1-17
1-17
それから3日後、プラティ族の集会があった。
年に1回開かれる、夏至祭の初日だ。プラティ族の族長、ファウダの挨拶があったり、アーディンの演奏や踊りなどのパフォーマンスがあったりと、集会は着々と執り行われていった。
「ここで、旅をするにあたり相応しくないと思われる人を発表する」
『監視員』と呼ばれる、黒いローブを着た男が壇に上がった。
男は一礼すると、淡々と名前を読み上げていった。名前が読み上げられる度に、悲鳴や泣き声があちこちから湧き上がっていった。
「アイリー」
その名前を呼ばれた瞬間、ルーチェは全身から血の気が引いていくような感覚に襲われた。
隣にいる母は、ただ黙って静かに立っていた。
「ねぇ、嘘でしょ?別の、アイリーさんだよね」
ルーチェは小声で母親に訊いた。
母は何も答えず、唇をかみしめていた。父はうつむいたままだった。
「ねえ、違う人だよね」
聞こえなかったんだと思い、ルーチェは声を大きくした。
だが、誰も何も言わなかった。
「父さん、そんなの嘘だよね。母さんはずっと一緒に旅ができるんだよね。ねぇ、そうだよね」
嘘だって言ってほしかった。
悪い夢だったら覚めてほしかった。
「ごめんね、ルーチェ。本当なのよ」
崩れるようにしてしゃがみ込んで、ルーチェを強く抱きしめながらアイリーは答えた。
「そんなの、嫌だよ」
ルーチェの唇が震えた。
旅に出るのに相応しくない者。そういった人達の先にあるものは、死しかない。
「嫌だよ!絶対そんなの嫌だよ!だって僕は母さんとずっと旅がしたいもん。ね、母さん行っちゃだめだよ」
ルーチェは泣き叫んだ。
「……以上のものは、前に出るように」
『監視員』が告げた。
「ルーチェ、ありがとう」
母は笑っていた。
それはとても悲しい笑顔だった。
「私は、ミロンド、ルーチェ、それに、みんなに会えてとても幸せでした。本当に今までありがとうございました」
アイリーはその場ですっと立つと、深くお辞儀をした。
それからそのまま前へと歩いて行った。
「やめて。母さん、行かないで!」
母を追おうとしてルーチェが前へ行きかけた瞬間、
「!!」
右肩に激痛が走った。
ルーチェはたまらず地面に転がった。
プラティ族に付けられた、呪いの印だ。この印がある限り、誰も『監視員』に抵抗できない。
「ルーチェ」
ミロンドが駆け寄った。
「……母さん、行かないで……」
激痛に耐えながら、それでもルーチェは前進を試みた。
しかし、砂をつかむばかりで一向に前には進めなかった。
「父さん、母さんが、連れて行かれちゃうよ……」
目に涙をためながら、ルーチェは父を見た。
「もういいよ、ルーチェ。……もう、いいんだ。ごめんな」
父はそのままルーチェを抱き上げた。
父の腕の中で、ルーチェは涙を流し続けていた。




