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ヤメと海の種族


 あーしの名はヤメ。


 島に文明の灯りがある。


 うーん。


 明るい。


 拠点の宿が建ったので、島で寝泊りすることも増えた。


 部屋は快適。


 風や雨に怯えなくていいのは、嬉しい。


 安心感。


 そして、デザインの揃った食器類。


 涙が出そう。


 不揃いの貝殻の食器も悪くなかったけどね。




 島での夜。


 カードゲームやるから参加しないかとハイエルフに誘われた。


 喜んで参加する。


 悪魔族の頭脳をお見せするチャンス!


 えーっと、手元のカードが無くなれば勝ちなのね。


 次の人に二枚取らせるカードに、次の人に四枚取らせるカードを重ねるのはあり?


 ここでのルールはあり。


 じゃあ、はい。


 次の人の悲鳴が心地いい。


 楽しんだ。




 島に一通りの生活環境が整ったころ。


 海岸で大規模な建築が始まった。


 建てるのは港。


 船着き場と倉庫だ。


 島の外周を調べ、港に最適な場所を選出。


 選出したけど、水深が少し足りない。


 水深が足りないと大きな船が接岸できず、小舟でのやりとりや、浮き橋を長く作る必要がある。


 さすがにそれでは不便。


 小舟でのやりとりはもちろん、浮き橋は不安定なので荷の積み降ろしには不向き。


 人が乗り込むだけならいいんだけどね。


 そこで、水深を確保するために港予定地の海底を掘削くっさくすることになった。


 ラナさんあたりがやるのかと思ったんだけど、違った。


 多目的人型機動重機アーティ・ホースを使うみたい。


 ラナさんだと加減できずに島に被害がでるかもしれないもんね。


 言ったりはしないけど。


 でも、多目的人型機動重機をどうやって持ってくるのだろう?


 あれ、建材の比じゃないぐらい大きいから、転移魔法で運ぶのはむずかしいと思うけど?


 そんなことを考えていたら、ラナさんが抱えて持ってきた。


 力技だなぁ。



 ラナさんが持ってきた多目的人型機動重機は、水中用多目的人型機動重アーティ・ホース・アクア機と呼ばれる、すごく希少なやつだった。


 でも、海底を掘削するなら最適。


 なんだけど、あれってすごく高くなかったっけ?


 壊れでもしたらと思うんだけど。


 ま、まあ、あーしが心配することじゃないか。


 ところで、この水中用多目的人型機動重機は誰が操縦するのかな?


 ピッチリしたパイロットスーツを着込んだ、ユーリと名乗る魔族だった。


 へー。


 魔王の娘なんだ。


 って、いいの?


 こんな島に来て?


 魔王が怒ったりしない?


 魔王ってめちゃくちゃ怖いと思うんだけど。


 あーしの知ってる魔王は怒りっぽかった。


 三日ぐらい前の夜、大樹の村で食事をしていた男性?


 あー、やたら猫たちに好かれてた野球好きの人?


 うん、野球の話を延々と。


 野球のことはよくわからなかったけど。


 いいのいいの、謝らなくて。


 楽しかったから。


 え?


 あの人が魔王?


 そうだったの?


 あー、いや、たしかに村長が魔王って呼んでたかも。


 愛称かなにかかと聞き流してた。


 本物の魔王だったのかー。


 まあ、魔王が怒らないなら気にしない。



 ユーリは水中用多目的人型機動重機に乗って、ガンガンと海底を掘削している。


 かなり長時間やっているけど、大丈夫かな?


 本人は楽しそうだけど。


 ときどき、高笑いしているし。


 ……


 ちゃんと休憩はとったほうがいいかもしれない。


 村長から言ってもらおう。




 スティファノから、島の調査の結果が村長に報告された。


 あーしも一緒に聞く。


「かなり古いものですが、魔神教の痕跡がありました」


 魔神教って、魔神をあがめる人たち?


「そうです。

 推測ですが、ヤメが自身を封印したあと、そこをさらに別の封印で固めて、移動させた者がいますね」


 って、それが魔神教?


「魔神教に、そこまでできるか不明ですが……妙な力があったりと、変な組織でしたからね」


 たしかに。


「とくに、魔神を復活させようとしていた派閥は、魔神の後押しでもあるのかってぐらい強かったですし」


 むー。


「さらに、封印以外の痕跡もありましたが……それがどういったものかは、わかりませんでした。

 ヤメが起きたときに、自動的に壊れるようになっていたのかもしれません」


 もしくは風化したとか?


「その可能性は高いですね。

 そして、その封印以外の仕掛けによって、ヤメが弱体化したのではないかと」


 なんで、そこまで?


 あーしに恨みがあった?


 魔神教と争ったことなんてないけど。


 あーでも、実は魔神教だったってことがあるかもー。


 それで恨まれちゃったかな?


「なんにせよ、現状の島には危険はありません。

 痕跡は記録しましたので、次に行ったときに完全に消しておきます」


 スティファノはそう報告し、村長は頼んだと返事して終わった。


 その最中、ずっと猫があーしにすまぬという顔でお腹をさらしていたのは、なんだったのだろう?


 よくわかんないけど、モフっておいた。




 港の建設が進む最中、見張り台の鐘が鳴らされた。


 何者かが島に近づいたという合図だ。


 海を見ると、海の種族の一団。


 あの装備と数、前に来た海の種族の軍?


 まずい、あーしは海岸にいる者たちに海から離れるように声をかけた。


 スティファノは村に戻ってる。


 ラナさんもどこかに行ってる。


 ハイエルフや山エルフ、リザードマン、エルダードワーフはどれぐらい戦えるかわからないから数に入れない。


 ガルフは、島の反対側。


 いまいる天使族は十人。


 天使族が十人いれば、なんとかなるかな?


 海中に逃げられると、追えないけど。


 水中用多目的人型機動重機は工作用だしなぁ。


 ……


 あの、ユーリ?


 なぜ水中用多目的人型機動重機に武装を取りつける指示を?


 いそげー、じゃなくて。


 山エルフたち、喜々として取りつけるんじゃない。


 使わないよ。


 やり過ごすことを考えるの。



 海の種族と争いになるかなと思ったけど、大丈夫だった。


 向こう、すごく紳士的。


 こっちが荒くれものでした。


 いきなり急降下攻撃で先制を取ろうとした天使族、反省!


「だからって、いきなり岩を投げつけてこなくても」


 岩を投げたのはあーし。


 当たらなかったけど、急降下攻撃は妨害できた。


 自分を褒めたい。



 海の種族はウルザの関係者だった。


 ウルザがこの島のことを調べているときに、海の種族に確認に行ったらしい。


 海の種族は関与しない島だったので、許可を出した。


 許可を出したあと、考えてみればここ十数年で急に認識できた島だと思い出した。


 なぜか海の種族は、それまで島のある海域に入ろうとしなかったそうだ。


 許可を出したはいいけど、そこで大きなトラブルがあったら困るなと軍を編成して様子を見にきた。


 それがあーしが前に見かけたやつ。


 なにも問題なく島にまで近づけるのを確認し、周辺に怪しい存在もないからと撤収。


 ただ、しばらくして島が賑やかになったから、ウルザだろうと思いつつも様子を改めて見にきたそうだ。


 それが今回。


 なるほどー。


 とりあえず、あーしらがウルザの関係者だと話をして、今後の協力体制の構築を提案しておいた。


 あ、海底で掘削してるのは海の種族的に問題ないかな?


 駄目なら中止してもらうけど。


 問題なし?


 よかった。


 え?


 海底の掘削を手伝ってくれるの?


 助かるー。


 わかってるわかってる。


 船が行き来するときの案内役や護衛はお願いするように、村長に言っておくから。


 うん、えーっと五村の村長。


 わかる?


 悪食王?


 なにそれ?




 大樹の村に戻ったとき、海の種族のことを村長に報告。


 海の種族が認識できなかったのは、あーしの封印が関わってるかもしれない。


 よくわかんないけど、海の種族が認識したのが、あーしが起きたぐらいだから。


 認識した段階で来てくれたら、あーしはあそこまで苦労しなくてよかったと……


 考えないようにしよう。


 え?


 そろそろ、村長が島に行くの?


 了解。


 頑張って案内するよー。





ガルフ「出番だと思って急いで帰ったら、終わってました」


ユーリ「いそげー、じゃなくて、まわせーっ、って言いたかった」



ヤメ   「次の人に四枚取らせるカードに、模様変え+次の人に四枚取らせるカードを出すのは……セーフね。じゃあ、これで」

ハイエルフ「やめてぇぇぇっ!」

天使族A 「ほら、やり返すのよ。これで流れは逆にしたから」

ハイエルフ「ニヤリ。重ね出しありでしたよね。四枚取らせるカードを三枚! 十二枚取ってください」

ヤメ   「じゃあ、そこに模様変え+次の人に四枚取らせるカードを」

天使族B 「やめてぇぇぇぇっ!」


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― 新着の感想 ―
ヤメさんの封印が解かれて復活した時期が十数年前というのであれば村長が魔神を浄化して猫に転生させた時期と大体一致するのである意味村長案件ですね。
あ。いま気づいた。 相手に「やめてぇぇぇぇっ!」って言わせるから、ヤメさんかー。
うん。 そのカードゲーム、ウノが無茶苦茶強そう。 てか・・・インフゥルノウルフって、全般的に知的ゲームに強くよね(笑) たぶん天使族、クロの子達が居ないトコで、カードゲームしようと思ったのかな?(…
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