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ヤメは島を出る


 あーしの名はヤメ。


 あーしのいる島にやってきた少女の名はウルザ。


 ウルザは王女ではなく、村長の娘だって。


 どれだけ裕福な村なのかな?


 あ、あーしが悪魔族だってのは、バレてた。


 隠す気はなかったけどね。


 揉めないために、積極的に教える気はなかったんだけど。


 なんでバレたんだろ?


 ウルザと一緒にいる四人の神人族か、氷の魔物が見破ったのかな?


 まあいいや。



 ウルザたちにあーしのことを説明するため、あーしの拠点に案内した。


 見てもらうのが早いからね。


 でも、あーしの拠点を見たウルザたちは、すごく優しい目であーしを見てきた。


 失礼じゃないかな?


 ちゃんと雨を防げるんだよ。


 横雨には弱いけど。



 とりあえず、来客なのであーしは頑張って自慢のお茶をふるまったら、全員に噴き出された。


 それも失礼じゃないかな?


 美味しいよ。


 毒じゃないし。


 あ、コップがバラバラの大きさの貝殻なのは、許してほしい。



 鳥たちは……退避中。


 うん、偉いぞ。



 人形のイバンを紹介しながら、あーしの島での生活を語ったら泣かれた。


 えー。




 ウルザたちからいろいろと話を聞くと、あーしの認識と現実のずれがあった。


 あーしの知ってる国。


 ほとんどない。


 魔王国ぐらい。


 しかも、悪魔族が竜族に仕えてるって……たしかにあーしが寝る前にそんな話があったけど、反対派がかなり多かったから実現しないと思ってたのに。


 あーしが寝ているあいだに、なにがあったの?


 百年で変わりすぎじゃないって思ったんだけど、どうもあーしが寝てたのは百年どころじゃないみたい。


 ウルザの知り合いに悪魔族がいるらしいので、会ったら話を聞かせてもらおう。


 竜族の子供の世話をしているのだから、きっと温厚な者に違いない。


 ああ、名前はいいの。


 聞いてもどうせわかんない。


 あーし、悪魔族の知り合いは少ないから。


 その少ない知り合いが強烈なんだけど……


 あー、ウルザはその連中と関わっちゃ駄目だからね。


 うん、悪魔族以外にあたりがきついから。


 変だし。


 知らないほうがいい。


 知っちゃうと出会うって言葉知らない?


 あーしが寝る前は、よく使われてたんだけどなぁ。



 神人族は、天使族に改名してた。


 これはあれか。


 神人族を名乗るのをはばかられるぐらい、やらかしたか。


 さもありなん。


 なにせ神人族。


 やらかさないはずがない。


 うんうんと納得していると神人族……あ、天使族ね。


 ごめんごめん。


 天使族の四人があーしにあーしの知る神人族のことを聞いてきた。


 素直に教えた。


 事実のみ。


 誇張は欠片もしていない。


 なのに、天使族の四人は誇張だと言って引かなかった。


 いや、これはあーしに誇張だと言ってほしいのかな?


 いろいろ酷いからな。


 でも、事実。


 揺るぎない事実。


 あーしが誇張だと言っても、事実は変わらないよ。


 でもって、天使族の四人の話とすり合わせると……あれ?


 あーし、二千年ぐらい寝てない?


 気のせい?



 気のせいじゃなかった。


 あーしの知る神人族が、いまの天使族の長老の祖母か曾祖母あたりって話を聞くと、事実っぽい。


 いったい、あーしになにがあった?


 さすがにそんなに寝坊しないと思うんだけど。


 でも、力は飛べないぐらいには失っているし……うーん。


 ま、まあ、考えるのはあとにしよう。


 まずはウルザとの話し合い。


 ここはあーしの領地と言ったけど、根拠は住んでいることだけ。


 譲れと言われたら譲る覚悟はある。


 でも、無償タダはいや。


 なにかほしい。


 だからと言って、お金を渡されて、それで終わりと放り出されても困る。


 困る自信しかない。


 いや、島での経験を使えばどこでだって生きていけると思うけど、生きているだけだと思うんだよね。


 求めるのは安全な生活。


 島での生活も充実してたけど、死ぬから。


 最近は減ったけど、やっぱり死んでるから。


 そのあたりを考えると、この島での生活は過酷。


 島から出たいとは思う。


 もしくは、開発されたこの島で安全に暮らしたい。


 あーしは、そういった望みを隠さずにウルザに伝えた。


 隠してもしかたがない。


 そしたら、ウルザはあーしをウルザの村に連れ帰ってくれることになった。


 ウルザが言うには、あーしが島を出たあとのことはウルザの手にあまるので、ウルザの父に相談してほしいらしい。


 全然、かまわない。


 ウルザの様子から、ウルザの父の村は裕福な村のはず。


 ということは、安全な村ってこと。


 素晴らしい。


 なんだったら、その村で暮らさせてもらえれば十分かもしれない。


 仕事はちゃんとする。


 これでも寝る前は、それなりに有名な悪魔族だったから。


 それなり。


 それなりね。


 誰でも知ってるとかじゃないから。



 なんにせよ、ウルザの父と相談しないといけないけど、根本的な話としてウルザがこの島を父へのプレゼントに相応しいかを判断しないといけない。


 なので、あーしは三日ほどかけて島のあちこちを案内した。


 飛べる天使族の四人が羨ましい。


 そして、氷の魔物が物知り。


 あーしが体で覚えたことを、いろいろと知ってた。


 あと、料理が上手。


 ウルザが持ってきた食材もあるんだろうけど、久しぶりにまともな食事をしたと思う。


 これで保存食?


 すごく美味しいんだけど?


 味が濃いからかな?


 氷の魔物、いいなぁ。


 でも、うるさい。


 言ってることは正しいけど、その正しさで殴ってくる感じ。


 ウルザが嫌がっている。


 氷の魔物はウルザの執事というより、指南役とかなのかな?



 ウルザたちを案内しているあいだ、あーしは飛行船で寝泊りさせてもらった。


 安心できる個室、ちょっと泣いた。


 ふかふかのベッドが嬉しい。




 島を見回ったウルザから、合格をもらえた。


 よかった。


 そして、あーしは島を出る。


 飛行船に乗って。


 島の留守は鳥たちやイバンに任せた。


 鳥たちが困らないように、硬い実はたくさん割っておく。


 あーしが戻ってこなくても、元気でいるんだぞ。


 勝手に死んでたら怒るからね。


 あーしの予感的には、また戻って来る気がしてるけど。


 ……


 島の外が怖すぎて、逃げ戻ってきたとかじゃないといいなぁ。


 あ、盾を持って行こう。


 うん。





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― 新着の感想 ―
さもありなんは草
2026/08/09 23:44 ここまで読んで
ようやく時系列が追いついた。メインの話は次回からかな。
全村人が泣いた
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