表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プラティズ レコード  作者: 荒屋敷ハコ
第一章 ~ルーチェ~
18/36

1-17

                1-17

 それから3日後、プラティ族の集会があった。

 年に1回開かれる、夏至祭の初日だ。プラティ族の族長、ファウダの挨拶があったり、アーディンの演奏や踊りなどのパフォーマンスがあったりと、集会は着々と執り行われていった。

「ここで、旅をするにあたり相応しくないと思われる人を発表する」

 『監視員』と呼ばれる、黒いローブを着た男が壇に上がった。

 男は一礼すると、淡々と名前を読み上げていった。名前が読み上げられる度に、悲鳴や泣き声があちこちから湧き上がっていった。

「アイリー」

 その名前を呼ばれた瞬間、ルーチェは全身から血の気が引いていくような感覚に襲われた。

 隣にいる母は、ただ黙って静かに立っていた。

「ねぇ、嘘でしょ?別の、アイリーさんだよね」

 ルーチェは小声で母親に訊いた。

 母は何も答えず、唇をかみしめていた。父はうつむいたままだった。

「ねえ、違う人だよね」

 聞こえなかったんだと思い、ルーチェは声を大きくした。

 だが、誰も何も言わなかった。

「父さん、そんなの嘘だよね。母さんはずっと一緒に旅ができるんだよね。ねぇ、そうだよね」

 嘘だって言ってほしかった。

 悪い夢だったら覚めてほしかった。

「ごめんね、ルーチェ。本当なのよ」

 崩れるようにしてしゃがみ込んで、ルーチェを強く抱きしめながらアイリーは答えた。

「そんなの、嫌だよ」

 ルーチェの唇が震えた。

 旅に出るのに相応しくない者。そういった人達の先にあるものは、死しかない。

「嫌だよ!絶対そんなの嫌だよ!だって僕は母さんとずっと旅がしたいもん。ね、母さん行っちゃだめだよ」

 ルーチェは泣き叫んだ。

「……以上のものは、前に出るように」

 『監視員』が告げた。

「ルーチェ、ありがとう」

 母は笑っていた。

 それはとても悲しい笑顔だった。

「私は、ミロンド、ルーチェ、それに、みんなに会えてとても幸せでした。本当に今までありがとうございました」

 アイリーはその場ですっと立つと、深くお辞儀をした。

 それからそのまま前へと歩いて行った。

「やめて。母さん、行かないで!」

 母を追おうとしてルーチェが前へ行きかけた瞬間、

「!!」

 右肩に激痛が走った。

 ルーチェはたまらず地面に転がった。

 プラティ族に付けられた、呪いの印だ。この印がある限り、誰も『監視員』に抵抗できない。

「ルーチェ」

 ミロンドが駆け寄った。

「……母さん、行かないで……」

 激痛に耐えながら、それでもルーチェは前進を試みた。

 しかし、砂をつかむばかりで一向に前には進めなかった。

「父さん、母さんが、連れて行かれちゃうよ……」

 目に涙をためながら、ルーチェは父を見た。

「もういいよ、ルーチェ。……もう、いいんだ。ごめんな」

 父はそのままルーチェを抱き上げた。

 父の腕の中で、ルーチェは涙を流し続けていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ