反撃
翌日、ミーシャが待ち合わせている時間2時間程前にユージンがユークを訪ねてセルト王国の決定事項を伝えた。
ただし実行にはユージンの同行を許可する事と付け加えられていた。
これは本当にコンラットの仕業だったと言う証人が必要と言う理由だが本音はユークの本当の力を見たいと言うところだ。
ユージンから聞いて直ぐにフルールにワープしてフルールの意見とマホガリアにフルールが確認してくれた事を聞いたのだった。
屋敷に戻り皆に聞いたことを話す。
ユージンは別室で待機して貰っていた。
「コンラット皇国って何処からも嫌われてたのね」
レミーがさめた言葉で言うと、カーラが理由を告げた。
「聞いた話では鉱石の市場価格を上げる為に採掘量を調整したり輸送中の事故を装って輸送費を割り増ししたりと昔から酷かったそうです」
「そうなんだ。狙いは王家と貴族連中って所かな」
ユークの言葉にミーシャが答えた。
「たぶん王都が丸ごと加担してると思います。」
「そっか、商人もグルだもんね」
「はい」
後はこの後の行動だと行動予定を話す事になった。
「ミーシャは取り敢えず商人の誘いに乗って出来る限りの情報を引き出す」
「はい」
「貴族の名前か依頼主の名前ね、知らないと思うけどリオのお父さん達の居場所も探れたら探って」
「解りました」
「リオ達は先にコンラットに送るから一般市民の避難誘導ね」
「「「はい」」」
「あっミーシャ」
「はい」
「もし何かされそうになったら直ぐに念話で知らせて、僕はミーシャの近くでずっと隠れてるから。」
「ご主人様」
「ミーシャに触れて良いのは僕だけだからね、皆も何かあったら直ぐに知らせてね」
「「「はい」」」
と、そこまで考えてアポリウスの言葉を思い出した。
(あれ?アポリウスさんから何か大事な事を聞いたような気がするんだけど・・・)
時間が無いので作戦行動に移った。
リオ、レミー、カーラ+ユージンをコンラットに送って内密に一般住民に王都から離れる様に言う。
(ユージン様も勢いで一緒にワープさせてしまった)
聞いてくれない人は何が有っても責任は取れないとセルト王家の紋章を見せて説得した。
ユークはセルトに戻りミーシャと商人の動向を遠くから見ていた。
「ミーシャさんの意思を聞きましょうか?」
商人の下衆な声が耳につく。
「あの、本当にリオの両親は解放されるのでしょうか?」
「それは本人と直接話して下さい。私は貴方を連れて行く為に此処に来ているだけですから」
「その貴族の方はいったい誰なのでしょう」
「それも会えば解りますよ」
「心の準備もしておきたいので私が知ってる方なら例え一晩でも、御奉仕し易くなるのではと思うのですが」
「あはは、貴方は奴隷が身に付いてますな。良いでしょうその方はアレックス皇子ですよ。アレックス皇子は貴方さえ良ければずっと奴隷として側に置いてやるとも言ってましたよ」
「アレックス様ですか素敵な方ですものね、良いお話では無いですか」
「ほう、さすがアレックス様が目を付けた女性だ、頭も悪く無いみたいですな。昨日の婚約者なんかよりも余程地位もありますぞ」
ミーシャは怒りをぐっと堪えて話を合わせた。
「そうですね、本気で迫ってみようかしら、そうなればリオの両親ってどうなるのかしら?」
「それはアレックス様次第ではないですか?」
「そうよね、でも元仲間の両親だから気になるわ、貴方は2人が何処にいるかご存知?」
「さ~そこまでは聞かされてませんね」
「そう、哀れな囚われの身になった2人を笑って上げようと思ったのに残念だわ」
(ご主人様やはりアレックスが首謀者のようです)
(やっぱりそうだったんだ)
(はい、リオの両親の所在は本当に知らないみたいです。)
(じゃあその商人に用は無いから引き上げていいよ)
(解りました)
「ミーシャさんどうかしました?」
「貴方に名前を呼ばれると気分が悪くなります、その臭い口を開かないで頂けます」
商人はなにが起こったか解らなかった。
「私があんな腐ったアレックスの奴隷に成るなんて考えただけで死んだ方がましです。先程ご主人様の事を侮辱した罰は受けて頂きます」
そう言うとミーシャは商人に拳を叩き込んだ。
ユージンの指示で近くで待機していた近衛兵に商人は連れていかれたのだった。
ミーシャはユークの元に駆け寄り抱きついてくる。
「気持ち悪い男でした」
「良く頑張ってくれたね、ご苦労様」
ユークの匂いを嗅いで気分を落ち着かせているようだった。
「さて交渉に行ってみようか」
「はい」
ユークはアポリウスが言ってた事を思い出せないのでミーシャに聞いてみた。
「あのね、前にアポリウスさんが念話の事で何か言ってたのを覚えてる?」
「はい、距離は関係ないとかの事でしょうか?」
「そうそう、他にも何か言って無かった?」
「そうですね、確か、パーティーとかは関係なく顔と名前が解ってれば話せるとおっしゃってました。 あっ」
そこまで言ってミーシャも気づいた様だ、
「そうなんだよ、僕ならダンさんと会話出来るんだよ」
「そうですね、お会いしましたし」
早速ユークは試してみた。
(ダンさん聞こえますか?ユークです。聞こえてたら驚かないで、頭の中で会話して見て貰えませんか?)
突然ユークの声が頭に届いて驚くなと言うのも無理である。
ダンは一度驚いた後にユークの指示通りに頭の中で会話してきた。
(こうでしょうか?)
(ええ、良く聞こえます。)
ミーシャに繋がったと合図を送り念話を続けた。
(これはどうなってるのでしょう?)
(これは冒険者のスキルで念話という物です。離れた人と会話ができるスキルなんです)
(そんなことも出来るのですね)
(ええ、念話の話はまたにして、今何処に居るか解りますか?)
(セルトでは無いのですか?)
(僕じゃなくてダンさんは今何処に自分が居るか解りますか?)
(はい)
(アンナさんも一緒ですか?)
(はい近くに居ます)
(今居る場所を教えて貰えませんか?)
(今ですか、今はグラン山脈東の鉱山です。横領罪で捕まり強制労働をさせられてます)
(東の鉱山ですね)
(はい)
(詳しい話は後でします。10分後に救出に行きますから10分後にアンナさんの近くに居て下さい)
(救出?)
(時間が無いので質問は後で聞きますからお願いします)
(解りました)
「ミーシャ、解ったよグラン鉱山だ」
「直ぐに助けに行きましょう」
「いや、先ずはアレックスと交渉が先だよ。出来れば穏便に終わらせたいからね」
「解りました。」
ミーシャを連れてコンラットの王宮の前に出る。
門番にアレックスに会いに来たと名前を言い伝えて貰った。
アレックスは直ぐに出てきた。
「誰かと思えば偽者の冒険者くんと性奴隷のミーシャじゃないか、俺の奴隷に元ご主人様を連れて成りに来たのか?」
「リオの両親の賠償に来ました。お金は僕が払います2人を返して頂けますか?」
レミー達にはダン達が見つかった事も話した上で、ユージンに城門近くで待機して貰うようにも伝えて貰っている。
この会話もユージンに聞こえているだろうと話を続ける。
「奴等は自分で返すと言ってるからなお前からは受け取れないな」
「初めから受け取る気も無いと言う事ですか?」
「そこのミーシャが一生俺の玩具に成ると言うなら話位は聞いてやるぞ」
「さすがに腐ってますね」
ミーシャを冒涜されてユークはさすがに我慢の限界に来ていた。
「10分だけ待ちます。王様と宰相殿と良く相談してみて下さい」
と言い残し一度離れた。
ユージンと合流して避難を急いで貰いミーシャとリオを連れてグラン鉱山に向かった。
直接鉱山には行った事が無いので飛べなかったが、近くまではワープで移動できた。
リオが場所を調べてくれていたので、2人を抱き抱え急いで向かった。
鉱山の入り口には見張りが立っているのでミーシャ達を少し離れたところで待機させユークは全力で見張りの横を駆け抜けた。
ユークの全力疾走を見張り如きに見える筈も無く楽々中に進入出来た。
(ダンさんユークです。助けに来ました今は何処に居ますか?)
(搬出作業をしてます。もう直ぐ外に出ます)
(アンナさんは?)
(少し後ろに居ます)
(解りました。外に出たら出来るだけ近くに居て下さい。直ぐに助けますから)
(解りました)
ユークは出入りの多い入り口が見える小屋の影で隠れていた。
監視している兵士も一人居るがダンを見つけたら倒せばいいと考えじっと入り口を見ていた。
ダンが出てきた、その直ぐ後ろにアンナも居た。
ユークは全力で兵士に駆け寄り手刀を首に当て意識を飛ばした。
直ぐにダンとアンナに駆け寄り二人を連れてミーシャ達の待つ場所にワープした。
リオが泣いてアンナに抱きついて居るが時間も余り無いのでリオと両親をアーテ村に先に送る、リオは残って事件の説明をして貰う。
直ぐに城門前にワープした。
ミーシャやユージン達には王都の外に出て待機してて貰う。
交渉が決裂したら王都毎破壊するから避難して貰ったのだった。
約束の時間にアレックスは兵士を引き連れて姿を現した。
「さて話し合いは終わりましたか?」
アレックスの後ろにアランとシーザーの姿も見えた。
ユークはアレックスを無視してアランに直接話しかけた。
「アラン王、どうします賠償を受け取らないと言うなら交渉は決裂です。」
アランはまだ人質が居ると思っているので、強気に出てきた。
「何の交渉だ、賠償金は受け取らない。しかしお前が私の言うことを聞くと言うのなら2人の命は保障しよう」
「何処までも腐った国ですね」
無視されてたアレックスが答える。
「奴隷風情に本気になる愚かな冒険者が何を粋がっている。お前には従うと言う道しか残されてないんだよ。お前の奴隷達も俺様が毎日トイレ代わりに使ってやるさ」
「お前は本当に僕を怒らせたいらしいな、人質が居ると思うならもう助けたよ、それと・・・」
各国の王家からのユークの判断に任せると言う委任状をアレックスの顔に投げつけた。
「それはこの腐った国をつぶしても良いと云う3国の委任状だ。覚悟は出来てるだろうな」
アレックスは自分では動かず騎士をユークに突撃させた。
ユークは全力で走り一瞬でアランの後ろに回った。
「皇国の騎士にもチャンスをやろう、僕に従うなら助けてやる今直ぐに王都から出ろ!これが最後通告だ」
いきなり王の後ろからユークの声が聞こえ騎士達も戸惑っていた。
目の前から消えたと思ったら20m以上放れた所に居るのだ。数人は逃げ出そうとしていた。アレックスは逃げようとした騎士に剣を振りかざした。ユークは助けると約束したからとアレックスと騎士の間に割り込んで黒耀剣で、アレックスの剣を受け止めようとしたが剣を斬ってしまった。
騎士に早く逃げろと一声かけてアレックスを睨み付けた。
「何処までも腐った男だな」
ユークは瞬時にアレックスの両足を切断した。
「あ、足、足が~~、ひ、ひ~~、た、たすけてくれ~~~」
「散々馬鹿にしたんだろ、冒険者風情の剣位避けろよ!」
「お、おれ、私が間違っていた~命だけはたすけてくれ~~」
ユークはアレックスの目前で、剣を空振りさせる。
「ひぇ~~~、ゆ、ゆるしてください~~」
王宮からも侍女達が逃げ出してきたがユークは追わなかった。王妃はアランの側でアレックスの名をしきりに呼んでいた。
「ユーク様、私は最後まで、反対したのです。ですが、無能な王家には逆らえ無くて従うしか無かったのです。」
シーザーはユークに必死に嘆願してくる。
「シーザー貴様!」
「ユーク様、王家の無能さには本当に困っておりました。ユーク様さえお許し下さるなら。ユーク様の下で民の為に死ぬ気で働きます。どうか私もお助け下さい!」
「何を言う!アレックスの話に最初から賛成していたのはお前では無いか!儂が最後まで止めたのをお前や貴族供がアレックスを支持したのでは無いか!」
「何を嘘ばかり付くな!反対したのは私だけだ!」
「否、儂だけじゃ」
醜い言い争いにユークはうんざりして来た。
「あなた方、国の中心人物を許すつもりは有りませんよ」
「本当なんだ、ユーク様に取り入ろうとしたのは事実だが、こんな事をするつもりは私には無かったのです。責任は王家にあるのです」
「ただ使われていたのと使っていたのは違う。もう一度言う。逃げたい騎士と侍女達は今すぐに逃げていい!しかし貴族や王家の者は逃げれば先に殺しますよ」
ユークの余裕の宣言に留まっていた貴族も逃げようとする。
ユークは瞬時に回り込み足止めとばかりに両足を切断して行く。
貴族がユークに告げる。
「俺達を殺すと罪もない奴隷達も死ぬ事になるんだぞ」
確かにその通りだ。
ユークはミーシャ達に逃げてきた侍女や奴隷達に誓約の紋で拘束されている者が居ないか確認して貰う。
(ミーシャ、逃げて来た人達って近くにいる?)
(はい、かなりの人数ですが王都を眺めるように集まってます)
(皆で手分けして誓約の紋で拘束されている奴隷が居れば集めておいて)
(解りました)
ミーシャ達は手分けして逃げて来た人達に大声で呼びかけ一箇所に集まって貰う。
10分程声をかけ続け200人程が集まった。
その間もユークは貴族や王族の監視を緩めない。
アレックスも瀕死だがまだ生きている状態だ。
(ご主人様、200人程ですが集まりました。)
(全員解除するからここにユージン様に連れて来て貰って)
(解りました)
ユージンはミーシャに言われ奴隷を連れて城門まで戻ってきた。
「ユーク連れてきたぞ」
ユークは残った30人程の貴族や騎士、王族の奴隷は居るかと奴隷達に聞いた。
勿論監視したままでだ。
「残った中に主人が居ない人達はもう一度外に出て下さい」
ユークの声に動く者は居なかった。
ミーシャ達はまだ探してくれているのだがもう誰も集まらなかった。
ユークは奴隷の所有者たちを順番に並ばせて纏めて全員の腕を切り落とした。
まさに地獄絵図の光景だった。
痛みに蹲る貴族をユークは無視して誓約の紋の解除を行っていくのであった。
アランやシーザーも複数の奴隷を抱えていたが、アレックスはなんと40人の奴隷を所有していたのであった。
希望者だけの解除だったが、全員が希望してきた。
開放が終わりユージンにも外に戻って貰った。
これで準備は終わった。
「自分達の無能さを噛み締めて国と共に消えるといい」
言い残しミーシャ達の元にワープした。
「ユージン様、もう良いですね」
「仕方あるまい、ユークにまかせる」
「ミーシャ達もごめん、鬼になるから見たくないなら目を閉じてて」
ユークは告げてフレアと王都の大きさを頭に浮かべて唱えた。
フレアは<神がかり>のスキルの一つだ。
腐った王宮毎焼却処分しようと考え選んだのだった。
王宮を中心に炎の爆発が起こった。
次の瞬間にはユーク達の数10m先から向こうが蒸発していた。
ユージンも流石に声が出なかった。
レミーとカーラすら声をなくしていた。
ミーシャだけがユークに寄り添ってきた。
「お疲れ様でした。ご主人様」
「うん、ミーシャも嫌な思いをさせてごめんね」
「いえ、ご主人様は仇を討って下さいました。私はご主人様さえ居て下さればそれだけで幸せですから」
ミーシャの行動に慌てて意識をユークに向けたレミーとカーラも抱きついてくる。
「少し驚いたけどミーシャばかり良い所を取りすぎよ」
「そうよ私だってユーク様さえ居てくれればそれで良いのよ」
ユークは逃げ出した人々に宣言した。
「コンラット皇国はこの時を持って無くなりました。 以後は3国の会議で処遇が決まります。勝手に行動を起こせばどうなっても知りません」
ユークに続きユージンが言葉を発した。
「セルト王国近衛騎士団団長のユージンだ。避難したいなら各国とは話が付いてるので頼って良い。しかしこの王都に勝手に住む事は認められん。各国の指示が有るまで此処には立ち入るな」
ユージンの言葉を聴き終えユークは仲間に声をかけた。
「皆ありがとう、リオも待ってるから帰ろうか」
「「「はい」」」
ユージンも連れてアーテ村に移動した。
ダンとアンナにはリオが説明していたので、深く聞かれる事も無かった。
コンラット皇国が滅びた事はユージンから説明を受けてたが簡単には納得出来ない様だった。
リオも連れてセルトの王宮にワープした。
後はユージンに任せてユーク達は屋敷に戻った。
「ユーク様ってあそこまで凄かったのね。」
「そうね、私の旦那様は世界一よ」
「あらご主人様は私の夫でも有るのよ」
「でもミーシャは知ってたみたいね、ユーク様の力」
「一緒に依頼に行ってるもの当然知ってるわよ」
「そんなレベルの魔法じゃ無かったわよ」
これは潮時とユークは自分の妻達にだけ話すことにした。
「ミーシャには秘密にして貰ってたけど、僕には秘密のスキルが有るんだよ。どうしてそんなスキルが有るかは解らないけどね」
「秘密のスキル?」
レミーが聞き返したが<神がかり>の事だけ説明した。ユーリアの事は絶対に秘密だ。
スキルの事は他言無用とも伝えておいた。
信用してる妻達だから話したと最後に付け足しておいた。
ミーシャだけ知ってたなんてやっぱりずるいとか散々言われたがこれで皆知ったんだからと誤魔化した。
その頃ユージンはコンラットの現状とユークの力、使った魔法等を集まった王と宰相、貴族とラクト史書長に説明した。
「間違いなく<神がかり>の力だと思いますね」
ラクトの言葉を全員が信じるしかなかった。
「これからどう扱えば良いのか解らん」
「それもですがコンラットの今後はどうするのでしょう?」
ユークのことはラクトが【触らぬ神に祟り無し】と簡単に言い、今迄通りで大丈夫だが絶対にユーク家に手を出さない事を徹底させる事で落ち着いた。
コンラットの事は近く3国の会議で決める事になるだろうと言う事だった。
ユークの力に恐怖は有るがユークの事も今後、議題の最重要項目となるのであった。




