島の家
島を少しずつ観察したけど、南側の海岸が砂浜。
それ以外の海岸は岩肌。
港は西側に建設中。
ドラマに出てきそうな断崖絶壁はなかった。
島の中心は山になっており、俺の家はその山の南側の中腹に建設予定。
いつかは山頂に登ってみたいな。
俺は自作の地図に、描き込む。
島の大きさはよくわからないけど、徒歩で外周をまわるのに三日以上。
俺だと五日ぐらいで、ハイエルフやガルフだと二日でまわる。
クロの子供たちだと、一日でまわってた。
ヤメさんの話だと島を一周するのに十日ぐらいかかったと言っていたけど、それは食料を探したり、寝る場所を探したりしながらだからだろう。
海岸もすべてが歩きやすい場所じゃないしな。
ちなみに俺は始祖さんの転移魔法を使って、何度も村や拠点の宿に戻っていた。
ちょっとズルだ。
俺は自作の島の地図を机に広げ、隠していたハイエルフたちの描いた地図を取り出し並べる。
……
俺の地図は、島の形の特徴をとらえていると言える。
うん。
素人の俺にしては、よくできているんじゃないかな。
自画自賛。
だけど、俺の地図を公式で扱うことはできない。
万が一のときに困る。
なので、俺の地図は……村の俺の部屋に飾ることにした。
いいんだ。
俺は満足している。
シャシャートの街に灯台はなかったが、近くにあった。
ただ、低い。
俺が思っていた以上に低かった。
三階建てぐらい。
そして塔じゃなかった。
ピラミッドみたいな形。
これで灯台として役に立っているのだろうか?
これだけならむずかしいだろう。
だけど、建っている場所がそれなりに高い場所。
なので、そこに立つ灯台は海面からそれなりの高さということになる。
なるほど。
最終的に、灯りの高さが確保できればいいからな。
それに灯台は道標であって、必ず港を示すものではない。
認知されているのであれば、どんな場所にあってもいい。
つまり、島でも港に灯台を建てる必要はない。
島の高い場所に建てればいい。
それに、形も塔にこだわる必要はない。
灯台機能があれば、どんな建物だってかまわない。
それなら建てることができるだろう。
海の種族にいい返事ができそうだ。
あーでも、灯台の管理人が問題だよなぁ。
夜や悪天候になったら自動で灯りをつける魔道具を置くだけじゃなく、ちゃんとその魔道具が動作しているかチェックする者がいる。
シャシャートの街の灯台では、灯台に管理人が家族で住んでいた。
島に灯台を作った場合、同じように誰かを灯台の管理人として配置しないと駄目だろう。
ゴーレムに任せる?
それは最終手段。
なんでもかんでもゴーレム任せはよくない。
この島では大きな魔石が入手できないしな。
海の種族から人を出してもらえないか、相談してみるか。
島の砂浜で、大量の海水を鍋に入れて沸かしてみた。
なにをやっているか?
海水から塩を抽出している。
もっと効率的にやる方法があるのは知っているが、まずはシンプルに。
鍋のなかの海水が半分ぐらい蒸発したら、またそこに海水を注ぐ。
やっていることは水の蒸留と同じ。
狙いは残ったものなので、今回は蒸気はそのまま空へ。
濃い塩分濃度の海水を作り、最終的に塩を確保する。
簡単。
ただ、この方法では塩の味はイマイチらしい。
でも、それは聞いた話だ。
実際に自分でやってみて、味わってみないと。
……
うん、イマイチ。
苦かった。
島の中央に建てる家。
島の雨と風を体験したハイエルフたちの提案により、大きく構造が変更になった。
当初は見晴らしのいい場所に三階建てを建てる計画だったが取り止めに。
山肌を削り、家の一部を埋める形になった。
地面だけでなく、壁でも支える形で、家の耐久度を向上させる感じだ。
悪くない。
そう思ったのだけど、山の上からの落石があるんじゃないかと指摘された。
たしかに落石の心配はあるか。
あと、防犯の問題も。
山から家の屋根に移動できてしまう。
どうしたものかと頭を悩ませていたところで、ヤメさんが一言。
「もっと奥に家を入れたらいーと思うけど?」
奥?
……あ!
家の一部じゃなく、全部を埋めるのか!
なるほど。
それなら落石の心配はしなくていい。
「ですが、村長。
それだと一方向からしか、村長の家が見えなくなります。
島の統治者の家がわかりにくいのは……」
うーん。
島の洋館というのに憧れがないわけでもないが……
それはもっと穏やかな島でやろう。
ここは埋める。
家が一方向からしか見えなくても、島の見た目を守れたと思えば……待てよ。
一方向からしか見えないと、その見える場所が重視されてしまうな。
いっそ、全方向から見えなくしてしまえばいいんじゃないか?
どうせ掘るんだし。
家を見せる必要はない。
洞窟の家で十分だ。
公的な家は、調査隊の拠点の近くに建てるわけだし。
うん、いいんじゃないか?
外壁に凝る必要も減るしな。
内装作業はめちゃくちゃ増えるけど。
俺の説得で、そうなった。
洞窟の家の建設が始まった。
まあ、ハイエルフたちが設計し、俺が掘ることになるんだけど。
【万能農具】で掘った壁を固めることができるから安全。
湧き水も防げる。
とりあえず、なにかしらのトラブルで出入り口が塞がったときのことを考え、出入り口は複数にとハイエルフが提案。
その通りだと採用。
洞窟内なので火を扱う場所は慎重に。
空気の通り道も考える。
灯りは……魔法や魔道具に頼らせてもらおう。
あと、島の様子や天候を観察できるように、山の各方向に観測部屋が用意され、それがトンネルでアリの巣のように繋がれた。
正直、家というよりシェルターだなと思わなくもない。
島で温泉は見つけられていない。
なので、島では川の水や海の水を利用した風呂が作られた。
宿に併設された風呂は、川の水を沸かして使っている。
水路が大活躍だ。
海の水を使う風呂は、海岸に。
小さな脱衣所と一緒に作られた。
こちらは湯舟を海水で満たし、熱した石を放り込んで海水を温める方式。
ちょっと手間だが、その手間がいい。
……
まあ、ちょっと立地が開放的だから、海岸の風呂は水着着用で。
異論は認めない。
「すみません。
可能であれば川の水を使ったシャワーがほしいです」
海岸の風呂を使ったユーリから、そんな感想があった。
あー、海水だから、入ったあとに真水で洗わないとベタつくか。
それに髪とかも海水に濡れたままだと傷む。
海岸で風呂に入ったあと、宿の風呂に入るのも二度手間だ。
理解した。
川から水路を繋ぎ、シャワールームも作った。
ヤメさんの先導で、島の森に入る。
俺の周囲にはクロの子供たちとザブトンの子供たちが護衛に。
ハイエルフ五人が同行している。
森に入る目的は、ヤメさんから食べられる植物、食べてはいけない植物の説明を受けるため。
ただ、ヤメさんの言う食べられる植物は、死なない程度の毒も含まれるので注意だ。
死なないならセーフという考えは、駄目じゃないかな?
いや、そういったのを食べないと生きていけなかったのかもしれない。
今日の夜は、食べられる美味しい山菜鍋にしよう。
そう考えながら、俺は食べられない植物を採取する。
食べるためじゃない。
ルーやティアへのお土産だ。
毒は扱い方で薬にもなるからな。
可能なかぎり根本から。
おっと、採取のときは厚手の手袋を着用だ。
触れるだけで影響があったり、かぶれたりする可能性があるからな。
そして、個別の紙袋に入れて、籠に収める。
紙袋は五村の製紙業の製品だ。
紙の箱に比べ、安く作れるので需要が高まっている。
と言っても、まだまだ高いんだけどな。
俺は製紙業への出資もあるし、なんだかんだで数を確保できている。
同行しているハイエルフのうちの一人に、採取した植物の記録をお願いした。
また必要になったときに、探しやすくなるように。
もしくは【万能農具】で育てるときの参考資料として。
記録はイラストと文字で。
ヤメさんも記録を手伝ってくれたが、なかなかイラストが上手い。
文字も綺麗。
羨ましい。
一通り食べられない植物を採取したら、今度は食べられる植物を採取。
手袋は交換するように。
入れる籠も別にするんだぞー。
見慣れた植物でも、油断は禁物。
似ているだけの別の植物の可能性もあるから。
まあ、ハイエルフやヤメさんに言う注意ではないと思うけど。
一応。
自分に言い聞かせている面もある。
俺は調査隊が拠点にしている宿に、コタツを持ち込んだ。
コタツを出すにはちょっと早いし、島の気候的に必要かどうかはわからないが、あってもいいだろう。
大樹の村の俺の家と同じように、広間に小上がりを作り、そこに畳を敷き、コタツを設置。
クロの子供たちが喜んだ。
だけど、コタツはまだ温かくはしないぞー。
コタツを初めてみたヤメさんは……
ちょっと困惑している。
まあ、コタツのよさがわかるのは、寒くなってからだ。
たぶん、島でより村でのほうがありがたさを感じられるはず。
そんなふうに思っていたのだけど、深夜。
寝つけなかったのか、小腹が空いたのか、ヤメさんはコタツに入って小鍋で茹でた麺を食べてた。
見つかったって顔をしていたけど、いいねって言っておいた。
そして俺はトイレに起きただけなので、おやすみ。
村長 「島の大きさは……宮古島(周囲100キロ)ぐらいかな? 土壌とかは全然違うけど」
ハイエルフ 「洞窟の家の通路はジグザグに、まっすぐ進めないようにしましょう」
村長 「それだと、シェルターというか防空壕じゃないか?」
ハイエルフ 「防犯の都合です」
鬼人族メイド「洞窟内での火の取り扱いが課題ですね」
ハイエルフ 「決まった場所以外で火を使うのは禁止かな」
山エルフA 「湿気対策とか、いろいろと考えないと」
山エルフB 「川があるぐらいなので、山が持つ水分も多いですし」
村長 「……人類がなぜ横穴住居を捨てたか考えるべきだった」
ハイエルフA「ヤメさんの文字、読めない文字なんですけど?」
ハイエルフB「え? 村長は普通に読んでたわよ」
山エルフ 「村長、ナチュラルに島に泊まり込んでますけど、村のほうは大丈夫なのでしょうか?」
ハイエルフ 「いろいろと取引があったと聞いてます。詳しくは知らされてません」




