魔道具とゴーレムと知恵を持つ道具
魔道具は魔法を使うための道具。
簡単に言えば、魔道具には魔法が仕込まれており、使用者がスイッチなり、キーワードなりを発音することで発動する。
その際、使用者がその魔法を使える、使えないは関係ない。
使い方を覚えれば、誰でも使える。
とても便利だ。
ただ、何度でも使えるわけではなく、魔道具にセットされた魔石の魔力が尽きると使えなくなる。
魔石を新しいものに交換すれば、また使えるようになる。
魔道具に仕込まれた魔法の種類や、セットされている魔石の大きさで変化するので、魔道具がどれだけ使えるかを判別するには、それなりに経験が必要とのこと。
俺はさっぱり判別できない。
ちなみに、魔法の杖は魔道具ではない。
魔法の杖には魔法が仕込まれているけど、魔石ではなく使用者の魔力を使うから。
対して魔法の巻物は、魔石はセットされていないけど、使用者の魔力も使わないので一般的には魔道具扱い。
個人的には、魔法の巻物は作るときに魔力を使い、発動を留めているだけなので、魔道具でもないような気もする。
ゴーレムは魔法で生み出された道具。
形は人型が多いけど、腕だけや足だけ、もしくは床型や壁型など、自由自在。
ゴーレムを製作した者の魔力や、素材になった魔石などで動きを覚え込ませたり、操ったりできる。
そういった存在なので、ゴーレムが魔法を使うことはない。
ただし、使えないわけではない。
ちゃんと魔法が発動できる構造にしておけば、ゴーレムでも魔法は使える。
しかし、これは非常に複雑で高度なゴーレムになる。
そんなゴーレムを作るより、ゴーレムに魔道具を持たせたほうが効率的だとルーとティアの意見。
ゴーレムの弱味は動力。
制作者の魔力、もしくは魔石だな。
制作者の魔力で動くゴーレムの場合、魔力が切れるとゴーレムは形を維持できなくなる。
魔石を使ったゴーレムの場合は、魔石の魔力が切れるとゴーレムの形は維持されるが動かなくなる。
なので、五村の生産工場で使っているゴーレムたちは、動力となる魔石は二つあり、片方が切れてももう片方で動き続ける。
片方が切れたら魔石交換の合図を出すので、同時に切れない限りはゴーレムは動き続けてくれる。
まあ、ルーとティアが動力の魔石が多くて起きた問題はないと、動力となる魔石が三つあったり、四つあったりするゴーレムもいたりするのだけど。
さて。
空飛ぶ絨毯や、箱、死霊魔導師を主人とする自我のある剣のクエンタン。
あと、万能船と飛行船かな。
これら、自我を持つ道具は、魔道具なのか、ゴーレムなのか?
分類は人によるらしい。
古い書物でも、表現はいろいろ。
魔道具でもゴーレムでもなく、知恵を持つ道具という種とするのが最多。
あ、いや、違うな。
圧倒的最多は注文の多い道具だ。
「昨日まで従順だったのに、いきなり自我を持って動きを変えるなっ!
決まった時間に決まった動きをしてくれないと困る!」
「開きっぱなしの扉に、なんの意味があるんだ?
あと、主人を閉め出すなっ!」
「案内板が、気分で表示を変えるんじゃないっ!」
などの意見とともに、注文の多い道具の文字がある。
基本的にはやっかい者……いや、やっかい物扱いが大半か。
でも、自我を持っても問題を起こさない物も多かったそうだ。
記録に残るのは、トラブルを起こした場合だからな。
多数が自我を持っても問題なかったと考えよう。
うん。
うちにいる空飛ぶ絨毯や、箱、自我のある剣、万能船は問題を起こさないし……
大丈夫。
起こしてない。
たまに箱の一つが山エルフたちと一緒に暴走したりするぐらいだ。
本題。
自我を持ったゴーレムはゴーレムなのか?
それとも、知恵を持つ道具として扱うべきなのだろうか?
所有者が好きに決めたらいいそうだ。
ルーとティア、それと山エルフたちがそう言っていた。
なので、彼らは……賢いゴーレムとした。
自我を持たないゴーレムは賢くないというのかと文句が出るかもしれないが、とりあえず。
そう、とりあえずの呼び方。
別案があったら、受け入れる。
いつでもどうぞ。
変なことを考えていたのは、忙しかったから。
夏の収穫を終えたあとは、秋の畑作り。
頑張った。
すごく頑張った。
秋の畑は、冬を越すためにも大事だからな。
あと、個人的に楽しいから。
ルーやティア、山エルフたちのゴーレム作りと一緒だ。
楽しいが一番。
ウルザが氷の魔物のアイスと数人の天使族を連れ、出かけた。
目的地は、ウルザが拠点にしている街。
いや、今は大樹の村がウルザの拠点だから、ウルザが拠点にしていた街かな。
そう言わないとハクレンとザブトンが怖い。
なんにせよ、ウルザは五村から飛行船を使って移動。
ウルザが拠点にしていた街にはアサとアースがいるし、定期連絡はあるけど、ウルザでないとやれないこともある。
アサとアースは戻るのは来年でいいと連絡してきたけど、夏の収穫物の差し入れをウルザが持って行くことになった。
向こうでは一泊か二泊という予定だけど、どうなるかは不明。
アイスはウルザの護衛兼、村に戻らせるための見張り役。
出発前、ハクレンとザブトンから、めちゃくちゃ微笑まれていたアイスは胃のあたりを押さえていたけど、氷の魔物にも胃はあるのかな?
天使族は、ウルザの護衛もするけど、主目的はウルザが拠点にしていた街の情報収集。
その情報収集は、アイスが交渉して勝ち取った醤油、味噌、マヨネーズなどの工房の誘致場所の選定のため。
ハイエルフたちなど、何人か行ったことがある者もいるけど、発展スピードが速いので最新の情報がほしいそうだ。
まあ、ウルザが村に戻る前には空いていた場所だったけど、ウルザが村にいるあいだになにか建っている可能性はあるからな。
本来なら文官娘衆の誰かに行ってもらいたいのだけど、文官娘衆たちは夏の収穫物の保管と販売の手配で忙しい。
代役で個々に戦闘力があって、判断もできる天使族が選ばれた。
天使族であれば、飛行船を使わなくても単独で戻ってこられるしな。
頼りにしている。
そうそう、天使族といえば五村の生産工場の管理人として、七人が追加で派遣された。
なので、現在は十人の天使族が五村の生産工場を管理している。
用意していた寮は最初から余裕があったので、生活に問題はないはず。
仕事は……頑張っている。
サボる暇がないほど、忙しいらしいから。
俺としては、交代で休める環境にしたいけどなぁ。
天使族の長であるマルビットと補佐長のルィンシァは、彼女たちにはいまぐらいがちょうどいいと喜んでいた。
その生産工場で作られた物を冷やす魔道具、冷蔵庫は小型も大型も各村で好評。
食材の保存が簡単になったと喜ばれている。
貴族関係者には知り合いにまず配ったけど、あっというまに広まって購入希望が届いている。
値段はそれなりにするんだけどな。
誰に優先的に購入してもらうかは、ゴロウン商会のマイケルさんとシャシャートの街のミヨに任せている。
もう少し価格を下げることができれば、一般販売も進められるだろう。
余談だが、冷蔵庫には魔石が使われているので、魔石の価値が上昇。
五村での魔石の買い取り価格がちょっと上がったらしい。
冒険者たちの活躍が期待される。
追尾荷車「あとから来た物に追い越され……」
冷蔵庫 「私の存在はかなり前から表現されてましたよ」(私が先輩)




