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神様の棄児  作者: ryo-KK
4章 王国
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番外編 初恋

その日は朝から忙しく仕事に追い回されていた。


数日前からバリウ湖以外での水蛇竜の目撃情報や被害報告が大量に寄せられていた。


寄せられる書類に目を通している所にノックの音が聞こえたのだ。


「はい」


扉の向こうから宰相のアイザックが声を掛けてきた。


「カーラ様、セルト王国から依頼を受けたと冒険者が来ております。謁見室にお越し下さい」


「解りました直ぐに向かいますわ」


アイザックに返事を返して、書類を机に戻した。


セルトに優秀な冒険者が居るとレイチェル王女から聞いてお父様にお教えしたのは私だった。


(どの様な方かしら)


指名依頼で今までも何人かの冒険者とは会っているが皆が皆屈強そうな冒険者ばかりだった。


謁見室には父王と宰相のアイザックが待機していた。


冒険者の姿はまだなかったのだ。


「お父様、アイザック、遅くなりました。」


「カーラよまだ冒険者は来ておらん。気にせず座りなさい」


父王の言葉に頷き腰掛ける。


「レイチェル王女の話では大変優秀だとお聞きしてます。お会いするのが楽しみですね」


「地竜をお一人で倒したとも聞きました。これは凄い事で御座いますよ」


アイザックも驚く位だからさぞや逞しい冒険者なのだと思っていた。


近衛隊長のバッカスが謁見室に入ってきた。


「依頼でお見えになった冒険者のユーク様が到着なさいました。お通ししても宜しいでしょうか?」


父王が頷きアイザックも了承する。


姿を表した冒険者は私の想像とはかけ離れた人物だった。


綺麗な金の髪にとても目立つお顔立ち、どこから見ても冒険者と言うよりも貴族の子息か王子様と言った雰囲気だった。


「余がフルール王国国王のエルマー=フルーリー=エスコットだ」


父王が自己紹介をしたので私の番だと自己紹介をする。


「王女のカーラ=フルーリー=エスコットです。以後お見知りおきを」


父王が依頼した経緯を説明した。     


「少し前にセルト王と会談があって、その席でユーク殿の話がでてな、聞けば大変優秀な冒険者だという話で、今回無理を承知で、頼むこととなった」


「優秀などとは恐れ多いですが、全力で当たらせて戴きます。」


広い謁見室にも良く通る澄んだ声。


(冒険者にもこの様な方がいらしたのね)


「うむ、よろしく頼む。依頼の内容は宰相のアイザックに説明させよう」


父王に指摘されたアイザックが内容を話し出す。


アイザックは内容を話した後に確認の為近衛隊長のバッカスと隊士のバートを付けると言い話を終わらせた。


「森や草原は民にとっても国にとっても重要な場所、少しでも早く安全を取り戻して下さい、それとユーク様もお怪我等無い様に十分お気を付け下さい」


私も王女として言葉を述べたのだった。


バリウ湖までは3日は掛かる。


1日でも早く解決して欲しいと本当に思っている。


私は地竜が如何程の魔物なのかは正直解らない。


解らないと冒険者の苦労も解らないだろうとアイザックに訪ねてみた。


「アイザック、ユーク様がお一人で倒したと言われた地竜と言う魔物はどれ位の相手ですの?」


アイザックの説明のよればフルールの精鋭を持って戦っても勝てるか解ら無い魔物だと言う。


「ユーク様ってそんなにお強い方でしたの?」


「はい、話が事実ならマホガリアのガストン様クラスかそれ以上かと思われます」


「そう、今まで見た冒険者よりもまだお若いでしょうに優秀なのですね」


私はアイザックに聞いてから近衛騎士の練習や模擬戦を見学に行った。


(此処に居る兵士達全員でも勝てない強さってことよね?)


兵士の1人に改めて聞いてみた。


「訓練ご苦労様です」


「カーラ王女、勿体無いお言葉有難う御座います。」


「一つお聞きしても宜しいかしら?」


「はっ、何なりと」


「もし此処に地竜を倒せる人が来たらあなた方ならどれ位の時間稼ぎが出来ますか?」


兵士が言うには、長くて5分位だと言う。


その相手がどれ位多数との戦闘に慣れているかで変わると言う事だ。


もし1対多数での戦闘経験が有るなら数秒で倒される可能性も有るという事なのだ。


私は兵士に礼を言って自室に戻った。


ユーク様とお会いしてからユーク様の事ばかり考えてる事にようやく気がついた。


侍女にそれとなく話を聞いてみた。


「ねぇ、リリアーナ!」


「はい、カーラ様」


「私ね最近ある方のことばかり考えてしまうの、これって変よね?」


「それは殿方の事でしょうか?」


「そうね、殿方には間違いないわ」


「カーラ様はその方の事を考えるとどうなりますか?」


「どうなるとは?」


「顔が熱くなるとか、心臓がドキドキするとかは有りませんか?」


「そうね、良く解らないわ」


「でしたら目を閉じてその方を想像してみて下さい」


「こう?」


私はりリアーナに言われるまま目を閉じてユーク様の事を考えた。


「はい、それではその方がカーラ様の手を取って優しくエスコートしている姿を思い浮かべて下さい」


言われるままに思い浮かべる。


ユーク様が私の手にそっと触れようとした時心臓が早鐘を打つ様に高鳴った。


そして、何故だか顔がものすごく熱くなって来たのだ。


「カーラ様、もう解りました。目を開けて頂いて大丈夫です」


「今の感じはなんだったのかしら?」


「結論から言いますと、カーラ様はその方に恋しておられます」


「恋、ですか?」


「はい、経験が無いのでご自分では気づかなかったのだと思いますが、間違い無く恋してると思います」


「では、このドキドキする感じが恋というのですね」


「はい」


この時私は初恋を実感したのだった。


それからは毎日ユーク様の事を考える時間が増えていった。


夢にまで見て、恥ずかしさで飛び起きる事も多々あり、その時は決まって顔が真っ赤だと解る位熱を帯びていた。


ユーク様が依頼に向かわれて6日目に帰城の報告がアイザックよりあった。


私は仕事を放り出して謁見室に駆けていった。


謁見室でユーク様を見たとき無事の帰還にホッとして、お顔もまともに見る事が出来なかった。

  

バッカスがアイザックに討伐の証明としてアイテムを渡していた。


その後討伐した数などを聞いた父王はとても驚いていた。


「セルト王の言う通りの凄腕であったな。」


父王の言葉に少し恥ずかしそうに謙遜するユーク様をみて年上の方なのに可愛いと思ってしまった。    


「ユーク様ならば、Sランク若しくはSSランクの冒険者に成られる事も確実でしょう」


「SSランクとな」


バッカスの言葉に王だけでは無くこの場に居た全員が反応してユークを見た。


私には良く解らないが皆がユーク様を驚愕の表情で見ていた。


父王やアイザックはユーク様と親しく成りたいのだろう。


仕切りにごまをすっている様にみえて面白かった。


「今後も是非我が国の依頼も受けて頂きたい」


アイザックの言葉にユーク様は『時期が合えば必ず』と答えてくれていた。


声を聞くだけでも胸がドキドキして来た。


「ユーク殿さえ良ければ、我が国で、住む所も用意させるから永住も考えてみてくれ」


父王はユーク様にアイザックとは違う提案をした。


ユーク様が了承して下されば何時でもお会い出来ると私も考えてしまった。


しかしユーク様は『今はまだ』と、柔らかな物言いだが断ってしまわれたのだ。


アイザックがユーク様に書類を渡した。


ユーク様は受け取ると『それでは失礼します』と踵を返された。


「ユーク様、」


ユーク様が行ってしまわれると思った時に胸が締め付けられるように痛くなり思わず声をかけてしまった。


皆の視線が集まる中王女として恥ずかしい行動は取れないと最もらしい言葉をかけるしかなかった。


「この度の依頼、早急に解決して下さり感謝にたえません。 また王宮にも遊びに来てくださいませ、ゆっくりとお持て成しさせて頂きたいと存じます。」


本当はもっと違う事を言いたかった。でも直ぐに言葉は思いつかなかった。


「ただの冒険者には勿体無いお言葉有難う御座います。機会が有れば是非とも立ち寄らせて戴きます」


ユーク様がまた来て下さると言って下さった事だけでも今は満足出来た。


私はユーク様に王女としてでは無く1人のカーラとして手を振って『またね』と、心の中でつぶやいた。


ユーク様は笑顔で頷いて、謁見室を出て行かれた。


私の心にぽっかりと穴が空いた気がしたのが私の初恋の思い出だった。

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