ヤメは賑やかになった島で暮らす
あーしの名はヤメ。
村長が持ってきたピーナッツなる食べ物を皿に盛り、食べる。
美味しい。
とても美味しい。
それを知っている鳥や鶏たちが、宿の外から寄越せと騒いでいる。
鳥や鶏に与えても大丈夫って聞いたから、少し砕いて渡したのがよくなかった。
鳥や鶏たちは、ピーナッツをとても気に入ったようだ。
村長から、与えすぎは駄目だとも聞いてるから今日は駄目。
また明日。
あーしは悪魔族にしては温厚だって言われる。
あーしも温厚だと思う。
そんなに怒らない。
よく怒らせてくれる者はいたけど。
そんなあーしが怒る事態が発生した。
拠点の宿に侵入し、ピーナッツを根こそぎ食べた者がいる。
誰かな?
あーしはまず、鳥小屋を訪れた。
あーしの質問に、鳥たちは知らないと答えた。
うん、わかってる。
鳥たちは、あーしの物を盗らない。
あーしの物を盗るときは、目の前でやる。
あーしは次に、鶏小屋を訪れた。
……
うん、大丈夫。
返事は不要。
一羽、いない。
ふふふ。
あーしから逃げ切れると思っているなら、大したもの。
絶対に捕まえる。
三日ほどかけて、捕まえた。
鶏はへとへとだったけど、あーしもへとへと。
でも、盗み食いは許さん。
あと、砕いてないピーナッツはあんたらの喉に詰まるの。
危ないんだからね。
反省するように。
まあ、餌抜きとかにはしないけど。
逃げてるあいだ、ろくに食べてないだろうから。
あーしも食べてない。
あー、お腹減った。
あーしは捕まえた鶏を小屋に戻し、宿に帰った。
宿の食堂では、パンを黙々と食べるハイエルフとリザードマンたちがいた。
え?
パンだけ?
おかずは?
パンの咀嚼音で返事しないでほしいかな。
い、急いでなにか作るから。
えーっと、パンがあるならスープを作ればいいかな。
すぐできるから。
うん、だから咀嚼音で返事しないで。
具はたっぷりにするから。
村長が来たときに、ピーナッツの畑を要望した。
鳥と鶏たちが気に入ったみたいだからね。
だからこそ鳥と鶏たちに一言。
わかってると思うけど、畑を荒らしたらあーしが怒るから。
うん、ちゃんと理解してくれたようでなにより。
島にやってきた村長に、人魚からお風呂の利用料としてもらった宝箱を見せる。
前にピーナッツを持ってきてくれたときは、なんだかんだと忙しかったからね。
今回は宿でお茶を飲む余裕があった。
そして村長は、宝箱についている錠前のパズルに食いついた。
予想してたけど、それ、むずかしいよ。
あーしだけじゃなく、ハイエルフとかリザードマンたちでも駄目だったし。
海の種族も無理だったって言ってたから、鍵開けの技術を持ってる人を呼ばないと……
あ、すごい。
村長、解いた。
え?
どうやって?
こっちを動かしても、ここが邪魔になるでしょ?
この段階で錠前をひっくり返す?
あっ、そうか。
くっ、あーしはなぜ気づかなかった。
宝箱の中身は……普通に金銀財宝。
面白い物はなかった。
まあ、海岸のお風呂の利用料としては十分。
村長に渡しておいた。
あーしは、この錠前パズルで十分。
解き方はわかったしね。
金銀財宝を見て思い出したけど、あーしの財産はどこに行ったのかな。
ないならないで諦めるけど、気になる。
しかし、地形とか大きく変わってるからなぁ。
あーしの知ってる街とか、廃墟になってたし。
グッチやブルガ、スティファノに頼むと、無理難題を言われそうだからやめておこう。
無理難題を言わなくても、なにかしらのトラブルを持ち込んでくる。
財産のことは忘れないようにメモだけして、あとは機会があったらということで。
いまのあーしに、財産が必要ってわけでもないしね。
いまのあーしに必要なのは……
盾。
うん、盾。
あると安心。
頑張って作ろう。
村長からもらった盾はあるけど、あれは大事なとき用。
普段使いできる盾がほしい。
……
なにを言ってるかわからないだろうけど、あーしもよくわかってない。
いや、村長からもらった盾って、最初は簡単な作りだったのに、村長が手を加えて豪華な装飾がされてったのよ。
あれじゃ、儀式用。
普段使いするには豪華すぎるの。
だから、もらった盾は拠点の宿の広間に飾ってる。
そして、手持ちに盾がない状態は不安。
島での生活に不安はないんだけどね。
やっぱりあると安心できるから。
そういうわけで……砂浜で、ほどよい木を探す。
これは遊んでいるんじゃないからねー。
帆船の補修用の木材を使って盾にすればいい?
あれは帆船用。
あーしの盾になんかしちゃ、もったいないでしょ。
あーしの盾は、拾った木を集めて作るの。
それぐらいで十分。
島に飛行船がやってきた。
乗っていたのはウルザ。
ウルザが拠点にしている街とこの島を結ぶ、飛行船の定期便を提案された。
島としては陸地と繋がりがもてるのはありがたいけど、島から持ち出せる物は少ないよ?
探せばなにかあるのかもしれないけど、いまのところ価値があるのは鳥の羽根ぐらい。
ただ、鳥の数から考えても生産数はそんなに多くない。
村長が来たときに、手渡しできる量だ。
羽根だから軽いしね。
飛行船で運ぶ必要はない。
まあ、このあたりはウルザもわかっているだろうから……
気を使わせちゃったかな。
飛行船に限らず定期便はありがたいから引き受ける。
でも、コスト面の問題があるからまずは年に数回の運行で。
なにかしら島から持ち出せる物ができたら、運行回数を増やしてもらおう。
飛行船でやってきたウルザは、三日ほど島に滞在。
島の森や山を走り回ってた。
比喩じゃなく、実際に。
同行している氷の魔物が、ちょっと大変そうだった。
充実した顔はしていたけど。
ちょっとは落ち着けばいいのにと思わなくもないけど、若いからね。
仕方がない。
若い子はそういうもの。
怪我さえしなけりゃ、それでいい。
……
草むらに突っ込んだ生傷は、怪我に含むべきかな?
悩む。
元気の証拠だけど、女の子だし。
いや、男の子であっても生傷はよろしくない。
治療しつつ、注意しておこう。
あと、錠前パズルが解けないからって砕こうとするのはよくない。
頭を使うように。
そして、解けなくても笑い飛ばせる心の余裕を持つように。
ウルザ 「この島、保養地にしてもいいかな?」
ヤメ 「保養地にしては過酷な環境だと思うけど」
ウルザ 「強い魔物、いないよ?」
ヤメ 「自然がもっとも手強いの」
ヤメ 「錠前パズル、むずかしいでしょ?」
ウルザ 「ぐぬぬ……」
氷の魔物「あ、解けた」




