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ヤメは村長と語る


 あーしの名はヤメ。


 あーしはウルザに連れられて、五村の村長宅へ。


 そして、怪しげなところから……


 あ、転移門。


 転移門で移動するのね。


 ここに転移門があることは秘密?


 了解。


 絶対に言わない。


 いざというときの交渉材料にもしない。


 誓うよ。


 ……うん、昨日、プラーダにいろいろと脅されたから。



 そして転移門の先は……ダンジョン?


 あー、出口までの短い通路はあるけど、来客は遠回りね。


 防犯の都合かな。


 仕方がない。


 あーしを一人にするわけにはいかないのだろうけど、ウルザたちを遠回りに付き合わせて、ごめんね。


 でもって、あーしから離れないでもらえると。


 このダンジョン、蜘蛛がいっぱいだから。


 しかも変な進化したのもいるし。


 アラクネって、超レアな存在じゃなかったっけ?


 そのアラクネがウルザに丁寧な挨拶をしているのを見ながら、あーしはウルザの服を掴む。


 離さない。


 歩きにくいかもしれないけど、我慢して。



 なんとかダンジョンの出口に。


 周囲を見渡して……


 畑、森……なんか大きなスタジアム?


 へー、馬を競わせる場所なんだ。


 でもって、多目的人型機動重機アーティ・ホース


 おお、趣味人だ。


 で、遠くに見える大きな屋敷がウルザの家ね。


 ……


 あの、確認だけど、ここってどこ?


 ひょっとして、死の森じゃない?


 森の雰囲気、覚えがあるんだけど?


 寝る前だけど、一回、来たことがあるから。


 ほら、インフェルノウルフがいるっ!


 しかも複数!


 尻尾、振ってるけど!


 ウルザに撫でられたくて並んでいるけど!


 なに、ここ!



 ダンジョンの出口に馬車が用意されていたので、それに乗って移動。


 周囲を複数のインフェルノウルフが並走している。


 ウルザが言うには護衛らしい。


 そして、屋敷の前。


 大勢が待っている。


 ウルザの出迎えだろう。


 ただ、今回はあーしがいるから、儀礼的な挨拶をしっかりやってくれる。


 この村の長であるウルザの父親が歓迎してくれたけど……


 普通。


 普通の人間だ。


 だけど、あーしは騙されない。


 力の差がありすぎると、相手のことをすごいと思えなくなることを知っている。


 比べる対象じゃないから。


 だから、どれだけ普通に見えても油断してはいけない。


 いや、ほんとうに普通に見えるけど。


 プラーダの言葉を思い出せ。


 竜に意見できる。


 本人が怒るより先に、竜たちが出てくる。


 竜を倒して、妻にしている。


 どう考えても、普通じゃない!


 なのに、普通に思えてしまう。


 お、恐ろしい。


 そんな村長から、ウルザを盾にしていることを注意されてしまった。


 でもでも、ウルザを離すのはいろいろと怖い。


 あ、うん、そっちの竜と蜘蛛がもっと怖いよね。


 理解した。


 だけど、あーしが怖がっていることも理解してほしい。



 ウルザの代わりとなる盾を渡された。


 木製だけど、竜の鱗を貼り付けているから、かなり頑丈。


 頼りになりそうだけど……マト


 え?


 これ、的なの?


 上に掲げると攻撃される?


 そんなの持たせないで!


 ウルザは離さない!



 的が的になるところを見せてもらった。


 天使族が馬鹿みたいな威力の槍を投げ、的が爆散した。


 ……


 腰が抜けた。


 あと、あの槍を投げた天使族。


 あーしが知ってる神人族の血を確実に引いてる。


 槍を投げるフォームや、投げる直前の目が一緒だったもん。



 鉄の盾と交換で、ウルザを解放した。


 うん、さすがに竜と蜘蛛が目だけ笑ってない笑顔で、少しずつ近づいてきたから。


 あれはー、そのー、敵に回しちゃ駄目なやつー。


 そして、敵にならないように動いてくれた村長、ありがとう。


 え?


 あーしを知ってる人が、そろそろやってくる?


 あ、竜の子の子守をしているって悪魔族ね。


 聞いてた聞いてた。


 あれ?


 向こうはあーしのことを知ってるの?


 そうなると限られるんだけど……




 あれ?


 あーしはなぜベッドに?


 いつのまに?


 なにがあったの?


 死んだわけじゃないと思うけど……


 そして、ここは……あー、ウルザの父親の屋敷かな?


 なかなかいい部屋を与えられたみたい。


 あー……服はそのまま。


 さすがに客としてきたあーしを脱がせないもんねー。


 ベッドを汚したみたいで、ごめんなさい。


 寝てた時間は長いのかな。


 体には疲労感が残ってるけど。


 あー、嫌な夢を見た気もする。


 あまり思い出したくない三人の顔がよぎる。


【英雄】のグッチ、【慈愛】のブルガ、【恩愛】のスティファノ。


 あーしを欠片も尊敬しない、悪ガキたち。


 弱いあーしを、あちこちに連れまわしてひどい目に合わせてきた。


 何度死んだか。


 あと、あーしがどれだけ尻ぬぐいをしたか。


 思い出すと胃が……


 駄目だ駄目だ駄目だ。


 考えちゃ駄目だ。


 出会ってしまう。


 ほら、部屋の扉から顔を出すブルガの姿が……ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!




 あれ?


 あーしはなぜベッドに?


 ……


 同じことを繰り返している気がする。


 気のせい?


 気のせいだといいな。


 はははっ。


 現実を見よう。


 グッチ、ブルガ、スティファノがいた。


 えー、なにここ。


 どういうこと?


 あの三人って、悪魔族のなかでも特別視されるぐらい問題の多い悪魔だよー。


 でもってプラーダ、知ってて黙ってたな。


 許さん。


 あーしがここまで冷静に考えられるのは、村長からもらった木製の盾がいい感じだから。


 精神が安定する。


 やはり、盾は木製。


 木製に限る。


 そして、村長。


 グッチ、ブルガ、スティファノがあーしに近づくのを止めてくれた。


 あの三人が素直に言うことを聞くなんて!


 さすが村長!


 最大級の感謝を村長に!


 一回、あーしを殴ります?


 いやいや、そういった趣味とかではなく、痛いのは嫌です。


 ただ、あーしを殴ると、なんか幸運になるらしくて。


 死を避けるみたいなんです。


 だから、あーしと戦う相手はなかなか死ななくて。


 あはははは。


 ただ、殴ったことが原因であーしが死ぬと、その幸運は消えちゃうから。


 でも、弱い殴りだとあんまり意味がなくて。


 加減が大事です。


 え?


 殴らない?


 なんていい人だ。


 プラーダが言ってたとおり、村長は温厚だ。



 あーしは、村長といろいろ話をした。


 島での生活のこと。


 グッチたちとの関わり。


 そして、今後のこと。


 もっとも長く話したのは、グッチたちのことかな。


 騙されちゃ駄目だよ。


 あれ、【英雄】とか【慈愛】とか【恩愛】とか、いい言葉を司っているけど、悪魔族だからね。


 悪魔族の【英雄】、悪魔族の【慈愛】、悪魔族の【恩愛】だから。


 基本、自分たちが楽しければ、ほかはどうでもいいって考える三人。


 いやいや、暇を潰すのが最上級の楽しみ、我を楽しませよって常に言ってたから。


 うん、三人とも。


 そりゃ、あーしが知ってるころから長い月日が流れたみたいだから、多少はましになっているかもしれないけど。


 え?


 グッチがあーしの滞在費を?


 ?


 え?


 どういう…………あっ!


 村長っ!


 そのグッチは偽者!


 捕まえて縛って目的を吐かせないと!


 本物のグッチが変なことを考えている!


 あーしは必死に訴えたのに、村長は苦笑いするだけだった。







ヤメ    「許さん」

プラーダ  「え? 仲よしだったじゃないですか」

グッチ   「そうそう」

ブルガ   「私たち」

スティファノ「仲よし」

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― 新着の感想 ―
蜘蛛を見て気絶しない客は、1.過去に蜘蛛を見て気絶したうえで生きてた客、2.蜘蛛よりもレベルが高くてオートで作動するスタンバッシュが効かない客の2種があり、ヤメさんはたぶん後者。
クモを見て気絶しない客人珍しい。 死を避ける幸運って、すごい。そりゃあ殴られもする。 グッチたちを悪ガキ扱い、ヤメさん悪魔族で最年長なのでは。
>ただ、あーしを殴ると、なんか幸運になるらしくて >死を避けるみたいなんです もしかすると、ヤメさんの権能の【不死】は、自分が甦るだけではなく、他人にも不死性を付与することができる権能なのでしょうか…
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