卒業生が地元に帰らない
私はガルガルド学園で働く教師の一人。
魔法学を教えている。
名は……まあ、適当に先生とでも呼んでほしい。
さて、最近の学園では、ちょっとした問題が起きている。
問題の原因は、学園の卒業生が地元に戻らないことだ。
貴族学園では、以前から卒業生が地元に戻らないことはあった。
しかし、最近はその数が多い。
そして、数が増えたことで問題が起きている。
卒業生の親たちが、子供を返せと文句を言ってくるのだ。
基本として学園は卒業生を管理しているわけではない。
卒業後、どこそこでこういった仕事をしていますと報告をくれる卒業生もいるが、大半の卒業生からは報告はない。
なので、卒業生が地元に戻っていないことも知らない。
知っているのは、卒業生たちが所属していた派閥の上位者ぐらいだろう。
だけど、学園としては卒業生たちがどの派閥に所属していたかも知らない。
派閥に所属したと学園に報告する義務はないからな。
学園は知りようがないのだ。
そんな学園に卒業生が地元に戻らないと文句を言われても、どうしようもない。
その卒業生がどこにいるか知らない。
連絡方法も知らない。
学園としては、卒業生は卒業したので無関係と返事するしかないのだ。
そうすると、今度は武力で訴えてくる者が現れる。
困ったことだ。
まあ、わかりやすくはあるが。
とりあえず、武力で訴えてくる者に対しては学園長を筆頭に教師たちで対処する。
これには生徒たちは出せない。
学園のプライドだ。
「数は……三組合同で二百で、こっちが五十」
「なに、向こうの半分は無理やり連れてこられた兵だ」
「それでも百で、こっちの倍だぞ」
「そうなんだけどな」
「報告!
ゴール先生、シール先生、ブロン先生、到着しました!」
「よし、勝った!」
「学園長を後方に、空いた位置にゴール先生たちを!」
「左右は?」
「右は生産教室の者が対応する。
左は軍略教室の者だ」
「軍略教室に任せて大丈夫か?
あそこ、過去の戦いの研究ばかりだろ?
実戦は……」
「大丈夫だ。
謎の軍師が応援に入っている」
「謎のって……あれ、四天王のグラッツ将軍だろ?
いいのか?」
「仮面をつけているからバレん。
いけるいける」
「いけるなら、中央で指揮してもらったほうが……」
「そこは学園が持たないと駄目なところだろう」
「それはそうだが……おっと、そろそろ時刻か。
学園長が旗を掲げたぞ」
「よし!
戦闘開始だ!
行くぞっ!」
「文句を言ってくる親たちを追い払えっ!」
思ったより苦戦したが、なんとか勝った。
謎の魔王さま、ありがとうございます。
とても助かりました。
でもって、あー、そこの卒業生……メディカメント家のリンデンだったかな。
そう、君。
うん、こっちに来て。
私の疑問に答えてほしい。
今日、押しかけてきた君の家族は、君が戻って来ないことを学園が離さないからだと言っていたんだ。
ああー、違う違う。
君が家にどう説明したかを聞きたいわけじゃないんだ。
聞きたいのは、なぜ君が親と一緒に学園を攻めたかなんだ。
……君の父は五十人ぐらいで学園に押しかけようとしたけど、シャシャートの街で大半が観光に行ってしまい戦力不足。
現地での兵員募集に応じた結果と。
……
応じた?
生活費に困っていたのね。
なるほどなるほど。
そこでなぜ親と話し合わない!
一緒になって学園を攻めるとは、なにを考えているんだ!
少なくとも君の家は学園を攻める理由が消失しているだろう!
親とは話し合った?
でも、せっかくここまで来たのだから攻めると譲らなかったと?
…………
譲らせろっ!
学園に迷惑をかけるんじゃないっ!
あと、君以外の卒業生が何人もいたが、君が誘ったのか?
生活費に困っているから声をかけたと。
助け合いの精神は悪くないが、もう少し状況を考えてくれないか?
君の親のせいで学園は大騒ぎだ。
教室を開くこともできなかった。
学園長も戦いで荒ぶっているし。
卒業生は、在園中の生徒のことを考えてほしい。
わかっている?
だから、在園中の生徒は誘わなかったし、参加もさせなかった?
参加しようとした生徒がいるのか?
生徒も生活費に余裕があるわけじゃないのはわかるが……
もう少し、生活費を稼げる授業をすべきか?
いや、それをすると地元に帰らない生徒が増える。
ぬぬぬ。
ま、まあ、ともかくだ。
君は親と話し合ったわけだから……地元に戻るのかい?
戻らない?
親から仕事をもらった?
シャシャートの街にあるカレーを売っている店……ああ、マルーラか。
マルーラの支店を地元に誘致する仕事?
たしかにマルーラは支店を各地に作り始めているが、君の地元はかなり遠い。
厳しいんじゃないか?
マルーラで働いて、支店長を目指す?
それなら可能性はあるが……
君、一応は貴族だろ。
平民の店で働けるのかい?
あと、あそこは従業員の採用はかなり厳しいと噂だけど。
え?
あそこって、ゴール先生たちの親がやっている店?
派閥の力で押し込んでもらう?
待て待て。
ゴール先生の派閥って、アルフレートくんが引き継いで、いまはその弟のトラインくんが率いている学園最大派閥だろ?
あそこが、君の採用に力を貸すとは思えないんだが?
君だから貸さないと言うわけじゃなくて、一人にそういったことをするとほかに頼まれたときに断れなくなる。
派閥が大きくなった弊害だな。
だから、そういったことはしないと思うんだが?
いや、君が派閥に大きな貢献をしているなら話は違うんだろうけど。
あー、駄目駄目。
私はあの派閥に影響力はない。
逆にいろいろと助けてもらっていて、頼まれたら断れない立場。
私は力になれない。
……トラインくんを紹介してほしい?
そうか、君はトラインくんと入れ違いで卒業したんだったな。
ゴール先生たちに頼むのは駄目なのか?
そっちとは顔見知りだろ?
……
たしかにゴール先生たちの周囲には、プギャル伯爵とかグリッチ伯爵がいるけど。
トラインくんの周囲に誰もいないと思わないほうがいいぞ。
彼、常識人だから学園長がかなり気に入っているし、トラインくんの名付けは魔王さまがやったって話だし。
なんにせよ、私が君を紹介するのは無理だ。
なぜって驚くことじゃない。
紹介というのは責任が伴うんだ。
悪いが、学園を攻めてきた者たちを紹介できない。
当然だろう。
いまさら慌てても、もう遅い。
君の今後の健闘を祈る。
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