ダンジョン攻略
<ちゅっ>
「おはよう御座います。ご主人様」
「おはよう。ミーシャ」」
何時もの朝を迎える。
<ちゅっ>
「おはよう。リオ」
順にレミー、カーラと挨拶をして着替える。
ユークは侍女達との交流の為に食事は一緒の場所で食べている。
侍女達も普通なら王や王妃と一緒に食事を食べるのは緊張するものだが、ユークやミーシャ達は全く緊張感を与えると言うのとは違っていた。
違う意味で緊張感が有るのは有るのだが・・・。
ユークに少しでも気に入られようと最初の内は給仕をしょうと頑張っていたのだが、悉くミーシャ達に『ご主人様の給仕は私達の役目なの』と、断られてきた。
流石に最近では給仕しようとする侍女は居なく成ったが、ユークに熱い視線を送る侍女は一向に減らないのだった。
マイペースなユークはそんな視線も気にしないでミーシャ達に予定を話し始めた。
「カーラの方で、僕がやらないといけない仕事ってある?」
「旦那様が手伝って下さるなら、幾らでも用意しますよ」
ユークと一緒に居られるだけでカーラは嬉しいとそう答えた。
「特に無いならダンジョンの攻略に行きたいんだ」
「そうですか、セドリックさんに聞かないと解りませんが、私の方は大丈夫ですよ」
「そうか、いつも任せっきりで御免ね」
「旦那様のお役に立てる事ですから喜んでやらせて頂きますわ」
カーラに礼を言いミーシャ達にも話し掛けた。
食堂に居るのは、妻達の他には婚約者のクララとエマに侍女達が20人程だ。
騎士隊や外の仕事をしている人達はそれぞれの宿舎で食事を摂っている。
クララだけが例外だと言えるだろう。
セドリックも稀にここで食べる時が有るが大半は自宅で食べている。
「ミーシャ達はなにか予定有るの?」
「私の予定はご主人様の側に居る事ですよ」
ミーシャの言葉にリオも同じだという。
「良いわよね~ミーシャとリオはいつも一緒で」
羨ましそうにレミーが愚痴をこぼした。
「私はユーク様の部屋の掃除と片付けと庭のチェックかな~」
レミーには毎日の仕事が有る。
ユークの部屋や身の回りの片付け個室風呂の掃除、アベル一家や庭師達との交流もレミーの役目だ。
「クララは?」
「はい、私はぴえちゃんとアポロ達の見回りをしてきます」
アポロ達と言うのは鉱山を守っている地竜達の事だ。
「そうか、アポロ達にも今度いっぱい遊んでやるからって伝えておいてね」
「はい、話しておきます」
「ご主人様、ダンジョンには私達だけで行かれるのですか?」
「まだ解らないけどセドリックに聞いてから考えるよ」
ミーシャが聞くには訳があった。
最近では騎士隊のランクアップの為に依頼に連れて行く事も多いからだ。
パーティーに入れるわけでは無いから騎士隊だけで行くのと変わらないのだが、ユーク程の実力者が居るだけで騎士隊の動きも良く安全に魔物を倒せるからと同行する事が多いのだ。
食事を終えて侍女達に『仕事頑張ってね』と告げて私室に戻った。
ミーシャに紅茶を淹れて貰い一息付いていた。
そこにノックの音が聞こえる。
ミーシャがエマに目で促す。
「はい、どなたですか?」
エマが扉に近づき声を掛ける。
「セドリックですユーク様に朝の連絡に来ました。」
エマはユークの方を見て頷いたのを確認してから扉を開けた。
「おはよう御座います。ユーク様、王妃様方」
「おはようセドリック、毎日来て貰って悪いね」
ミーシャはセドリックのお茶を淹れるようにエマに指示してから挨拶を返す。
「おはよう御座います。セドリック様」
リオ達も挨拶を返してからユークの正面の席を空ける、
「今日は依頼も来客の予定も有りません。昨日の予定通りダンジョンの方をお願いできますか?」
セドリックの言葉にユークは頷き質問をする。
「今日は誰か騎士隊を連れて行くの?」
セドリックは少し考えてから答える。
「そうですね、出来ればその方が有難いですが、誰かを連れて行きますとユーク様が戦えないので攻略のペースが落ちます。ダンジョンの成長を止めるのは急務ですからユーク様達でお願いできますか?」
セドリックの言う様に騎士隊を連れて行くと騎士隊のランクアップを優先する為にユーク達は見学してるだけなのだ。
危ない時はユークが手を貸すが、ほぼ見てるだけが多く当然一般の冒険者のペースと攻略は大差無かったりするのだった。
「騎士隊にも引き続きダンジョンには潜らせますが、無茶はさせないように言い聞かせておきますし、ユーク様達にも付いていかない様に厳命しておきます。」
「解った。夕方まで出来るだけ深くまで進んでみるよ。」
「宜しくお願いします。ミーシャ様とリオ様もお気を付けて!」
「有難う御座います。セドリック様、ご主人様がいらっしゃいますから安心して下さい」
リオも頷きセドリックに頭を下げた。
セドリックが退室して、ユーク達は『そろそろ行こうか』と、用意に掛かる。
ミーシャに装備を付けて貰いリオから黒耀剣を受け取る。
残るレミー達3人+エマにキスをしてからワープでダンジョンの入口に転移した。
コンラットにはダンジョンは1つだけだ。
セルトへの直通路を作る為にユークがグラン山脈を分断した時に地脈が変わり今までは無かったコンラットに新たに出来た1つだけなのだ。
発見されてから2年程経つがまだ地下10階位しか攻略が進んでいない。
単にダンジョンが広くて大きいのが原因だ。
フルール大迷宮並に巨大なので、入口には騎士達が監視する宿舎も建っている。
「ユーク様に王妃様、御苦労様です。」
ユーク達に気づいた騎士が声を掛けて来る。
ダンジョン入口近くには騎士隊の隊舎が有るおかげで、安全だと言う事で少ないが商店等の冒険者の為の施設も数件有り、そのせいか冒険者の数も年々増えていたのだった。
騎士の言葉で、ユーク達の存在に気づいた冒険者もユークを一目見ようと集まってくる。
「皆も御苦労様、今は何階まで進んでる?」
「はい、以前ユーク様が行かれた10階で止まっております。」
ユークが10階まで攻略したのが1年以上前だ。
「あら、全然進んでないのね」
ミーシャは呆れて言葉を発した。
「はい、9回層に出る蛇竜が曲者でして、巣を至る所に作ってます。Aランクの魔物が大量に襲いかかってくるので、そこから進めないのです。」
「巣を壊したら騎士隊なら10階までは行けそうなんだね?」
「そうですね、10階が現在どの様な状況か解りませんが、9階層の蛇竜の巣が無くなれば単発なら問題なく倒せます。」
「解った。9階層の蛇竜の巣は僕が何とかしておくから騎士隊は明日以降から攻略を進めてくれるかな?」
ユークは近くに来られると邪魔になるからと騎士隊に告げた。
「解りました。今日は8階層迄を集中的に攻略します。」
騎士はそう言って、蛇竜の巣をマーキングした地図をリオに手渡した。
ユーク達は集まっていた冒険者にも無理をしない様に言ってワープで9階層に移動した。
探索のスキルを発動しながら地図を頼りに進んでいく。
マークされてる蛇竜の巣は全部で6箇所、それぞれに10匹前後の蛇竜が居るらしい。
ユークは一時間程で、4箇所の巣と40匹以上の蛇竜を討伐して次に向かった。
「ご主人様?」
「なんだいミーシャ?」
「次の巣は私とリオで潰しますからご主人様は少し休んでて下さい」
「でも危険だし僕なら大丈夫だから任せてくれて良いよ!」
「私達も蛇竜位なら遅れは取りません。それにたまには体を動かしたいのです。」
ミーシャの言葉に頷き注意だけする。
「解った。でも危なくなったら直ぐに僕が出るから無理だけはしないでね」
ミーシャ達の戦闘は流石Aランクと言える程安定感があった。
ユークの超人敵な動きを毎度見ていたミーシャの動体視力は蛇竜クラスなら止まって見えるようだ。
リオはユークの魔法が強力過ぎて参考に成らないだろうと思っていたが、ミーシャとの連携や魔法を繰り出す速度で応えていたのだ。
ユークみたいに一瞬でとはいかないが、ミーシャが回避しながら蛇竜を切りつけ1匹づつに成る様にリオが魔法で牽制しつつ弱らせて行くと言う攻撃方法で、15分足らずで1つの巣毎討伐して見せたのだった。
「2人共凄く良い戦い方だったよ!」
誰でもないユークに褒められた事が何よりも嬉しいミーシャとリオだった。
最後の巣もミーシャとリオの2人で討伐を終わらせていた。
全部の巣を破壊してもう一度探索のスキルを発動する。
「大量に集まってる所は無いみたいだから次に進もうか?」
「「はい」」
階段まで進むのも時間の無駄だとワープして10階層に移動した。
10階層はダークオークが縄張りにしている階層だ。
ユークは前回マッピングした所まで一気に移動して、リオのマッピングの速度に合わせて攻略を進める。
探索のスキルを発動して巣に成ってる所を集中的に潰しながら進むのだ。
4つ目の巣を破壊した時にユークはある事に気づいた。
「ダンジョンって階層毎に結界が有るよね?」
「そうですね、強いものでは有りませんが、他の階層に魔物が行かないように結界は存在してますね。ですが嫌な気分に成って引き返す程度ですから結界と呼べるかは怪しいです。」
結界なら魔物を通さないだろうから本来なら外に出たりする事も無いだろうとミーシャは言う。
ユークもその通りだと思った。
「魔法って、結界から外には全く効かないのはどうしてなんだろ?」
確かに謎なのだが、結界(階段)付近での戦いの場合、結界を出入りしながら魔法を掛けると無傷で勝てるのだ。
その事を踏まえるとユークにしか出来ないがとても簡単な攻略方法も考えつくのだ。
ユークの全体攻撃魔法ならダンジョンの階層位なら範囲攻撃出来てしまうのだ。
要するに各階層毎にマップの細部は解らなくても全体攻撃1回で、階層を殲滅出来てしまうのだ。
実際アイテムの回収をしないといけないし魔物の気配も無くなるので探し難いと言う欠点が有り使えないのだが裏技としては最強だったりもする。
ミーシャ達にも話したが、同じ様にアイテム回収のロスが出ると却下されてしまった。
仕方無く順番に回っていく。
時折出会うオークやダークオークの単体はミーシャが簡単に討伐していくので余り時間もかからずに11階層への階段にたどり着いた。
「ここからは未知の階層だから注意してね。」
「はい!」
階段を降りたユーク達は目を疑った。
ダンジョン全体が1フロアの階だったのだ。
はるか遠くに12階層に続く階段も見えた。
「なんだろこの階って何も居ないのかな?」
ユークの問いかけにミーシャが答えた。
「見える範囲では何も居ませんね?」
リオも探索のスキルを発動して探ってるが、敵は居ないようだ。
ユークも探索を発動するが階下から薄らと魔物の気配がする程度でこの辺りには魔物の気配はわからなっかった。
「次の階に行こうか?」
ユークは声を掛けて歩き出した。
ある場所まで来てユークは急に足を止めた。
「どうしたのですか?」
不思議に思いミーシャが声を掛けた。
「少しここで待ってて!絶対動かないでね」
ユークは目の前の地面に黒曜剣でそっと触れてみた。
突然地面に大きな穴が開いたのだ。
穴の中には大量のマリルスネークが居た。
「この階層は落とし穴が至る所に有るみたいだ。」
ユークは地面の気配を探りながら落とし穴だけを作動させていく。
今通って来た道も行き止まりになってしまった。
一度階段まで戻り確かめながら進むのも面倒とフロア全体に軽く震地をかけて落とし穴全体を露出させた。
リオが正しい道順をマッピングしてから12階層の階段までワープした。
暫く見ていると10分ほどで地面が元に戻り落とし穴は隠されてしまった。
「こんなフロアも有るんだね?」
「他のダンジョンも行きましたが初めてですね!」
ミーシャも驚いていた。
ユーク達は12階層、13階層と続けて攻略して行き今日はここまでにしようと16階層でダンジョンから表に移動した。
少し夕暮れに近づいた頃だったので、今日攻略した階層のマップデータを騎士に写させてから城に戻った。
セドリックには暫くダンジョンの攻略を進めるから来客も夜に回して貰うように告げて着替える為に私室に戻った。
集めたアイテムはダンジョンの騎士隊舎に置いて来ている。
ユークの物は国の重要な資金源なので、騎士隊が管理して売却するのだ。
着替えてから食堂に降りて食事を済ませる。
ユークはレミー達居残り組に今日のダンジョンの話をする。
「へ~落とし穴だらけのダンジョンって面白いわね?」
レミーが楽しそうに食いついてきた。
「中はマリルスネークが数万匹は居たけどね」
流石に気持ち悪いとカーラとクララは言っていた。
「でも、ダンジョンも他と違うなんて初めて聞いたわ」
レミーの言う通りで、ダンジョンは基本何処でも似た様な物だ。
出てくる魔物やダンジョンの大きさに違いはあるが、それほど大きな差は無かったりするのだ。
今の所魔物の種類と大きさは他と似ているが、トラップだけのダンジョンは初めての事だ。
「でももう直ぐ攻略も終わると思うけどね」
「そうですね蛇竜が9階層、オーガが16階層で出ましたから強い魔物は後少しでしょう」
ダンジョン内では同一フロアに複数種の魔物が出ることは余り無い。
弱い魔物同士ならたまに有るのだが、A・Bランククラスだと同一種しか出ないのが普通だし、Sランクの魔物もダンジョン内には存在しないのだ。
大半の強い魔物は16階層までに倒してきたので、考えられることは最下層が近いと言う事だ。
「僕の予想だと20階位が最下層だと思うな」
この意見にはミーシャとリオも同じ位だと思っていた。
「後4階位なら明日には終わりそうですね。」
カーラの言葉に頷くユークだが話な簡単に終わらないのだった。




