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神様の棄児  作者: ryo-KK
4章 王国
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番外編 待ち人来たる

時間はユークが奴隷を初めて買った日に戻る。


これはリオの物語だ。


部屋に女将さんが入ってきた。


「今、下に若くて格好良いお客様がお見えで戦闘奴隷をお探しだよ、皆綺麗にして待ってるようにね」


女将さんが退室して部屋の皆は慌てて身支度を整える。


私も髪にブラシをかけたりと頑張ってみた。


「格好良いって言ってたけどどれ位かね~」


「でも今回はミーシャで決まりでしょ」


女の子の1人が言った。


ミーシャさんはこの部屋、否、この商館では誰もが認める美少女だ。


年齢は私よりも1つ上だと聞いた。


でも私だってそんなに負けてないと思う、特に胸の大きさは絶対に勝ってると思うのだ。


戦闘奴隷なら私も魔法が使えるから十分役に立てると思っている。


暫くすると店主のマルリさんが入ってきた。


「こちらのお客様が戦闘奴隷を探しておられる! 整列するように」


後ろにいる方がお客様なのだろう。


私は一瞬で目を奪われた。違う、心毎奪われたのだ。


(綺麗な髪に透き通るような瞳、同じ年位かな?)


お客様の視線はやはりミーシャさんで止まった。


(やっぱりミーシャさんできまりかな)


私は半ば諦めかけていた。


それでもと胸を思いっきりアピールしてみた。


お客様が退室されて部屋ではやっぱりミーシャさんで決まりだろうと言う意見ばかりだった。


「格好良いとは言ってたけど、凄いね」


「そうそう、あそこまで格好良い人って初めて見たわ」


「優しそうだしね、あ~~選んでくれないかな~~」


私も同じ感想しか出てこなくて会話に参加していた。


ミーシャさんも完全に一目惚れしたみたいで手を合わせて祈っている。


私も選ばれる様に手を合わせた。


「ミーシャ、個別面接でお呼びだからついておいで」


女将さんが入ってくるなりミーシャさんに声をかけた。


(やっぱりミーシャさんだけか)


私の初恋は見事2分で消えたと思った。


「リオもお呼びだからついておいで!」


「えっ、私もですか!」


「ああ、この部屋からはお前達2人を希望されてるんだよ」


(う、嬉しい、選ばれるのがミーシャさんだとしても私を気にしてくれたんだ)


ミーシャさんに続いて部屋を出るともう1人女の子が立っていた。


(この人もなんだ)


ミーシャさんと見比べてミーシャさんの圧勝だと思った。


待機部屋に通されて呼ばれるのを待つ間にミーシャさんと話をした。


「ミーシャさんもお客様を気に入ってるのですか?」


「そうね、も、って事はリオさんもなのね」


私は正直に気持ちを打ち明けた。


「はい、多分一目惚れだと思います」


ミーシャさんは私もだといった。


「実際誰が選ばれるか解らないけどあの方の奴隷になら喜んでなりたいと思うわ」


「ですよね、あそこまで格好良い人って見た事有りませんもの」


「そうね、でも私は顔だけで言ってるのでは無いわよ」


「そうなんですか?」


「ええ、顔も確かに素敵だけど、何て言うのかオーラって言うのかしらとても優しくて暖かい感じが漂っているの。 解るかしら?」


確かにやさしいそうだとは思ったがそこまでは解らなかった。


ミーシャさんが呼ばれて退出していった。


最初の女の子は戻って来ない。


多分隣の部屋で待機しているのだろう。


個別面接が終わったら部屋を分けられると聞いた事があった。


意味は知らないのだけれど・・・


ミーシャさんの面接は時間が掛かっているみたいで、私は中々呼ばれなかった。


(ミーシャさんに決まっても良いからもう一度だけでもお会いしたい)


「リオの番だよ失礼の無いようにね」


「はい」


女将さんの言葉に返事をして扉を開けた。


お客様が私をみてる。


一瞬で顔が熱くなった。


「リオと言います。宜しくお願いします。」


自己紹介をしてお辞儀をした。


マルリさんの指示に従ってお客様の前に立つ。


お客様の前で赤い顔を隠せる訳もなく更に照れる顔を晒して耐えるしか無かった。


「リオは一緒に戦う事になるのだけど問題は無い?」


初めて聞く声も自然と耳に入ってくる。


(声まで綺麗、だめよ質問にお答えしなくては)


深呼吸して、お客様に答えた。


「はい、私は魔法が4系統使えます。近接向きでは有りませんが後方型としてならお役に立てると思います」


(ば、バカ、バカ、リオのバカ、近接が駄目なんて欠点を言ってどうするのよ)


反省しながら次の質問を待つが何も聞かれない。


(やっぱり近接戦闘が出来ないから除外されたんだわ)


挨拶をして部屋から出ていく。


待機部屋には2人の姿があった。


「どうだった?」


1人目の子が聞いて来る。


「聞かないで下さい。」


ミーシャさんも聞いて来た。


「何か失敗でもしちゃったの?」


「自分の欠点を暴露しちゃいました」


流石になにもコメントしてくれなかった。


暫くすると女将さんがミーシャさんを呼びに来た。


「ミーシャ、お呼びよ!決まりそうだから頑張るのよ!」


ミーシャさんは満面の笑顔で頷いていた。


今までも先に買われて行く奴隷は何度か見たが羨ましいとは一度も思った事は無かった。


でも今回は羨ましいと本気で思った。


しかし女将さんは『リオも呼ばれてるから』と、言って下さった。


確かに複数の奴隷を買って帰られる方は他にもいる。


でもお若い冒険者に複数を一度に買う余裕があるとは思えなかった。


だがチャンスには違いない。


女将さんに連れられもう一度お客様が待ってる部屋の前に立つ。


「入れ!」


マルリさんの言葉を聞いて部屋に入った。


「お客様はお前達2人で、かなりお悩みになられたが、今日はミーシャを選ばれた。」


(やはりミーシャさんが選ばれたんだ)


それならどうして私も呼ばれたのか不思議に思っていたところにマルリさんが答えを言ってくれた。


「お客様は、リオの事も気に入っておられる。 特例ではあるがリオは予約済みとして、2ヶ月間、取り置く事に成った。 売約済の部屋に今日から移るように」


「ほ、本当ですか?」


選ばれないと諦めかけていた。


でも、私も欲しいと言って下さったと私は天にも昇るほど嬉しかった。


「2ヶ月後に迎えに来るつもりなんだけど もしこれなかった時はどうなるのですか?」


「その時は別のお客様に買って頂くだけですのでお気になさらず」


「そうなったらごめんね」


お客様が私に謝って下さる。


でも、その優しさが、本当にこの方に仕えたいと思わせた。


「大丈夫です! ご主人様が迎えに来てくれるまで待ちます」


私はこの方こそが私のご主人様に間違い無いと思いただ純粋な気持ちで答えていた。


「できるだけ頑張るから」


「はい お待ちしております!」


お客様のお名前はユーク様だとマルリさんから伺った。


私は個室に入り約束の期日まで待つ事になったのだ。


ユーク様の事を毎日考えていた。


1日、また1日と考えるだけ好きな気持ちが強くなってる気がする。


約束の期日まで後70日、毎日日捲りを眺めてはユーク様の事を考える。


ドアの外が騒がしい。


私にはユーク様がいるから関係無いと気にしないでいた。


しかし私の部屋がノックされた。


「はい」


「リオをお呼びだよ」


「えっ私ですか?」


女将さんはそうだという。


期限まではまだまだ程遠い、もしかしたらユーク様は無理だと私を諦めたのかもしれない。

他の方に買われるんだと思い泣きそうになった。


これが奴隷の定めだと理解はしているがせめて期日までは夢を見ていたかった。


商談部屋をノックして返事を待った。


せめて良い人に買われます様にと祈った。


「入れ!」


マルリさんの言葉を聞いて中に入った。


「失礼します。」


お辞儀をして顔を上げるとユーク様が座っていた。


(やっぱり断りにいらしたんだ)


私はそう思いユーク様の顔をまともに見れなかった。


「迎えにきたよ」


ユーク様は言って下さる。


私は聞き間違いかと思ってユーク様の顔を見た。


だがユーク様はしっかりと頷いてくださった。


私は、嬉しさがどんどん込み上げてきて嬉しさを抑えきれなくなっていた。


「しかし、期日は、まだ先の筈では」


余りに早いので疑問を口にしてみた。


「出来るだけ早く迎えに来たくて、ミーシャと頑張ったんだ」


「そうなのですね、夢見てるみたいです。」


「今日からは、ミーシャ共々、宜しく頼むよ」


「こちらこそ、よろしくお願いします。ご主人様」


(やった~~~、私の初恋はまだ終わらない)


私が一番待ち望んでいた人に迎えられた最良の1日だった。

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