#00 プロローグ
合図と共に黒幕から出てきた
スポットライトに照らされマイクの前に立った
観客は顔見知りが多いが初々しい次年度の中一もいる
唯一の一年目でありながらそれを赤裸々に出しては行けない、先輩と並んでも違和感のないように演技をしなければならない。
この部活に映像という概念はない
声だけで全てをあらわさなければならない
そしてここでわたしのこれからが決まるところでもある、絶対に自分を最大限に魅せてやるそういう気持ちでセリフ発した
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「お疲れ〜」
先輩が流れで言うと共に一番下の私達が素早くお疲れ様ですと言う
コードを手に巻き結んだらダンボールにしまっていると隣にいる二つ結びの女の子が大袈裟にため息をついていた
「どうしたの?」
「疲れた〜座りっぱなし辛すぎるしくらいところで台本見ると首と目が疲れる...」
目をしばしばしながら首をさすっていた
「そんなこと後でいいから道具早く運んで」
髪を高くに結い上げ少し癖のある眼鏡の子が間に入り込んだ
そして2つ結びの子は疲れを見せながらも応答しダンボールを抱え2人で部室から出ていった
すると後ろから自分の名前が呼びかけられた
「茉莉亞ちゃん上手かったよ!」
振り向くと口角をあげて話しかけるハーフアップの子がいた、何度か倉庫を出入りしたのか少し汗をかいていたがみんなは忙しく演技について何も言ってくれなくて少し寂しかったので褒めてくれたのがすごく嬉しかった
「誉本ちゃん!」
ありもしないしっぽを振るように喜んでいる私を見て満足したのかまた作業に戻ってしまった
初春公演が終わり春休みに入るところだった
そしてこの学園に入り2年目に入るところだった
私達が通う白鷺学園は都内有数の進学校であり100年以上続く伝統校
そこにある声劇部は今日、初春公演だった
主に新入生勧誘だが在校生も多く来ていてそこで入部を決める子も多い
私もその1人だった、映像がないのに声だけなのに吸い込まれる何かを感じてその後は迷わず入部を決意していた
まさか1年後自分がやるとは思わず決まった時はとても嬉しく今日までずっと胸の高鳴りが収まらなかった
「上手く行ったなぁ…」
誰もいない廊下は響いてしまうが効いている人は誰もいない
効果は来年わかるがその時のことを考えるとつい口角が緩んでしまう
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「ね〜ね〜あの噂信じる?」
「噂?」
初春公演のお疲れ様会の終盤
さっきまで賑やかだったカフェテリアも気づいたら少数になってしまった
広い空間で人が少ないと響いてしまうためかいつもより小さな声で私と誉本ちゃんに声かけた
お互い知らないのか問い返したあと顔を合わせ頭にはてなを浮かばせた
すると結望は頬を膨らませてむーと言わんばかりの顔をした
「最近この噂でクラスが持ちきりなんだよ!ず〜っとこの話してるの!」
「噂と言ってもそこのクラスだけならただの出鱈目でしょ?なんでそんなみんな知ってるかのようになってるの」
「だって発信源が先輩なんだもん!」
「先輩で信憑性高くならんわ」
鋭い点に彼女は刺されるかのような声を出していた
噂好きではあるがあんまり話を広げない彼女がこれだけ興味を持つのは少し気になった
刺した身ではあるがやっぱ気になるので乗ってみることにした
「なんだその出鱈目」
噂の内容は「中学2年生になると特殊な能力を持てる世界に飛ばされるらしい」というもの
ついに家に帰らなすぎて頭おかしくなったのかと本気で思った
この噂の発端は数ヶ月前の冬休み
閉まってる寮の中に忘れ物をし、侵入した先輩が見かけた学年フロアにある見覚えのない鏡
そこにうつる姿は少し歪んで見えておかしいと感じるもまじまじとみていた
そうしていると鏡に入り込んでしまった
それ以降の記憶は何もなく気づいたら家に帰っていた
なぜそこに中学2年生が巻き込まれたのかはその鏡が中学2年生の学年フロアにあったから
ただそれだけでこの噂になって収まったらしい
「茉莉亞は冷たいなぁ〜嘘っぽさがあるのが面白いんじゃん」
彼女は得意げな顔をし頬杖をついた
「でも能力かぁ〜どういうの持ってたらかっこいいかなあ〜」
誉本ちゃんは目を輝かせながら言っていた
その2人に呆れてしまい立ち上がりテーブルを離れそのまま部屋に戻った
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部屋に戻って荷物の最後の段ボールへの詰め込みを行った
部屋の子はもう眠ってしまいいつもよりとても静かな空気だった
薄暗い部屋で音を立てないようにダンボールを持ち上げていたが重くてひ弱な自分にはとても辛くよいしょ、と繰り返してた
「物持ち上げられる能力とかあればいいのに…」
ふとさっきの話を思い出し声を出してしまった
さっきまであんな信用しないなど言っていたのにまさか手のひら返しになるとは
それから頭はその話で埋め尽くされ集中できなくなっていたので無気になりベッドに飛び込んだ
きっと明日には忘れる
そう胸奥で願い眠りについた




