゼル嬢から聞いている。


 五村の運営を実質的にしている人だ。


 では、五村の村長であるティゼル嬢の父親は実質的になにをしているのかと疑問に思うが、なんでも五村以外の村を持っていて、それらを見回っているらしい。


 ……


 そういうのは村長ではなく、領主と言わないだろうか?


 魔王国の文化は、わかりにくい。



 そして、ヨウコ殿から少し離れた場所に座るのが魔王。


 うん、魔王。


 野球のときの格好ではなく、ちゃんと魔王らしい格好の姿で席に座っていた。


 別人かと思うほど威厳がある。


 お茶とセットで出されたケーキを早々に食べ、おかわりを要求しているけど威厳がある。


 いまさらだけど、俺は非公式に魔王国を訪れている。


 魔王と直接、会談……いや、今回の場合は数が多いから会合か。


 魔王が参加する会合にいたとなると、対外的に問題が出ないだろうか?


 俺の国が攻められる口実になってしまうというか、なんというか……


 大丈夫?


 すべて六竜神国が手配したということになっている?


 魔王と会ったことを理由に攻められた場合は、六竜神国が敵になると。


 だから、俺を六竜神国で確保し、魔王国に招待したと。


 そ、そうだったのか。



 魔王の横にクローム伯。


 プギャル伯は、仕事で来れなかったようだ。


 ちょっと心細い。


 クローム伯は魔王国の外務担当なので、この場に同席するのかな?


 違う?


 ただの引率?



 クローム伯に引率されてきたのは獣人族の男の子が三人と、鬼人族の男の子が一人。


 彼らはティゼル嬢の父親の子だそうだ。


 獣人族の男の子三人は、ティゼル嬢の兄。


 鬼人族の男の子は、ティゼル嬢の弟になる。


 ティゼル嬢の兄弟ということで少し身構えてしまったが、とても礼儀正しい四人だった。


 ティゼル嬢が特別なのかな?


 四人がこの場にいるのは、俺からティゼル嬢のことを聞くため。


 あと、謝罪。


 いやいや、ティゼル嬢はそんなに迷惑をかけてないぞ。


 うん、いろいろと助けられている。


 大丈夫だ。


 言わされているわけじゃない。


 弱味を握られているわけでも、なにかを人質にとられているわけでもない。


 心配しないでくれ。


 気持ちはわかるけど。


 ああ、気持ちはわかる。


 ティゼル嬢の言動の端々で……うん。


 ただ、ティゼル嬢が俺の国では抑えてくれているのもわかるんだ。


 ティゼル嬢には助かっている。


 ほんとうだ。


 ああ、あとでゆっくり話をしよう。



 以上。


 俺とティゼル嬢の父親を含め、九人がテーブルについている。


 そのほかに、ヨウコ殿の秘書が二人と、ティゼル嬢の父親の護衛が三人、執事やメイドが複数人、部屋にいるけど、同じテーブルについていないので数に入れていない。


 あと、この場は会合ではなく、会談で進めると。


 表向きは、ティゼル嬢の父親が、俺からティゼル嬢の話を聞く場と。


 承知しました。




 ティゼル嬢の父親との会談は……簡単な自己紹介と雑談から始まり、ティゼル嬢の話題になった。


 俺は隠さず、誇張せず、できるだけ正確に話をした。


 困った場合は困ったと伝え、助かった場合は助かったと伝える。


 そうしたほうがいいと、クローム伯とプギャル伯から言われていたから。


 俺が直接、ティゼル嬢に暴力を振るっていたり、危険な目に遭わせていなければ、ティゼル嬢の父親が怒ることはないそうだ。


 それを信じた。


 それ以外に信じるものがないしな。


 事前にティゼル嬢たちからの手紙を渡しているから、ある程度はこっちの情報ことも知られているだろうし。


 嘘はよくない。


 正直に。


 ティゼル嬢の父親からの質問に答える形で、会談は進んだ。


 なにも問題はない。


 ……


 ティゼル嬢のもとに、天使族を二十人ぐらい派遣したほうがいいのではとか恐ろしい意見が聞こえたんだが?


 言ったのはティゼル嬢の兄弟か?


 ティゼル嬢を心配してかもしれないが、危険なことを言うんじゃない。


 ティゼル嬢の父親、頷くのは駄目だ。


 天使族だぞ。


 深く、深く考えるんだ!


 ……


 当面はティゼル嬢に任せる?


 よし、さすが!


 天使族の危険性を理解している!


 いや、それならティゼル嬢の引き上げを……


 あ、駄目だ。


 いてくれて助かっていると言っちゃった。


 ま、まあ、事実だし。


 嘘じゃないから。


 え?


 ティゼル嬢に近づく男性はいないのか?


 あ、求婚する者ですか。


 えーっと。


 全然っ、いません!


 正直に答えたら、ティゼル嬢の父親は複雑な顔をした。


 父親として、娘に求婚がないことへの安心と不安かな?


 でも、嘘はよくないしなー。



 ちなみに、ティゼル嬢と同じように、エカテリーゼ先生にも求婚する者はいない。


 エカテリーゼ先生は、元とはいえ大きい国の公爵令嬢だから。


 求婚するには相手の後ろが大きすぎる。


 俺だって釣り合わない。


 だから、求婚は一般人を自称しているイースリー嬢に集中している。


 イースリー嬢はまったく相手にしていないけど。




 ある程度、俺が語ったあとは質問タイム。


 これも問題ない。


 知っていることを伝え、わからないことはわからないと言うだけ。


 ティゼル嬢の父親と兄弟からの質問に一通り答え、ヨウコ殿や魔王と友好を確認。


 公にはしないけど、俺の国であるケイルランド地域連合王国は魔王国と敵対しないことを約束した。


 正直、国力の差がありすぎて戦いにならない。


 敵視されないだけで満足。


 あと、商取引に関してだけど、俺はあまり詳しくなく……


 そのあたりはティゼル嬢と手紙でやりとりするから大丈夫と。


 では、よろしくお願いします。



 これで会談は終了。


 だけど、俺が解放されるわけではない。


 このあとはこのメンバーで食事会となっているのだ。


 異国で無様な姿をさらさないように酒は避けていたんだが、出されたら飲まないわけにはいかないよな。


 食事も……非公式の食事会ということだけど、魔王がいるからきっちりした物が出てくるだろう。


 魔王国のマナーに関してはティゼル嬢やエカテリーゼ先生から学んでいるから問題はない。


 問題はないが……ラーメンが食べたいとは言えないよなぁ。


 覚悟を決めよう。


 ラーメンは明日、食べればいい。


 そう決意したのに、食事会にはラーメンが出た。


 ギョーザとチャーハン、カラアゲ付き。


 味は極上だった。


 ちょっと泣いてしまった。





秘書  「ヨウコさま。本日の食事会の献立はどうしましょう?」

ヨウコ 「献立? いつも通りの歓迎用の献立であろう? 変えるのか?」

秘書  「お客人、五村に到着してからずっとラーメンを食べておりますので」

ヨウコ 「献立にラーメンは入っていなかったと思うが?」

秘書  「だからです」

ヨウコ 「?」

秘書  「ここはラーメンを出すべきだと思います」

ヨウコ 「なにを言っている? 客人はずっとラーメンを食べておるのであろう?」

秘書  「だからこそです。大丈夫です。任せてください」

ヨウコ 「わ、わかったが……」

秘書  「ありがとうございます。それで、村長のお手をお借りしたいのですが」

ヨウコ 「村長に手伝わせるのか?」

秘書  「いえ、メインで作ってもらいます」

ヨウコ 「お、おま……」

秘書  「材料その他は用意済みです。ご安心を」


征服王 「(感涙)」

秘書  「狙い通り」

ヨウコ 「……(世の中には理解できないことがあるんだなぁ)」

魔王  「村長の料理を食べられるとは幸運!」

ビーゼル「ですね」

ゴール 「ギョーザを手伝いました」

シール 「チャーハンを手伝った」

ブロン 「カラアゲを手伝いました」

トライン「配膳を頑張りました」(久しぶりに手伝えてうれしい)



??? 「はわわ。トラインが頑張ってるー」

征服王 「クローム伯。部屋の隅からこっちを見ている者は誰だ?」

ビーゼル「あー、天使族のキアービット殿です」

征服王 「視線は……トラインくんか」

ビーゼル「ええ。狙っているようで」

征服王 「……トラインくん。逃げるんだ」

トライン「え?」

征服王 「このままだと捕まる! 可能な限りの速さで逃げふぅっ!」

トライン「征服王さんっ!」

ビーゼル「あ、あまりに速い……攻撃?」(見えなかった)

魔王  「外交問題になるから、殴るのはやめてほしいなー」(見えてた)

ヨウコ 「人の恋路に口を出すのはよくないぞ」(見えてた)

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― 新着の感想 ―
ヨウコ「理解できぬ」 秘書 「ヨウコ様、ラーメンを油揚げに置き換えてください」 ヨウコ「理解できる」
なぜ追記の方がおもし ゲフンゲフン。
割と有能と言うか上に立つ才能あんな統一王、特に現状認識みたいなとこで そして竜にボコられてるイメージが強いけど魔王様一応上澄みなのよねぇ
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